2日(月)。わが家に来てから582日目を迎え、食欲は戻ったものの まだ いまいち元気が足りないモコタロです
閑話休題
昨日、上野の東京藝大奏楽堂で「ヴィル・サンダースと奏でる響き~ホルンアンサンブル&吹奏楽」公演を聴きました プログラムは①メンデルスゾーン「夏の夜の夢」から「夜想曲」、②ブルックナー「交響曲第4番”ロマンティック”」から第4楽章、③ヘス「イーストコーストの風景」、④グレグソン「ホルン協奏曲」、⑤ホルジンガー「バレエ・サクラ」です。④のホルン独奏は日高剛、指揮はカールスルーエ音楽大学教授ヴィル・サンダース、演奏は東京藝大ホルンアンサンブル、同ウィンドオーケストラです
全席自由ですが、早めに現地に着いて並んだ結果、1階14列13番、センターブロック左通路側席が押さえられました 会場は8割くらい埋まっている感じでしょうか
プログラム前半はホルンだけのアンサンブルです ステージ上には椅子が10脚並べられています。ホルン奏者10人が入場します。男性3人、女性7人という女性上位です。どこの音大でも同じなんでしょうね
1曲目はメンデルスゾーンの劇付随音楽「夏の夜の夢」から「夜想曲」です マティアス・プフラウムという人が編曲した版によって演奏されます。サンダースの指揮で演奏が始まります。19世紀のドイツでは、ホルンは森を象徴する楽器としてイメージされていたとのことですが、ブルックナーの交響曲を待つまでもなく、ホルンだけのアンサンブルによる「夜想曲」はまさに森の中をさ迷っているような感じがします
演奏後、サンダース氏が通訳と共に登場、日高氏のインタビューに応えました。東京藝大の印象は?という質問には
「大学に入学する段階で優秀な学生が選抜されていることが分かる 今回の公演に当たっても、あらかじめ個々人が準備して練習に臨んでいることが分かるし、演奏中は、こちらの注文に対して機敏に反応してくれる能力がある
」
と答えていました。このことは、東京藝大だけの話ではなく、また、プロのオケでも同じような傾向があるのではないかと思います
2曲目は、そのブルックナーの「交響曲第4番変ホ長調”ロマンティック”」の第4楽章です そもそもこのコンサートのチケットを買ったのはこの曲をホルンだけによる演奏で聴きたかったからです
この曲もプフラウムの編曲による版によって演奏されます。ホルンの編成が13人(男6、女7)に拡大します。聴いている限り、ホルンだけでも十分に耐え得る魅力を持った曲だと感じます
逆に言えば、この”ロマンティック”交響曲はホルンがないと魅力が半減するということです
そういうことを再認識させてくれる演奏でした
前半が終わったところでアンコールがあり、ハイジという人の「HELDENKLOBBER(ヘルデンクロッバー)」という曲を演奏しました サンダース氏の解説によると、この曲は「ハーピストとの闘い」的な曲で、ホルンの演奏をハープが邪魔するような内容の曲とのことで、この演奏会ではハープはないので、ビブラフォンが代用します
あれれ、と思ったのは、聴いているとワーグナーの「神々の黄昏」は出てくるわ、マーラーのシンフォニーは出てくるわ、リヒャルト・シュトラウスの「英雄交響曲」は出てくるわ、で 要するに古今の名曲をパクリまくった曲でしたが、これが凄く楽しい曲でした
プログラム後半は吹奏楽のオンパレードですが、知らない曲ばかりです ステージ上は管楽器と打楽器が合わせて50人位でしょうか。コンマスはオーボエの女性です
1曲目は現代イギリスの作曲家ナイジェル・ヘス(1953~)の「イーストコーストの風景」です この曲はヘスがかつて訪れたことのあるアメリカのニューヨーク近辺の印象をもとに作曲した作品です。3つの曲から成り、第1曲目は「シェルター島」、第2曲目は「キャッツキル山地」、第3曲目は「ニューヨーク」というタイトルが付いています
ステージ後方には打楽器群がスタンバイします。3曲とも管打楽器を駆使したゴージャスな響きの音楽で、第3曲の「ニューヨーク」などは、グレンミラーか と思うようなサウンドでした
弦楽器がなくてこれほどの色彩感が出せるのに驚きます
次は当初、ホルジンガーの「バレエ・サクラ」が演奏される予定でしたが、プログラムに挟み込まれたお知らせに、最後に演奏予定のグレグソン「ホルン協奏曲」と順番を入れ替えると書かれていました。この理由は後で分かります
ホルン独奏の日高剛がステージに登場します。彼は宮崎市出身、長崎大学経済学部を卒業後、東京藝大でホルンを学び、オランダ・マーストリヒト音楽院に留学しました。この時にサンダースを知ることになったそうです 帰国後、広島交響楽団、日本フィル、読売日響を経て、2005年から2013年までNHK交響楽団で演奏しました。現在は東京藝大音楽学部准教授を務めています
グレグソンは1945年イギリス生まれで、この「ホルン協奏曲」は1971年に作曲されました 3つの楽章から成りますが、第1楽章を聴いていたら、まるでバルトークの音楽のような曲想でビックリしました
それにしても、かなり高度な演奏技術を要する難曲のように感じましたが、さすが、日高剛はそんなことは物ともせず軽快に演奏しました
さて、最後のホルジンガー「バレエ・サクラ」の演奏に先立って、サンダース氏からメッセージがありました
「このたび、熊本で被災されて亡くなられた方々と現在避難生活を送られている方々、そして、最近亡くなった私の音楽の恩師の逝去を偲んで、次の曲を捧げたい」
そして、「バレエ・サクラ」の演奏に入りました この曲は現代アメリカの作曲家ホルジンガーが1990年に作曲した曲で、意味は「祭礼の舞い」というものです。解説によると「舞踏と祈り」の方が分かり易いとありました
曲は祭礼の開始を告げるかのように金管楽器のファンファーレで開始されます。そのあとはリズミカルなダンスの音楽が様々に変容して展開します。中間部では、トランペットのソロがどこか懐かしいようなメロディーを立って奏でます
これが文字通り”スタンド・プレイ”です
素晴らしい演奏でした
途中、ミサ曲の一節が歌われるのですが、これは男女に関わらず管楽器奏者が歌っています。さすがは藝大です。管楽器専攻とはいえ 歌もなかなかのものです
かなり盛り上がって、最後は鐘の音と歌声が聴こえて幕を閉じます
これを聴いて、サンダース氏がなぜ曲の演奏順を入れ替えたのかの理由が分かりました グレグソンの「ホルン協奏曲」は、最後に力強く終わるのに対し、ホルジンガーの「バレエ・サクラ」はどちらかと言うと宗教的な静かな感動とともに終わります。熊本の被災者と恩師の死去を偲んで演奏するのなら、最後の曲は力強く祝祭的な曲ではなく、祭礼の曲のような厳かな方が良いと判断したのだと思います
サンダース+藝大ウィンドオーケストラは、アンコールにヘスの「イーストコーストの風景」から第3曲「ニューヨーク」をアンコールに演奏し、拍手喝さいを受けました
学生の皆さん、素晴らしい、また楽しい演奏をありがとうございました とくに、打楽器で右に左に、一人何役もこなしていた女性奏者にエールを送ります
素晴らしいパフォーマンスでした。コンサートが一層楽しめました。ありがとう