24日(金)。わが家に来てから635日目を迎え、英国のEU離脱投票結果が気になりテレビのニュースを見つめるモコタロです
今日の午後には結果が分かるそうだよ
閑話休題
昨日午前11時から、上野の東京藝大奏楽堂で第6回モーニング・コンサートを聴きました プログラムは①フンメル「ファゴット協奏曲」、②バルトーク「ヴィオラ協奏曲」です
①のファゴット独奏は古谷挙一、②のヴィオラ独奏は有田朋央。指揮は東京シティ・フィル常任指揮者・高関健、管弦楽は藝大フィルハーモニアです
整理番号順の入場のため、小雨が降る中を順番がくるまで待ちました 私の番号は267番。それでも1階14列24番、センターブロック右通路側を押さえることができました
オケの態勢を見てオヤッと思いました いつもは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという配置なのですが、この日は左奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置をとっています
これは指揮者が高関健だから、と納得しました
1曲目はフンメル「ファゴット協奏曲」です フンメルは1778年生まれ、ハンガリー王国(現スロヴァキア)出身の作曲家・ピアニストです
彼は何と8歳の時にモーツアルトに2年間住み込みでピアノを習い、ハイドンからオルガンを学んでいます
この曲は、ハンガリー王国のエステルハージ家の宮廷楽長として活躍している27歳の時に作曲されました。3つの楽章から成ります
藝大4年在学中で千葉県出身の古谷挙一君が長いファゴットを抱えて登場します 高関健のタクトで第1楽章が開始されます。ヴァイオリンが奏でる流れるような旋律を聴いていると、「まるでモーツアルトを聴いているようだ
」と思えてきます。「モーツアルトの新たなファゴット協奏曲を発見
」とか言われて、この曲を聴かされたら、本当にモーツアルトが作曲した作品と勘違いしそうな曲想です
オーケストラによるかなり長い前奏に続いてファゴットが軽快に登場します
第2楽章から第3楽章へは続けて演奏されますが、こちらもモーツアルト的な曲想です
世に「ファゴット協奏曲」は少ないので、親しみやすいメロディーのフンメルのコンチェルトはもっと演奏されても良いと思います この曲を取り上げてくれた古谷君にお礼を言いたいと思います
オーケストラの規模が拡大して、2曲目のバルトーク「ヴィオラ協奏曲」の演奏に入ります 藝大4年在学中で大阪府出身の有田朋央君が登場します
バルトークは1881年、ハンガリー生まれの作曲家ですが、晩年の1940年にはナチスの脅威を感じ、アメリカ・ニューヨークに移住します その5年後、ヴィオラの名手ウィリアム・プリムローズの依頼で書かれたのが「ヴィオラ協奏曲」ですが、彼はその年の1945年9月に、未完成のまま死去してしまいました
未完のため補筆完成版が複数ありますが、この日演奏するのは、同じハンガリー出身の作曲家ティポール・シェルイによる補筆完成版です
3つの楽章から成りますが、第1楽章は冒頭、低弦のピツィカートに乗せて独奏ヴィオラがすすり泣くようなメロディーを奏でます 第2楽章の祈る様な音楽に続き、切れ目なく第4楽章に移りますが、ここでは一転、農民の踊りのようなリズミカルな音楽が展開します。フィナーレは独奏ヴィオラとオケとの掛け合いにより華々しく曲を閉じます
この曲を聴くのは初めてでしたが、面白い曲だと思いました 滅多に演奏される機会がない曲が聴けてラッキーでした
も一度、閑話休題
昨日午後7時から、サントリーホール「ブルーローズ」で「キュッヒル・クァルテットのシューベルティアーデⅡ」を聴きました プログラムは①シューベルト「弦楽四重奏曲第14番ニ短調”死と乙女”」、②同「ピアノ五重奏曲イ長調”ます”」です
出演は、第1ヴァイオリン=ライナー・キュッヒル、第2ヴァイオリン=ダニエル・フロシャウワー、ヴィオラ=ハインリヒ・コル、チェロ=ロベルト・ノーチ、②のピアノ=練木繁夫、コントラバス=池松宏です
自席はC7列12番。7列というと「ブルーローズ」ではかなり後方の席ですが、センターブロック通路側席です
1曲目の弦楽四重奏曲第14番ニ短調「死と乙女」は前作・第13番「ロザムンデ」四重奏曲と同じ1824年に作曲されました 「死と乙女」というニックネームは、自作の歌曲「死と乙女」(1817年)を第2楽章の主題の素材に使ったことに由来します
キュッヒル・クァルテットはウィーン・フィルのメンバーから成りますが、チェロのロベルト・ノーチ氏だけがハンガリー出身で、あとの3人はオーストリア出身です キュッヒル氏は45年間ウィーン・フィルのコンサートマスターを務めてきましたが、いよいよ今年8月に退団することになりました
4人のメンバーが登場し配置に着きます。オヤッと思ったのは、キュッヒル氏のほかに、チェロのノーチ氏も眼鏡を着用しています 前回はキュッヒル氏のみでした
第1楽章冒頭は全員の強奏による第1主題です ベートーヴェンの「ジャジャジャ ジャーン」が”運命の動機”とすれば、「死と乙女」冒頭の「ジャーン ジャジャジャジャ」はシューベルトの”運命の動機”とでも言うべきでしょうか
衝撃的な出だしです。シューベルトは梅毒に罹っていましたが、この曲は発病後に作曲したので、死への恐怖や不安が現れているのかも知れません
第2楽章は歌曲「死と乙女」に基づく主題と変奏ですが、4人の演奏は美しいアンサンブルの極致です
第3楽章のスケルツォを経て、第4楽章のプレストに入ります。タランテラ風の主題によるエネルギーに満ちた音楽です
休憩時間にロビーに出ると、大ホールで開演中のN響定期演奏会も休憩時間で、多くの人でごった返していました ちょうど、大ホールの方からブルーローズの方に、アテンダントのMさんが歩いてきたので、声を掛けました
tora :Mさん、こんにちは。お久しぶりです
Mさん:あら、こんにちは。先日はありがとうございました
tora :キュッヒル・クァルテット良かったですよ
Mさん:それは良かったです その後、ホールには頻繁にいらっしゃっているんですか?
tora :はい。昨日も来ましたし、明日も来ます
Mさん:明日はENJOY!ウィークエンドの公演ですか?
tora :はい、午前はキュッヒル・クァルテットのシューベルトの弦楽四重奏曲の抜粋演奏会です。夕方は大ホールの読響定期演奏会に来ます
Mさん:あら~、そうですか~ (ここで、開演のチャイムが
)
tora :それじゃ、失礼します
Mさん:はい、お楽しみください。また後ほど
約2週間ぶりでしたが、相変わらず大ホールに行ったりブルーローズに来たりと忙しそうなMさんでした
プログラム後半は「ピアノ五重奏曲イ長調”ます”」です ピアノ五重奏曲というと、通常はピアノ+弦楽四重奏のスタイルが一般的ですが、シューベルトは何故かピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成で作曲しました
「ます」というニックネームは、第4楽章の主題に自身の歌曲「ます」(1817年)の旋律を使っていることから付けられたものです
また、五重奏だからということではないでしょうが、この曲は5楽章から成ります。演奏者は、第2ヴァイオリンのフロシャウアー氏が抜け、新たにコントラバスの池松宏(都響首席)とピアノの練木繁夫が加わります
第1楽章が強奏で開始されます。最初から5人のエネルギーが押し寄せてくる感じがします チェロのノーチ氏が時に後ろを振り返って、コントラバスの池松氏に微笑みかけ、池松氏も微笑みを返します
同じ低弦楽器同士で分かり合えるところがあるのでしょう
見ていて実に楽しそうに演奏しています。この楽章に限らず、コントラバスの池松氏の演奏が光ります
ピアノの反響版を背にして演奏しているため、低音が会場に響き渡るということもあるでしょうが、今まで何度か生で聴いたこの曲の演奏の中で、今回の池松氏ほど存在感のあるコントラバスは初めてです
第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「スケルツォ」を経て、第4楽章「アンダンティーノ」に入ります この楽章が「ます」の主題と5つの変奏と終結部からなる音楽です。弦楽器のみで奏でられる主題に次いでピアノと弦楽器で変奏曲が奏でられますが、キュッヒル氏のヴァイオリンを中心に緻密なアンサンブルが見事です
練木繁夫のピアノも主張すべきところはしっかりと主張しています
この主題を聴くと、中学校時代に昼休みに流れた校内放送を思い出します 「ます」のメロディーに乗って「お昼の時間になりました。給食当番の人は~」というアナウンスが流れていました
「パブロフの犬」ではありませんが、この曲を聴くとお腹がグーッと鳴る時代がしばらく続きました
シューベルトも、まさか自分の曲が中学校の給食の時間のBGMとして流されるとは思ってもみなかったでしょう
第4楽章に続いて、民族舞曲風の軽快な音楽の第5楽章に移りますが、演奏者を見ていると楽しそうに演奏しています
こういう超一流の演奏で聴くと、通俗的な「ます」も やはり名曲中の名曲であると再認識させられます
終演後、会場の外に出ようとすると、ちょうどMさんが車椅子対応のため部屋に入ってくるところでした 出入口がごった返していたので、「今日はありがとうございました
」とだけ声を掛けました。Mさんは「ありがとうございました。それでは、また
」と答えてくれました
前述の通り、今日は午前と夕方の2回、サントリーホールに行きます