26日(木)。わが家に来てから169日目を迎え、お恵みを乞うモコタロです
この中に食糧を入れて下され 現金はダメ カードもね
閑話休題
昨夕、上野の東京文化会館小ホールで「ブラームスの室内楽」を聴きました これは東京・春・音楽祭の一環として開かれたコンサートです。プログラムはブラームス①4つの厳粛な歌、②ヴィオラ・ソナタ第1番ヘ短調、③ヴィオラ・ソナタ第2番変ホ長調、④11のコラール前奏曲から第4曲、第5曲、第8曲~第10曲です。ブラームス晩年の傑作を集めたコンサートと言っても良いかもしれません。演奏はヴィオラ=川本嘉子、ピアノ=リュドミラ・ベルリンスカヤです
川本嘉子は1999年から2002年まで東京都交響楽団の首席ヴィオラ奏者を務めました 一方、リュドミラ・ベルリンスカヤはボロディン弦楽四重奏団の創設メンバーであるヴァレンティン・ベルリンスキー(チェロ)を父に持つピアニストで、現在モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団のソリストを務めています
先日、東京藝大奏楽堂で開かれた「リヒテルに捧ぐⅠ」公演でのプーランク「ピアノと18の楽器のための舞踏協奏曲”オーバード”」での力演が記憶に新しいところです
自席はM19番、左ブロック右通路側席です。会場は9割方埋まっている感じでしょうか 川本嘉子は人気がありますね。1曲目の「4つの厳粛な歌」(ヴィオラ&ピアノ版)の原曲はバスとピアノのための歌曲で、ブラームス最後の誕生日1896年5月7日に完成しています
川本嘉子が黒の、ベルリンスカヤが白と銀のドレスで登場、二人とも真剣な表情で演奏に入ります 何と言ったら良いのか、全体的に死を目の当たりにした人間の慟哭のような曲想です。この曲の少し前に、密かに想いを寄せていたクララ・シューマンが脳出血で倒れ、この曲の完成後まもなく死去したという事実も、この曲に暗い影を落としているといって良いでしょう
2曲目の「ヴィオラ・ソナタ第1番ヘ短調」は、次の第2番とともにクラリネット・ソナタの編曲です 川本のヴィオラは書体に例えるなら太い毛書体といったところでしょうか
非常に力強く、とてもヴィオラ1本で演奏しているとは思えないほど迫力があります
一方のベルリンスカヤは”伴奏に徹する”姿勢とはまったく正反対の、主張すべきところははっきりと主張するタイプのピアニストで、聴いていて気持ちのよい化学反応を起こしています
休憩後の「ヴィオラ・ソナタ第2番変ホ長調」は、クラリネット・ソナタとして聴き馴染みがあります 第1番と比べて、流れるような旋律で晩年のブラームスの良さが沁み渡ってきます
この曲でもベルリンスカヤとの丁々発止のやり取りが頼もしく、十分楽しめました
最後の「11のコラール」の原曲はオルガン曲で、ブラームスの遺作です コラールですからバッハに戻ったような古典的な手法ですが、世の中を達観したような明るい曲想が救いです
結局、作曲家はみなバッハに帰るのでしょうか
演奏後、大きな拍手とブラボーに、川本が
「アンコールをする予定はなかったのですが、手がすべってしまって・・・もう一度1曲目に演奏した曲(の一部)を演奏させていただきます」
と言って、1曲目に演奏した「4つの厳粛な歌」の第3曲「おお死よ、いかに汝は厳しいことか」をベルリンスカヤとともに演奏し拍手喝さいを受けました 終演後、ロビーの一角に「本日のアンコール曲」が掲示されていましたが、その手際の良さを考えると、ひょっとして最初からアンコールで演奏するつもりだったのではありませんか、川本さん
この日のプログラムはブラームス晩年の作品を集めたもので、曲想から言えば「暗い」「渋い」というイメージなので、クラシック入門者はこの曲から入らない方がよいかもしれません やはり傑作ぞろいの交響曲や協奏曲の方が良いでしょう