高知発 NPO法人 土といのち

1977年7月に高知県でうまれた「高知土と生命(いのち)を守る会」を母体にした、47年の歴史をもつ共同購入の会です。

いのちの土

2013-09-04 09:00:00 | 土といのちからのお知らせ
理事長 丸井一郎です。
なぜ「土といのち」の野菜はおいしいのでしょうか。え、おいしいかどうかが分からない?おなかの中の環境が荒れて、舌も鈍っていますね。甘いもの、添加物食品、とくに重加工品・重脂肪油脂類の食べ過ぎはないですか。体と心が自然の循環に即していれば、ここのニンジンの方が化学肥料農薬栽培のものに比べて、口のなかで滋味が広がり、全体として我が身に取り入れるによく、頼もしいと感じるはずなのですがね。砂糖も塩もないので食べづらい?味覚が訓練されていないか、鈍化しているか、でしょうね。野菜であれ相手も命ですから、すまぬが食うぞ覚悟せいと食いつき、口の中で相まみえる一刻があって、唾液がしみだし、よっしゃ、おんしゃあの命はもろうたぜ、おまんはわしになれ、うまいのう、と噛み進む。ニンジンが地球と宇宙の総代、いやその一切れとなって、同じく一切れであるわたしのあらたな命になる、ありがたや。では分からない?

科学の分析的知性は、総合する心が直感することを後追いするが先取りはしない。地球の生命が全体としてつながり合い、大きな連関と循環をかたちづくることは、直感する無私の心には明晰に立ち現れていた。(先の勉強会の山下さんの自然農法論を参照のこと。)最近、その直感に(部分的に)対応する知見・意見が紹介されている。

たとえば、学術誌『日本の科学者』(2013.4;12-15)で、元東京農大教授(作物生理学)の太田保夫氏は「微生物と共生する農業」という論説を表し、要約として「世界の農業の発展を考えると、工業の発展に遅れまいとしたせいで、自然に最も近い産業であることを忘れていたようだ。地球の生物誕生以来34億年は、単細胞が細胞共生で進化してきた歴史である。その地球で人間が営むべき農業は、自然と共生する産業であり、微生物と共生する有機農業であるべきだ」と言う。

この論では、生物の誕生と進化、微生物による地球の酸素の形成を経て、植物が、とくに土中の根において、どのように微生物と共生するかを述べる。根はその先からムシゲル(<mucus根 +gell)という物質を出し、ここに微生物が生育し共生する。トウモロコシの根では、1haに1000m3(=1平米で100L)の量になる。別の著者(*)によると、健全な土1gには10億の微生物がいるという。土の中、根の周りで微生物と共同で作る微細で精妙な環境こそが「土の命」の元である。微生物を薬で殺せば、土の命が死ぬ。元気で円満な野菜ができない。最近の野菜に生命の力が欠けることは、数字にも表れる。ピーマンのビタミン:200mg/100g(1954年)vs 80mg/100g(1999年)=半分以下。
 
さらに太田氏は、人間個体の細胞総数約60兆に対して、腸内細菌など人体と共生する微生物は約100兆だと指摘する。とくに腸の中はいわば体の畑であり、上で見たのと似た共生関係が見られる。「善玉菌」もバイキンマンも含めた共生による腸内(体内・皮膚)環境の豊かさ健全さが元気の素である。除菌・除菌は人間を除去するに至る。
 
合成材低投入で持続可能な有機農業への転換を訴える太田氏は、「農業を発展させるために、戦後開発してきた化学肥料や農薬が自然環境に(否定的な)影響を与えていたことに気づかず、故郷に帰って初めてその事実を知った自分を恥じている」とまで率直に述べている。知性を包括しその基をなす賢さはだれにでもそなわるが、分析的知性は実践者の直感には及ばない。狭義の有機より自然農法に未来はあると予感される。</font>

(吉田俊道『いのち輝く元気野菜のひみつ』大地といのちの会、2005(改訂版)、
同著『生ごみ先生のおいしい食育』西日本新聞社、2005)

9月号『お便り・お知らせ』掲載

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