人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

バーバー「アダージョ」~作家・小池真理子さんのクリスマスの思い出 / 佐藤正午著「書くインタビュー 5」を読む ~ 作家と担当編集者の間のメールによるインタビュー

2022年12月26日 07時00分05秒 | 日記

26日(月)。昨日の日経朝刊 文化欄に作家の小池真理子さん(1952~)がエッセイを寄せていました 小池さんは「恋」で直木賞を受賞したほか数々の文学賞を受賞しています 2020年1月30日に夫・藤田宣永氏を癌で亡くしています エッセイはこんな風に始まります

「空を見るのが好きで、しょっちゅう眺めている。空がよく見える土地に長く暮らしてきたせいだと思う

小池さんは現在、軽井沢にお住まいです 夫が元気だったころのクリスマスの思い出を語っています

「数日前に降った雪が庭を白く染めていた。よく晴れた日だったので、気温はぐんぐん下がっていき、氷点下の凍てつく空では月が静かなつめたい光を投げていた 折しも、つけっ放しにしていたクラシック専用の音楽チャンネルからは、アメリカの現代作曲家、バーバーの『弦楽のためのアダージョ』が流れてきた 夫が言った。『この曲ってさ、ケネディの葬式の時に流れたんだよ』。何でもよく知ってる男だった。私たちはケネディが暗殺された時のことを話題にし、クリスマスケーキを余さず食べ、コーヒーを2杯ずつ飲んだ

文中にある『弦楽のためのアダージョ』は、サミュエル・バーバー(1910ー1981)が1936年に作曲した「弦楽四重奏曲ロ短調作品11」の第2楽章を1937年に編曲、1938年11月5日にニューヨークでアルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団により初演されました

著名人が亡くなった時に流れるのは、この曲とJ.S.バッハ「管弦楽組曲第3番」の第2曲「アリア」とベートーヴェン「交響曲第3番”英雄”」の第2楽章「葬送行進曲:アダージョ・アッサイ」が定番です また、映画では「プラトーン」や「エレファントマン」、日本では東日本大震災の直後に公開された「ヒミズ」で使われました

ということで、わが家に来てから今日で2905日目を迎え、ロシア司法省は23日、今年のノーベル平和賞を受賞したロシアの人権団体「メモリアル」創設者の一人で、人権活動家のスベトラーナ・ガヌシュキナ氏や政治学者、反政権派の団体などを「外国の代理人」に指定した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     政府に抵抗する人物や組織にスパイのレッテルを貼るのは 独裁政権の大きな特徴だ

 

         

 

昨日は全国的にクリスマスでしたが、わが家では娘の誕生日でした 前日のイヴが鶏の丸焼きだったので、この日はピザを取ってサッポロCLASSICで乾杯しました

 

     

 

夕食後、一休みしてからモンシェールのチョコレートケーキでお祝いしました 賢いウルトラの父はお花も忘れませんでした

 

     

 

         

 

佐藤正午著「書くインタビュー 5」(小学館文庫)を読み終わりました 佐藤正午は1955年長崎県生まれ。1983年「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受賞。2015年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を、2017年「月の満ち欠け」で第157回直木賞を受賞 地元の長崎で執筆活動を続けており、著書多数

 

     

 

本書は「きらら」2019年3月号から2020年10月号、「WEBきらら」2020年11月号から2021年2月号に掲載された「ロングインタビュー  小説の作り方」をまとめた文庫オリジナル作品です タイトルの「書くインタビュー」というのは、佐藤正午氏と編集者の間で取り交わされたメールによるインタビューを収録したことから名付けられています 「4」まではフリーライターの東根ユミさんがインタビュアーを務めていましたが、産休の関係で「5」から編集者のオオキ氏に代わりました 東根さんは一癖も二癖もある佐藤正午という作家の本当の性格を知らなかったことから、最初のうちはどうインタビューしたらよいか相当迷い、佐藤氏から「おまえ、俺に喧嘩売ってんのか」と罵倒されてノイローゼ気味になったこともあります それにもめげず、東根さんは佐藤氏の作品を徹底的に読んで、勉強して喰いついていきました 私はそんな彼女を密かに応援していました

一方、東根さんの後を受け継いだオオキ氏は、佐藤氏と同じように競輪が趣味で、インタビューでも競輪の話が結構出てきます 競輪の専門用語満載のメールのやり取りを読んでいると、思わず「この2人、バカなんじゃないの」と思ってしまいます もちろん「専門バカ」に近いニュアンスですが 個人を特定しないで一般論として言うと、競馬・競輪・競艇のような他力本願のギャンブルにうつつを抜かしている人たちは、タバコをポイ捨てする人たち同様、私の生き方と合い入れません

さて、オオキ氏は佐藤氏の小説に登場する人物の呼び方について尋ねます

「『月の満ち欠け』で、たとえば正木瑠璃に対しては、『瑠璃さんは』と下の名前にさん付けで書いている 三角哲彦には『三角は』と苗字だけのときもあれば、たまに『三角哲彦は』とフルネームを使っる場面もある 苗字だったり、下の名前だったり、さん付けだったり、時にはフルネームだったりと、正午さんは地の文で登場人物それぞれにいろいろな呼び方を採用しています。コレどうしてなんですか?」

これに対し佐藤氏は次のように応えています

「『小説の地の文で、登場人物たちの名前をそれぞれ何と呼ぶ(書く)のか、どんなふうに決めているのでしょうか?』 そんなこと訊くか?  正月から。正午さんすこし太りましたか?  から正午さんはなんでみんなから正午さんて呼ばれてるんですか?  に行って、そこから小説の地の文に飛ぶか?  訊かれた方が戸惑うわ こんなのすぐには対応できないわ。こっちは前もって返信メールの書き出し用意してたわけだし、それで安心しきって、まだ正月気分抜けきらないし ほんと質問見てタマげたわ。嫌がらせかと思ったわ、ケントク買いでグランプリ当てた人間への、ガチ予想ではずした人間からの

オオキ氏は佐藤氏の担当編集者なので、彼の作品はすべて読んでいるし、思考回路から行動様式まで人並み以上に理解しているはずです しかし、質問に対してはとんでもない回答が返ってくるし、逆質問を浴びせらてタジタジになることもしばしばです お互いに「言葉」や「文章」についてはプロなので、それぞれに知識とプライドがありますが、この「書くインタビュー」はプライドとプライドのぶつかり合いのようなところがあります また、それを通して、佐藤正午という作家の人柄を垣間見ることができます 佐藤正午ファンにとっては必読書です

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