3日(月)。わが家に来てから今日で3002日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は3月31日、新しいロシアの外交政策の概念を承認する大統領令に署名したが、ロシアを独特な「国家文明」と宣言し、単なる国家ではなく、ユーラシアと太平洋地域の強国として特別な地位を確立すると主張、国外のロシア人やロシア語を保護する立場にあるとした というニュースを見て感想を述べるモコタロです
そういう考えを覇権主義と言う 主権国家を侵略し 強盗・殺人を犯して何が強国だ!
昨日、早稲田松竹でクロード・ミレール監督による1992年製作フランス映画「伴奏者」(110分・HDリマスター版)を観ました
物語の舞台はドイツ占領下のパリ。20歳のピアニスト、ソフィ(ロマーヌ・ボーランジェ)は世界的オペラ歌手イレーヌ(エレナ・サフォノヴァ)の伴奏者を務めることになる ソフィはイレーヌへの羨望と嫉妬を胸に秘めながら伴奏やイレーヌの身の回りの世話に励む
イレーヌの夫(リシャール・ボーランジェ=ロマーヌの実父)は商人で、ドイツ軍相手にも商売をして儲けているので、フランス人からは非難の目で見られている
一方、イレーヌはレジスタンスの青年と密かに逢瀬を重ねている
それを知った夫は拳銃自殺を図る
この映画は、作家ニーナ・ベルベローワの同名小説をクロード・ミレール監督が映画化した愛憎劇です
タイトルに惹かれて注意深く観ましたが、期待通りクラシック音楽がふんだんに流れました
ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番」第2楽章、イレーヌがコンサートで歌うモーツアルト「戴冠式ミサ曲 K.317」から「アニュス・デイ」、同じくモーツアルトの「ヴェスペレ K.339」から「ラウダーテ・ドミヌム」、自宅で歌うモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」バルバリーナの「カヴァティーナ」(この曲は最後にも流れる)などです このほかイレーヌが歌うリヒャルト・シュトラウス、ベルリオーズ、ドビュッシー、デュパルク等の歌曲(題名は不明)が次々と出てきてフォローしきれませんでした
その中で印象に残っている音楽・場面がいくつかあります
その一つは、前半で何度か流れるベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 作品18-1」の第2楽章「アダージョ・アフェットゥオーソ・エド・アパッショナート」です この楽章は、ベートーヴェンが「ロメオとジュリエットの墓場の場面を念頭に置いて書いた」と語ったと伝えられている通り、悲痛な音楽です
まるでイレーヌの現在の不安と近い将来の不幸を暗示しているかのように鳴り響きます
二つ目は、イレーヌがステージでモーツアルトを歌っている時に、画面が突然モノクロのドキュメンタリー映像に切り替わり、ヒトラーの顔、爆撃機による爆弾の投下、多くのユダヤ人の死体などが映し出される場面です 否が応でもフランス人のナチスドイツに対する嫌悪感や憎しみを感じさせられます
この時のモーツアルトの音楽の使い方は、悲劇的な場面に比較的明るい曲想の音楽を重ねることによって、一層 悲劇的な印象が強まる”アンビバレント”効果が生きています
三つ目は、モーツアルト「フィガロの結婚」第4幕冒頭で歌われるバルバリーナのカヴァティーナ「失くしてしまった」の扱い方です 最初に歌われるのはイレーヌが夫から「あれを歌ってくれ」と頼まれて、ソフィの伴奏で歌うシーンです
このカヴァティーナは、バルバリーナが手紙に挿してあったピンをランタンの光を頼りに探すシーンで歌われます
「失くしてしまった。困ったわ
いったいどこにあるのかしら。見つからないわ。伯爵様は何とおっしゃるだろう
」といった内容です。バルバリーナは伯爵から頼まれてピンを探したが見つからない
イレーヌは夫から頼まれて歌ったけれど見つからない
何が? 夫はイレーヌの自分への愛情が無くなってしまった(つまり夫への愛情を失くしてしまった)ことを薄々感づいているのではないか
それで敢えてイレーヌに「失くしてしまった」を歌わせて自覚を促したのではないか
このカヴァティーナは、映画の最後に再度流れます
この時、イレーヌの夫は自殺してこの世にいません
イレーヌは関係を修復する前に夫を「失くしてしまった」のです