4日(火)。昨日午後10時からNHKテレビで「映像の世紀 バタフライエフェクト 戦争の中の芸術家」を観ました
番組では、ドイツの指揮者フルトヴェングラー、ソ連の作曲家ショスタコーヴィチ、日本の作家・火野葦平に焦点を当て、戦時下における芸術家としての苦悩を描いています
フルトヴェングラー(1886-1954)はベルリン・フィルの指揮者でしたが、同楽団にはコンマスのゴールドベルクはじめ7人のユダヤ人がいました フルトヴェングラーは彼らの命と生活を守るとともにドイツ国民に音楽を楽しんでもらうために、ドイツ国内に残り演奏活動を続けました 映像ではワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲、ベートーヴェン「交響曲第9番」第4楽章、「交響曲第5番」第1楽章、シューベルト「未完成交響曲」第1楽章のリハーサルを指揮するフルトヴェングラーが映し出されます
ドイツの作曲家ワーグナーは反ユダヤ主義者でしたが、同じ反ユダヤ主義者のヒトラーはワーグナーに共鳴し、ドイツ民族の優位性を示すため、ワーグナーの音楽を利用しました そのための手段として目を付けられたのがフルトヴェングラーでありベルリン・フィルでした ヒトラーは徹底的なユダヤ人排斥運動を進めましたが、ベルリン・フィルだけは例外で、徴兵されることもなく何の危害も加えられませんでした ひと言で言えば、フルトヴェングラーはユダヤ人楽団員を守りながらドイツに留まり、演奏活動を続けたと言えます しかし、1942年、ヒトラーからの要請が断れ切れずに演奏した「第九」のコンサートが終わった後、会場にいたゲッペルスがフルトヴェングラーに握手を求め、彼が応じたことから、その映像が全世界に流れ、「フルトヴェングラーはナチ政権に協力している」と批判の嵐に晒されることになります そして、戦後「ナチへの協力者」として裁判にかけられますが、ユダヤ人を守ったこと等が考慮され無罪となります 何人かの芸術家は国外に亡命しましたが、彼は最後までドイツに残りました イタリアの指揮者トスカニーニ(1867-1957)は「ファシズム政権下では演奏しない」と宣言し、フルトヴェングラーを批判しました しかし、フルトヴェングラーの態度は間違っていたと言えるだろうか。誰もそんなことは言えないと思います
一方、ショスタコーヴィチ(1906-1975)は歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」が当初、圧倒的な支持を得ていたにも関わらず、このオペラを観たスターリンが激怒し、その後、共産党機関紙「プラウダ」で「荒唐無稽」と批判されます 退廃的でブルジョア的であり、人民に分かりやすい曲を書くべしとする社会主義リアリズムに反する、という批判でした その後、ショスタコーヴィチは「交響曲第5番」で名誉挽回を図ります しかし、最後の楽章にはビゼーのカルメンのアリアのメロディーに乗せて”気を付けろ”というメッセージが隠されている、つまり、「革命の勝利に酔う前に気を付けろ」というメッセージが音符として表されていると言われています つまり彼は意に沿わない作品を書いたと言っているのです また、彼は独ソ戦にあたり「交響曲第7番”レニングラード”」を作曲しソ連国民を鼓舞しますが、彼の回想によると、この曲はナチを含めたファシズムの恐怖を描いたものだとしています つまり、ナチだけでなくスターリンのファシズムも批判していると解釈できます
日本に目を転じると、芥川賞作家・火野葦平(1907-1960)は従軍して書いた「麦と兵隊」がベストセラーとなりますが、戦後は”戦争に協力した”という罪の意識に苦しみました
こうして、芸術家たちは国家と表現の自由との間で揺れ続けてきましたが、番組ではそれは現在でも続いている、としてロシアの指揮者ワレリー・ゲルギエフ(1953~)を取り上げています 彼はプーチン大統領と長年の友人関係にあり、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻以降、世界の楽団やオペラ劇場から”追放”されています
とても見応えのある番組でした 今度はナチの党員にもなったカラヤンを取り上げてほしいと思います
ということで、わが家に来てから今日で3003日目を迎え、ウクライナ侵攻を続けるロシアが、今月1日から1か月、国連安全保障理事会の議長国を務めることに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「明らかに不条理で破壊的なニュースだ。テロリスト国家とテロリストになりたい他の国が世界を破壊できないよう(国連などの)全般的な改革が明らかに必要だ」と不満を表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
国際刑事裁判所から逮捕状が出てるプーチンのロシアが議長なんて最高のギャグだ
昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました ビーフはいつもの通りバラ肉を使っています
昨日、早稲田松竹でクロード・ミレール監督による1981年製作フランス映画「勾留」(83分・HDリマスター版)を観ました
大晦日の夜、公証人の男(ミシェル・セロー)が幼女連続レイプ殺人事件の容疑者として捕らえられる 決定的な証拠は見つからないものの、刑事(リノ・ヴァンチュラ)は彼が犯人だと確信し尋問を続ける 容疑者の妻(ロミー・シュナイダー)から、夫は幼児偏愛者であることを聞き、ますます彼が犯人だと確信する しかし、事態は思わぬ方向に展開していく
【以下、ネタバレ注意】
この映画は、刑事と容疑者のやり取りを中心に描いていますが、容疑者の妻が、夫が血の付いた彼のコートをクリーニング屋に出し、その半券を自分が保管していることや、夫は幼児偏愛者であると刑事に話したことから、公証人は遂に自分が2人の少女を殺したと自白します しかし、その後、事故を起こした盗難車のトランクから第3の犠牲者が発見されたことから、彼の容疑は晴れ、冤罪だったことが判明し、彼の妻は拳銃自殺を図る・・・というストーリーです
正直言って、かなり強引なストーリー展開だと思います さんざん容疑者を追い詰めた挙句、自白させたはいいけれど、自白は刑事に強要されたもので「実は真犯人は別にいました」とくる 後で取って付けたような結末、「後出しじゃんけん」みたいで納得できません