13日(月).わが家に来てから今日で867日目を迎え,訪米中の安倍首相がトランプ米大統領の別荘で食事を共にし,ゴルフも一緒にプレーしたというニュースを見て感想を述べるモコタロです
経費はトランプ氏の個人負担らしいけど 後で大きなツケが回ってこないかな? 日本に
閑話休題
昨日,上野の東京藝大奏楽堂で,東京藝大チェンバーオーケストラ第28回定期演奏会を聴きました プログラムは①モーツアルト「交響曲第35番ニ長調K.385”ハフナー”」,②イルジー・パウエル「ファゴット協奏曲」,③モーツアルト「交響曲第39番変ホ長調K.543」です 指揮者なしで,②のファゴット独奏は岡崎耕治です
午後3時開演,2時半開場なので1時50分頃に行ったらすでに長蛇の列でした それでも1階14列12番,左ブロック右通路側を押さえました 会場は8割方入っているでしょうか
学生たちが入場します.総勢30数人ですが,圧倒的に女子学生が多い態勢です.プログラム冊子の名簿によると前半のコンミスは葉石真衣さんです 指揮者なしでの公演のため,コンミスの姿が良く見えるように,椅子が高く調整されています
1曲目はモーツアルトの「交響曲第35番K.385”ハフナー”」です モーツアルトはコロレド大司教と喧嘩別れして故郷ザルツブルクを去ってウィーンに居たのですが,1782年7月中旬,父レオポルトを通じてジークムント・ハフナーの爵位授与を祝って交響曲を作曲してほしいという依頼があったため,急いで作曲し,8月上旬には総譜を父親に送付しています.これが「ハフナー交響曲」の云われです
モーツアルトの交響曲で一番大切なのはテンポです モーツアルトは父親への手紙で「(この曲の)第1楽章のアレグロは すごく情熱的に,終楽章はできるだけ速く演奏されなくてはなりません」と書いていますが,指揮者なしの藝大チェンバーオケの演奏はそれを忠実に守っているような軽快な演奏でした
2曲目はイルジー・パウエル(1919-2007)のファゴット協奏曲です この人はチェコの作曲家で,主として室内楽やオペラの分野で活躍していたようです.チェコ・フィルの芸術監督や国民劇場の総監督などを歴任したものの,1989年のビロード革命の際に職を追われたとのことです この曲は1949年,30歳の時に作曲されました
ファゴット独奏の岡崎耕治が登場し,彼の合図で演奏に入ります.岡崎は1949年広島市生まれで,1972年に武蔵野音楽大学を卒業し東京交響楽団に入団,74年にドイツに渡って学び,78年にNHK交響楽団に入団し2009年まで首席を務めました.現在は武蔵野音大教授,東京藝大客員教授です
曲は3楽章から成りますが,美しいメロディラインあり,超絶技巧ありと,なかなか聴きごたえのある曲で,ファゴットと弦楽器,あるいはフルートなどの管楽器との丁々発止のやり取りも楽しめました ソリストの岡崎はもちろんのこと,バックを務めた藝大チェンバーオケの学生たちも良くフォローしていました
プログラム後半は,モーツアルトの交響曲第39番変ホ長調K.543です モーツアルトの いわゆる「三大交響曲」の最初の曲です.「第39番(変ホ長調)」,「第40番(ト短調)」,「第41番(ハ長調)」の3曲は1788年の夏にわずか6週間で作曲されましたが,長い間「どういう動機で作曲されたのかも分からず,モーツアルトは生前聴くことはできなかった」と言われてきました しかし,近年の研究によると,ヨーゼフ・ハイドン(1737-1806)の6つの「パリ交響曲」の中の「第82番”熊”(ハ長調)」,「第83番”めんどり”(ト短調)」,「第84番(変ホ長調)」の3曲セットの出版(1787年)に触発されたのではないかという有力な説が出てきています.順番は逆でも調性は同じです
私は三大交響曲の中ではこの第39番が一番好きです 第1楽章「アダージョーアレグロ」,第2楽章「アンダンテ・コン・モト」,第3楽章「メヌエット:アレグレット」,第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4つの楽章から成ります
コンミスが山田香子さんに代わります.このK.543はオーボエがないので,クラリネットが音頭をとってチューニングをします コンミスの合図で第1楽章に入ります.この曲でもテンポ感が抜群です.まさにモーツアルトのあるべきテンポです 管と弦とのアンサンブルも見事です 私の一番好きな第3楽章「メヌエット」も理想的なテンポで演奏してくれました 2本のクラリネットとフルートをはじめとする管楽器群は素晴らしい演奏でした
会場いっぱいの拍手に,K.543の第4楽章をもう一度演奏し,再度大きな拍手を受け,コンサートを締めくくりました
全体を通して爽やかで気持ちの良いコンサートでした あらためて指揮者なしで素晴らしい演奏をしてくれた学生たちに大きな拍手を送ります
ところで,話は180度変わりますが,プログラムの解説を大学院生Mさんが書いていますが,「交響曲第39番」の解説に校正ミスらしき箇所がありました 該当箇所を引用してみます
「高雅な第2楽章は付点リズムの動機に基づく.中間部では精妙な和声法により,万華鏡の如く鮮やかに 次々と色合いを変えながら旋律が繰り返される.躍動的なメヌエットに続くトリオにおいて ついに,2本のクラリネットの魅力が遺憾無く発揮される.分散和音にのって,レントラー(アルプスの舞踏)から取られた可憐な旋律がのびやかに奏される」(文章のまま)
「どこかおかしい?」とモーツアルト好きはすぐに気が付くはずです 実は,この文章は第2楽章だけでなく第3楽章の説明も含まれているのです この文章を正しくするには,「~旋律が繰り返される」の後に「第3楽章は」を追加して「躍動的な~」とつなげる必要があります
細かいことかもしれませんが,入場料1500円とは言え,料金を取って開催するコンサートのプログラム冊子です その上,日本を代表する音楽大学の大学院生が書いた文章です.自戒していただき,次回は間違いのない解説を書いてほしいと思います 演奏内容が素晴らしかっただけに,プログラムの解説にも気を付けていただければ完璧だと思います