高知市 はなればなれ珈琲の鈴木野歩です。
★ コーヒーの美味しい入れ方&よもやま話 その2 ★
前回は蒸らしの大切さを力説したつもりですが、皆さん実践されてますでしょうか?
第2回ではさらに深くドリップの世界に入り込んでいただきます。
まず予め知っておきたいコーヒー抽出の基本として、
1、抽出スピード:ゆっくり時間をかけて細く注ぐと濃くなる。
2、粉の挽き具合:荒く挽くとあっさりした味。
雑味は感じないが、旨味も少ない。
逆に細かく挽くと成分が多く抽出され雑味も多くなる。
3、使う粉の量:多く使えば濃くなり、少なくすると薄くなる。
4、お湯の温度:高いと苦味、酸味とも強くなり、低いと弱まる。
という、4つのポイントがあります。
2~4はミルの目盛り、ハカリ、温度計で定めることができますが、お湯の注ぎ方だけは人間の手で行うもの
なので計ることが難しいです。手で注ぐ動作を一定に保てば、いつも好みのコーヒーを淹れることができる
ようになります。
今回はそのためのマニュアルを書きます。
メリタやカリタ等の主要メーカーが販売してきた台形ペーパー用のドリッパーを使うことを前提としています。
円錐形のドリッパーはちょっと勝手が違って来るのでご注意願います。
【抽出開始】
ひとまず1杯120cc抽出するとして、少し荒めに挽いた粉を13~17gくらい用意します。量はお好みで増減し
てください。挽き具合は少し荒めに挽いた方が雑味のない味になりますが、粗く挽いて粉を少なくするとコクが
なくなるので、そこは量を増やして補います。
蒸らし作業を終えてふわっと膨らんだ表面を見つめて15~30秒くらい待ち、表面の膨張が落ち着いたのを確認
してから抽出を始めます。
【1回目の注湯】
粉の中心から「の」の字を書くように外側に向かって4回注いで、5回目からは内側に向かって注ぎ、7回転目
で中心に戻ってくるように注ぎます。
この時注意しなければいけないのは、粉の縁にはお湯を注がないという点です。ドリッパーの形を見ていただ
くとわかりますが、縁の方には粉の層がほとんどないことがわかると思います。層のないところにお湯を注いで
も薄いコーヒー液しか抽出されません。もう1点は楕円に注ぐという点です。円錐計なら円でいいのですが、台
形ドリッパーの表面はヨコに長い楕円形になっているのに加えて、ヨコの縁は粉の層が厚いのに対し、タテの縁
は粉の層が薄いためにヨコに伸びる楕円に注がないと抽出効率が悪くなります。
この7回転を25秒くらいで行い、いったん注ぐのを止めて10秒ほど待ち、表面が少し窪んできたところで2
回目の注湯にはいるのですが、この時にコーヒーの抽出量を確認します。1杯120ccとして1杯のコーヒーを抽
出する場合、この2回目の抽湯を始める時点で50ccくらいコーヒーを抽出しているのが理想です。120ccの半
分の60ccを越えているようではお湯を太く注ぎすぎで、成分が抽出できてない薄いコーヒーになり、逆に40cc
以下の抽出量では細く注ぎすぎで、ドリップコーヒーとしてはかなり濃いコーヒーになっているということを意
味します。
なかなか計量することが難しい注湯量ですが、抽出途中でのコーヒー抽出量を確認することで、抽出が正確に
行われているかを確認することができます。
少ない抽出量なら2回目からお湯を太く少し速く注ぐ、逆に多く抽出していた場合は細くゆっくり注ぐ等すれば
味のブレを修正することができます(ただ、修正といってもあくまで弥縫策(びほうさく)なので、はじめから適正
な湯量で抽出した場合に比べると味は劣ります)。
【2回目】
【2回目】も同じように外側に4回、内側に3回の7回転で25秒くらいで注いだ後に10秒ほど待ちます。
またこの時も抽出されたコーヒーの量を確認します。
90~100ccくらい落ちていれば適正です。
【3回目】
【3回目】はこれまでとは変わって、太く速く注ぎます。
コーヒーの成分は2回目までで多くが抽出されます。後はお茶でいう出涸らしのような薄くてえぐいコーヒーが
抽出されるので、さっさとお湯を注いで抽出というより濃度調整という感じで外側へ3回、内側へ2回の計5回
を10秒くらいで注ぎます。所定の量まで抽出できたらドリッパーを外します。
以上、ドリップする時の作業の流れをかなり細かく書いてみましたが、文字だけで説明すると何だか分かりに
くい気もしますがどうでしょうか?前回の蒸らしから始まって今回の抽出まで一通りお伝えしましたが、あとは
皆さんのお好みでアレンジしてもらえればと思います。ちなみに私は粉は17g、ドリップするときの7回転を
30秒くらいかけるので、かなり濃厚なコーヒーを飲んでいます。
コーヒーの濃度は質の良い悪いとは別の、好みの問題になります。あっさりしたコーヒーをお好きな方はお湯
を速く太く注ぐ、荒く挽く、量を少なくする、湯温を下げる、等で好みの味に近づくことができますし、しっか
りした味を求めるならその逆にすればいいということになります。それでは皆さん、後は実践あるのみ。
次回は2杯以上淹れるときのことやおすすめのドリッパーやポットのことなど、今回省いたことを書く予定です
※ この記事は、NPO法人土といのち『お便り・お知らせ』2018年11月号より転載しました。