24日(火)。わが家に来てから604日目を迎え、今だにリビングに入ろうかどうしようか悩んでいるモコタロです
閑話休題
昨日、夕食に「ゴボウと牛肉のしぐれ煮」と「生野菜サラダ」を作りました 私はオペラに行くので食べませんでしたが
も一度、閑話休題
昨夕、初台の新国立劇場でワーグナー「ローエングリン」を観ました キャストは、ハインリヒ国王=アンドレアス・バウアー、ローエングリン=クラウス・フロリアン・フォークト、エルザ・フォン・ブラバント=マヌエラ・ウール、フリードリヒ・フォン・テルラムント=ユルゲン・リン、オルトルート=ぺトラ・ラング、王の伝令=萩原潤ほか。演出はマティアス・フォン・シュテークマン、指揮は飯守泰次郎、管弦楽は東京フィル、合唱は新国立劇場合唱団です
ブラバント公女エルザは、テルラムント伯から弟殺害の罪で訴えられる 窮地に陥ったエルザの前に、夢に見た白鳥の騎士が現れる 騎士はデルラムントを倒し、エルザを救う。2人は結婚することになるが、騎士の出した条件は自分の名前と素性を尋ねないことだった デルラムントの妻オルトルートがエルザに、疑念の心を植え付けたことから、婚礼の夜、エルザは騎士に遂に禁じられた質問を発してしまう 騎士は聖杯王パルジファルの息子ローエングリンと名乗り、去って行くのだった
新国立劇場の芸術監督・飯守泰次郎がワーグナーを振るということで、プルミエ(初日)公演はほぼ満席です シュテークマンの演出で観る新国立オペラの「ローエングリン」は2012年6月1日以来2回目です。あれから4年が経ったのかと感慨深いものがあります 幸いにもタイトルロールのローエングリンを歌うのは前回と同じクラウス・フロリアン・フォークトです
客席の照明が落とされ、拍手の中、飯守泰次郎がオーケストラ・ピットに入り、東京フィルを相手に前奏曲の演奏に入ります ボードレールが「重力のくびきからの解放」と呼んだヴァイオリン群の静かな響きが会場を満たします 飯守+東京フィルの演奏によるこの前奏曲の”浮遊感”は、言葉では言い尽くせない魅力があります
第1幕ではトランペットの勇ましい響きに導かれてドイツ国王ハインリヒが登場しますが、ドイツ出身のバス、アンドレアス・バウアーの声を聴いて、この人は凄い、と思いました この印象は最後まで変わらなかったのですが、他の歌手と一番違うところは息が長いことです
次に注目すべきシーンは宙づりの白鳥(のオブジェ)に乗ってローエングリンが登場する場面です。「ああ、こうやって登場したんだったな」と4年前を思い出しました。その前にエルザが登場していたのですが、あまりピンときませんでした パリ・コレクションのような奇抜な衣装に気をとられていたせいかもしれません
ローエングリンを歌ったクラウス・フロリアン・フォークトは、英雄的な歌声という本来の意味での「ヘルデン・テノール」とはちょっと違うような気がします むしろ、優しく包容力のある甘いテノールと言ったほうが相応しいかもしれません 高い声を張り上げるだけが「ヘルデン・テノール」ではないということを、この人は教えてくれます
「ヘルデン・テノール」で思い出すのは、数年前に新聞か雑誌かで見かけた「素晴らしいヘンデル・テノール」という記述です 「これって、ヘンデルのメサイアとかを歌うテノールのことかいな?」と疑問に思ったのですが、ヘンデルの曲だけを歌うテノールなんて何か変デル、と思い、多分「ヘルデン・テノール」と間違えたんだろうと思いました
気を取り直して。テラルムントを歌ったドイツ出身のバリトン、ユルゲン・リンは、最初に聴いた時から「何か変だな」と思いました。歌の専門的なことは門外漢なのでよく分かりませんが、他の歌手と比べて、どこかずれているように感じました 終演後のカーテンコールでは大きな拍手を受けていましたが、私は「どうかな?」と思っていました
エルザを歌った南ドイツ出身のマヌエラ・ウールは、第1幕で観たのと、第2幕で観たのとまったく別人のような印象を受けました それは、恐らく第1幕で彼女がまとっていた奇抜な衣装のせいかも知れません。第2幕以降が本当の彼女のような気がします 美しいソプラノです
夫テラルムントをそそのかしてエルザを陥れた妻オルトルートを歌ったフランクフルト生まれのメッゾソプラノ、ぺトラ・ラングは、ヒロインを食ってしまうほどの迫力がありました
エルザとオルトルートの関係で言えば、第1幕での演出で際立つシーンがありました テラルムントがエルザを告発した時、エルザがオルトルートの傍に近寄り 疑いの目を向けると、オルトルートは顔を背けて無視する場面です あの演出は、エルザは第1幕ですでに 自分を陥れた陰の人物はオルトルートではないか、と薄々感づいていることを意図しています 二人とも無言で 演技だけのシーンですが、細心の演出として強く印象に残りました
さて、この「ローエングリン」の大きな特徴は「合唱」が際立つオペラだということです その点では「さまよえるオランダ人」に似ています。日本を代表する合唱団はどこか?と問われたならば、私は躊躇なく「新国立劇場合唱団」と答えるでしょう 男声合唱も女声合唱も、もちろん混声合唱も素晴らしいと思います
最後に、この公演の最大の貢献者を挙げるとすれば、飯守泰次郎指揮東京フィルの演奏です 「前奏曲」、「第3幕への前奏曲」はもちろんのこと、全曲を通じてオーケストラ自身が歌っていました
午後5時に始まった公演は40分の休憩を2回挟み、カーテンコールが終わったのは午後10時を過ぎていました ワーグナーはこれだから・・・・・・絶対に遅刻できません 下手をすると1時間、外で待たされます。無限旋律ですから
最後の、閑話休題
新国立劇場オペラ研修所のオペラ試演会「ジャンニ・スキッキ」のチケットを買いました これは新国立劇場オペラ研修所の第17期~第19期の研修生が出演する試演会です 7月2日(土)と3日(日)の2回開かれますが、2日は新国立オペラの「夕鶴」の日程が入っているので3日の公演にしました チケットは3席しか残っていませんでした 会場の新国立劇場「小劇場」は初めてです。「ジャンニ・スキッキ」は初めて観るオペラなので楽しみです