愛する人を取り戻すために
S.ハッサン, (著), Steven Hassan (著), スティーヴン ハッサン (著), 中村 周而 (翻訳), & 1 その他
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スティーヴン・ハッサンの「リリーシング・ザ・ボンド」の翻訳です。
わたしたちが模索している方法とほぼ同一内容です。ただし心理学的手法の駆使はハッサンの専門ですから、一部を除いて、わたしたちは彼にははるかに及びません。
今回の書物は、前回に比べ、彼個人の証に相当する部分が記述されていたり、ユダヤ教徒としてのアイデンティを公表したりしていて、好感がもてます。
またミニ交流という方法は日本的にはどう応用できるか、個々のケースでかなり違ってくるのかなと思います。ただ具体例の提示があるので応用はしやすいと思います。個々のケースで違っているがゆえにここまで書けるとも言えます。
部分的にはわたしたちの既に行ってきた方法と同内容なのですが、決定的に違うのは、ハッサンはこれを意識的に方法の区別をして「戦略的交流アプローチ」として位置付け、コンセプトを明確にしたことです。
「ディプログラミング」・「脱会カウンセリング」・「戦略的交流アプローチ」の区別は明確で、「戦略的交流アプローチ」の場合には、統一協会側から訴訟をおこされる可能性はまったくありません。
ハッサン自身が「ディプログラミング」もしくは「脱会カウンセリング」によって脱会したという経緯も関係しているだろうし、テッド・パトリックらの方法への批判的視点があったことも、大いに関係していると思われます。
「戦略的交流アプローチ」が開発考案される背景には、法外な懲罰的な判決が出て、CANが事実上、カルトに乗っ取られるという事件があり、危機感をもったことが大いにあったでしょう。
日本でも、アメリカでの勝訴にうまみを覚えたサイエントロジーの訴訟戦略を統一協会が模倣している事実があります。宗教家を訴えた東京・横浜の両事件の完全勝訴(統一協会信者原告側敗訴)によって「救出・支援」の方法が違法性を有しないことが確認されたが、他方これらの訴訟を契機として、方法論として、「脱会カウンセリング」は、脱会を主目的とする「脱会」のためのカウンセリングから、家族関係再創造・関係性回復・人格の成熟に焦点をもつものへと明確に目的が転轍されてゆきました。この流れもアメリカでの「戦略的交流アプローチ」の方法論的明確化と動機としては並行していると思います。
けれども、日米の違いはかなりあって、脱会した人たちの自助グループは、それ自体の発展が展開しませんでした。これはカウンセラー主導型の救出が殆どであり、日本にはプロフェッショナルとしての「救出カウンセラー」が存在しないからだと思われます。脱会者がグループとして組織化されるということは少なくとも継続的には発展していません(一時的な宗教家の周囲に形成される小さなサークルは別として)。これは自立を目標とする限り、仕方のないことでした。他方、脱会者の自助的グループが継続的に、支援・フォローするボランタリーな組織が必要だったなということも反省すべき点ではなかったかなと思っています。
今後は、SIAは範例的に参照されるテキストになるでしょう。家族を救出したい人々は繰り返し読み、自分自身に固有な応用を工夫することになるでしょう。
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