人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「音楽の友」9月号の座談会「日本のオーケストラを守れ」を読んで思うこと / フィリップ・ヴァン・レウ監督「シリアにて」を観る ~ 岩波ホール

2020年08月28日 07時17分46秒 | 日記

28日(金)。わが家に来てから今日で2158日目を迎え、11月の米大統領選に向け共和党副大統領候補に指名された保守派のペンス副大統領はオンラインによる党大会3日目の26日、指名受諾演説し、「米国には自由を守る大統領があと4年間必要だ」と述べ、トランプ大統領の再選支持を求めた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプが守る自由は 自身の利益を守る自由とフェイクニュースを垂れ流す自由だ

 

         

 

昨日、夕食に「サバの塩焼き」「マグロの刺身」「生野菜サラダ」「ジャガイモと玉ねぎの味噌汁」を作りました 肉中心の毎日なので魚を必ずローテに入れるようにしています

 

     

 

         

 

「音楽の友」9月号が特別企画として「座談会『日本のオーケストラを守れ』」を特集していたので購入しました 特集記事の冒頭には、次のようなリードが書かれています

「コロナ禍により、いま日本のオーケストラは瀕死の状態だ どのオーケストラも3月からほぼ3か月間活動を休止、その間の興行収入が途絶えたからだ。いっぽう、6月後半から7月にかけて、次々と公演を再開したものの、感染防止のためのガイドラインにより、いまだ完全な状態での再開とはなっていない オーケストラはいまどんな状態か、またどのようなことを考えているのだろうか 5つのオーケストラの事務局とプロ・オーケストラが加盟する日本オーケストラ連盟からそれぞれ代表して計6名が集まり、奥田佳道氏の司会のもと、緊急座談会を行った

7月4日に音楽の友ホールで開かれた座談会の出席者は次の通りです

福山修:大阪フィル  事務局次長兼事業部長

榊原徹:神奈川フィル 理事・音楽主幹

深澤功:九州交響楽団  音楽主幹

林 豊:新日本フィル  専務理事

井形健児:広島交響楽団  事務局長

桑原浩:日本オーケストラ連盟  専務理事・事務局長

(司会:音楽評論家 奥田佳道)

この座談会では、①日本のオーケストラの現状、②ネット配信の手応え、③演奏上のマスクの問題、④観客への対応、⑤ライブ配信の問題点、⑥公益法人の問題点、⑦オーケストラのアイデンティティ、⑧ホールとの協力、⑨助成のあり方ー等について話し合われています

①日本のオーケストラの現状については、各オケから3月から6月ごろまでの公演中止の実態が報告され、日本オーケストラ連盟の桑原専務理事が全体状況をまとめる形で、「7月18日現在で、公演等の中止は一部延期を含め、1100公演を超えてきている この損失は全体で30億から40億円の間に達している これまで経験したことのない、非常に大きなダメージを業界全体で受けている」と語っています

②ネット配信の手応えについては、司会の奥田氏から「実際のステージとライブ配信を両方とも重要なコンテンツとしてやっていくのか、あくまでライブ配信は、生演奏に近づくためのツールなのか?」という問題提起があり、出席者から「ライブの空気感が大事」「会場に来て初めて真価が分かるということを拭い去ることができない」「配信はメインにはならない。根本は演奏会を演奏会場でやるべき」「お客の空気は演奏に影響する」という意見が出され、あくまでライブの補完的なツールであることで一致していました

これに関連して⑤ライブ配信の問題点については、新日本フィルの林専務理事が「ライブ配信は過渡期のビジネスと考えている 8月か9月には平時に戻ると考えている。N響などの協力で新日本空調のクリーンルームで実験が行われているが、あれで初めて科学的なデータが出てくると思う。それが出れば行政が考え方を変えると思う。距離を離す必要はないと」と語っているのが印象的でした これについては、当ブログでもご紹介したとおり、飛沫感染リスク検証実験のデータは出ましたが、コンサートの入場制限の緩和は9月末まで1か月間延期されました

⑥公益法人の問題点については、奥田氏が「オーケストラは固定費だけでも月に4000万、5000万かかる 赤字、そして債務超過が実際に進んでいる。客の多くは、株式会社的な視点でオーケストラを見ている 『自助努力や企業努力が足りないのではないか』と」と口火を切ると、新日本フィルの林氏が「公益財団法の考え方としては、2年間で収支相償みたいな考え方なので、ものすごく大きな利益を上げていくというのは、当然音楽の質を悪くする 今回のコロナ禍などで公演収入がなくなってしまうと赤字になり、そうなってくると収支相償だから、収支差を毎年1000万円から2000万円出したとしても、それは20年とか かかる償却になる。いまの『2年間で300万円残さなければ強制解散』みたいなものがある限り、間違いなく解散になってしまう だから、資本注入的なものでカヴァーしていただくとかでないと、なかなかオーケストラが成り立たない」と述べています これを補足する形で、連盟の桑原氏が「いま、この業界の公益財団法人の皆さんと政府に申し上げているのは、やはり収支相償の問題、そして、公益財団法人は2年続けて純資産額が300万円未満となると解散というのは非常に大きな問題。まず今回は特別に伸ばしてほしいということを言い始めている。その後、根本的な公益法人法の改革が必要だ」と述べています

【注:tora】収支相償とは「公益法人が利益を内部に貯めずに、公益目的に充てるべき財源を最大限活用して、無償・格安でサービスを提供し、受益者を広げようとするもの。公益法人が受けている税制優遇の重要な基礎となっている」。

⑦オーケストラのアイデンティティについては、奥田氏が「音楽ファンやオーケストラ好きの方が最近、多く言われるのは、もうマーラーやブルックナーやベートーヴェン(第九)は聴けないのか。休憩なしの1時間でばかりなのかということだ」と問題提起すると、「12月の第九ができないとなると本当に困った社会現象だ」「大きなレパートリーは、これから少しずつ復活させる」という意見のほか、「大阪フィルは14から16型のフル編成で得られるサウンドに個性があると思っているので、こういうコアな人に向き合っていきたい」という見解が披露されました

⑨助成のあり方では、神奈川フィルの榊原理事が「神奈川フィルは、ふるさと納税を行っている」という話が新鮮でした また、連盟の桑原氏から「対立しがちな事務局と楽団員にしても、みんなでこんなに一つのことを悩んでアイディアを出し合ったことなんて今までなかったのではないか」と述べ、コロナ禍のもと、悪い面ばかりではなく良い面もあることを再確認して座談会を閉じました

この座談会は7月4日に実施されたので、月刊誌の宿命としてタイミングを逸する面もありますが、大枠においては今オーケストラが置かれている現状を反映していると思います

今、日本の音楽業界、コンサート業界が一番関心を持っているのは、座談会にも出てきた「飛沫感染リスク検証実験結果」(オケは通常の配置で差し支えない。聴衆はマスク着用し、ブラボーを叫ばなければ問題ない)を政府側がどのように受け止めるかということです コンサート会場における入場制限(現在は定員の50%)を本当に9月末までに撤廃できるのかどうかです これ以上延ばしたら、経営破綻するオーケストラが出てくる可能性が大きいと思います 座談会を読んで一番心の底に響いたのは、新日本フィル・林氏の「4月からはほとんど演奏会収入がゼロでした。演奏会再開までは全員給与カットして、なんとか存続のために続けているという状況です」という言葉です 思わず楽団員のあの人、事務局のあの人を思い浮かべました これは新日本フィルだけの話ではないでしょう 政府にはオーケストラの置かれた厳しい状況を認識した上で 科学的データを尊重し、一日でも早くコンサート会場への入場制限を緩和してほしいと思います

 

     

 

        

 

昨日、神保町の岩波ホールでフィリップ・ヴァン・レウ監督による2017年ベルギー・フランス・レバノン合作映画「シリアにて」(86分)を観ました

舞台はシリアの首都ダマスカス。いまだ内戦の終息は見えず、アサド政権と反体制派、そしてISとの対立が続いていたが、ロシアの軍事介入によりアサド政権が力を回復しつつあった。そんな中、戦地に赴いた夫の留守を預かるオーム(アヒム・アッバス)は、義父、3人の子どもたちとともにアパートの一室をシェルターとして立て籠もり、身を寄せていた隣人で、幼子を持つハリマ夫妻とともに、ひっそりと生活を続けていた ある日、ハリマの夫がレバノンへの脱出ルートを見つけ、今夜こそ逃げようとハリマに計画を打ち明けた。脱出する手続きをするために、夫はアパートを出て行くが、外に出た途端、スナイパーに撃たれ、駐車場の端で倒れてしまう 建物が爆撃で振動する恐怖に怯えながら生活する中、強盗が押し入るが、ハリマが犠牲になる形でオームの家族は助かる。強盗は去るが戦火は止まない

 

     

 

この映画の凄いところは、戦闘シーンが一つもなく、爆撃や銃撃戦の音が振動を伴って身体に伝わってくるだけで、観ている側がその場に居合わせているような緊張感に包まれるというところです 入口のドアはカギの他に2本の木材で閂(カンヌキ)が掛けられ、出入りの際はいちいちそれを外さなけらばなりません 戦時下におかれた市民の生活がいかに悲惨で不自由を強いられているかがよく分かるシーンです

ハリマは強盗に囚われ、他の仲間はどこにいるかと問い詰められても黙秘を貫き 自ら犠牲になります 一方のオームは家族を守るために声を出すこともハリマを助けに行くこともできません 二人はそれぞれ理不尽を抱えながら、生きるために目の前の問題に向き合わなければなりません こうしたことが日常的に起こるとしたらどうでしょうか そこには絶望しかないでしょう。しかし、これは映画ではあるけれど、限りなく真実に近い物語ではないだろうか この映画が制作されたのは2017年。3年後のシリアはどうなっているのだろうか?  市民生活は少しでも改善しているのだろうか? 遠く離れた平和な日本においても、彼らのことを忘れてはならないという強いメッセージを受け取った映画でした

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