15日(水)。わが家に来てから626日目を迎え、出すものは出したので、あとは入れるだけのスタンバイ状態のモコタロです
早くオヤツちょうだいよ 出した分だけ補充しないと
閑話休題
昨日、神楽坂のギンレイホールで「ディーパンの闘い」を観ました これは、ジャック・オディアール監督による2015年フランス映画(115分)です
スリランカ内戦の元兵士ディーパンは、見知らぬ女と少女と共に”偽装家族”としてフランスに渡る ディーパンはパリ郊外の団地の管理人となって生計を立てるようになる。一方”妻”は高齢者のハウスキーパーの職を得、少女は学校に通うようになる
生活が軌道に乗ったと思ったのもつかの間、彼らは”薬”の売買にからむチンピラの抗争に巻き込まれてしまう
武力を捨てたはずのディーパンだったが、”家族”の命と生活を守るために立ち上がる
まったく赤の他人の3人が一つの家族として言葉も違う、文化も違う、食べ物さえも違う生活しなければならない現実はどんなものか これはフィクションではあるけれど、世界中に”難民問題”としてこれと似た現実がいくつもあるのだということに気づかされます
疑似家族とはいえ、もし家族の命が危険に晒されそうになった時、自分がディーパンの立場に立たされたらどうするだろうか、と考えさせられる映画です
なお、この映画は第68回カンヌ国際映画祭パルムドール〈最高賞〉を受賞しています
この映画では、導入部とエンディングにバロック音楽のような曲想の静かな音楽が流れますが、残念ながら誰のどういう曲かまったく分かりませんでした
も一度、閑話休題
昨夕、銀座のヤマハホールで「フォルクハルト・シュトイデ ヴァイオリン・リサイタル」を聴きました オール・ベートーヴェン・プログラムで、①ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調、②同第8番ト長調、③同第9番イ長調”クロイツェル”の3曲
ピアノ伴奏は三輪郁です。言うまでもなく、シュトイデはウィーン・フィルのコンサートマスターです
毎年4月に来日してサントリホールで演奏している「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」のコンマスとしての方がお馴染みかも知れません。一方、三輪郁は世界的なピアノ・コンクールで優勝・入賞している実力者で、ウィーンのアーティストとの共演が多いピアニストです
このリサイタルを聴くに当たり、ジノ・フランチェスカッティのヴァイオリン、ロベール・カサドゥシュのピアノによるCDで予習しておきました
自席は1階H列14番、センターブロック右通路側席です。会場は9割方入っているでしょうか 会場はヤマハホール、当然ステージ中央にはヤマハのピアノが
と思いきや、何とウィーン製のベーゼンドルファーが構えています
これはウィーン・フィルの楽員との共演が多いピアニスト三輪郁のピアノを持ち込んだのでしょうか? ヤマハホールでベーゼンドルファーを見るのは初めてです
背丈のあるシュトイデと小柄な三輪郁が登場します。シュトイデの えんじ色のネクタイと三輪のダークグリーンのドレスが素敵にマッチしています
1曲目は「ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調」です 第6番から第8番までの3曲は作品30として1803年に出版されましたが、ロシア皇帝アレキサンダー1世に献呈されました
第7番は4つの楽章から成りますが、すべての楽章がピアノから入ります。ハ短調というのは第5交響曲「運命」や第3ピアノ協奏曲と同じ調性ですが、第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」を聴くと、ベートーヴェンの気負い、あるいは思い入れのような意志を感じます
二人の演奏を聴いていて、三輪郁のピアノは流れがいいなあ
と思いました。三輪のピアノに乗せてシュトイデが心地よさそうにヴァイオリンを奏でます。それはすべての楽章に言えることです。第4楽章「アレグロ」のフィナーレの畳みかけは見事でした
拍手の中、遅刻してきた隣席の高齢女性が席に着きました。香水のどぎつい匂いが鼻につきます 来るべき場所を間違えたのではないか、と思いました。コンサート会場はパーティー会場ではありません
香水をつけるな
とは言いませんが、コンサートでは ほどほどにしてほしいと思います。香水の洪水はごめんです
2曲目は「第8番ト長調」です この曲は3つの楽章から成ります。ト長調という調性もありますが、全体的に明るい曲想です
シュトイデのヴァイオリンは良く鳴ります。使用楽器はオーストリア国立銀行から貸与されている1718年製のストラディヴァリウスです
どんなに大きな音でも美しく響き、どんなに小さな音でもクリアに聴こえます
休憩後は第9番イ長調「クロイツェル」です。シュトイデと三輪がステージに登場し、まさに演奏を始めようとしている時、2階席の方から女性の話声が聞こえてきました。シュトイデは演奏しようとしましたが止めました そして話声が終わるのを待って第1楽章に入りました。こういう天然記念物的な非常識人間が日本にまだ生存していることに驚きます
「二度と都内のコンサートホールに姿を見せるな
」と言いたいと思います、聴衆を代表して
さて、このソナタの愛称「クロイツェル」は、ベートーヴェンがこの曲を献呈したパリ音楽院教授ロドルフ・クロイツェルの名前ですが、何とクロイツェル氏はこの曲が気に入らなかったようで、生涯一度も弾かなかったそうです それでも名前だけは後世に残った皮肉をどう言えばよいでしょうか
このソナタも3つの楽章から成りますが、前の2曲と比べるとベートーヴェンの並々ならぬ意気込みが伝わってくる充実した音楽です 特に第1楽章はヴァイオリンとピアノのバトル
の様相で、両者のやり取りが聴きものです。この曲でもシュトイデのストラディヴァリウスの美しい響きが会場一杯広がります
満場のアンコールの拍手に応え、ドヴォルザークの「4つのロマンティックな小品」から第4曲を、次いでクライスラーの「愛の喜び」を演奏し、またまた満場の拍手を浴びました そして、シュトイデが日本語で「これでおしまいです(会場
)」と言って「ウィーン風小行進曲」を演奏、さらに大きな拍手を受けました
会場の明かりが点いて、これで終了かと誰もが思ったその時、三輪郁が小走りで舞台袖に引っ込み、新しい楽譜を持ってきました
シュトイデが、また日本語で「本当に
(これで最後)」と言って4曲目のアンコール「ラ・ジターナ」という曲を演奏しました
予想外のアンコールに次ぐアンコールに聴衆は拍手喝さい・狂喜乱舞です
アンコールだけで20分以上演奏したのではないかと思います
この日のコンサートは、アンコールを含めてウィーン・フィルのコンマス、シュトイデの魅力がたっぷり聴けた素晴らしいコンサートでした