3日(金).昨日の朝日朝刊・科学面のコラム「ユリイカ」に「ドナルド・トランプ米大統領のフサフサの金髪に似た頭を持つ新種の蛾が見つかり,『ネオパルパ・ドナルドトランピ』と命名された」というニュースが紹介されていました 記事によると,ドナルドトランピの生息地 カリフォルニア州は都市化が進んでおり 生息が脅かされていることから,科学に無理解なトランプ大統領が生態系の保護に力を入れてくれるように願いを込めて命名したようです ドナルドトランピは前の羽根が4ミリの小さな蛾だそうですが,ホンモノのドナルド・トランプは我の強いことで知られる人物です 果たして彼は いつかドナルド・レーガンのような多くの国民から愛される大統領になれるのでしょうか
ということで,わが家に来てから今日で857日目を迎え,振り込め詐欺など特殊詐欺の昨年1年間の被害額は約406億3千万円だったというニュースを見て感想を述べるモコタロです
いつも思うんだけど,これほど注意を呼び掛けているのに どうして引っかかるんだろうか?
閑話休題
昨日,新宿ピカデリーに行って,METライブビューイング,ヴェルディ「ナブッコ」の座席指定を取ってきました 7日(火)午後10時からの部です.ジェイムズ・レヴァインの指揮により,プラシド.ドミンゴがナブッコを歌います これは聴き逃せません
ついでに3枚綴り券を購入しました.通常@3,600円のところ3枚で9,300円です
も一度,閑話休題
昨夕,初台の新国立劇場でプッチーニの歌劇「蝶々夫人」を観ました キャストは蝶々夫人=安藤赴美子,ピンカートン=リッカルド・マッシ,シャープレス=甲斐栄次郎,スズキ=山下牧子,ゴロー=松浦健,ボンゾ=島村武男,ヤマドリ=吉川健一,ケート=佐藤路子,神官=大森いちえい,管弦楽=東京交響楽団,合唱=新国立劇場合唱団,指揮=フィリップ・オーギャン,演出=栗山民也です
新国立オペラでの「蝶々夫人」は1998年の初回から数えて今回が9回目になります 栗山民也の演出では2005年,2007年,2009年,2011年,2014年に続いて今回が6回目になりますが,私はすべて観ています シンプルな舞台造りが印象的な演出です
ヒロインの蝶々夫人を歌った安藤赴美子は,国立音楽大学大学院修了,新国立劇場オペラ研修所第3期修了.文化庁派遣芸術家在外研修員,ローム・ミュージック・ファンデーション在外研究員として渡伊しています 彼女の和服姿の蝶々さんを見ると,やっぱり「蝶々夫人」だけは日本人が一番だな,と思います
日本人といえば,プッチーニはこのオペラの中で「さくらさくら」「お江戸日本橋」「君が代」「宮さん宮さん」などの日本の旋律を使っていますが,本来の意味を離れて純粋に音楽として短く使っているので,日本人のわれわれが聴くと若干不自然さを感じます.まあ,それもご愛敬でしょう
栗山氏の演出で いつ見てもヒヤヒヤするのは,第1幕冒頭で蝶々さんが登場する場面です.着物姿の蝶々さんが お付きの人たちとともに舞台左サイドの階段(二十数段もあり,カーブしている)を 歌を歌いながら降りてくるのですが,歌に集中するあまり足を踏み外さないか,と心配になってしまうのです 蝶々さんを歌う安藤赴美子はこの冒頭場面を無事にクリアするために相当"訓練"したんだろうな,と想像してしまいます
何人かの登場人物の中で唯一人,最初から最後まで出ずっぱりなのが蝶々夫人です アリアを歌うにも,演技するにも 実力の他に 相当の気力と体力が必要とされます.最初から飛ばし過ぎて後で息切れするわけにもいきません そういう意味では「ある晴れた日に」をはじめとするアリアの場面で声がベストになるよう調整することもあるでしょう そうしたことを注意しながら彼女の歌を聴いていて思ったのは,声も良いし演技も良いのだけれど,声量が今一つ足りないかな,ということです メインのアリアでは申し分ないのですが,それ以外の場面では客席に近い所で歌っている分には十分に声が伝わってくるのですが,舞台の奧の方で歌っているときには十分には伝わってこないのです もっとも,これは私だけの ない物ねだりかも知れませんが
ピンカートンを歌ったリッカルド・マッシはイタリア出身のテノールですが,甘くも力強い歌声で,説得力がありました 私が特に良いと思ったのはシャープレスを歌った甲斐栄次郎です 2003年から10年間,ウィーン国立歌劇場専属ソリストとして活躍した実績はダテではありません.歌はもちろんのこと,演技も堂々たるものです スズキを歌った山下牧子は適役だと思いました
さて,この日の公演で私が一番感動したのはフィリップ・オーギャンの指揮です オーギャンはフランス生まれで,現在ワシントン・ナショナル・オペラ及びケネディセンター・オぺラハウス管弦楽団音楽監督を務めています 全曲を通してオーケストラと歌手陣を完璧に支配し,タクト1本で悲劇のヒロイン蝶々さんの物語を語らせていました
さて,プログラム冊子に栗山民也氏が最初にこのオペラを演出した2005年の時のインタビューが「プロダクション・ノート」として掲載されています 「観客にアピールしたいことは何でしょう?」という質問に対し彼は次のように答えています
「歴史ですね.ちょっと驚いたのは,対訳を読んでいて,今とまったく変わらない世界の構造に強い印象を受けました この舞台では星条旗が舞台の奧ではためいていますが,僕らの頭の上には今も星条旗があって,これなしには何も成り立たない そういう現代を鏡に映し出している風景を感じていただければと思っています」
この文章を見て,トランプ米大統領のつぶやき一つで右往左往している現在の日本の状況を鑑みたとき,「12年前とまったく変わっていないではないか」と感じざるを得ませんでした 私は芸術の世界に政治を持ち込むことは好きではありませんが,演出というのはどうしてもその時代を反映する性質があるのではないかと思います その意味では,舞台奧の星条旗は何の不自然さも感じず受け入れることが出来ました