人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

鈴木雅明・優人+東響でサン=サーンス「交響曲第3番ハ短調”オルガン付き”」他を聴く

2016年06月12日 08時19分49秒 | 日記

12日(日)。わが家に来てから623日目を迎え、新入りを迎えて自分の立場が危うくなるのを心配しているモコタロです

 

          

           誰だよ 変なヤツを連れてきたのは? 主役はぼくだからね!

 

 閑話休題  

 

昨日、東京オペラシティコンサートホールで東京交響楽団の東京オペラシティシリーズ第92回演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「歌劇”魔笛”序曲K.620」、②モーツアルト「交響曲第41番ハ長調K.551”ジュピター”」、③サン=サーンス「交響曲第3番ハ短調”オルガン付き”」です 指揮はバッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督・鈴木雅明、③のオルガン独奏は彼の子息・鈴木優人です

 

          

 

東響のメンバーが配置に着きます。コンマスは水谷晃です オケはいつもと異なりヴィオラとチェロが入れ替わり、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという態勢をとります。おやっ?と思ったのはチェロ・セクションが全員男性なのです 川合真由美も樋口泰世もいないのは極めて珍しい態勢です

この日、鈴木雅明はバッハ・コレギウム・ジャパンの東京での本拠地、オペラシティ・コンサートホールで東京交響楽団を振ることになります 世界的に認められたバッハの権威がモーツアルトとサン=サーンスに挑戦するということで期待が高まります

1曲目はモーツアルトが死の年に作曲したオペラ「魔笛」の序曲です 良く知られているように、この序曲は3つの和音のファンファーレから開始されます。この3という数字は、モーツアルトも所属していた「自由、平等、博愛」を掲げるフリーメイソンの教義を示していると言われています オペラに登場するのは夜の女王に仕える3人の侍女、試練を受けるタミーノ達を導くのは3人の童子といったように、3がこのオペラのキーナンバーになっています

普段、古楽器集団を相手にバッハを指揮する鈴木雅明は いったいどういう音楽作りをするのか? 普段は指揮棒を持たずに指揮する鈴木ですが、この日は割りばしくらいの短いタクトを持って登場、指揮台に上がりました

この序曲の魅力はアダージョとアレグロの対比ですが、私の予想ではアレグロはもっと速く演奏するのではないかと思っていましたが、常識的なテンポで進めました  ただ、メリハリを付けて演奏していたのでスケールの大きな演奏が展開しました

2曲目はモーツアルトの最後の交響曲である第41番ハ長調K.551です この曲は「ジュピター」という愛称で呼ばれていますが、これはローマの全能神ユピテル、ギリシャの最高神ゼウスに由来しています 名付けたのはドイツ人ヨハン・ペーター・ザロモン(ハイドンをロンドンに呼んだ興行主で指揮者、ヴァイオリニスト、作曲家)と言われています

第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」は速めのテンポで爽快に飛ばします 金管楽器がいつもと若干違う音色が混じっているな、と思ってよく見ると、トランペット2本が古楽器のようでした 明らかに鈴木雅明のこだわりが形に現れたものです 管楽器では、いつものようにオーボエ首席の荒木奏美、フルート首席の相澤政宏、ファゴット首席の福士マリ子が素晴らしい演奏を展開していました 第2楽章、第3楽章も比較的速めの爽快なテンポで進み、最後の第4楽章「モルト・アレグロ」を迎えます。名高い「ド・レ・ファ・ミ」音型がモティーフとなってフーガを構築していきます オケが良く鳴っています。白熱の演奏でした

ところで、プログラムに音楽評論家の奥田佳道氏が曲目解説を書いていますが、非常に興味深いことが書かれていました それはモーツアルトの最後の3つの交響曲(第39番、40番、41番)とハイドンの交響曲第82番~第84番との関係です

「1788年夏、モーツアルトは変ホ長調の交響曲(第39番K.543)を6月26日に、ト短調の交響曲(第40番K.550)を7月25日に、そしてハ長調の交響曲(第41番”ジュピター”K.551)を8月10日に書き上げている これらの創作の背景、目的、初演の日時は分かっていない・・・・あるいは、少し前に楽譜が刊行されたハイドンの交響曲第82番ハ長調「熊」、第83番ト短調「めんどり」、第84番変ホ長調(以上、いわゆるパリ交響曲の最初の3曲)から何らかの刺激を受けたか。ハイドンの調性にご注目あれ

この分析には驚きました つまりモーツアルトの最後の3曲の交響曲と、ハイドン作による連続した3曲が「変ホ長調」「ト短調」「ハ長調」で一致しているのです 私には両者の関連性は明らかであるように思えます。つまり、モーツアルトは誰かの依頼に応えて3大交響曲を書いたのではなく、尊敬する大先輩ハイドンに触発されて 自らの意志に基づいて書いたのではないか、ということです

プログラムの解説を書く人は音楽評論家を中心に何人もいますが、この解説を書いた奥田佳道氏と コンサート・プログラムの曲目解説で良く名前を見かける おやまだあつし氏は、いつも分かり易い解説を書いています しかも、それまで知らなかった知識を授けてくれます。かねてから私が主張しているように、コンサート・プログラムにおける「曲目解説に文学はいらない」のです 誰にも分かり易く、それまで知らなかった情報を与えてくれる、そういう解説が最も望ましいのです

 

          

 

休憩後はカミーユ・サン=サーンスの交響曲第3番ハ短調です 第1楽章と第2楽章の2楽章構成ですが、実質的にはそれぞれ第1部と第2部から成っています ロンドンのフィルハーモニー協会から委嘱され、1886年5月に完成しロンドンで初演されました

オケのメンバーが配置に着き、パイプオルガン席に鈴木優人がスタンバイします。鈴木雅明が登場し、割りばしタクトで第1楽章を開始します

この曲を聴いて いつも感動するのは第2楽章の第2部の冒頭部分です パイプオルガンが会場一杯に鳴り響き、ピアノが輝くような音楽を奏でます そしてオケが力強いメロディーを奏で、オケとパイプオルガンの相乗効果が相まって まるで勝利宣言をするかのように輝かしいフィナーレを迎えます

大きな拍手とブラボーが飛び交う中、鈴木雅明は2階を見上げ、パイプオルガン席の子息・優人に拍手を送ります そしてオーボエ、フルートを始め管楽器を立たせ、オケ全体を立たせます

弦楽器も、菅・打楽器も良く鳴っていました サン=サーンスの交響曲第3番の親子共演は大成功だったと言えるでしょう

 

          

 

コメント (12)
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