人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ブロムシュテット ✕ NHK交響楽団でマーラー「交響曲第9番」を聴く ~ 「辞世の歌」か「前向きの音楽」か:95歳とは思えない矍鑠たる指揮に満場の拍手

2022年10月17日 07時06分24秒 | 日記

17日(月)。わが家に来てから今日で2836日目を迎え、ロシアのプーチン大統領が14日の記者会見で、ウクライナ侵攻のため9月に決めた部分的な動員について、「2週間以内に完了する」と明言したが、国民の不安を和らげる狙いとみられる一方、苦戦も明確になり、ロシアメディアからは「訓練をすると言われていたのに、なぜ動員発表から3週間も経たずに前線に送られ、死んでいるのか」という厳しい質問が相次いだ  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     いよいよプーチン政権の終わりの始まりだ これ以上若者達を無意味に死なせるな!

 

         

 

昨日、NHKホールでNHK交響楽団10月度定期演奏会Aプログラム(2日目)を聴きました プログラムはマーラー「交響曲第9番 ニ長調」です 指揮は今年95歳になるヘルベルト・ブロムシュテットです

一時期、足腰を痛めて入院というニュースもあり、来日できるか不安に思いましたが、無事に来日しリハーサルを経て土曜の1回目公演も順調に行われ、2日目を迎えました ブロムシュテット指揮N響によるマーラー「交響曲第9番」は12年ぶりとのことで、期待が高まります

会場は文字通り満席 先月のルイージといい今月のブロムシュテットといい、N響公演は良く入ります

 

     

 

マーラー「交響曲第9番 ニ長調」はグスタフ・マーラー(1860ー1911)が1909年から1910年にかけて作曲、1912年6月26日にブルーノ・ワルター指揮ウィーン・フィルにより初演されました この曲は「交響曲第10番」が未完に終わったことから完成された最後の交響曲となり、終楽章が「アダージョ」で静かに閉じることから、これまでは、健康への不安を抱えたマーラーが死の予感に怯えながら書いた「現世への告別の辞」と解釈されてきました しかし、最近の研究によると、脂の乗り切ったマーラーによる前向きの充実した音楽であるという解釈が有力視されています

この点、京都大学人文科学研究所教授(専門は19世紀から20世紀初頭の西洋音楽)の岡田暁生氏はプログラム・ノートで、「この曲は『辞世の歌』であり『死へ向けたひとつの吐息』である」旨を書かれています 果たして、聴衆としてのわれわれはどのように聴けば良いのか?と迷うところですが、要は純音楽として素直に聴くのが一番ではないかと解釈することにします

この曲は第1楽章「アンダンテ・コモド」、第2楽章「ゆるやかなレントラーのテンポで。やや無骨で粗野に」、第3楽章「ロンド:ブルレスケ:アレグロ・アッサイ。極めて大胆に」、第4楽章「アダージョ:極めてゆっくりと、抑制して」の4楽章からなります

ブロムシュテットがマロさんと腕を組んで登場すると、会場から大きな拍手が起こりました

 

     

 

オケは16型で左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置 コンマスはマロこと篠崎史紀、隣はゲスト・アシスタント・コンマスの郷古廉です 舞台上手にはハープが2台スタンバイします

ブロムシュテットは指揮台の上に設置された椅子に座って指揮をとりますが、指揮棒を使用しません いつものように両手で楽員から音を紡ぎ出すように指揮をします タクトなしで座っての指揮は、特に弦楽セクションの後方プルトの奏者にとっては指揮が見にくいと思われますが、そこは1981年以来、頻繁に客演しているブロムシュテットとN響の間柄なので何の問題もないでしょう タクトがなくてもアイ・コンタクトで十分です

ブロムシュテットの指揮で演奏に入ります 座って指揮をとる関係で少ない動きで最大の効果を狙います N響の楽員は「この人のためなら何としても良い演奏をしなければならない」という強い意識で曲に向かい合うことになります かつてN響を指揮したギュンター・ヴァントに対するN響がそうでした 80年代に聴いたモーツアルトの「ポストホルン・セレナード」の名演が今でも忘れられません

篠崎コンマス率いる分厚い弦楽セクションの緻密なアンサンブルが会場を満たします 第3楽章の喧騒を聴いていると、この楽章は第4楽章のアダージョを際立たせるために、わざと悪ふざけのような音楽を書いたのではないかとさえ思います その第4楽章がこの曲の白眉です 分厚い弦楽セクションの渾身の演奏が胸に迫ってきます 佐々木亮のヴィオラ・ソロ、今井仁志のホルン・ソロによる叙情的な演奏が印象に残ります 全楽章を通じて吉村結実のオーボエ、神田寛明のフルート、伊藤圭のクラリネットが冴えていました また終楽章では篠崎コンマスのヴァイオリン・ソロ、終盤の辻本玲のチェロ・ソロが素晴らしかった フィナーレは弦楽セクションのピアニッシモによる対話によりそれまでの音楽世界が浄化され、最後の音が空間に消えていきます しばしの”しじま”の後、ブロムシュテットの手が降ろされると 会場いっぱいの拍手が指揮者とN響の面々を包みました

もし、ブロムシュテットの指揮に「枯淡の境地」「枯れた味わい」を見い出そうとする人がいたら、残念ながら今回は外れです 95歳とはとても思えない矍鑠たる指揮ぶりで、80分の間、終始緊張感を絶やさず、両手は常に楽員に対し適格な指示を与えていました

全楽章を聴き終わった印象は、第1楽章と第4楽章に関しては確かに『辞世の歌』あるいは『死へ向けたひとつの吐息』を感じましたが、全体的にはむしろ健康的で健全なマーラーでした これはブロムシュテットの前向きの姿勢と切り離すことは出来ません

椅子に座ったままで 楽員を立たせ、客席に振り返って声援に応えるブロムシュテットは、さすがに若干疲れが見えましたが、篠崎コンマスに支えられ 立って声援に応える姿は、感動を共有できた満足感に満ち溢れていました

ブロムシュテット ✕ N響の演奏は、今月27日のBプロでニルセン「第3交響曲」とグリーグ「ピアノ協奏曲」を聴きます これも楽しみです

 

     

     

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