20日(月).わが家に来てから今日で874日目を迎え,トランプ米大統領が 20日に就任から1か月経つことから,この1か月を振り返る日経の記事を見て感想を述べるモコタロです
トランプは英語で”切り札”という意味があるけど 政策によっては切れ札になってボロボロ
閑話休題
昨日,晴海の第一生命ホールでエルディーディ弦楽四重奏団のコンサートを聴きました プログラムは①ブラームス「弦楽四重奏曲第2番イ短調」,②ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調”大フーガ付”」です エルディーディ弦楽四重奏団は1989年に東京藝大出身者によって結成されました.第1ヴァイオリン=蒲生克郷,第2ヴァイオリン=花崎淳生,ヴィオラ=桐山建志,チェロ=花崎薫というメンバーです.「エルディーディ」と言うのは,ハイドンの弦楽四重奏曲作品76の献呈者エルディーディ伯爵の名前に由来しています
自席は1階6列11番,左ブロック右から2つ目です.会場は6割くらいの入りでしょうか
1曲目のブラームス「弦楽四重奏曲第2番イ短調作品51-2」は,第1番ハ短調作品51-1と共に1873年の夏,ミュンヘンに近い湖畔のトゥーツィンクという村で完成しましたが,ブラームスはこの時すでに40歳でした 交響曲と同じように,目の前に立ちはだかるベートーヴェンの弦楽四重奏曲の山脈を超えるべく,覚悟と準備が必要だったのです 第1番がハ短調の調性を反映した厳しくも情熱的な曲想なのに対し,第2番イ短調はどちらかと言えば柔和な感情が支配する曲想です
第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」,第2楽章「アンダンテ・モデラート」,第3楽章「クワジ・メヌエット,モデラート」,第4楽章「フィナーレ,アレグロ・ノン・アッサイ」の4つの楽章から成ります
エルディーディ弦楽四重奏団の4人の演奏を聴いていると,円熟の極みという言葉が浮かんできます 最小限の動きで最大限の音楽を奏でているように思います
この曲はウェラー弦楽四重奏団によるCDで予習しておきました
休憩後はベートーヴェン「弦楽四重奏曲第13番変ロ長調」です ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲は第12番作品127(4楽章),第15番作品132(5楽章),第13番作品130(6楽章),第14番作品131(7楽章),第16番作品135(4楽章)という順番に作曲されました(第〇番という番号は出版順).これを見て分かるように,第12番から楽章の数が増えていき,最後の16番で元の4楽章に戻っています このうち第12番,第15番,第13番の3曲はロシアのガリツィン侯爵の依頼によって作曲され,献呈されました
この曲は次の全6楽章から成ります.第1楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポーアレグロ」,第2楽章「プレスト」,第3楽章「ポコ・スケルツォーゾ:アンダンテ・コン・モト・マ・ノン・トロッポ」,第4楽章「アッラ・ダンツァ・テデスカ(ドイツ舞曲風に):アレグロ・アッサイ」,第5楽章「カヴァティーナ:アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォ」,第6楽章です
この曲を演奏する際に問題になるのは最後の第6楽章をどうするかです.当初作曲した「大フーガ」にするのか,後で差し替えのために作曲した「アレグロ」にするのかを選択しなければなりません エルディーディの4人は,ベートーヴェンが当初意図した「大フーガ」を配した版で演奏することを選択しました 個人的には,第5楽章「カヴァティーナ」の後にくる楽章としては,まったく新しい厳しい曲が始まったという印象の「大フーガ」よりも,後で作曲した「アレグロ」の方が自然につながるように思います
また,この曲は6楽章形式とはいえ,第2楽章「プレスト」と第4楽章「アラ・ダンツァ~」は2~3分程の短い曲で,いわば楽章間をつなぐ役割を果たしていると言えます もちろん短いとはいえ,魅力的な曲想であることには違いありません
いつ聴いても感動的なのは第5楽章「カヴァティーナ」です 第15番の第3楽章「モルト・アダージョ」の「病が癒えた者の神に対する聖なる感謝の歌.リディア旋法による」の崇高な音楽と共通するものがあります エルディーディの演奏は思い入れを排し,むしろあっさりと演奏しますが,とても穏やかで天国の音楽のようです
第6楽章「大フーガ」は前述の通り,第5楽章までとはまったく違う音楽です.4人はそれまでのあっさり系の演奏から一転,想いを込めて演奏しているように見えました これは 曲がそうさせるのでしょう
大きな拍手に 4人は「大フーガ」に代えて作曲された第13番第6楽章「アレグロ」を演奏しました 荘重な「大フーガ」も良いですが,私は軽快な「アレグロ」の方が好きです このアンコールを聴いてやっと心底満足できました
この曲は,イタリア弦楽四重奏団によるCDで予習しておきました