人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

チャイコフスキー「交響曲第6番”悲愴”」,リスト「ピアノ協奏曲第1番」他を聴く~三ツ橋敬子+東京フィル

2017年02月11日 08時09分49秒 | 日記

11日(土・祝).わが家に来てから今日で865日目を迎え,難民や中東・アフリカの7か国の国民の入国を一時禁止した米大統領令をめぐり,米連邦第9控訴裁(カリフォルニア州)が,効力の停止を維持する決定をした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

          

                               アメリカは「三権分立」の精神が生きていることが証明されたわけね 日本は?

 

  閑話休題  

 

昨日,新聞を読みながら喫茶店で聴いたCDはピアーズ・レーンのピアノ独奏によるスクリャービン「練習曲(全曲)」(1992年5月録音)です 私のお気に入りは一番最初に入っている「練習曲嬰ハ短調作品2-1」と「12の練習曲作品8」~第12番 嬰ニ短調です 最初にこの2曲を聴いた時は,前者では「詩」を,後者では「情熱」を感じましたが,「まるでショパンのようだ」と思ったことを思い出します

 

       

 

  も一度,閑話休題  

 

昨夕,池袋の東京芸術劇場コンサートホールで東京フィルのコンサートを聴きました これは「2017都民芸術フェスティバル」参加公演です.プログラムは①グリンカ:歌劇「イヴァン・スサーニン」序曲,②リスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」,③チャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」で,②のピアノ独奏は田中正也,指揮は三ツ橋敬子です

 

        

 

自席は2階L列6番,2階の左サイドですが,辛うじて通路側です.会場はほぼ満席です オケの面々が配置に着きます.コンマスは女性です.2階の自席からはよく見えないのですが,室内楽を中心に活躍している川田知子に似ています でも背が高いように思います.結局分かりません 第2ヴァイオリン首席には戸上眞里が控えています.頼りになります

髪の毛を後ろで束ねた小柄な三ツ橋敬子が登場し指揮台に上がります

三ツ橋敬子は江東区出身で,東京藝大大学院を修了しウィーン国立音楽大学に留学,2008年に第10回アントニオ・ぺドロッティ国際指揮者コンクールで優勝,2010年に第9回アルトゥーロ・トスカニーニ国際指揮者コンクールで準優勝(女性初)を果たしています

1曲目はグリンカの歌劇「イヴァン・スサーニン」(皇帝に捧げた命)序曲です この歌劇は,ポーランド軍に追われていたロシアのロマノフ王朝の初代皇帝を,農民イヴァン・スサーニンが命をかけて助ける,という物語です

グリンカといえば歌劇「ルスランとルドミュラ」序曲を まるで彼の代名詞のように思い起こしますが,プログラム冊子の解説によれば,1850年にサンクトペテルブルクに越してきた10歳のチャイコフスキーに鮮烈な印象を与えたのが,この「イヴァン・スサーニン」だったといいます

小さな三ツ橋は大きな振りで勇壮な音楽を展開します.グリンカの違う顔を見たように思います

2曲目はリストの「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」です この曲は19世紀の巨匠ピアニストで作曲家だったリストが1835年に作曲し,何度か改訂を繰り返し完成させたピアノ協奏曲です 初演は1855年,ベルリオーズの指揮,リストのピアノ独奏により挙行されています.何という豪華共演でしょうか

ソリストの田中正也が登場しピアノに対峙します.背が高く,2階から遠めに見ると「倍返し」で一世を風靡した堺雅人に似ています 彼は15歳で単身ロシアに渡り,モスクワ音楽院で学び,カントゥ国際ピアノコンチェルトコンクールで第1位・リスト賞を受賞しています

この曲は4つの楽章から成りますが,楽章間は間を置かず続けて演奏されます.まるでリストの得意とする「交響詩」のようです

第1楽章はオケ全体による堂々たる導入部に導かれてピアノが入ります 田中は落ち着いていて演奏に安定感があります 中盤で三ツ橋が急激にテンポアップしてピアニストを挑発すると,田中が乗ってくるところがスリリングで聴きごたえがありました 第2楽章は一転,ロマンティックな曲想です.第3楽章ではトライアングルが登場しますが,冒頭では弱音で打ち鳴らされ,私にとっては音が聞こえるかどうかの聴覚検査をされているような気分でした ちゃんと聴こえました 第4楽章はリストらしい華やかでダイナミックなフィナーレです

田中正也は終始落ち着いた演奏で,超絶技巧曲をいとも簡単に弾いているようでした 三ツ橋+東京フィルはソリストに良く合わせていました

三ツ橋敬子に限らず,背の低い指揮者はソリストが背が高いときには,なかなか指揮台から降りようとしません 降りてもソリストに近づこうとしません.背の高さは音楽作りに関係ないのは分かっていながらも,どうしてもコンプレックスが勝ってしまうのでしょう 気持ちはよく分かります

大きな田中は,アンコールにプロコフィエフ「10の小品」から第7番「前奏曲:ハープ」を演奏し,大きな拍手を受けました

 

       

 

休憩後はチャイコフスキー「交響曲第6番ロ短調”悲愴”」です この曲は1893年10月28日に作曲者自身の指揮で初演されましたが,そのわずか9日後に,チャイコフスキーは53歳の若さで亡き人になってしまいました

この曲は4つの楽章から成ります.第1楽章は冒頭,低弦に乗せてファゴット独奏によりモノローグが語られますが,どうも私のイメージからは軽いような(深さが足りない)印象を受けました このまま行くのか,と心配しましたが,三ツ橋の明快で粘り強い指揮で深みのある音楽が展開しました 一番三ツ橋らしいなと思ったのは第3楽章です.何者も寄せ付けない力で押し切っていくような怒涛の行進曲が演奏されます この快進撃は若い三ツ橋ならではでしょう 第3楽章が終わると2階席で拍手が起こったのも無理のないことかも知れません

第4楽章は一転,これほど暗い音楽があるだろうか,という絶望的な音楽です 三ツ橋は振幅の大きな音楽作りをして作曲者の慟哭を表出します

終演後のフライング気味な拍手が残念でした 一部の聴衆はもう少し我慢した方が良かったと思います.この曲はそういう曲ではないはずです.何をそんなに急ぐ必要があるのでしょう

アンコールは弦楽セクションによりバッハの「G線上のアリア」が静かに演奏されました

三ツ橋敬子の指揮は久しぶりに見ましたが,相変わらずエネルギッシュで好感が持てました

コメント (4)
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