7日(水)。わが家に来てから今日で2886日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は5日、2014年に占領したウクライナ南部クリミア半島とロシアを結ぶクリミア大橋を視察したが、自ら自動車を運転し橋を走行するパフォーマンスを見せた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
ドイツのベンツに乗ったそうだね 西側の車でないと怖くて乗れないというわけか
昨日、夕食に「いり鶏」「いんげんの胡麻和え」「生野菜とツナのサラダ」「小大豆もやしの味噌汁」を作りました 「いり鶏」の材料は「筑前煮」とあまり変わりません
昨夜、新国立劇場「オペラパレス」でモーツアルト「ドン・ジョバンニ」のプルミエ(初日公演)を観ました キャストはドン・ジョバンニ=シモーネ・アルベルギー二、レポレッロ=レナート・ドルチー二、騎士長=河野鉄平、ドンナ・アンナ=ミルト・パパタナシュ、ドンナ・エルヴィーラ=セレーナ・マルフィ、ドン・オッターヴォ=レオナルド・コルテッラッツィ、マゼット=近藤圭、ツェルリーナ=石橋栄美。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=パオロ・オルミ、演出=グリシャ・アサガロフです
私が新国立オペラの「ドン・ジョバンニ」をドイツ出身のアサガロフの演出で観るのは2008年、2012年、2014年、2019年に次いで今回が5回目です 彼の演出では、ドン・ジョバンニを18世紀に実在した色男カサノヴァになぞらえ、舞台をヴェネツィアに移しています 今回の公演で私が最も期待しているのは、2016年のMETライブビューイング「ドン・ジョバンニ」でツェルリーナを歌ったセレーナ・マルフィと、2019年の新国立オペラ「椿姫」でタイトルロールのヴィオレッタを歌ったミルト・パパタナシュです
歌劇「ドン・ジョバンニ」はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756ー1791)がロレンツォ・ダ・ポンテの台本により1787年に作曲、同年プラハのエステート劇場で初演されました
無類の色男ドン・ジョバンニがある晩、騎士長の娘ドンナ・アンナのもとに忍び込むが、アンナに騒がれ、駆けつけた騎士長と決闘し刺殺してしまう 従者のレポレッロと逃げる途中で、捨てた女ドンナ・エルヴィーラに追い回されたり、結婚直前の村娘ツェルリーナを口説いたりと放蕩の限りを尽くす やがて悪行がばれて逃げ出した先が、決闘で殺した騎士長が眠る墓場だった。ドン・ジョバンニは不敵にも騎士長の石像を晩餐に招待する。石像は彼に改悛を迫るが、拒んだため地獄に落とされる
イタリア出身のパオロ・オルミの指揮で「序曲」の演奏が開始されます オペラ・セリア(正歌劇)でもなく、オペラ・ブッファ(喜歌劇)でもない、オペラ・ジョコーソ(諧謔劇)に相応しいデモーニッシュな演奏が展開します この曲に限らず、モーツアルトの序曲はそのオペラのエッセンスが凝縮されているので、序曲を聴けばそのオペラの本質が伝わってきます
私は、序曲から切れ目なく始まる第1幕の冒頭でレポレッロが歌うアリア「夜も昼も働かされて」、続いてドン・ジョバンニとドンナ・アンナとの激しい応酬、そして騎士長が登場してドン・ジョバンニと決闘するシーンまでのノンストップ音楽が、このオペラで一番好きです 今回もワクワクしながら聴きました
ドン・ジョバンニを歌ったシモーネ・アルベルギー二はボローニャ生まれのバス・バリトンですが、第1幕の「シャンパンの歌」をはじめ力強い歌唱と精力的な演技で存在感を示しました
レポレッロを歌ったレナート・ドルチー二はミラノ生まれのバリトンですが、最初は指揮者との間合いが若干ズレていましたが、早々に挽回し、第1幕の「カタログの歌」をはじめ、横柄な主人に振り回される従者を見事に歌い演じました
ドンナ・アンナを歌ったミルト・パパタナシュはギリシャ出身のソプラノですが、美しい高音が良く伸び、ビロードのような歌声で聴衆を魅了しました
ドンナ・エルヴィーラを歌ったセレーナ・マルフィはイタリア出身のメゾ・ソプラノですが、声が良く通り、”意志の強い女性”としてドンナ・エルヴィーラを歌い演じました
ドン・オッターヴォを歌ったレオナルド・コルテッラッツィはマントヴァ出身のテノールですが、第1幕の「彼女の安らぎこそ」、第2幕の「私の大切な人を」をはじめ、婚約者のドンナ・アンナを想う気持ちを見事に歌い上げました
騎士長を歌った河野鉄平は出番は少ないものの、ドン・ジョバンニを地獄に陥れる騎士長の存在感を示しました
マゼットを歌った近藤圭はツェルリーナとドン・ジョバンニに振り回される青年を精力的に歌い演じました
ツェルリーナを歌った石橋栄美は第1幕の「ぶって、ぶって、素敵なマゼット」、第2幕の「さあ、愛しい人」では優しい女性を歌い演じる一方、第1幕でドン・ジョバンニに誘惑され「手に手を取り合って」の二重唱のほんの数分で”落ちて”しまう、かなりいい加減な女性を歌い分けました
特筆すべきは、歌手に寄り添いつつ、局面に応じて自らもデモーニッシュな世界観を歌い上げたパオロ・オルミ指揮東京フィルの演奏です
終演は予定の21時55分を超過し22時5分を超え、カーテンコールが続きました
ところで、「ドン・ジョバンニ」を聴くたびに思うのは、ドン・オッターヴォをはじめ”真面目だけが取り柄”ともいえる男性陣の中で、好色漢のドン・ジョバンニだけが魅力的に描かれているということです ドン・オッターヴォはドンナ・アンナから「結婚は1年待ってね」と言われると「んだね。そうしよっか」と言いなりになるし、レポレッロは「おら、もうこんな生活嫌だ!もっとましな主人に仕えたい」と嘆くし、マゼットに至ってはドン・ジョバンニに殴られ、ツェルリーナにいいように振り回されるし、どうにも頼りないのです その点、ドン・ジョバンニは「誰が何と言おうと自分の生活信条は変えない(つまり、一生、女性を追いかけ回して 成果をカタログのリストに加える)」と宣言してはばからないのです ダ・ポンテの台本だけを読めば、ドン・ジョバンニはどうしようもない好色漢としか思えないものが、モーツアルトが音楽を付けただけで「一本筋の通った人物」に変貌してしまったかのようです