人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

東京藝大「今日は一日、サティの日」を堪能する~エリック・サティ生誕150年を迎えて

2016年05月16日 07時22分24秒 | 日記

16日(月)。わが家に来てから596日目を迎え、ミニ・ウサちゃんの毛づくろいをしてあげているモコタロです

 

          

             毛づくろいはいいけど 君 顔以外はどこのにあるの?

 

  閑話休題  

 

9月13日(火)午後7時からサントリーホールで開かれる「ストラディヴァリウス コンサート2016」のチケットを サントリーホール・メンバーズ・クラブの先行予約で買いました このコンサートは「車椅子利用者の音楽鑑賞を支援するためのチャリティ・コンサート」という位置づけにあり、ストラディヴァリウス13挺により演奏されます

プログラムはテレマン、ポッパー、ドヴォルザーク、ショスタコーヴィチ、ピアソラ、ヘンデルなどの小品と、ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番」から「カヴァティーナ」、メンデルスゾーン「弦楽八重奏曲」です 個人的にはメンデルスゾーンの「弦楽八重奏曲」を8本のストラディヴァリウスで聴くことが最大の目的です 

出演は、ヴァイオリン=諏訪内晶子、アラベラ・美歩・シュタインバッハー、セルゲイ・ハチャトゥリアン、スヴェトリン・ルセフ、有希・マヌエラ・ヤンケ、レイ・チェン、ライナー・シュミット、ヴェルニカ・エーベルレ、ヴィオラ=ヴェロニカ・ハーゲン、チェロ=石坂団十郎、パブロ・フェランデス、クレメンス・ハーゲン、ピアノ=江口玲です

 

          

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

昨日、上野の東京藝大で「サティとその時代~世紀末からベル・エポックへ」の第1回「今日は一日、サティの日」を堪能しました これは東京藝大が、エリック・サティ150回目の誕生日の2日前の5月15日に企画したレクチャー&コンサートシリーズの第1回目です

 

          

 

この日のスケジュールは下のプログラムのようになっています

 

          

 

まず最初に第1ホールに行き、12時半から上映される「映像で見るサティ」を観ました まず最初に無名時代のルネ・クレール監督、エリック・サティ音楽による映画「幕間」(モノクロ・20分)を観ました これはサティの最後の作品、バレエ「本日休演」の第1幕と第2幕の幕間に上映された映画です。画面の背景にはサティがこの映画のために作曲した「シネマ」という音楽が流れますが、この映画には終始一貫したストーリーがないので、音楽は今で言うBGM(サティでいう”家具の音楽”)です この映画の歴史的価値ということでは、サティ自身が出演していることです 冒頭、ビルの屋上で大砲を撃つシーンに出てきます。まさにメガネに顎鬚のあの顔です

2本目の「スポーツと気晴らし」(19分)は、当時人気のあったイラストレーター、シャルル・マルタンが描いた20枚の風俗画に、サティが短いスケッチ風の曲を作曲、それに序として「食欲をそそらないコラール」を加えた全21曲の曲集を絵と映像で表したものです 最初に挿絵が現れ、次に楽譜が写され、ピアノ音楽(高橋アキによる録音)が流れると同時に洒脱なナレーションが入ります 会場の片隅に、挿絵と楽譜のコピーが展示されていましたが、とくに楽譜は目で見て美しいと思いました

 

          

          

 

次に第6ホールに移動して、2時50分から始まるサティの朗読劇「メドゥーサの罠」を観ました 限定200人ということでしたが、それ以上の聴衆が押し寄せたのでしょう。臨時の椅子が出され、立見席までありました。主催者には想定外だったようです

 

           

          

 

「メデューサの罠」は1913年、サティが台本を書き 作曲した1幕9場の音楽劇です。ストーリーは、メデューズ男爵の娘フリゼットに結婚を申し込む青年アストルフォに男爵が罠を仕掛けるのと、男爵の召使いと男爵の主従がいつの間にか逆転してしまうようなおかしな関係が絡んで展開します

能役者の清水寛二氏がメデューズ男爵に扮し、彼を中心に青年、娘、召使いとのやり取りが展開するわけですが、セリフを覚えるのが大変と見えて、すべてが板に書かれたセリフを読む形で進みます こういうのを「板書きを読む」というのでしょうか 見慣れてくると、演技が「板についている」ように思えてきます 登場人物同士のやり取りの間に、サティの作曲したごく短い音楽が奏でられますが、演奏は矢崎彦太郎指揮東京藝大の学生有志です 面白いことは面白かったのですが、ストーリー展開が少し分かりずらかったと思います

次に奏楽堂に移動してサティの交響的ドラマ「ソクラテス」を観ました

 

          

 

最初に矢崎彦太郎指揮東京藝大学生有志オケによって、サティの「3つの小さなピエスモンテ」が演奏されます 次に藝大3年生の梨本卓幹のピアノ独奏でジョン・ケージの「チープ・イミテーション1」が演奏されました 意外にもケージはサティを高く評価していたそうで、サティの「ソクラテス」の第1部を2台ピアノのために編曲したとのことです 演奏を聴く限り、これが果たしてジョン・ケージによる作品なのかと疑問を抱くほど、単純で簡単そうな曲想でした

 

          

 

ピアニストが舞台袖に引き上げると同時に、反対側から女性6名のバレエ・メンバーが登場し、交響的ドラマ「ソクラテス」の幕開けを告げました この曲は、ギリシャの哲学者 プラトンの「対話篇」のフランス語訳をテキストに、声楽を伴う3部から成る交響的ドラマとして作曲されました 登場人物はソクラテスと、アルキビアデス、パイドロス、パイドンの3人の弟子たちで、すべて男性です。しかし、そこは皮肉屋サティです あえて女声4人で固めます

第1部「ソクラテスの肖像」は、アルキビアデスがソクラテスを称えるという内容です 歌うのは藝大卒で、パリ国立高等音楽院にも籍を置いたメゾソプラノの小林真理です。第2部「イリソスの岸辺にて」では、ソクラテスとパイドロスがイリソス河のほとりを散策しながら交わす会話を、工藤あかね(ソクラテス)と薬師寺典子(パイドロス)が歌います 第3部「ソクラテスの死」はソクラテスが処刑される最後の一日をパイドンが語るというものですが、野々下由香里が長大な歌を歌います

野々下由香里は10年ほど前にバッハ・コレギウム・ジャパンで看板歌手として活躍していたソプラノです 本当に久しぶりに彼女の声を聴きましたが、透明で美しい声は少しも失われていませんでした 最近あまり見かけないと思ってプロフィールを見たら、東京藝大の古楽科教授を務めていらっしゃいました

音楽に合わせて、バックで舞踏を務めていたのは洗足学園音楽大学のバレエコースの学生の皆さんとのことです。振付を担当した市瀬陽子さんが藝大出身で、現在洗足学園で講師を務めている関係で招いたのでしょう

昨日は、正午から午後5時まで5時間、東京藝大で「サティ三昧」の楽しい午後を過ごしたことになります。すべて無料なのが有難かったです

 

          

コメント
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