21日(土)。わが家に来てから164日目を迎え、バランスボールに比べ小柄でアンバランスなモコタロです
だってしょうがないだろう これ以上大きくならないんだから
閑話休題
来日中のミシェル・オバマ米大統領夫人は19日、外務省飯倉公館で女性の教育について講演しましたが、その中で世界的に活躍している日本人女性を3人挙げました 国連難民高等弁務官だった緒方貞子さん、日本人女性初の宇宙飛行士になった向井千秋さん、そしてヴァイオリニストの五嶋みどりさんです
ミシェルさんは労働者階級が暮らす貧しい地域で生まれましたが、両親の励ましによって名門プリンストン大学を卒業、弁護士、市職員、病院幹部を歴任し、オバマ氏と結婚したアメリカを代表するインテリです アメリカの第一線のインテリ女性が日本人女性の代表として見ているのが上記の3人だということが分かります
そのうちの一人、五嶋みどりは1971年10月25日大阪府牧方市生まれのヴァイオリニストです 8歳の時にジュリアード音楽院で名教師ドロシー・ディレイ教授の下で研鑽を積み、11歳の時にズービン・メータ指揮ニューヨーク・フィルのバックでパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第1番」の第1楽章を弾いて米国デビューしました
五嶋みどりと言えば、『タングルウッド奇跡』を思い出します 1986年、タングルウッド音楽祭でレナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団と共演し、バーンスタインの「セレナード」第5楽章を演奏中にヴァイオリンのE線が2度も切れるアクシデントに見舞われました
当時彼女は3/4サイズのヴァイオリンを使用していましたが、このトラブルに際しコンマスのストラディヴァリウスを借りて演奏を続行しました
しかし、再びE線が切れてしまい、2度目は副コンマスのガダニー二を借りて演奏を続行し完遂しました
翌日のニューヨーク・タイムズは「14歳の少女、タングルウッドをヴァイオリン3挺で征服」の大見出しで掲載、この時の様子は「タングルウッドの軌跡」としてアメリカの教科書にも掲載されました
『タングルウッドの奇跡』はテレビでも放映され私も観ましたが、演奏後のバーンスタインの「とても信じられない」という喜びと驚きに満ちた顔が印象に残っています
も一度、閑話休題
昨夕、上野の東京文化会館小ホールで「東京春祭チェンバー・オーケストラ~トップ奏者たちが贈る”浄夜”」コンサートを聴きました プログラムは①ロッシーニ「弦楽のためのソナタ第1番」、②メンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第8番」、③シェーンベルク「浄められた夜」(室内オーケストラ版)です
出演はヴァイオリン=堀正文(元N響コンマス)、漆原啓子、影山誠治、影山裕子、神谷美千子、川田知子、小林美恵、島田真千子、瀬崎明日香、玉井菜摘、ヴィオラ=篠崎友美(新日本フィル首席)、柳瀬省太(読響首席)、大島亮、馬渕昌子、チェロ=藤森亮一(N響首席)、藤村俊介(N響)、山内俊輔、辻本玲、コントラバス=池松宏(都響首席)です
自席はM列19番、左ブロック右通路側席です。会場は6割方埋まっている感じでしょうか。すこし寂しいです この日のプログラムは弦楽のためのアンサンブル曲集です。最初のロッシーニ「弦楽のためのソナタ第1番ト長調」は何と作曲者が12歳の時に作った曲です
3つの楽章から成りますが、第1楽章はNHK-FMのクラシック音楽番組(番組名は忘れた)のテーマ・ミュージックです
ステージにメンバーが登場します。全員で14人いますが、よく見るとヴィオラが見当たりません おかしいと思ってプログラムを見ると「ヴィオラを欠いた編成」という解説がありました。左から第1ヴァイオリン(5)、チェロ(3)、コントラバス(1)、第2ヴァイオリン(5)という対向配置をとります。コンマスは堀正文で、隣に漆原啓子がスタンバイします。向かい側には影山誠治と川田知子が並びます。チェロは藤森亮一と藤村俊介が並びます
指揮者なしでの演奏のため、コンマスの堀の合図で演奏を開始します。第1楽章「モデラート」の軽快な演奏を聴いて、さすがはオケの首席クラスや音大で教鞭をとっているプロの集まりだ、と感心します 何しろ音がきれいでピッタリ揃っています。ヴァイオリン・セクションの洗練された演奏が素晴らしいのはもちろんのこと、コントラバスは1本だけなのにものすごい存在感を誇っています
2曲目のメンデルスゾーン「弦楽のための交響曲第8番ニ長調」はヴィオラが入ってきます 今度は総勢18人態勢で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、右後方にコントラバスという態勢をとります。第1ヴァイオリンは変わらず、第2ヴァイオリンは影山誠治と島田真千子が並び、ヴィオラは篠崎友美と柳瀬省太が並びます
この曲はメンデルスゾーンが12~14歳の頃に作曲した13曲の「弦楽のための交響曲」の中の8番目の曲です 4つの楽章から成りますが、この曲でも18人のアンサンブルは見事で、第2楽章「アダージョ」ではヴィオラの篠崎友美と柳瀬省太のソロが、なかなか聴かせてくれました
休憩後のシェーンベルク「浄められた夜」(室内オーケストラ版)では、髪の毛に特徴のあるチェロの辻本玲が加わりますこの曲はリヒャルト・デーメルの同名詩をもとに1899年12月、弦楽六重奏曲として作曲、その後、弦楽合奏用に編曲しました。デーメルの詩は次のようなものです
「月夜の林を散策する男女。女が他の男の子供を宿したことを告白する しばし緊張の時間が訪れるが、やがて男はその子を自分たちの子として受け容れることを誓う
夜によって愛が浄化されていく。そして二人は抱擁を交わす」
演奏は、コンマスの堀が必要に応じてヴァイオリンで指揮をとりながら、まるでワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」のような怪しげな響きで、月夜の下での男女の物語を語って行きます これは全員がソリストという弦楽奏者の渾身の演奏です
とても19人で演奏しているとは思えない迫力で音の波が迫ってきます
聴き終って思うのは、”一時的な寄せ集め集団”にも関わらず、弦楽のトップクラスの演奏はピッタリと合い、強くも美しく響き、深い感動をもたらす、ということです 一つのオーケストラの中でのピックアップ・メンバーによる弦楽合奏では為し得ないレベルの高い演奏が展開されるのです
それともう一つ。何だかんだ言っても、現役のN響のコンマスの求心力、あるいは統率力は大したものだな、ということです