人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

湊かなえ、星野博美ほか著「おいしい文藝 こぽこぽ、珈琲」を読む ~ 1杯のコーヒーが人生の転機の目撃者となった向田邦子、月に200杯コーヒーを飲んでいた井上ひさし

2022年12月01日 07時07分41秒 | 日記

12月1日(木)。月日の流れは速いもので今日から12月です。今年も残すところあと31日となりました コロナ陽性による私の自宅待機は本日で終了します しかし、濃厚接触者の娘は明日までなので、結果的に5日間会社を休むことになります 最初のうちは仕事のことばかり気にしていましたが、すぐに気持ちを切り替えて(居直って)、毎日夕食を作り、今までやったことのない掃除やら身の回りの整理整頓を始めました コロナによる自宅待機も悪いことばかりではないな、と思いました その一方、外出して買い物ができないため、娘が掃除道具やら洗剤やら飲み物やら、いろいろな物を一気にネットで注文したので、ヤマト、佐川、郵便局、アマゾンから大小5箱もの荷物が届きました さらに、郵便受けには娘宛ての小荷物が2袋届いていました ひょっとして1日の配達新記録ではないかと思います

ということで、わが家に来てから今日で2880日目を迎え、主要7か国(G7)法相は29日、ウクライナ侵攻を続けるロシアを非難する「ベルリン宣言」を採択したが、その中で「不処罰はあり得ず、国際犯罪の刑事訴追が最優先だ。犯罪者の責任を立証し、被害者や生存者に正義を届けることが我々共通の目標だ」と明記し、ロシアの責任を追及することで一致した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     プーチン政権が犯罪行為を続けるほど ロシア国民が払うべきツケは益々大きくなる

 

         

 

昨日、娘が作ってくれた夕食は「豚肉乗せチャーハン」「シラスとアボカドの餃子の皮乗せ」「トマトスープ」でした 感謝しながら、どれも美味しくいただきました

 

     

 

         

 

湊かなえ、星野博美ほか著「おいしい文藝 こぽこぽ、珈琲」(河出文庫)を読み終わりました この本は、コーヒーを巡る著名人によるエッセイ集です

収録されているのは、阿川佐和子、片岡義男、寺田寅彦、清水幾太郎、長江朗、向田邦子、佐野洋子、よしもとばなな、村上春樹、團伊玖磨、外山慈比古、植草甚一、内田百閒、吉田健一、村松友視、山口瞳、畑正憲、常盤新平、泉麻人、井上ひさし、森本哲郎など31人のエッセイです

 

     

 

「エッセイ」と聞いて私がすぐに頭に浮かぶのは向田邦子です 「1杯のコーヒーから」というテーマで28歳の頃のコーヒーの思い出を書いています

当時、雄鶏社が出していた「映画ストーリー」という雑誌の編集に携わっていた彼女は、ある日 松竹本社の近くの喫茶店で、毎日新聞の広告担当の今戸氏から「アルバイトにテレビ(の台本)を書いてみないか」と誘われます それがきっかけとなって、彼女は生涯にわたりテレビの脚本を書き、エッセイを書き、小説を書くことになります その時に飲んだコーヒーは「いやに分厚く重たいプラスチックのコーヒーカップは、半透明の白地にオレンジ色の花が描いてありました。置くとき、ガチンと音がしました。コーヒーは、薄い、いまでいうアメリカンだったと思います」と書いています そして、「あの時、今戸氏に(コーヒーを)ご馳走にならなかったら、格別書くことが好きでなかった私は、今頃、子供の大学入試に頭を抱える教育ママになっていたように思います」と書いています。1杯のコーヒーが彼女の人生の転機の目撃者となっていた、ということでしょうか

「興味深いなあ」と思ったのは長江朗氏のエッセイです 長江氏は、1990年代~2000年代にNHKーBSで放映されていた「週刊ブックレビュー」(毎週土曜日:児玉清さんが司会)で、たびたびゲスト出演して”お薦め本”を紹介していました 長江氏はエッセイの冒頭で「コーヒーブレイクが必要だ」という話を書いています

「建築現場の職人を見ていると、どんなに忙しくても、午前10時の休憩、12時の食事、そしてふたたび午後3時の休憩と、きちんと休んでいるのがわかる たぶん、休憩することで緊張をほぐし、気分を入れ替えるのだろう。働きっぱなしでは、かえって効率が落ちるし、注意力も低下して、事故やケガが増えてしまう ライターだって、休憩は大事だ。ティータイム、お茶の時間、コーヒーブレイク、呼び方はいろいろあるけど、これもまた先人の知恵ということか

私が懐かしいな、と思ったのは「コーヒーブレイク」という言葉です。大学を出て就職した新聞関係の団体で最初に配属されたのは「国際担当」でした。仕事の打ち合わせをして2時間くらい経ったとき、上司が「コーヒーブレイクにしよう」と言いました。無知蒙昧の私は「コーヒーを壊すのか」と不思議に思いましたが、すぐに「お茶タイム」のことだと理解しました 「ブレイン・ストーミング」とともに懐かしい言葉です

次に長江氏が取り上げているのは「サイホンとドリップ、どっちが美味い?」です 大学生の時、彼は西荻窪の喫茶店でアルバイトをしていた経験を基に、次のように解説します

「コーヒーのいれ方にもいろいろある。大きく分けると、ドリップ、サイホン、パーコレーターの3つ サイホンを使ってコーヒーをいれる動作は、まるで儀式のようだ まず豆を量り、電動ミルで挽く。フラスコにお湯を注ぎ、アルコールランプに火をつける。ロト(サイホンの上の部分)に豆を挽いた粉を入れる。フラスコのお湯が沸騰したら、ロトをセットする。フラスコのお湯がロトに上っていく。お湯が上がりきったら、ヘラでロトの中をかき回す。タイマーできっちり時間をはかり、アルコールランプの火を消す。フラスコが冷えるとロトのコーヒーがフラスコに落ちる。ロトを外し、フラスコから客のカップに注いで、『お待たせしました。マンデリンでございます』と一言

これを読んで、手間暇かかる”儀式”のようなコーヒーのいれ方は、まるでLPレコードを聴くときの”儀式”みたいだな、と思いました まず、レコード・ジャケットの中袋からレコードを取り出してターンテーブルに乗せる。ターンテーブルのスイッチを入れてレコードを回転させながら、エタノールを浸した脱脂綿でレコードの埃を拭い去る。レコートに針を落とし、ボリュームを少しずつ上げる。左右のスピーカーを底辺とした二等辺三角形の頂点に座り音楽を聴く。CDではこんな面倒な”儀式”はやりません。サイホンを使用したコーヒーも、LPレコードを聴くときの儀式も、手間暇かけた分、美味しく(いい演奏に)感じるのかもしれません

 

     

 

読んでいて「喫茶店利用のプロか」と思ったのは井上ひさし氏のエッセイ「喫茶店学ーキサテノロジー」です 井上氏はNHKの「ひょっこりひょうたん島」の脚本をはじめ、テレビの仕事を忙しくしていた昭和35年から数年間、月に200杯以上のコーヒーを飲んでいたと豪語しています 「当時、コーヒーは1杯60円前後だったので月に1万2千円を喫茶店に払っていた。朝の8時半から夜の10時過ぎまで、新橋田村町の喫茶店をはしごしコーヒーを飲みながら仕事をしていた。別にコーヒーが好きなわけではなく、むしろ嫌いだった。しかし、アパートを借りるお金もなかった自分にとっては、喫茶店は部屋代もしくは場所代だった」旨書いています(当時NHKは内幸町にあり新橋田村町はすぐ目と鼻の先でした)。さらに、毎日朝から晩まで喫茶店で”生活している”ことから、お店の店主や従業員と顔なじみになり、軽食やおやつを差し入れしてくれる。すると、他の常連客が「自分にもサービスしてくれてもいいじゃないか」と不満を漏らすようになる。「あの人は特別です」と言うと常連客が店離れをして いずれ倒産するに至る    通い始めて13週目あたりで、常連客が来なくなったのに気がついて「ほかの店へ移ってくれませんか」と意地悪して体よく厄介払いする店主でないと、店が潰れることになる 「山元譲久氏と2人で『ひょっこりひょうたん島』を書いていたころは、5年間に2人で田村町界隈の喫茶店を少なくとも5軒は潰したのではないかと思う」と平然と のたまっています

『ひょっこりひょうたん島』は小学校高学年の頃 毎日楽しく見ていましたが、その裏には喫茶店の倒産という悲しい出来事があったことを初めて知りました

井上氏は喫茶店のBGMについても書いています

「店内に流れる音楽について言えば、有線放送を利用しているところが絶対によい なにしろこっちは1日中、そこに居るのであるから、クラシック喫茶などを根城にしたらとんでもないことになる あんな音楽を1日12時間以上も聞いていたら、きっと頭の脳味噌が干上がってしまうに違いない

「頭の脳味噌が干上がって」いるクラシック漬けの私からすれば、許し難い発言ですが、人それぞれです 許してあげます

以上、ほんの一部をご紹介しましたが、まだまだコーヒーにまつわる面白い話が満載です コーヒーブレイクに気軽に読んでみてはいかがでしょうか

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