15日(水).昨日の朝日朝刊・オピニオン欄で評論誌「PLANETS」編集長・宇野常寛氏が「入国制限禁止はこっけい」と語っています トランプ米大統領が中東などからの移民を一時受け入れないとした大統領令を発したことに対して述べたものです 今まで「けしからん」という意見は多く見てきましたが,「こっけい」というのは初めてだったのでその真意を確かめたところ,次のように語っていました
「そもそも,日本でトランプ氏を批判的に論じることには,こっけいさがつきまといます 移民を受け入れていない国で『入国制限はけしからん』と言うのはギャグですよ.もちろん,トランプ氏への批判は必要だと僕は考えます.しかしその批判は,同時に自分たちの足元を見直すものでなければ意味がない」
自分自身を含めて 多くの日本人は,トランプ大統領の入国制限措置を「人道的立場から許せない」とか言っていますが,よその国のことだから何の責任もなく言えるのであって,「それでは,日本は移民をどれほど受け入れているんだ?」と言われた時,欧米諸国とは けた違いの少なさに返す言葉もないでしょう 私は必ずしも,移民なら誰でもウエルカムという考えではありませんが,移民の問題を考える時に宇野氏のような視点を持つことは大切なことだと思います
ということで,わが家に来てから今日で869日目を迎え,フリン米大統領補佐官(安全保障担当)が辞任したというニュースを見て感想を述べるモコタロです
就任前も 就任後も 一心フリンに頑張れば良かったのに・・・・・原因は恐ロシアだって?
閑話休題
昨夕,上野の東京文化会館小ホールで「ピアノ三重奏の夕べ」を聴きました これは「2017都民芸術フェスティバル」参加公演です.プログラムは①ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲ハ短調」,②メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調」,③ドヴォルザーク「ピアノ三重奏曲第4番ト短調”ドゥムキー”」です 演奏は,ピアノ=須関裕子,ヴァイオリン=辻彩奈,チェロ=堤剛です
須関裕子は桐朋女子高等学校音楽科2年在学中に,第2回チェルニー・ステファンスカ国際ピアノコンクールで第1位を獲得,その後桐朋学園大学を卒業,第3回国際室内楽アカデミー(ドイツ)でグランプリを受賞しています 辻彩奈は1997年岐阜県生まれ.2013年第82回日本音楽コンクールのヴァイオリン部門第1位,2016年モントリオール国際ヴァイオリンコンクールで優勝,現在,東京音楽大学特別特待奨学生として在学中です 堤剛は言うまでもなくヤーノ・シュタルケルに師事した日本を代表するチェリストでサントリーホール館長です
自席はH列13番,左ブロック左から2つ目です.会場はほぼ満席です
1曲目はベートーヴェンの「ピアノ三重奏曲ハ短調 作品1-3」です ベートーヴェンが「作品1」として選んだのは,ピアノ・ソナタでもなく,交響曲でもなく,弦楽四重奏曲でもなく,ピアノ三重奏曲の3曲でした しかもこの日演奏する「作品1-3」はベートーヴェン初の「ハ短調」です 後の「交響曲第5番ハ短調”運命”」と同じ調性です.いかにベートーヴェンが「作品1」に大きな想いを込めたかが分かります
須関裕子が白の,辻彩奈が赤の鮮やかな衣装で,堤剛とともに登場します この曲は4つの楽章から成りますが,3人の演奏を通して聴く「作品1-3」は,短調の魅力を宿しながらベートーヴェンの青春の息吹を感じさせる清々しい曲でした 辻彩奈のヴァイオリンが艶があって良く響くので,プログラムで確かめたら某NPO法人から貸与された1716年製のグァルネリ・デル・ジェスとのことでした
この曲は「クラシックの百科事典」NAXOSのシュトットガルト・ピアノ・トリオのCDで予習しておきました
2曲目はメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第2番ハ短調」です 何を隠そう,このコンサートのチケットを買ったのは この曲を生演奏で聴くことが主目的だったのです 私はメンデルスゾーンが大好きで,出来るだけ生演奏であらゆるジャンルの曲を聴き倒したいと思っています
メンデルスゾーンは,ピアノ三重奏曲は 習作を除いて2曲書いていますが,第1番が有名です.この第2番は1845年に完成したと言われています メンデルスゾーンは1847年に38歳の若さで亡くなっているので晩年の作品ということになります この曲も1曲目のベートーヴェンと同じ「ハ短調」です
この曲は4つの楽章から成ります.再度3人が登場,配置に着きます.第1楽章は”ほとばしる情熱”とでも表現すべき曲想で,ヴァイオリンの辻を中心に 何かに取り付かれたような激しい感情の表出がストレートに聴く側に伝わってきます 第2楽章は抒情的な曲想です.第3楽章はメンデルスゾーン特有の,まるで妖精が空を飛び回っているようなスケルツォです.そして第4楽章は情熱的な曲想が次々と展開し,フィナーレになだれ込みます
素晴らしい演奏でした この曲でもヴァイオリンの辻彩奈を中心に熱演が繰り広げられ,ここぞというところで須関裕子のピアノが主張し,堤のチェロが大人の対応をします 3人のアンサンブルは見事でした 「こんな素晴らしい演奏を聴いてしまったら,後半は聴かなくてもいいか」と思いましたが,MOTTAINAIと思い直して聴くことにしました
この曲はヴァイオリン=イツァーク・パールマン,チェロ=ヨ―・ヨー・マ,ピアノ=エマニュエル・アックスのCDで予習しておきました
プログラム後半の曲はドヴォルザーク「ピアノ三重奏曲第4番ホ短調”ドゥムキ―”」です この曲はかなり前に1度聴いただけで,おまけにCDも持っていないので,ほとんど初めて聴くに等しい状態でした
この曲は1890年11月から91年4月にかけて作曲されましたが,「ドゥムキ―」というのは,本来ウクライナの民族楽器バンドゥーラやゴブザを用いたバラード風の民謡形式ドゥムカの複数形を指す言葉とのことです この曲は変則的で 6つの楽章から成ります
3人が再度登場し第1楽章に入ります.ピアノをバックにチェロが苦悩に満ちたような慟哭を表出します かと思っていると,ヴァイオリンによって急に明るく賑やかな音楽が展開します 第2楽章も同様で暗さと明るさのコントラストが展開します この2つの楽章は,伝統的なソナタ形式に慣れている耳には突拍子もない音楽,あるいは落ち着きのない音楽に聴こえます 第3楽章以降はドヴォルザークらしさが戻ってきて安定するように感じるのですが,全体的にはどうも落ち着きませんでした
これは予習できなかったことが大きな要因だったと反省しています CDショップに行ったときは「ドゥムキ―」も買わねば,と思っているところです
ただ,この日はメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第2番が生演奏で,しかも素晴らしい演奏で聴けたので最高の気分です 室内楽公演の主催者には,もっとメンデルスゾーンの室内楽を取り上げて欲しいと熱望します