人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

マレク・ヤノフスキ ✕ エギルス・シリンス、アドリアン・エレート他 ✕ NHK交響楽団でワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を聴く ~ 東京春祭ワーグナー・シリーズ Vol.14

2023年04月10日 00時16分32秒 | 日記

10日(月)。わが家に来てから今日で3009日目を迎え、ソ連崩壊後に死刑の執行停止「モラトリアム」を続けてきたロシアで、ウクライナ侵攻を支持していた軍事ブロガー、フォミン氏の暗殺後、死刑復活論が再燃している  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     散々ウクライナで民間人を殺しておいて 何が死刑復活だ!  プーチンは恥を知れ!

 

         

 

昨日、東京文化会館大ホールで「東京春祭ワーグナー・シリーズ Vol.14 ~ ニュルンベルクのマイスタージンガー」(演奏会形式)を聴きました   出演はハンス・ザックス=エギリス・シリンス、ジクストゥス・ベックメッサー=アドリアン・エレート、エファ=ヨハン二・フォン・オオストラム、ファイト・ポークナー=アンドレアス・バウアー・カナバス、ヴァルター・フォン・シュトルツィング=デイヴィッド・バット・フィリップ、ダフィト=ダニエル・べーレ、マグダレーネ=カトリン・ヴンドザム、フリッツ・コートナー=ヨーゼフ・ワーグナー、クンツ・フォーゲルゲザング=木下紀章、コンラート・ナハティガル=小林啓倫、バルタザール・ツォルン=大槻孝志、ウルリヒ・アイスリンガー=下村将太、アウグスティン・モーザー=高梨英次郎、ヘルマン・オルテル=山田大智、ハンス・シュヴァルツ=金子慧一、ハンス・フォルツ=後藤春馬、夜警=アンドレアス・バウアー・カナバス。管弦楽=NHK交響楽団、合唱=東京オペラシンガーズ、指揮=マレク・ヤノフスキです

 

     

 

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が1862年から1867年にかけて作曲、1868年にミュンヘンで初演された全3幕15場から成る楽劇です 「楽劇」とは、大雑把に言えば、「歌劇」におけるレチタティーヴォとアリアの区分を無くし、登場人物や情景などを「〇〇のテーマ」というような「ライトモティーフ」として組み立てていき、無限旋律(音楽が休むことなく流れていく)で演奏していくものです

歌劇には「リエンツィ」「さまよえるオランダ人」「タンホイザー」「ローエングリン」などがあり、楽劇には「トリスタンとイゾルデ」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」「ニーベルングの指環:四部作(ラインの黄金、ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏)」があり、さらに舞台神聖祝典劇「パルジファル」があります

 

     

 

物語の舞台は16世紀頃のドイツのニュルンベルク。聖カタリーナ教会で騎士ヴァルターはエーファに一目惚れする ヴァルターは翌日マイスタージンガーの歌合戦の勝利者がエーファを花嫁にできるとマグダレーネから聞き、自分も歌合戦に参加しようと靴屋のハンス・ザックスの徒弟ダーヴィットから歌の心構えを聞く 書記ベックメッサーとエーファの父ポーグナーが現れるのでヴァルターは試験を受けたいと頼み込む 翌日の合戦について協議する親方たちの前で、ヴァルターは自作の歌を披露する 歌の途中でやはりエーファとの結婚を目論むベックメッサーが非難を口にし始め、ザックスのみが認めるべき箇所が多いと擁護する しかし、結局は失格となり ヴァルターは意気消沈する(以上、第1幕)。

エーファは、騎士が歌合戦に出場できるかどうかを父親に訊ねるが、彼は言葉を濁す ザックスがエーファを愛する歌を歌っていると、当の彼女が現れてヴァルターの出来について聞き出そうとする エーファのヴァルターへの愛が本物だと知ったザックスは、彼女のために動こうと決心する エーファを訪ねてきたヴァルターは、歌合戦に出場できなくなった事の次第を悔しげに語り、駆け落ちを迫る。一方、ベックメッサーがエーファの部屋の下でセレナーデを歌おうとするが、ザックスが金槌の音を立てて邪魔をし、エーファの身代わりで窓辺に立つマグダレーネの姿に、彼女と恋仲のダーヴィッドが気が付いて大騒ぎになる 騒ぎに乗じて駆け落ちのため家を出ようとしたエーファとヴァルターの前にザックスが現れ引き留める(以上、第2幕)

翌朝。ザックスはヴァルターの全く新しいスタイルの歌を認めるべきかどうか悩む ヴァルターが夢に見た話を語るので、ザックスはそれを歌にしなさいと励ます ベックメッサーが訪ねてきて、ザックスが書き留めたヴァルターの歌を自分のものとしてしまう エーファはヴァルターが歌合戦に出場できるようにしてくれたことに対しザックスに感謝の気持ちを表す 歌合戦でベックメッサーが歌い出すが上手くいかず、責任をザックスに被せる ザックスは同じ歌をヴァルターに歌わせ、皆は彼の歌いぶりに感動する 勝利が決まったヴァルターにザックスが「マイスタージンガー」の伝統の重みを説き、一同がザックスを讃える(以上、第3幕)

 

     

 

自席は1階R7列3番、右サイドブロック7列左から3つ目です いつも思うのですが、東京文化会館の椅子は窮屈です とくに1階RサイドとLサイドの席は、膝が前の席の背板にくっつきそうです 数年前にホールの改装工事をやったのに椅子の間隔については考慮外だったようで、非常に残念です

拍手の中、N響の面々が配置に着きます 弦楽器は14型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつものN響の並び。コンマスは元ウィーン・フィルのコンマス、ライナー・キュッヒルです

ヤノフスキの指揮で第1幕への前奏曲が華々しく演奏されます 通常のオペラ公演ではオーケストラがピットに入るので規模が小さく音も貧弱になりがちですが、「演奏会形式」なのでオケがステージ上に配置されており、フル・オーケストラの音がダイレクトに伝わってきます

歌手陣は主役級を中心に期待通りの歌唱力を発揮しました

ハンス・ザックスを歌ったエギリス・シリンスはラトヴィア出身のバス・バリトンです ラトヴィア音楽アカデミー卒。10の国際コンクールに入賞した後、世界中の音楽祭や歌劇場で活躍しています 独特の艶のある声で、歌唱力は抜群です とくに第2幕におけるザックスとエーファとのやり取りは、ドイツ語で歌っているのにジーンときました ザックスは結婚歴があるものの妻を亡くし現在は男やもめですが、幼い頃から知っているエーファを密かに愛しています エーファもザックスに求婚してほしいと思っています しかし、新たにヴァルターというライバルが現れたため、ザックスは身を引くことを決意します この辺の複雑な心情をシリンスは見事に歌い上げていました

ベックメッサーを歌ったアドリアン・エレートはオーストリア出身のバリトンです ウィーン国立歌劇場を中心に、世界のオペラハウスに出演し好評を博しています ベックメッサーはこの楽劇では”悪役”ですが、見事な歌唱力と演技力でその役柄を果たしました とくに第2幕における早川りさ子の小型ハープの伴奏で歌う”詩”が、ザックスの金槌の音で邪魔される時のイライラ感が笑いを誘い、この楽劇がワーグナーの希少な「喜劇」であることを思い出させます 彼は新国立オペラでも「ドン・ジョバンニ」タイトルロールをはじめ、日本の聴衆にはお馴染みの歌手ということもあり、カーテンコールでは一番多くの拍手喝さいを集めていました

ヴァルターを歌ったデイヴィッド・バット・フィリップは英国サマセット州ウエルズ出身のテノールで、英国ロイヤル・オペラ・ハウスを中心に国際的に活躍しています 無理のない歌唱で、エーファへの思いを情熱的に歌い上げる姿が印象的でした

エファを歌ったヨハン二・フォン・オオストラムは南アフリカ出身のソプラノです ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、モーツアルトのヒロイン役を中心に国際的に活躍しています 美しい声で、高音も無理なく歌い上げ、存在感を示しました

ポークナーを歌ったアンドレアス・バウアー・カナバスはドイツ・イエーナ生まれのバスです ヴェルディやワーグナーなどの主要なバス役を8つの異なる言語で歌い、世界の歌劇場に出演しています 深みがあり説得力のある歌唱で聴衆を魅了しました

ダフィトを歌ったダニエル・べーレは1974年、ドイツ出身のテノールです よく通る歌声で、ザックスの徒弟をコミカルに歌い演じました

マグダレーネを歌ったカトリン・ヴンドザムはオーストリア・ノイシュティフト出身のメゾ・ソプラノです ザルツブルクのモーツアルテウムで学び、ヨーロッパを中心に活躍していますが、歌唱力と共に演技力もあります

東京オペラシンガーズは迫力ある混声合唱で盛り上げました

特筆すべきは、ヤノフスキ指揮NHK交響楽団の演奏です 「第1幕への前奏曲」は妥協を許さないキビキビしたヤノフスキの指揮による壮麗な演奏でした また、「第3幕への前奏曲」では弦楽器による分厚い響きが素晴らしく、集中力に満ちていました 演奏者では、とくに第1幕を中心として吉村結実のオーボエ、神田寛明のフルート、ホルン・セクションが冴えていました

最後はマイスタージンガーのテーマが華々しく演奏されて幕を閉じ、カーテンコールが繰り返されました 「スタンディングオベーションの法則」(前の人が立つとステージが見えなくなるので自分も立つという法則)にしたがって、聴衆総立ちの拍手喝采となりました

 

     

 

「マイスタージンガー」は中世から近世にかけてのドイツの手工業ギルドが与えた称号の一つで、マイスターは「親方」、ジンガーは「歌い手」のこと、日本語では「親方歌手」「職匠歌人」などとなります 音楽界で言えばマイスターは「マエストロ」に通じます。「マエストロ」と呼ぶに相応しいマレク・ヤノフスキの指揮の素晴らしさを考えると、本公演での指揮ぶりは さながら「ニュルンベルクのマエストロ・コンダクター」のようです

 

     

コメント
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