26日(木)。昨夕HCビル地下のKで、当ビルの有力テナントT社のHさんと、当社X部長と3人で暑気払いをしました いつもは閑古鳥が鳴いているので、予約なしでお店に行ったところ、何と2つのグループでほとんど満員状態です。何とか3席分を確保しましたが、迎え撃つお店の戦力は板さんとママの二人だけ。予想通りビールやお酒が出てくるのが遅くなり、JR中央線の徐行運転並みのペースになってしまいました 仕方ないのでチビリチビリやりながら最近のケーザイ情勢やセージ情勢について話しました。そんな訳で、いつものように今日は朝から頭が頭痛です
閑話休題
吉村英夫著「ヘタな人生論より『寅さん』のひと言」(河出文庫)を読み終わりました 著者の吉村英夫氏は1940年三重県生まれ。高校教員を経て現在は愛知淑徳大学教授です。山田洋次関連の研究書を2冊刊行しています この本は本人が「あとがきにかえて」で述べているように、ほとんど「『男はつらいよ』セリフ集」です
映画『男はつらいよ』は何作も観ましたが、この本で「名セリフ」を読んでいると、それぞれのシーンが脳裏に蘇ってきます 例えば、博の父親の話したことの受け売りを寅がとらや一家に語るシーンです
寅「例えば、日暮れ時農家のアゼ道を一人で歩いていると考えてごらん、庭先にりんどうの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間、灯りがあかあかとついて、父親と母親がいて、子どもたちがいて賑やかに夕飯を食べている、これが・・・・これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君」
つね「ちょいと悪いけどね、親子で晩御飯食べてるだけのことで、なんでそんなに感心するんだい」
竜造「そうよ、どこでもやってんじゃねえか、そのくらいのことは」
寅「ただ食べてんじゃないんだよ、庭先にりんどうの花が咲きこぼれていたの」
つね「りんどうの花だったらうちにも咲いてるよ」
寅「電気があかあかとともってよ」
竜造「夜になりゃ、電気はつけるだろ、どこでも」
寅「ああ、分かってないな、これだから教養のない人はいやなんだよ、話し合えないという感じがするもんねえ、なア、博君」
博「(閉口しながら)え、ええ、そうですね・・・・つまり、兄さんの言いたいことは、平凡な人間の営みの中にこそ幸せがある、とでもいうのかな」
これは教養のない寅が言うから可笑しいのです 裏の印刷工場の若者たちに向けて話しかける次のセリフも定番です
「おい、労働者諸君、相変わらず不幸せですか」
「労働者階級のみなさん、今日も一日ほんとうに労働ご苦労さま」
寅は自分が労働者とは思っていないから、オカシイ
たまには真理をつくセリフが出てくるのも寅の特徴です。「人間はなんで死ぬんでしょうねえ」と訊かれて、
寅「人間、うーん、そうねえ、まァ、なんて言うかな、まァ、結局あれじゃないですかね、まァ、こう人間が、いつまでも生きていると、あのー、こー、丘の上がね、人間ばかりになっちゃう・・・・で、うじゃうじゃ、うじゃうじゃメンセキが決まっているから、で、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらマンジュウしているうちに、ほら足の置く場所がなくなっちゃって・・・で、隅っこに居るやつがお前、どけよと言われて、ア、アーなんて海のなかへ、バチャンと落っこって、アップ、アップして『助けてくれー助けてくれー』なんてね、死んじゃうんです。結局、そういうことになってるんじゃないか、昔から。まァ、そういうことは考えない方がいいですよ」
哲学的な大問題を現実的・即物的に考えて、しまいには考えることを放棄してしまう、いいですねえ、こういう寅さんは 実に人生についていろいろと教えてくれるのが「男はつらいよ」です
この本に出てこなかった名セリフで私が大好きなセリフが一つだけあります。初代おいちゃん(森川信)が、寅の我がままに我慢できず「出ていけ」と叫んだ時に吐く寅のセリフです。
「おいちゃん、それをいっちゃあおしめえよ」
そのセリフを残して寅はまたとらやを出てい行きます
そういえば、「男はつらいよ」の主題歌を作ったのは山本直純さんでしたね