6日(月)。日本列島は梅雨入りしたんですってね そんなこととはツユ知らず・・・・・というわけで、わが家に来てから617日目を迎え、仮住まいの段ボール・ハウスから外の様子を見に顔を出したモコタロです
やあ 君たち 来てたのか 中に入らないか? 無理か・・・・・
閑話休題
今年もサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン恒例の「ベートーヴェン・サイクル」が始まりました これは一つの弦楽四重奏団がベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏する企画で、第1回(2011年)はパシフィカ・クァルテット、第2回はヘンシェル・クァルテット、第3回はボロメーオ・クァルテット、第4回はミロ・クァルテットが演奏し、第5回の今回は日本の弦楽四重奏団で初めて クァルテット・エクセルシオが全曲演奏に挑みます 5回にわたって全16曲+大フーガを演奏するわけですが、エクセルシオは第1番から順番に演奏するのでなく、それぞれの公演で、初期、中期、後期の曲を組み合わせて演奏する形をとります
昨日はその第1回目で、プログラムは①「第2番ト長調」、②「第11番ヘ短調”セリオーソ”」、③「第6番変ロ長調」、④「第12番変ホ長調」の4曲です
サントリーホールの入口では多くに人たちが入場を待っています あまりにも人が多いので掲示で確かめたら、同じ2時から大ホールでフィラデルフィア管弦楽団の来日公演があることが分かりました
「ブルーローズ」に入ってセンターブロック4列目の自席でコンサートのチラシの束と格闘していると、「トラさん、こんにちは」と声を掛けられました。新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんでした 「お元気そうで何よりです」と挨拶されたので「ご無沙汰しております」と挨拶し、時間の関係もあったので握手をして一旦お別れしました。篠原英和さんと言えば、新日本フィルの「室内楽シリーズ」で長年プレトークとワンコイン・パーティーのサロン・マスターを務められた”トークの天才”です 私は新日本フィルの会員なので、こちらから篠原さんの演奏姿は定期演奏会で見ていますが、篠原さんから客席の私を見つけ出すのは難しいと思います そういう意味でご無沙汰でした
さて、エクセルシオの4人が登場し配置に着きます。左から西野、吉田、大友、山田の並びです。女性陣は西野が淡いグリーン、吉田がイエロー、山田が淡いパープルのステージ衣装で、カラフルです
1曲目は「第2番ト長調」です。第1楽章冒頭は「こんにちは!ごきげんいかがですか?」と挨拶をしているような親しみのある旋律です このことからこの曲は「挨拶四重奏曲」と呼ばれています ベートーヴェンの後援者ロプコヴィッツ侯爵の依頼で1798~1800年に作曲されたと言われています 全曲演奏の最初にこの曲を持ってくるとは、エクセルシオのセンスの良さを感じます 演奏も優美です ベートーヴェンは深刻なのもいいですが、初期のこういう明るく優美な曲も凄くいいと思います
2曲目は「第11番ヘ短調”セリオーソ”」です。この曲はハンガリー大使館の高官で親友のズメスカルに献呈されました 「セリオーソ」というのは「厳粛、真面目」という意味ですが、第3楽章に「アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ」の表示があります
第1楽章はいかにも切羽詰まった厳粛な感じの曲想で入ります 第2楽章はチェロの独奏から入りますが、大友のチェロはいつ聴いても素晴らしいですね 第3楽章はセリオーソそのものの曲想ですが、この曲を聴いていつも疑問に思うのは第4楽章のフィナーレです それまでの曲想を否定するかのように急に明るく終結します。ベートーヴェンは複雑だな、と思います
ここまで聴いて気が付いたのですが、第1ヴァイオリンの西野ゆかは 楽章が終わるごとに左手首を反らせる仕草を見せていました。まだ完治していないのかな?と思いました
休憩時間にロビーに出ると、下の掲示がありました
私は、METの次期音楽監督は、てっきりファビオ・ルイージだとばかり思っていたので、これはサプライズ・ニュースでした カナダ出身のヤニック・ネゼ=セガンはなかなか侮れない存在ですね
「ブルーローズ」に戻ると、右ブロック後方の席に篠原氏がいらっしゃったので、声を掛けました
tora 「先ほどはどうも 演奏いかがでしたか?」
篠原氏「いまのセリオーソ良かったですね エクセルシオは好きなんですよ。何しろ常設の弦楽四重奏団としては(日本では)巌本真理弦楽四重奏団以来ですからね」
tora 「第1ヴァイオリンの西野ゆかさんは約1年間休養していましたね」
篠原氏「そうです。左手の故障で。まだ完治していないようです 本人は腕に見えないテープを貼ったりして、騙し騙し演奏していると言っていました」
tora 「まだ、治り切っていないんですか!?」
篠原氏「そうなんです。第1ヴァイオリンは大変ですよ。腕を酷使しますからね」
tora 「ところで、新日本フィルの室内楽シリーズは篠原さんのプレトークが無くなってから、お客の入りが減ったように思います 前回(4月11日)の室内楽シリーズの翌日のブログで”篠原プレトークを是非復活させて”と書いておきました。応援しています」
篠原氏「そう言っていただけると嬉しいです」
時間が来たので会話はこれで終わり、再度、握手をしてお別れしました 篠原さんの名調子が再び聞けることを祈っています
プログラム後半の最初は「第6番変ロ長調」、作品18の最後の曲です。この曲も第2番と同じように明るく軽妙な曲です
最後は「第12番変ホ長調」です。1824年夏から書きはじめて1825年に完成しました。この曲から後期の弦楽四重奏曲に入ります ロシアの貴族ガリツィン公爵から依頼され、作曲した作品です 第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」は、実質的に次の曲となる「第15番イ短調」の第3楽章「モルト・アダージョ」に似た”癒し”を感じる曲想です ベートーヴェンは緩徐楽章にこそ その魅力があると思います
ベートーヴェン・サイクル第1日目としては順調な滑り出しの素晴らしい演奏でした 西野ゆかさんの手が一日も早く完治することを祈りつつ、帰途に就きました
今回の「ベートーヴェン・サイクル」を聴くにあたって、イタリア弦楽四重奏団のCDで予習しています