19日(水)その2.今日午前、東京芸術劇場コンサートホールで「第41回芸劇ブランチコンサート”想い出をたどって”」を聴きました プログラムは①ヴィエニャフスキ「モスクワの思い出 作品6」、②チャイコフスキー「ピアノ三重奏曲イ短調 ”偉大な芸術家の思い出” 作品50」です 演奏はヴァイオリン=南紫音、チェロ=笹沼樹、ピアノ=清水和音です
南紫音は2005年のロン=ティボー国際コンクール第2位、2015年のハノーファー国際ヴァイオリン・コンクール第2位に入賞している実力者 一方、笹沼樹はカルテット・アマービレのメンバーとして2016年のARDミュンヘン国際コンクール弦楽四重奏部門第3位入賞のほか受賞歴多数、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのチェリストです
会場は1階席を中心にこの日も良く入りました
1曲目はヴィエニャフスキ「モスクワの思い出 作品6」です この曲はポーランド出身のヴァイオリニストで作曲家のヘンリク・ヴィエニャフスキ(1835-1880)が、1851年~53年にロシア各地を演奏旅行した際の印象を元に1853年に作曲した作品です
濃紺のエレガントなドレスに身を包まれた南紫音が清水とともに登場、さっそく演奏に入ります 南はロシア民謡「赤いサラファン」のメロディーを中心とする超絶技巧曲を、美しいヴィブラートで演奏、聴衆に深い感銘を与えました 演奏後のトークで、彼女がこの曲を弾くのは初めてであることを知って心底驚きました もう何十回も弾きこなしているような完璧な演奏で、表現力が素晴らしいと思いました
笹沼樹がトークに呼ばれ、2曲目に演奏するチャイコフスキーのピアノ三重奏曲の話になりました 笹沼は「この曲はとにかくピアニストが引き受けてくれないと演奏できません」と語っていましたが、清水は「ピアニストが嫌がる曲です チェロ・パートの楽譜は25ページ位ですが、ピアノ・パートは90ページもあります 演奏時間が長く50分近くかかります。演奏する側も大変ですが、聴く側も大変だと思います」と本音を語っていました
2曲目はチャイコフスキー「ピアノ三重奏曲 イ短調 ”偉大な芸術家の思い出" 作品50」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が、1881年3月にパリで客死した大恩人のニコライ・ルビンシテインの追悼のために1881年から翌82年にかけて作曲、1882年3月にモスクワ音楽院で初演されました 第1楽章「悲歌的楽章:モデラート・アッサイ」、第2楽章・第1部「主題と変奏:アンダンテ・コン・モート」、第2部「変奏終曲とコーダ:アレグロ・リソルート・エ・コン・フォーコ」から成ります
笹沼だけ電子楽譜を使用します
第1楽章が清水のピアノによって開始され、笹沼のチェロが哀愁に満ちた第1主題を奏でます そして南の美しいヴァイオリンが加わり、次第に熱を帯びてきます 第2楽章第1部は3つの楽器の優美なアンサンブルが素晴らしく、聴きごたえがあります 第2部に入ると3人のエネルギッシュな演奏が繰り広げられてクライマックスを築き上げ、終盤に第1楽章の第1主題が深い感動のなかで再現され、最後は静かに消えていきます
白熱の演奏でした 久しぶりに室内楽の素晴らしさを味わった気分です
ところで、プログラムに掲載の「コラム」に、チャイコフスキー・コンクール(1958年創設)が、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、国際音楽コンクール世界連盟から除名されたことが紹介されていました 世界中で、同コンクールへの出場を目指して日々レッスンに励んでいる若者も少なくないでしょう。彼らには何の罪もありません プーチン・ロシアの蛮行が世界の政治・経済だけでなく、文化面にも大きな影響を及ぼしていることをあらためて認識させられる出来事です 一日も早くロシア軍がウクライナから完全撤退し、疲弊したウクライナの国土が完全に復旧し、再び同コンクールが開催されることを願ってやみません