最終更新:2024/8/28
人口減少や少子高齢化への対策は、特に地方自治体にとっては急務とも言える課題です。
地域経済を守るため、また持続可能なまちづくりをおこなうためには、資源となるヒト・モノ・カネを呼び込むことが必要ですが、なかでも「ヒト」の重要度は高いと言えるでしょう。
ヒトを起点とした地域の活性化を図るには、そもそもの「ヒト」を獲得するための施策、つまりは移住者や定住者を増やすための取り組みが求められます。
本記事では自治体が取り組むべき「ヒト」に対するプロモーション方法や、具体的な施策事例を紹介します。
自治体が移住・定住者を増やしたい理由
近年、全国の各自治体では移住者・定住者を増やす取り組みに力を入れています。なぜ移住や定住を促進する必要があるのか、主に次のような理由が考えられます。
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自治体の経済基盤を維持するため
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地方への移住ニーズが高まっているため
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働き方改革による居住ニーズの変化に対応するため
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国が地方移住を推進しているため
人口減少は地方経済の縮小に直結します。とくに生産年齢人口の減少は、企業の労働者不足や後継者不足を招き、企業の存続にも影響することが懸念されます。
さらに消費人口が減少すれば市場は縮小され、地域経済はマイナス成長に陥るという、負のスパイラルになりかねないでしょう。
自治体を存続させるには一定の人口規模が必要であり、ヒトを確保することは移住・定住施策の最大の目的と言えるかもしれません。
また、近年はリモートワークの普及や働き方改革の推進に伴い、地方移住へのニーズが高まっています。
「地方に移住したい」というニーズに応えることは自治体にとってもメリットが多く、この契機を活かそうとする動きも各自治体でみられるようになっています。
東京圏への人口集中による地域社会の担い手不足の深刻化は、国としても喫緊の課題として捉えています。
さまざまな支援策もおこなわれており、たとえば「効果的な移住定住推進策事例集」を提供したり、「おためしサテライトオフィス」などの企業誘致に関する政策が打ち出されたりしています。
こうした国の方針も、各自治体が移住・定住者を増やす取り組みを後押ししていると言えるでしょう。
移住定住者を増やすための施策とは
移住・定住者を増やすために、地方自治体はどのような施策が採れるのでしょうか?具体的な施策事例をご紹介します。
企業の地方移転促進
近年は多くの企業でテレワークが普及し、「場所を選ばない働き方」が選択できるようになってきました。
また働き方改革の一貫やコスト削減、BCP対策など、さまざまな理由から地方へのオフィス移転を検討する企業も増えています。
企業の移転ニーズの高まりは、移住・定住者を増やしたい自治体にとってはチャンスとも言えます。
企業を誘致できれば、関係人口の創出や経済の活性化など、人口増加につながるメリットが多いためです。
実際に、企業の移転を促進するための施策を打ち出している自治体も多いです。
たとえば、広島県では、広島に移転する企業に対して最大1億円の助成をおこなっています。鳥取県鳥取市では、本社またはサテライトオフィスを構築する事業者に対して助成金を用意することで、企業誘致を図っています。
移住・定住者を増やす施策として、企業の誘致を検討してみても良いでしょう。
ワーケーションの誘致
移住・定住者を増やすためには、まず居住先の選択肢になれるよう、自治体を認知してもらうことが大切です。その施策としてワーケーションの誘致という手段があります。
昨今、働き方改革の一貫としてワーケーションを導入する企業が増えています。ワーケーションとは仕事と休暇を両立させた働き方です。
滞在する中で、ワーケーション先を観光したり、地域と関わったりしてもらえるため、自治体にとっては地域の魅力を知ってもらう契機となります。
「暮らしやすいまち」「住んでみたい」と思ってもらえれば、その後移住につながる可能性もあります。
ワーケーションを誘致するために、宿泊費や働く環境の整備費を助成している自治体もあります。
たとえば、長野県岡谷市では、2泊3日以上のワーケーションをする場合、交通費・宿泊費・レンタカー代・観光施設を補助する制度を設けています。
ワーケーションの誘致は、移住・定住者を増やす初期段階としての施策、「自治体のPRと認知度の向上」に際して有用な施策と言えるでしょう。
移住支援金の支給
「暮らしやすいまち」「将来にわたって安心して暮らせるまち」であることは、移住・定住の決定を大きく作用する要因と言えます。
地方への移住に関して国が整備している助成や補助金もありますが、「暮らしやすいまち」をよりPRするため、自治体として独自に支援を行なっているケースも多いです。
たとえば、次のような点を軸に各自治体で補助金や支援を行なっています。
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住宅支援・補助金
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就労に関する補助金
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子育てに関する支援・補助金
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通勤・通学に関する支援
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移住体験に関する補助金
とくに子育てに関する支援を実施している自治体が多いようです。
人口を増やすという観点で、若い世代をターゲットにした施策を重要視している自治体が多いと言えるでしょう。
移住希望者向け研修・体験の実施
「その地域での暮らしが自分に合っているのか」「どのようなライフスタイルが実現できるのか」など、移住者が抱える不安はさまざまあります。
その不安を払拭してあげることで、移住を後押しできる可能性も高まります。そのため、移住先との相性を確認してもらうための体験や研修も効果的な施策と言えるでしょう。
たとえば、福島県西会津町では、古民家を改修した住宅「Otame」でのお試し移住を実施しています。
1週間から1ヵ月の居住を通して、田舎暮らしで必要となる慣習や物件の管理を体験、移住に向けてのカウンセリングなどを実施しています。
実際の生活を疑似体験することで、移住・定住を具体的にイメージできるプロジェクトです。
また、山形県鶴岡市では、UIJターンを希望する人を対象としたセミナーを東京にて開催。
地元での就職を希望する人と地元企業のマッチング機会を提供することで、暮らしの基盤となる「仕事」に関する悩み・相談にアプローチしています。
移住定住者を増やすために自治体が取り組むべき3つのこと
移住者・定住者を増やすには、実際に移住を検討している層へのアプローチだけでなく、潜在層へのアプローチ、そして現在住んでいる住民に対する施策が重要です。
「住んでみたい」「住み続けたい」と思ってもらえるよう、自治体としてプロモーションや魅力的なまちづくりに力を入れる必要があるでしょう。
移住・定住を促進するため、また受け皿を整備するためには、次のような取り組みが求められます。
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デジタルを活用したマーケティングの実施
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地域のブランド化と産業の活性化
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移住・定住相談窓口の設置
それぞれ詳しくご紹介します。
デジタルを活用したマーケティングの実施
移住者を増やすには、まず自治体のことを認知してもらう必要があります。
自治体をプロモーションする方法はさまざまありますが、とくに多くの自治体で力を入れているのはデジタルマーケティングです。
デジタルマーケティングとはデジタルを活用したマーケティング手法の総称で、たとえばSNSの運用やインターネットへの広告掲載、自治体のWebサイトもこれにあたります。
プロモーションには費用もかかるため、ターゲットの目に留まりやすい媒体や手法を選択することは、効率の面からも重要です。
スマートフォンなどをおもな情報収集手段としている若年層やファミリー層へのアプローチには、デジタルコンテンツを活用したプロモーションが有用と言えるでしょう。
またデジタルマーケティングは、移住検討者だけでなく、潜在層へのアプローチも期待できます。
具体的には次のような施策が選択肢となります。
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SNSによる自治体情報の発信
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動画を活用したプロモーション
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インターネットへの広告掲載
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移住・定住に関するWebサイトの制作
ターゲットとする層に届きやすい施策を打っていくことがポイントです。
地域のブランド化と産業の活性化
先述したように、自治体が移住・定住を促進する大きな目的の1つは、地域の経済基盤を維持することにあります。
そのためには人口を増やすだけでなく、地域のブランド化による地元商品・サービス価値の向上や雇用の創出など、経済を活性化させる施策も重要です。
産業が活性化すれば、雇用の創出や関連人口の増加につながります。
また税収が上がることで、住民への還元もより行えるようになるでしょう。
より住民にとっての「住みやすい・暮らしやすいまち」づくりが可能となり、ひいては移住・定住促進への寄与も期待できます。
また地元の特産品やサービス価値が向上することで、住民の地元への愛着心やエンゲージメントが高まることも期待できます。
移住者の誘致だけでなく、定住者を増やす観点でも、地域のブランド化や産業の活性化は重要な課題です。
移住・定住相談窓口の設置
移住を検討している人のアクションを後押しするために、移住や定住について相談できる窓口を設置すると良いでしょう。
移住・定住を検討する理由は人それぞれです。
各人のニーズを把握することで適切なサポートをしたり、不安や疑問を解消したりすることで、より現実的に移住・定住を検討してもらえます。
充実した相談体制が整備されていることは、移住検討者にとっても大きな安心材料となるでしょう。
移住・定住に関してワンストップで相談できる窓口を設置したり、移住コーディネーターによる相談を実施している自治体もあります。
移住・定住の相談をどこにすれば良いか、明確にわかるような窓口の設置は、自治体としても検討したい施策の1つです。
まとめ
持続可能なまちづくりにあたって、一定の人口を保つことは重要な要素です。
少子高齢化や東京圏への人口集中に対応するために、自治体としては移住・定住者を増やす取り組みに力を入れる必要があるでしょう。
自治体として採れる施策はさまざまありますが、デジタルコンテンツを使ったプロモーションや移住・定住相談窓口の設置などは共通して取り組みたい施策と言えます。
ほかの自治体の施策も参考に、地域にあった移住・定住促進を進めていきましょう。
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