毎日新聞2019年10月29日
神奈川県座間市で2017年、アパートの一室から9人の切断された遺体が見つかった事件は30日で発覚して2年となる。事件では自殺願望をSNSでつぶやいた人たちが犠牲になった。強盗殺人や強制性交等殺人罪などで起訴され勾留中の白石隆浩被告(29)が毎日新聞の取材に応じ、「起訴事実を全て認めようと思う」と明らかにしたうえで「金がほしかった。殺人なんてやりたくなかった」などと繰り返した。
記者は9~10月の計6回、立川拘置所(東京都立川市)で白石被告と面会し、計約3時間にわたって事件の経緯などを質問した。髪の毛が肩まで伸び、口ひげとあごひげを蓄えた白石被告は、質問の一部には金銭を要求して回答を拒みつつ、動機などを語った。
事件で、白石被告はツイッターで自殺をほのめかす女性らに「一緒に死のう」などとうそをついて自宅に誘い込んだとされる。白石被告は、ツイッターを「めっちゃ便利だった」と言い、「女の子が『死にたい』とつぶやくと、男が群がってくる状態だった」と振り返った。女性の気を引くために「魅力的な男性を演じ、悩みがあるなら聞いてあげた」と語った。
1人目の女性は、17年8月23日ごろに殺害されたとみられる。白石被告は、事件直前の3日間に「携帯電話で過去の事件を調べた」といい、隠し通せると考えていたようだ。約2カ月の間に当時15~26歳の男女9人が次々に殺害された。
当時は無職だった白石被告。1人目の女性からアパートの入居費用などとして51万円を借りていた。「金を返したくなかった」と説明する一方、「(女性が)お金を持っていなかったり、ツイッターで出会っていなかったり、一つでも要素が欠けていたら(一連の)事件はなかったかもしれない」とも述べた。性的な動機も話した。
自らの子ども時代は「根暗で友達は少なかった」。神奈川県内で過ごした高校時代は一人でテレビゲームに没頭するのが大好きだったという。
東京地検立川支部は精神状態を調べる鑑定で完全責任能力があったと判断し、18年9月に9事件すべてで起訴した。現在は公判前整理手続きが続く。白石被告は、拘置所で「暇つぶしに」写経を始め、筋力トレーニングをしているという。「逮捕で落ち込んだが、2年が経過し、諦めもつく」と心境を話した。「自白や物的証拠もある。今は裁判で争おうとは考えていない」と続けた。
一方で、謝罪の意思は「ない」と断言する。「私は成果主義者で効果が出ないことをするのが嫌い。(遺族らに)謝って何か私の状況が変わるんですか」と持論を展開した。死刑を覚悟していることもほのめかし、「ばれちゃったんだから、罰は受けるべきなんじゃないですか」と淡々と答え続けた。【最上和喜】
ことば「座間9人殺害事件」
2017年10月30日に神奈川県座間市のアパート一室で、クーラーボックスに入った複数の切断遺体が見つかった事件。その後の捜査で当時15~26歳の男女9人の遺体だったことが判明した。部屋の住人だった無職の白石隆浩被告(29)が警視庁に殺人容疑などで逮捕され、強盗殺人や強制性交等殺人などの罪で起訴された。