28日(土)。日本が1勝も出来なかったサッカー・ワールドカップで、ウルグアイ代表のルイス・スアレス選手がイタリアの選手にかみついたことを理由に、FIFAが同選手に9試合の出場停止、4か月のサッカー活動停止、10万スイスフランの罰金を科したことについて、ウルグアイサッカー協会は異議を申し立てる意向を明らかにした、というニュースがありました
サッカーは意図的に手を使ってはいけないというルール(ハンド!)はだれでも知っていますが、口を使ってもいけません(バイト?) 当たり前ですが・・・・それにしても、スアレス選手の場合はケアレスミスではなく、スアレスミスとでも言うのでしょうか
閑話休題
昨夕、紀尾井ホールで萩原麻未のピアノ・リサイタルを聴きました プログラムは①フォーレ「ノクターン第1番変ホ短調」、②同「ノクターン第4番変ホ長調」、③ドビュッシー「ベルガマスク組曲」、④喜びの島、⑤ラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」、⑥同「ラ・ヴァルス」、⑦ジェフスキ「ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース」の7曲です
自席は1階6列5番、左ブロック右通路側席です。小雨が降ったり止んだりの天候の中、会場はほぼ満席
萩原麻未が白を基調に、胸に銀のラメを散らした素敵なドレスで登場します この日のプログラムはフランス物を中心として、最後にアメリカの作曲家による作品で〆るという組み立てです。1曲目のフォーレ「ノクターン第1番変ホ短調」の演奏に入ります。ノクターンと言えばショパンを想起しますが、フォーレのそれは印象がだいぶ異なります。甘さを排した内省的な音楽です 第1番も第4番も同様です。萩原麻未はニュアンス豊かにフォーレを表現します
次のドビュッシー「ベルガマスク組曲」は「前奏曲」「メヌエット」「月の光」「パスピエ」から成りますが、第3曲の「月の光」は夢見るような旋律で有名です。萩原麻未は曲ごとにメリハリをつけて演奏します 間を置かず次の「喜びの島」の演奏に入ります。この曲はドビュッシーが、ルーヴル美術館収蔵のヴァトーの絵画「シテール島への巡礼」にインスピレーションを得て作曲したと言われています。相当技巧を要する作品で演奏は困難を極めます 自席から彼女の指使いが良く見えますが、右手と左手のそれぞれの動きが鮮やかです。躍動感溢れるフィナーレは、聴いているわれわれも精神が高揚します
休憩後の最初はラヴェル「高雅で感傷的なワルツ」です。萩原麻未は椅子に座るや否や演奏に突入します。激しい音楽表現に”感傷的”という雰囲気もすっ飛びそうです もっと驚いたのは、間を置かず演奏に入った「ラ・ヴァルス」です。この曲はオーケストラで演奏されたり、ピアノ・デュオで演奏されたりすることが多いのですが、この日は独奏です この演奏が凄かった 一人で演奏しているのに、まるでデュオで弾いているように聞こえます。これが彼女の実力です
さて、もっと凄かったのがプログラムの最後に置かれたジェフスキの「ウィンズボロ・コットン・ミル・ブルース」です。ジェフスキはアメリカ生まれのポーランド系の現代音楽作曲家。この曲はアメリカのピアニスト、ジェイコブスの委嘱により、1979年頃に作曲された全4曲の「ノース・アメリカン・バラード」の終曲に当たります。萩原麻未は今度ばかりは楽譜を見ながら演奏するようです
曲は最低音部の打鍵が細かく繰り返されたり、時に山下洋輔ばりの”肘打ち奏法”が使われたりして、徐々に高音部に移っていきます。いわば「ミニマル・ミュージック」です。静かに始まり、徐々に激しいリズムが炸裂します 私がこの曲を聴くのは初めてですが、すっかり魅了されてしまいました。萩原麻未にぴったりの曲です。彼女はどこでこの曲に出会ったのでしょうか
会場一杯鳴り止まない拍手に、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」を爽やかに演奏しました こんな凄いコンサートは久しぶりです。今年前半の「マイ・ベスト1」コンサートです。これからも萩原麻未のコンサートは知りうる限り聴いていきます