人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「タクシー運転手 約束は海を越えて」「ペパーミント・キャンディー」を観る~韓国の光州事件(1980年)を巡る2つの物語:早稲田松竹

2018年08月21日 07時16分22秒 | 日記

21日(火)。わが家に来てから今日で1419日目を迎え、欧米の一部の国ではロゼワインの消費量が増え、国内の業界ではブームを先取りしようとする動きが見える というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ビール業界は糖質ゼロを謳っているけど  ワインはロゼなんだね  逆転の発想か?

 

  昨夕は、娘が外食のため夕食作りはお休みしました  

 

         

 

昨日、早稲田松竹で「タクシー運転手  約束は海を越えて」と「ペパーミント・キャンディー」の2本立てを観ました

「タクシー運転手  約束は海を越えて」はチャン・フン監督による2017年韓国映画(137分)です

時は1980年5月。朴正煕大統領暗殺事件後、韓国国内では民主化を求める大規模な学生・民衆デモが起こり、光州では市民を暴徒と看做した軍が厳戒態勢を敷いていた ソウルのタクシー運転手マンソプ(ソン・ガンホ)は、「通行禁止時間までに光州市に行ったら大金を支払う」というドイツ人記者ピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せ 光州を目指す   マンソプは報酬を受け取りたい一心で機転を働かせて検問を切り抜け、時間ギリギリに光州市に入ることに成功する 一人ソウルで留守番をする娘が気になるマンソプは、危険がいっぱいの光州から一刻も早く立ち去りたかったが、軍の横暴を目の当たりにして反感を覚え、デモに参加している大学生のジェシクや現地の運転手らの力を借りながらピーターの取材を助ける。そして関門を潜り抜けピーターをソウルに連れ戻すことに成功する ピーターが撮影した映像は世界中に流れ、初めて軍による横暴が白日の下に晒される

 

     

 

この映画は実話に基づく作品です 最後に本物のドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター(ピーター)が出てきて、「あの時のタクシー運転手に是非 再会したい。連絡が取れたらソウルまで飛んでいく」と強い希望を述べます

この映画は多数の死傷者を出した「光州事件」を扱っているにも関わらず、どこか明るさに満ちています。それは主人公マンソプのそこはかとないユーモアによるもので、彼を演じたソン・ガンホのキャラクターによるところが大きいと思います

この映画は今から38年も前の韓国を舞台にしていますが、2018年の現在においても 世界のどこかで、命を張って真実の報道に従事しているジャーナリストたちがいることを、われわれは忘れてはならないと思いました

 

         

 

「ペパーミント・キャンディー」はイ・チャンドン監督・原作・脚本による1999年韓国・日本映画(129分)です   この映画の大きな特徴は、時間を遡る構成により一人の男の人生を描いていることです

1999年春。久しぶりに集まった労働組合の元仲間たちが川のほとりでピクニックをしていると、すべてを失い自暴自棄になったヨンホ(ソル・ギョング)が現われる 鉄橋によじ登り 向かってくる列車に立ちはだかる その3日前、ヨンホは自殺を決意していた。彼はペパーミント・キャンディーの瓶を抱え、今は人妻となった死の床にある初恋の女性スニム(ムン・ソリ)を見舞いに行く 20歳の時 ピクニックでスニムから初めてもらったのがペパーミント・キャンディーだった

94年夏。35歳のヨンホは事業で成功を納めていた しかし、妻ホンジャ(キム・ヨジン)は浮気をしており、自分も妻を裏切っていた

87年春。新婚で刑事となっているヨンホは、学生運動家を厳しく拷問し、バーの女と一夜の関係を持つ

84年秋。新米刑事のヨンホは労働組合員に拷問する日々を送っている。そんなある日、スニムが訪ねてくるが、彼は彼女を冷たくあしらい、同じ夜、食堂で働くホンジャをホテルに誘う

80年5月。光州事件で戒厳令下、軍に所属しているヨンホは、暗闇の中で足に怪我を負いパニックになっていた時、誤って女子高生に発砲して死なせてしまう

79年秋。20歳のヨンホは仲間たちとピクニックに来ている。彼はスニムに写真家になりたいと夢を語り、人生で一番美しい時間をかみしめている

 

     

 

「すべてを失って死ぬしかないという人生最悪の現状から、どんどん時間を遡っていくと、人生最良のときは無限の未来が開けていた20歳の時だった。あの頃は良かった。でも戻れない」という、ある意味ノスタルジックな感触の映画だったように思います

刑事が学生を拷問するシーンで、刑事が「人生は美しいか?」と訊く場面があります。しかし、学生は返事をすることが出来ません。逮捕されて拷問されているのに人生が美しいわけがないからです

さて、あなたにとって、今、人生は美しいか

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「ナチュラルウーマン」を観る~「オンブラ・マイ・フ」も流れる / METライブビューイング アンコール2018の4枚セット券を取る / METライブ2018‐19ラインナップ・上映日程決まる

2018年08月20日 07時19分38秒 | 日記

 20日(月)。わが家に来てから今日で1418日目を迎え、全米の300以上の新聞社が16日、メディアを「国民の敵」、政権に批判的な報道を「フェイク」と呼ぶトランプ米大統領を批判する社説を一斉に掲載した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプが言っていることこそフェイクだ! ジャガリコはじゃがいものフェイク?

 

         

 

昨日、神楽坂のギンレイホールでセバスティアン・レリオ監督による2017年チリ・アメリカ・ドイツ・スペイン合作映画「ナチュラルウーマン」(104分)を観ました

ウエイトレスをしながらナイトクラブで歌っているトランスジェンダーのマリーナ(ダニエラ・ベガ)は、歳の離れた恋人オランド(フランシスコ・レジェス)と暮らしていた しかし、オランドは自身の誕生日の夜、自宅のベッドで意識が薄れ、マリーナが病院に連れて行こうとするとき階段から転げ落ちて亡くなってしまう 最愛のオランドの死により、彼の妻や子供たちとの思いがけないトラブルに巻き込まれ、容赦ない差別や偏見を受けるマリーナだったが、女性として生きていく権利を胸に前向きに歩くことを決意する

 

     

 

この映画は自身もトランスジェンダー歌手であるダニエル・ヴェガが、自分らしさを貫くヒロインを演じています この映画で私が一番印象に残ったのは、マリーナが街を歩いているとき、向かってくる暴風に身体を前のめりにしながら前に進もうとする姿です これはあたかも、トランスジェンダーに対する差別や偏見の嵐にもめげず、前向きに生きていこうとするマリーナの強い姿勢を表しているかのようでした

映画の最後は、先生について歌を習っているマリーナが、コンサート会場で「オンブラ・マイ・フ」を歌うシーンですが、この曲はヘンデルのオペラ「セルセ」第1幕第1場で歌われるアリアで、プラタナスの木陰への愛を歌ったものです 詩は次のような内容です

 「生い茂った木々の蔭よ

 お前ほどいとしく優雅に

 やさしいものはなかった

 木々の蔭よ」

この曲は 速度記号から「ヘンデルのラルゴ」と呼ばれています。この曲はカストラート(去勢された男性歌手)のために書かれた作品です マリーナが歌うのに最も相応しい選曲と言えるかも知れません

「オンブラ・マイ・フ」と言えば、1986年夏にソプラノのキャスリーン・バトルによる録音がニッカウヰスキーのテレビCMに使われ、大きな話題を呼んだことを思い出しました ウィスキーも 1986年5月にロンドン・アビーロード・スタジオで収録されたCDも 売れに売れたようで ご同慶の至りです 私はニッカウヰスキーを飲みながらCDを聴いていました そのCDがこれです

 

     

 

         

 

昨日、「METライブビューイング2018」の4枚セット券(10,400円)を購入しました 通常価格は1枚3,100円ですが、1枚当たり500円引きになっています

 

     

 

絶対に観たいと思っているのは①プッチーニ「トゥーランドット」、②ロッシーニ「セヴィリャの理髪師」、③ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」の3本ですが、いずれも3回目か4回目となります 他にもヴェルディ「ドン・カルロ」、レハール「メリー・ウィドウ」、プッチーニ「マノン・レスコー」、ロッシーニ「オリ―伯爵」等も観たいと思います いずれ もう1枚セット券を買うことになるでしょう

 

     

     

 

「METライブビューイング2018‐19」の上映日程等の詳細が決まりました

 

     

 

ラインナップと上映日程は次の通りです

①ヴェルディ「アイーダ」        11月2日(金)~8日(木)

②サン=サーンス「サムソンとデリラ」  11月16日(金)~22日(木)※新演出

③プッチーニ「西部の娘」        12月7日(金)~13日(木)

④二コ・ミューリー「マーニー」     1月18日(金)~24日(木)※MET初演

⑤ヴェルディ「椿姫」          2月8日(金)~14日(木)※新演出

⑥チレア「アドリア―ナ・ルクヴルール」 2月22日(金)~28日(木)※新演出

⑦ビゼー「カルメン」          3月8日(金)~14日(木)

⑧ドニゼッティ「連帯の娘」       4月12日(金)~18日(木)

⑨ワーグナー「ワルキューレ」      5月10日(金)~16日(木)

⑩プーランク「カルメル会修道女の対話」 6月7日(金)~14日(木)

上記10作品の中で、観るのが楽しみなのはソプラノのアンナ・ネトレプコが歌う「アイーダ」と「アドリア―ナ・ルクヴルール」、メゾソプラノのエリーナ・ガランチャが歌う「サムソンとデリラ」、ソプラノのディアナ・ダムラウとテノールのフアン・ディエゴ・フローレスが歌う「椿姫」の4作品です

 

     

 

     

 

チケット代は1作品3,600円ですが、ムビチケカード3枚セットは9,300円と1枚当たり500円引きになっています 私としてはセット券を3枚購入することになります

 

     

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モーツアルト 「レクイエムK.626」、 R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲ほか~ 夏祭クラシックス2018(ミューザ川崎)で 『一期一会』の演奏を聴く

2018年08月19日 08時01分33秒 | 日記

19日(日)。昨夕、7時のNHKニュースを見て、チャンネルをそのままにしていたらNHKホールでの「思い出のメロディー50回記念だ!」という番組が流れました 往年の歌手たちが出てきて往年のヒット曲を歌うまでは良かったのですが、「ゆけゆけ飛雄馬」なんていう読〇巨〇軍の応援歌みたいな曲なんか歌ってるし、それよりも何よりも、あの会場で自分はN響の定期会員としてコンサートを聴いていたんだな、と再認識して愕然としました NHKホールは多目的ホールなので、クラシックコンサートもやるしポピュラー番組もやるし紅白歌合戦もやるし、要は金になることは何でもやるのですが、何となく釈然としない気持ちが残りました N響定期は次のシーズンからサントリーホールのB定期を選んだので「まあいいか」と思い直したのですが、音響面、設備面で そう遠くない時期にNHKホールも改修せざるを得ないのではないか、と思いました 個人的にはクラシック・コンサートホール仕様に作り直してほしいと思いますが、税金に準じる受信料収入で改修することになるので、そうもいかないかも知れませんね

ということで、わが家に来てから今日で1417日目を迎え、海洋汚染の原因として問題視されるプラスチックごみに関連して、米スターバックスに次いで、すかいらーくホールディングスがプラスチック製ストローを全廃する方針を発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     プラスティックごみは日本では分別回収されて焼却されているんじゃなかった?

 

         

 

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「夏祭クラシックス2018」公演を聴きました プログラムは①永六輔・いずみたく「にほんのうた」抜粋②リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲、③モーツアルト「レクイエムK.626」です 出演は、①の合唱=男性合唱団  An  die  Musik、③のソプラノ=吉田美咲子、アルト=二瓶純子、テノール=近野桂介、バス=菅谷公博、管弦楽=夏祭クラシックス2018祝祭管弦楽団、合唱=夏祭クラシックス2018合唱団、 指揮=①岡田直樹、②③小森康弘です

このうち夏祭クラシックス2018祝祭管弦楽団は、一般公募により音源審査を通過した老若男女・プロアマを問わず様々なメンバーで構成される臨時編成オーケストラで、今年5月から小森康弘の指導のもと研鑽を積んできたとのことです 一方、夏祭クラシックス2018合唱団は、一般公募により構成された男女混声合唱団で、この日の出演は201名です

 

     

 

入場してからチケットを改めて確認すると、座席番号の代わりに整理番号A1番と書かれていたので、様子が変だ?!と思い、アテンダントの女性に尋ねてみたら「本日は自由席となっております」との答えでした それならそうとチラシにもチケットにも書いておけばいいのに・・・・と思いましたが後の祭り。そんなやり取りをしているうちに1階席と2階席の良い席は埋まってしまい、かろうじて2CA3列3番を押さえました 会場は7割くらい入っていると思われます

オケは左にヴァイオリン・セクションを集めています。コンミスは伊藤舞希子さん

平均年齢が高そうな男性合唱団  An  die  Musik のメンバー30人がぞろぞろと登場、何人かは頭にカエルの似顔絵を付けています   岡田直樹が指揮台に上がり、最初の「筑波山麓男声合唱団」が歌われます ソロを歌う人たちは青空球児好児のゲロゲーロよろしくカエルに成り切っています この光景、確かに既視感があります。そうだ、幼稚園の学芸会です 次いで、京都~大原~三千院~ の「女ひとり」が歌われたかと思うと、急にメンバー全員がネクタイを外し始め、ある者は頭に巻き、ある者は上着を脱ぎ、足元フラフラの酔っぱらい集団に変貌します 歌うのは「終電車のブルース」です。植木等調の歌を歌い終わると皆 床に崩れ落ち、廃品回収車に回収されるのを待つだけの粗大ごみとなり果てます とてもお芝居とは思えない現実味があります そうかと思っていると、全員が急に立ち上がり、かつてドリフターズがお茶の間のチャンネルを独占した某民放の「8時だよ全員集合!」のテーマソング「いい湯だな」を歌い出し、会場から自然発生的に手拍子が出ます 全国のPTAを敵に回した文部省非推薦の番組でしたが、今となっては懐かしい思い出の1曲に昇格したようです 最後は「明日の故郷」をまっとうに歌い「にほんのうた」を終了します 見ていて、いや 聴いていてか、この人たちと飲んだら さぞや楽しいだろうな、と心底 思いました

「にほんのうた」からクラシックへ転換するため 会場の模様替えがあり オケのメンバーも拡大します   聴く側も気持ちの切り替えが大変です

リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲の演奏に入ります   この曲はリヒャルト・シュトラウス(1864‐1949)がモーツアルトの歌劇を意識して作曲し、1911年1月26日に初演されたオペラ「ばらの騎士」の聴きどころを集約した管弦楽曲です オーケストラは健闘しましたが、この曲特有の色彩感と色艶の点で今一つだったように思います。しかし、この日1回限りの演奏のために編成されたオケの演奏としては大健闘だったと言うべきでしょう


     


プログラム後半はモーツアルト「レクイエムK.626」です この曲はモーツアルト(1756‐1791)が晩年に作曲するも未完に終わった名作です

男女混声合唱201名(男女比1:3)がオケの後方にスタンバイし、その前 中央にソプラノの吉田美咲子、アルトの二瓶純子、テノールの近野桂介、バスの菅谷公博がスタンバイします このうち一人だけ分かる吉田美咲子さんは新国立劇場オペラ研修生です 小森康弘の指揮で演奏に入りますが、何カ所か私が今まで聴いてきたジュスマイヤー版による「レクイエム」と異なる部分(例えば、ラクリモーサの後)がありましたが、これは小森氏が、ジュスマイヤー版を基本に、フライシュテットラーやアイブラーなどの研究結果も復活させているとのことでした

この作品は、ソリストによる四重唱の部分がいくつかありますが、それらを聴くたびに「モーツアルトの宗教曲はまるでオペラのアリアのようだな」と思います 「敬虔」という言葉の前に「美しい」という言葉が出てしまいます。200名を超える混声合唱は、まさにマスによる迫力です 「皆は一人のために、一人は皆のために」という『三銃士』のダルタニャンの名言を彷彿とさせるような この日だけの「一期一会」の合唱だからこその迫力があります ソリストの4人も、トロンボーンをはじめとするオケも健闘しました

アンコールは予想通り、モーツアルト晩年の傑作「アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618」が歌われました 抑制された合唱で歌われる美しいメロディーに 背筋が寒くなるほどの深い感動をおぼえました

 

     

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工藤重典フルートカルテット:モーツアルト「フルート四重奏曲全曲演奏会」のチケットを取る / 村上春樹著「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読む

2018年08月18日 07時18分11秒 | 日記

18日(土)。1週間お盆休みで家に帰って来ていた息子が 昨夜11時10分池袋発の深夜バスで山形に向かうので 西口の東京芸術劇場前のバス乗り場で見送りました 振り返って見ると、息子は この1週間 毎日のように料理を作って食べさせてくれていたように思います 仕事にも慣れ、自炊もし、何よりも元気で過ごしているようで安心しました    これから仕事が忙しくなると言っていたので、健康に留意して頑張ってほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で1416日目を迎え、個人間で品物を売買するフリーマーケット「メルカリ」に「甲子園の土」の出品が相次いでいることが17日 分かった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      本物の甲子園の土だったら出品者は情けないヤツだ 偽物をどうやって見分ける?

     

         

 

昨日の夕食は息子が「イサキの粕漬け焼き」「茄子の煮びたし」「潮汁」を作ってくれました イサキは粕でくるんで前日から冷蔵庫で寝かせていました。潮汁は前日のブリ大根に使ったブリとイサキの頭と尾を出汁にしています 魚は健康に良い上に捨てるところがないですね。どれもがとても美味しかったです

 

     

 

         

 

10月2日(火)午後7時から浜離宮朝日ホールで開かれる「工藤重典:モーツアルト『フルート四重奏曲全5曲演奏会』」のチケットを取りました プログラムは「フルート四重奏曲」第1番から第4番までと、「オーボエ四重奏曲K.370」のフルート四重奏曲版です 演奏は、フルート=工藤重典、ヴァイオリン=堀米ゆず子、ヴィオラ=篠崎友美、チェロ=山崎伸子です

 

     

 

         

 

村上春樹著「ラオスにいったい何があるというんですか?」(文春文庫)を読み終わりました 念のため略歴をご紹介すると、1949年京都生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒。79年「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞して以来、数多くの作品を世に送り出し、数々の文学賞を受賞しています

 

     

 

この本は村上春樹が、1995年から2011年までの間に訪れた世界の街について「太陽臨時増刊」「クレア」「アゴラ」などの雑誌に書いた旅行記を集めたものです

筆者が訪ねたのは、ボストン、アイスランド、オレゴン州ポートランド、メイン州ポートランド、ミコノス島とスペッツェス島(ギリシャ)、ニューヨークのジャズ・クラブ、フィンランド、ルアンプラバン(ラオス)、トスカナ(イタリア)、熊本県です

このうち、「ボストン」は筆者が3年間住んでいたところで、毎日のようにチャールズ河沿いの道路を走っていたので一番深く印象に残っているそうです 

「アイスランド」は「世界作家会議」に出席した時に訪れた国で、一番驚いたのは、人々がとても熱心に本を読んでいることだそうです 人口のわりに大きな書店が数多くあるとのこと。それを読んで私も正直ビックリしました それから、アイスランドは温泉だらけだそうで、筆者が湖みたいな大きさの温泉に浸かっている写真も載っています

「フィンランド」でまず思い浮かべるのは①アキ・カウリスマキの映画、②シベリウスの音楽、③ムーミン、④ノキアとマリメッコだと書いています このうち「シベリウスの音楽」については、彼の交響曲全集は5種類持っていて、第5番をいちばん愛好しているそうです 村上氏はシベリウスが53年もの間 暮らしていた有名な山荘「アイノラ荘」を訪ねています   先日のブログでも一部をご紹介しましたが、シベリウスは92歳で死ぬまで、水道設備を入れなかったそうです お金がなくて水道が引けなかったわけではなくて、工事が行われるとうるさくて、作曲にさしつかえるからで、「水道なんかいらん。井戸があればそれでよろしい。これまでそうやって生きてこれたんだから」と言って、断固拒否していたといいます おかげで家族はみんな、用を足すには 外便所に行かなくてならなかったそうです。これがホントの不便というやつでしょうか。家族にとっては水に流せない大問題だったことでしょう

ラオスの「ルアンプラバン」に行く直行便はないので、ハノイで1泊して乗り継いだが、ヴェトナム人に「どうしてまたラオスなんかに行くんですか?」と不審そうに質問されたそうで、その時「ヴェトナムにない、いったい何がラオスにあるというのか?」というニュアンスが読み取れたといいます 村上氏は「良い質問だ」と言いながらも、「僕には答えようがない。だって、その何かを探すために、これからラオスまで行こうとしているわけなのだから。それがそもそも旅行というものではないか」と書いています。彼はルアンプラバンで歩いてのんびり寺院を巡りながら、「普段、日本で暮らしているとき、僕らはあまりきちんとものを見てはいなかったんだな。僕らはもちろん、毎日いろんなものを見てはいるんだけれど、でもそれは見る必要があるから見ているのであって、本当に見たいから見ているのではないことが多いと気が付いた」と書いています そして、ヴェトナム人の「ラオスなんかにいったい何があるんですか?」という質問に対する明確な答えは持たないが、「現地のいくつかの光景だけが匂いや音や肌触りとともに記憶に残っている。それが何の役にも立たない、ただの思い出として終わってしまうかもしれないが、それが旅というものではないか。それが人生というものではないか」と結んでいます。さらに村上氏は「あとがき」で次のように書いています

「実際に行ってみると、ラオスにはラオスにしかないものがある。旅とはそういうものです そこに何があるか前もってわかっていたら、誰もわざわざ手間暇かけて旅行になんて出ません。何度か行ったことのある場所だって、行くたびに『へえ、こんなものがあったんだ!』という驚きが必ずあります それが旅行というものです。旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれど、そこには必ず何かがあります さあ、あなたも腰を上げてどこかに出かけてください」と挑発しています

オレゴン州ポートランドでは、中古レコード屋で中古LPレコードを漁る村上氏の姿が、メイン州ポートランドでも、中古レコード屋で、キャノンボール・アダレイの「サムシン・エルス」(ブルーノート)のファースト・エディションのピカピカの美品を20ドルで購入して、LP原理主義者の店主とツーショットに納まっている村上氏のニコニコ顔が写真で紹介されています かつて、LPレコードを買いあさっていた同人類としてものすごく親近感を覚えました

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青木やよひ「ベートーヴェンの生涯」、村上春樹「ラオスにいったい何があるというんですか?」、中山七里「闘う君の唄を」「中山七里七転八倒」、穂村弘「にょにょにょっ記」他を買う

2018年08月17日 07時23分02秒 | 日記

17日(金)。いま、買ってきたばかりの”どんでん返しの帝王”中山七里の日記を読んでいるのですが、これが滅茶苦茶面白いのです 内容は追って当ブログでご紹介しますが、文中に次のような文章が出てきました

「版元さんや担当編集さんが熱意をもってくれた作品であり、こうして映像化され人口に膾炙される運びになったのは何よりだった」

当ブログの読者の国語力のある方なら何の苦もなく「人口に膾炙する」が「じんこうにかいしゃする」と読み、「人々の話題に上ってもてはやされ、広く知れ渡ること」という意味であることが頭に浮かぶことでしょう 本を読むというのは、こういう知識を新たに得ることができ、あるいは知っていることを再確認することができます その意味で テレビのワイドショーを見るよりも、本を読む方がよほど生産的な行為だと思います

ということで、わが家に来てから今日で1415日目を迎え、トランプ米大統領は15日、中央情報局(CIA)のブレナン元長官が政権に批判的な発言をしていることから、機密情報へのアクセス権を剥奪すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

        11月の中間選挙までは 自分に不利な情報が外部に漏れないようにするんだろうな

     

          

 

昨日の夕食は、息子が「ブリ大根」に挑戦しました 私だったらブリの切り身を買ってきますが、息子は尾頭付きを買ってきて3枚におろし、時間をかけてじっくり煮込みます えっ、息子が普通で お前が手を抜きすぎだって? そ、そうですか・・・久しブリに狼狽しました いずれにしても、味が良く浸み込んでいて とても美味しかったです

 

     

 

         

 

今週は お盆の週ということでか、コンサートもなく 映画も観に行かなかったので読書が進みました その結果、手元に読むべき新しい本が無くなってしまったので、池袋のジュンク堂本店に行って本を6冊買いました

1冊目は青木やよひ著「ベートーヴェンの生涯」(平凡社ライブラリー)です   コンサートを聴く合間に、作曲家について勉強し直さなくっちゃ

 

     

 

2冊目は村上春樹著「ラオスにいったい何があるというんですか?」(文春文庫)です ノーベル文学賞常連候補の小説家の旅行記らしいです

 

     

 

3冊目は中山七里著「中山七転八倒」(幻冬舎文庫)です 中山七里の本は文庫化されるたびに買い求め当ブログでご紹介しています これは小説ではなく「日記」ですが、日記だからと言って侮ってはいけません。本編だけで600ページを超えます

 

     

 

4冊目は同じく中山七里著「闘う君の唄を」(朝日文庫)です 幼稚園の新米先生が主人公ということで、これまでとは全く傾向が異なるので どんなストーリーが展開するのか興味が湧きます

 

     

 

5冊目は舞城王太郎著「世界は密室でできている」(講談社文庫)です この本は女優の栗山千明さんが新聞のコラム「読書日記」で推薦していたものです この作者は初めて知りましたが、何となく読者層が若いような気がします

 

     

 

6冊目は穂村弘著・フジモトマサル絵「にょにょにょっ記」(文春文庫)です 穂村弘の本は、「絶叫委員会」(ちくま文庫)を読んで面白かったので買いました

 

     

 

いずれも 読み終わり次第、このブログでご紹介していきます

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穂村弘著「絶叫委員会」を読む ~ 思わず納得してしまう言葉の数々を紹介 ~ どうすればあんたとつきあえる?! 金か? 地位か? ルックスか? 根性か?

2018年08月16日 07時26分36秒 | 日記

16日(木)。昨日は品川の義父の家に息子と一緒に行きました   息子が金魚鉢の金魚にエサでない物をやったら「キンギョ迷惑だ」と言われ、魚ッとしていました

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1414日目を迎え、サッカーの本田圭佑が15日、オーストラリアの1部リーグのメルボルン・ビクトリーの入団会見に臨み、カンボジア代表の実質的な監督に就任したことについては、試合がかぶるときにはメルボルンを優先すると語った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      兼業もいいけど カンボジアが負け続けたら監督不行き届きでクビにならないかな

 

         

 

昨日は、品川でさんざんご馳走になってきたので、夜はカップ麺でも食べようかと思っていたら、息子がチャーシュー料理を作ってくれました また、キュウリ、ナス、ミョウガ、大葉、メカブなどいろいろな食材で「山形出汁」を作り、豆腐に乗せて冷奴を作ってくれました。どちらも美味しかったです このところ、夕食には私の出番はありません

 

     

 

         

 

穂村弘著「絶叫委員会」(ちくま文庫)を読み終わりました 著者の穂村弘は1962年北海道生まれ。歌人。上智大学文学部英文科卒。短歌評論集「短歌の友人」で伊藤整文学賞を受賞しています

 

     

 

この本は「ちくま」誌上に連載された文章をまとめたもので、映画や小説の名台詞、歌謡曲の歌詞、日常会話、街頭演説、電車の吊り広告の見出し、メール、妻の寝言などの中から印象的な言葉を選んでコメントを加えたものです

とくに面白かった言葉をいくつかご紹介します 最初は、筆者が回転寿司屋で聞いたカップルの会話です

彼「ウニって本当は宇宙人だったらこわいね

彼女「わざわざ遠くから来てるのにお寿司にされてかわいそう

この会話について、筆者は「『わざわざ遠くから来てるのに』という彼女の感想がちょっと可愛い。ぶりっことは思わない。むしろ天然気味なのだ」とコメントしています

次は「直球勝負」というテーマで、「ルート・ボーイ」の中で、主人公が人妻に向かっていう口説き文句です

「どうすればあんたとつきあえる?! 金か? 地位か? ルックスか? 根性か?」

これについて筆者は「ワイルドで格好いいと思って、何度かぶつぶつ唱えてみたが、実際に言ってみたことはない。普通言えないと思う」とコメントしています

次は駅のトイレの掲示で見た言葉です

「いつもきれいにご利用いだだきありがとうございます」

これについて筆者は次のようにコメントしています

「衝撃を受けた。私に言っているのか。私が『いつもきれいに』おしっこしているところを誰かがみていた?子供の頃は、いや学生の頃も、こんな風にトイレに(?)御礼を言われたことはなかったと思う 小便をこぼすな ⇒ 一歩前へ ⇒ いつもきれいにご利用いただきありがとうございます、という流れがあったと思う。『小便をこぼすな』はいい。『一歩前へも』いい。でも『いつもきれいに~』は、なんというか、一線を越えているんじゃないか。何かを捨ててしまった言葉に思えるのだ

次は電車内での先輩後輩の会話です

「俺、今度、デート行くんすけど」

「やったじゃん

「初めてなんすよ」

「うん」

「やっぱおごりますよね」

「そりゃおごるよ」

「で、金ないんで

「ああ、うん」

「バイトしようと思って」

「うん」

「いくらあればいいんすかね」

「2万だろ」

「そっすか

この会話について筆者は、「聞き耳を立てていた私は、へ?と思う。デートのためにバイトするっていう後輩の質問も可愛いけど、『2万だろ』って先輩即答だよ。いいのか、それで 一口にデートと言っても、いろいろあるだろう。どこに行くのかとか、何をするのかとか、どんな相手かとか、それによって金額も変わると思うんだけど・・・。そういう状況を一切無視してデート=「2万」のきっぱり振りにびっくり でも、「そっすか」で後輩即納得。いいなあ」とコメントしています

次は飲食店でお店の人に声を掛けたいときの呼び方についてです 「おやじさん」「大将」「店長」「社長」「マスター」といろいろあるが、お寿司屋さんで迷っていると、カウンターの一角から声が飛んだ。

「おすしやさん!」

筆者は「おおっ、と思う。その手があったか でも、呼ばれた本人は一瞬目をぱりくり。周囲にも妙な空気が流れている。あれ?これ、駄目なの?マスターよりはいいんじゃないかなあ」とコメントしています

最後に美容室で髪を洗っている時に頭上から降ってくる謎の台詞とそのバリエーションについてです

「お湯加減はいかがですか」

「かゆいところはございませんか」

「気持ち悪いところはございませんか」

「耳は気持ち悪くございませんか」

筆者は「どんどん意味不明になっていく。それに伴ってこちらの返事も曖昧になる。だって「耳が気持ち悪い」って状態そのものが想像できないのだ」

としたうえで、「久しぶりに髪を切りにいったら、また仲間が増えていた」として、

「流し足りないところはございませんか」

と訊かれ、「混乱する。ええと、流し足りないところがあるかないか、いちばんよくわかるのは現に流しているあなたですよね。こっちは仰向けで、顔にガーゼみたいなのをかけられて、何もみえないんだからわかりませんよ。髪の毛には触覚がないんだから。そう心で思いながら『大丈夫です』と小さく答える。小声なのは自信がないからだ」

とコメントしています。こういうの、誰にも経験があると思います

そういうわけで、この本には、「あるある、そういうの」と思わず頷いてしまう言葉の数々が紹介されています

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「オペラ夏の祭典2019-20『トゥーランドット』プレトーク」に申し込む ~砂川涼子、村上敏明が出演 / 佐藤正午著「ビコーズ」を読む~魅力的な会話の妙

2018年08月15日 07時21分28秒 | 日記

15日(水)。わが家に来てから今日で1413日目を迎え、1970年代からサマータイムが定着している欧州では 健康面への悪影響から廃止を求める声が広がっている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                日本では逆に2020年の東京五輪に導入しようという考えがあるね  どうなるんだろ

 

         

 

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に合わせてオペラプロジェクトの第1弾「トゥーランドット」が2019年7月に上演されます これは東京文化会館と新国立劇場の共同制作により、大野和士指揮バルセロナ交響楽団、砂川涼子、村上敏明他の出演により上演される公演です

これに先立ち、9月1日(土)午後6時半から東京文化会館小ホールで「トゥーランドット」プレトークが開催されます 本公演に出演するリュー役=砂川涼子、ポン役=村上敏明とナビゲーター朝岡聡が出演します

入場料は無料ですが、現在、事前申し込み受付中(先着300名)です 8月20日までに往復はがきか東京文化会館Webから申し込む必要があります(https://opera-festival.com/pre-talk)

私もさっそくWebから申し込みましたが、メールで「受付完了通知」が送付されてきました 本通知を印刷したものが入場整理券になるとのことです。忘れないようにしなくちゃ

 

     

 

         

 

昨日の昼食は、息子が「花笠の郷  山形の冷たいラーメン」を作ってくれました 醤油味のアッサリ系でとても美味しかったです

 

     

 

夕食はビーフカレーを作るつもりで食材を用意しておいたら、私が本を読んでいる間に息子が作り始めてしまいました 途中から選手交代する訳にもいかないので任せましたが、作り方がまったく異なるのでビックリしました 私の場合は市販のカレールーの箱に書かれているレシピ通りに牛肉、ジャガイモ、ニンジンだけで作りますが、息子はWEBで献立を検索して、材料にトマト(皮をむく)、ズッキーニ、ナスなども加えてじっくり煮込み、ホウレンソウまで添えます 性格の違いだと思います。コクがあってすごく美味しく お代わりしました

 

     

 

デザートは息子の山形土産のメロンです 甘くてとても美味しかったです

 

     

 

         

 

佐藤正午著「ビコーズ」(光文社文庫)を読み終わりました 佐藤正午の作品はこのブログで何冊もご紹介してきました。1955年長崎県佐世保市生まれ。1983年「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受賞、2009年刊行の「身の上話」は13年にNHKでドラマ化され大きな反響を呼ぶ。15年「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を、17年には「月の満ち欠け」で第157回直木賞を受賞しています

本のタイトル下に「新装版」と表記されていたので、その昔、一度読んだかもしれないぞ、と思いながら読み進めましたが、初めて読む小説でした

新人文学賞を受賞し、賞金の2000万円を3か月で使い果たした末に、次作が書けずにいる新人作家のぼく(白井)は、ある日、十代の頃の相棒・寺井健太と10年ぶりに再会する しかし、彼は「若い女をひとり世話してほしい」と無茶なことを要求したまま姿を消してしまう なぜ、彼がそんな無茶な要求をしたのか、白井には10年前に起きた自分自身と寺井と映子にまつわる忘れ得ぬ出来事に思い当たる節があり、苦い思い出が蘇る 一方、現在、白井はスナック「どん底」で働く矢田部由紀子と付き合っているが、白井は将来のことについてなかなか態度をはっきりとさせないので、業を煮やした由紀子は二人の関係を終わりにしたいという手紙を書く 彼女を諦めきれない白井は彼女に手紙を書く。白井が 叔母の経営するスナック「ビコーズ」でビールを飲んでいるところに 手紙を読んだ由紀子から電話が入る。そこから物語は良い方向に向かって行くことを暗示して幕を閉じる

 

     

 

この小説は1986年4月に光文社から刊行され、88年5月に文庫化、さらに2018年7月に文庫の新装版として刊行されました 「永遠の1/2」「王様の結婚」「リボルバー」に次ぐ長編4作目の作品です

主人公のデビュー作が文学賞を受賞し大金を手に入れて放蕩の限りを尽くすというのは、佐藤正午が「永遠の1/2」ですばる文学賞を受賞して本が売れ、印税がたんまり入り趣味の競輪などに金を注ぎ込んだという事実と重なります

この小説の最後の場面での白井と「ビコーズ」のママ(白井の叔母)との会話にこの小説のエッセンスが凝縮されています

「皮肉を言う元気があったら、また新しい娘をおさがし」

「こんどはそんな気になれません

叔母が訊ねた。「どうして」

ぼくは答えにつまった。「だって・・・」

叔母が笑って言った。

「またビコーズかい」

「・・・・・・・?」

「だって・・・・とほのめかすのは英語でビコーズって言うんだよ。女の台詞だよ

「・・・この店の名前?」

「察してちょうだいって あたしがつけたんだけど」

「そうだったんですか」

「そうよ、何だと思ってたの」

「なぜならば」

「中学生じゃあるまいし」

カウンターの端っこでピンクいろの電話が鳴り出した。

佐藤正午の小説で素晴らしいなと思うのは、周到に仕組まれたプロットはもちろんですが、それにも増して惹かれるのは このような会話の妙です   何気ない一つの言葉で小説全体の雰囲気を表しています

そして いつも思うのは、小説に出てくるような しゃれた会話のやり取りができるマスターやママさんがいる行きつけのスナックやバーなどがあれば、どんなに人生が豊かになるだろうか、ということです 10数年前までは私にもそういう店がありましたが、残念ながら現在はありません 欲しいなあ、そういうお店 でも通うのは夜であって 正午ではありませんが

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奥田英朗著「我が家のヒミツ」を読む~深く踏み込まないところがいい! / 昭和音楽大学公演(フェスタサマーミューザ)の払い戻し始まる

2018年08月14日 07時18分46秒 | 日記

14日(火)。昨日、息子と二人で埼玉県S市の菩提寺に墓参りに行ってきました   帰りに実家に寄りましたが、家に来て12年となる猫のミラ(未来ではなく、ミラクル・デブ 7キロ)が出迎えてくれました 恥ずかしくて腹部は見せられないと言って猫をかぶっておりました   帰りがけ 巣鴨駅で雷雨に見舞われ、ビニール傘が1本増えました   涼しくなるのは良いのですが、傘が増えるのは困ります。カサばるので

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1412日目を迎え、大阪府警は13日、強制性交や強盗致傷の疑いで逮捕され、富田林署で留置中だった住所不定・無職の樋田淳也容疑者が逃走したと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                 富田林でそんな事件起きるとは とんだ話だ  いや  とんでもない話だ  はよ逮捕して

 

         

 

昨日の夕食は、息子がプルコギを作ってくれました。とても美味しかったです 海ぶどうは数日前に賞味期限が切れていましたが、大勢に影響はありません わが家は皆 胃が丈夫です

 

     

 

         

 

フェスタサマーミューザの一環として開かれた「昭和音楽大学」公演の払い戻しが11日から開始されました これは8月8日のコンサート当日、台風の影響で公演が聴けなかった人のための救済措置です ミューザ川崎のホームページから「昭和音楽大学  払い戻し方法について」を呼び出し、「払い戻し連絡票」に必要事項(住所・氏名・電話番号・振込先口座等)を記入のうえ、9月11日(火)必着で、チケットと共に 「ミューザ川崎シンフォニーホール  昭和音楽大学払い戻し係」宛に簡易書留で送ると、書留送料・振込手数料と共に指定口座に3週間後くらいに振り込まれるそうです。チケット代は1000円なので、1000円+αの返金となります

私も昨日、チケットを郵送しましたが、戻されたチケット代はコンサートのために使いたいと思います

 

     

 

         

 

奥田英朗著「我が家のヒミツ」(集英社文庫)を読み終わりました 奥田英朗の本は久しぶりです。1959年岐阜県生まれ。雑誌編集者、プランナー、コピーライターを経て97年「ウランバーナの森」で作家デビューし、2002年「邪魔」で第4回大藪春彦賞を、04年「空中ブランコ」で第131回直木賞を受賞したのをはじめ、各賞を受賞しています

 

     

 

この本は、2012年から15年までに「小説すばる」に掲載された6つの短編小説を収録したものです

「虫歯とピアニスト」は、31歳の小松崎敦美は結婚してから数年経つが子どもが出来ないことで悩んでいるが、ある日、勤務先の歯科医院の受付に憧れのピアニストが現われるという話

「正雄の秋」は、53歳のサラリーマン・植村正雄は社内での出世競争に敗れるが、これからの生活のビジョンが描けないでいるという話

「アンナの12月」は、母と離婚した実の父に16歳のアンナが会いに行き セレブでイケメンの実父に夢中になるが、育ての父親のありがたさに気付くという話

「手紙に乗せて」は、母の死をきっかけに実家に戻った社会人2年目の亨が、伴侶を失い憔悴した父親を見て心配するが、会社の上司が父親あてに手紙を書くという話

「妊婦と隣人」は、産休中の32歳・松坂葉子は隣に越してきた謎めいた夫婦が気になってしかたないのだが、夫は妄想だと取りあわない。しかし、葉子の心配は当たっていたという話

「妻と選挙」は同じ著者による「家日和」の「我が家の問題」の「妻とマラソン」に続く大塚家の物語で、作家・大塚康夫の妻・里美が市会議員へ立候補するが、いつの間にか康夫も選挙運動に巻き込まれてしまうという話です

それぞれの物語の主人公は性別も年齢も職業などの立場も全く異なりますが、筆者はどこにでもありそうな「我が家の秘密」を温かい目で見守っています

私が一番面白かったのは最初の「虫歯とピアニスト」です 歯科医院の受付をやっている小松崎敦美のところに、憧れのピアニスト・大西文雄が歯の治療にやってくる 敦美は彼のファンであることを伏せて彼に接するが、内心では大西が親知らずを抜いたことを知っているのは自分だけだ、と密かな優越感を抱いている そして、ついに彼のリサイタルに行って前から3列目の正面の席で聴くことになる 演奏後、真っ先に立ち上がって拍手をしたら、大西がこちらを見たので 慌ててパンフレットで顔を隠した   その後、再び大西が治療にやって来た時、「先週の土曜日、ある場所で小松崎さんにそっくりな女の人を見かけたけど、あれは他人の空似なのかなあ」と顔を覗き込まれる。敦美はやっぱりバレていたのかと赤面するが、大西は「あなた本人だとしたら、初めからぼくのことを知っていたわけで、知らんぷりを決め込んだというのは、人が悪いともとれるし、職業倫理的には正しいともとれるし・・・・。まあ、どちらでもぼくは好きだけどね」と言われる。敦美は「他人の空似でお願いします」と言うと、大西は「わかった。それでいこう」と肩を揺すって笑う

この最後の「他人の空似でお願いします」と「わかった。それでいこう」がいいですね 奥田英朗の作品の良いところは、それ以上深く踏み込まないところです ちょっとした憧れはそのままにしておきます。そのため 爽やかな気持ちで本を閉じることができます

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フェスタサマーミューザ・フィナーレコンサートを聴く~秋山和慶✕東響によるバーンスタイン「キャンディード」組曲、ジョン・ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレ」「チューバ協奏曲」他

2018年08月13日 07時30分03秒 | 日記

13日(月)。わが家に来てから今日で1411日目を迎え、トランプ米大統領のメラニア夫人の両親(スロベニア出身)が9日、米国籍を取得した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                     それってトランプ大統領が非難していた「移民の連鎖」そのものじゃねーの?

 

         

 

昨日、ミューザ川崎でフェスタサマーミューザ「祝バーンスタイン生誕100年  フィナーレコンサート」を聴きました プログラムは①ジョン・ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレ、②同「テューバ協奏曲」、③バーンスタイン「キャンディード」から「序曲」、「グリッター・アンド・ビー・ガイ(着飾って浮かれましょ)」、「キャンディードの哀歌」(「ナッシング・モア・ザン・ジス」から曲目変更)、「オー・ハッピー・ウィー(なんて幸せな二人)」、④バーンスタイン(C.ハーモン編)「組曲キャンディード」、⑤バーンスタイン「ディヴェルティメント」です ②のチューバ独奏は田村優弥、③のヴォ―カル=幸田浩子(ソプラノ)、中川晃教(シンガーソングライター、俳優)、指揮=秋山和慶です

午後3時の開演に先立って午前11時半から同じ会場で公開リハーサルが開かれました   指揮者・秋山和慶氏が指揮台に上がると、楽員全員が立ち上がって一礼し すぐに座ります。リハーサルでこうした”儀式”があるのはプロのオケでは東京交響楽団だけだと思います 昔からの古き良き伝統のようですが、見ていて気持ちが良いです

プログラムの順番におさらいしましたが、歌手の出番のある3曲は、本番へのコンディション調整のためリハーサルなしとのことで、その分時間が短縮され、休憩なし90分で仕上げました

 

     

 

さて本番です。自席2CA6列52番の席ともこれでお別れです 会場は9割方埋まっているでしょうか。よく入りました

オケはいつもの東響の並びで、ヴァイオリン・セクションが左サイドに固まっています。コンマスは水谷晃です

秋山氏の指揮で1曲目のジョン・ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレ」が華々しく演奏されます この曲は1984年のロサンゼルス・オリンピックの大会公式音楽として作曲されました 「スターウォーズ」のジョン・ウィリアムズらしい分厚いブラスが輝くゴージャスな音楽です

2曲目はジョン・ウィリアムズの「テューバ協奏曲」です この曲は彼が指揮者を務めていたボストン・ポップス管弦楽団の創立100周年を祝って、同楽団のチューバ奏者、チェスター・シュミッツのソロにより初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ・モルト」の3楽章から成りますが、休みなく続けて演奏されます

東京藝大大学院を修了し「ミューザ・ソリスト・オーディション2016」に合格した田村優弥がテューバの独奏を務めます いかにも大きな金管楽器・チューバを演奏するのに相応しい立派な体格の持ち主です 協奏曲のソリストはたいてい指揮者の左サイドで演奏しますが、彼は右サイドで演奏します。何か理由があるのでしょう

秋山氏の指揮で第1楽章が開始されます この楽章では、ホルン4本との対話が面白く聴けました 終盤のカデンツァは高音から低音までチューバの魅力がよく出ていました 第2楽章ではフルート首席・相澤政宏との対話が聴きどころでした 第3楽章では弦楽器やハープとのやり取りが楽しく聴けました 普段は主役になれない金管楽器チューバの可能性を再認識した演奏でした


     


プログラム後半はレナード・バーンスタイン(1918‐90)の特集です

最初は有名な「ウエスト・サイド・ストーリー」の前年=1956年に作曲されたミュージカル「キャンディード」の音楽です 初演当時はそれほどヒットしなかったようですが、1980年代になって再評価されました

最初に「序曲」が勇ましく演奏されました。金管も木管も弦も打楽器もノリノリです

次いで、上が金のラメ、下が濃いピンクの衣装、頭に白い羽を付けた幸田浩子が登場、「グリッター・アンド・ビー・ガイ(着飾って浮かれましょ)」を歌います この曲は貴族の娘であるのに身を落としているクネゴンデのアリアですが、幸田は泣いたり笑ったりと表情がクルクル変わる歌を表情豊かに歌い上げました

次いで、ミュージカル歌手・中川晃教が「キャンディードの哀歌」(「ナッシング・モア・ザン・ジス」から曲目変更)を感情を込めて歌いました

次いで、幸田と中川が登場し キャンディードとクネゴンデのデュエット曲「オー・ハッピー・ウィー(なんて幸せな二人)」を、題名の通り幸せそうに歌いました 二人が歌いながら垣間見せるちょっとした仕草は、流石は演歌テナー、もとい、エンターティナーだと思います

次に組曲「キャンディード」(C.ハーモン編)が演奏されます この曲は8つの音楽がメドレー形式で演奏されます。オーボエ首席の荒絵理子、フルート首席の相澤政宏、チェロ首席の西谷牧人のソロが印象に残りました

最後は「ディヴェルティメント」です この曲は1980年にボストン交響楽団創立100周年を記念して作曲されました。多彩な種類の音楽を並べた次の8つの小品から成る作品です

1.トランペットの合図とファンファーレ、2.ワルツ、3.マズルカ、4.サンバ、5.ターキー・トロット、6.スフィンクス、7.ブルース、8.行進曲”ボストン交響楽団よ、永遠なれ”

1はブラスの迫力です。2は弦楽の演奏が美しく、コンマス・水谷、チェロ・西谷のソロが光ります 3はオーボエ・荒、ファゴット・福井の演奏が印象的です。5はユーモラスな曲想で、クラリネット・吉野の演奏が印象に残ります。7はミュート付きトランペットがマイルス・デイビスに近づけるか?といった感じです 8は冒頭、フルートが1本から2本、3本と増え、穏やかなメロディーが流れていたかと思うと、急に行進曲になり驚きます ピッコロの2人は立って演奏します。最後は勇ましく終わりました

歌手の2人が再登場し、アンコールに「ウエスト・サイド・ストーリー」から「トゥナイト」をロマンティックに歌い上げました 最後のコンサートに相応しい華やかなフィナーレで、キャッチフレーズ「奏クール!」のフェスタサマーミューザ2018の幕を閉じました

例年になく酷暑の夏でしたが、今年は12公演を聴き通しました

なお、「ほぼ日刊サマーミューザ」によると、ミューザ川崎シンフォニーホールは2019年1月15日(火)から6月30日(日)までの約半年間、舞台設備等改修工事のため休館となるそうです 個人的にはサントリーホールに次いで好きなホールなので残念なのですが、ホールを良くするためなら仕方ありません。東響の「モーツアルト・マチネ」どこでやるんだろう

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湊かなえ著「ユートピア」(第29回山本周五郎賞受賞作)を読む~成功者への嫉妬心の心理描写が鮮やか

2018年08月12日 07時27分44秒 | 日記

12日(日)。連日の猛暑の中、巣鴨地蔵通り商店街の入口付近には氷柱が立てられていました ここで謎かけです。「猛暑の中の氷柱とかけて何と解く?」「簡単な算数の計算問題と解く」「そのココロは?」「どちらも とけるのは時間の問題でしょう」 おあとがよろしいようで

 

     

 

山形で働いている息子がお盆休みで約4.5か月ぶりに帰京しました。金曜の23時頃の深夜バスに乗ってきたようで、家には土曜の朝6時45分頃に着きました バスだけで7時間以上かかったようです。いろいろ現地の野菜や果物をお土産に買ってきたので料理に使えそうです 私には地酒・本醸造 ささの舞 を買ってきてくれました

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1410日目を迎え、国連安全保障理事会の制裁決議で輸出入が禁じられている北朝鮮産の石炭が 2017年にロシア経由で韓国に輸入されていたことが発覚した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

        北朝鮮の輸出品は 地球温暖化を進める石炭なんだね 同じ色ならチョコの方がいい

 

         

 

昨日、家に帰ってきた息子がさっそく昼食に、お土産に買ってきた山形の老舗ラーメン店監修のラーメンを作ってくれました 辛いラーメンに甘い半熟卵がよく合い、とても美味しかったです

 

     

     

 

普段 夕食はウィークデーは私が作り、土日は弁当や総菜を買ってくるのですが、息子が「山形で買ってきた食材で作る」というので任せました たっぷり時間をかけて作ったのは「ラタトゥイユ」です トマト、ナス、玉ねぎ、パプリカ、ズッキーニ、大葉という野菜に鶏モモとローリエが入っています。調味料は塩だけ、水は一切使わず野菜の煮汁だけで作ったそうです。とても美味しかったです 息子に訊いたら、作るのは今回が3回目だそうです。アパートでの一人暮らしで食事はどうしているのかと訊いてみたら、すべて自分で作っているとのことでした 私が独身時代に1年間下宿生活をした時は すべて外食だったことを考えれば、大したものだと思います

 

     

 

そうしたら、9時半頃帰ってきた娘が、コストコで海ぶどうを買ったというのでポン酢醤油で食しました とても美味しかったですが、賞味期限が何と今日(11日)です。300グラムはとても食べきれないです 

 

     

 

         

 

昨夕は、ミューザ川崎で「真夏のバッハⅢ 鈴木雅明パイプオルガン・リサイタル」を聴く予定でしたが、息子が帰ってきたその日なので家で一緒に夕食をとることにしました 前述のとおり息子が夕食を作ってくれたし チケットは無駄になりますが、仕方ないでしょう 

ということで、本を読みました。湊かなえ著「ユートピア」(集英社文庫)です 湊かなえの本はこのブログでも何冊かご紹介してきました。1973年広島県生まれ。2007年に「聖職者」で小説推理新人賞を受賞、翌年、同作を収録した「告白」でデビューし、第6回本屋大賞を受賞しました。2016年にはこの「ユートピア」で第29回山本周五郎賞を受賞しています

 

     

 

太平洋を望む美しい景観の港町・鼻崎町は先祖代々からの住人と新たな入居者が混在する町だ そこに住む3人の女性ー商店街の仏具屋の妻・堂場菜々子、都会から移住してきた陶芸家の星川すみれ、夫が八海水産に勤める転勤族の妻・相場光稀が、この町で15年ぶりに行われる祭りの実行委員として出会う。菜々子の娘・久美香は、幼稚園の頃に交通事故に遭い、小学生になっても車椅子生活を送っていた すみれは、自分の作る陶器のストラップを使い、久美香を広告塔にして車椅子利用者を支援するボランティア基金「クララの翼」を立ち上げることを思い付く 最初のうちは、テレビや雑誌などで取り上げられて うまくいっていたが、ある噂がネット上で流れたため、次第に風向きがおかしな方向にいってしまう

湊かなえの作品を読んで いつも感じるのは、成功している者への周囲の嫉妬ややっかみなどの心理描写が優れているということです   それは特に女性同士の関係の中での描写に言えると思います

もう一つは、ボランティアとしてやっているのに、偽善者扱いされることへの苛立ちなどの描写も、そうだよな、と納得してしまうところがあります 「結局は売名行為だ」とか「好きでやってるんだろう」とかいうのはよく聞かれる言葉です

本書の題名「ユートピア」は、「鼻崎ユートピア商店街」からきていますが、筆者は菜々子に次のように言わせています

「生まれた時から住んでいる場所を、花が咲いて美しいところだとか、青い海を見渡せて最高だとか、温暖ですごしやすいとか、特別な場所だと思ったことなど一度もない そういうのは、外から来た人が感じることだ。だからといって、その人たちに町の良さを教えてもらう必要などまったくない。地に足着けた大半の人たちは、ユートピアなどどこにも存在しないことを知っている ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、ここではないどこかを探しているだけだ。永遠にさまよい続けていればいい

しかし、次のように続けます

「光稀のことも、すみれのことも、こんなにバカにしているのに、菜々子の目に涙が溢れてくる。涙の理由は解っている。ユートピアに誰よりも焦がれているのは、菜々子自身なのだ

そして、

「ユートピア探しは、今すぐでなくてもいい。久美香が成人してからでもいい

と結んでいます

この小説の最後にある光稀の娘・彩也子の独白を読むと、車椅子生活を強いられていた久美香にいつしかユートピアが訪れていたことが分かります。それがこの小説の救いになっています

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