東京多摩借地借家人組合

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地主から建物が朽廃したので土地を明渡せといわれたが

2006年11月24日 | 借地借家の法律知識
(Q)私は昭和13年頃に建てた家に住んでおり、土地は借地です。何分にも相当古い家なので、廊下を歩くとミシミシ音がし、戸や障子の建て付けもあまりよくありません。ところで先日地主から、あなたの家はすでに扱廃したので、借地権は消滅したから返して欲しいという内容証明郵便が届きました。私としては、あと何年かは住めると思うのですが、地主のいうとおり土地は返さなければなりませんか。

(A)従来の借地法では、地主の言うとおり、借地上の建物が、扱廃状態に達してしまえば、借地権は消滅することになっていました(借地法2条1項)。
 借地借家法では、建物扱廃による借地権消滅の制度を廃止しておりますが、従来の借地法の規定に従う契約(平成4年7月31日以前に結ばれた契約)では、建物が扱廃した場合には借地権が消滅することになっておりますので、ここでは一応の説明をします。
 裁判上、建物の扱廃とは、倒壊または物理的な使用不能の意味ではなく、腐朽により、社会通念上、住居としての使用目的に適する価値を喪失したと認められる場合、をいうものとされています。
 裁判例をみてみますと、数年来、使用されていない建物が、すでに建築後60年を経過し、屋根瓦が落ちて、雨漏りの箇所が多く、周囲の壁は崩壊して大穴があき、柱、板類、土台などは腐食して、再使用に耐えるものはほとんどなくなり、修理しても新築に近い大改造を必要とし、経済的には新築の方が有利と認められるときには、その建物の扱廃を認めています。
 これに反し、建物の骨格部分というべき柱桁、屋根の小屋根などの一部に多少の腐食箇所があるが、とにかくこれらの部分の構造にもとづく周りの力によって屋根を支えて独立に地上に存立しているもので、内部への人の出入りに危険を感ぜしめるようなものでない建物とか、建築語すでに長期間を経ている上に、修理が十分でないので著しく破損し、建物全体が10度ほど傾き、土台が全般に沈下し高低ができている部分があり、土台及び柱の土台に接する部分も腐食したが多く、屋根瓦も半分ほど著しく破損し、建具の開閉も十分でないけれども、全体としてみると、通常の屋根の形を保ち比較的安定しており、基礎土台の敷き直し、柱の根継、屋根の全面葺替え、壁の塗替えなどをすれば、今後10年ぐらいの使用が可能と認められる建物は、扱廃状態に達せずとされています。

 以上の具体例からもお分かりと思いますが、扱廃状態に達したとされるのは、建物の耐用年数には関係がなく、また、部分的な腐食があっても、それだけで決まるものではなく、結局、誰の目から見ても、もはや、これは建物ではないと考えられるか、また、それを修理するには、新築に準ずるような費用を必要とする程度のものということができます。
 また、震災や火事で建物が倒壊したり、消失してしまったりしたことが、扱廃状態に達したものではないことはいうまでもありません。


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