日々のつれづれ

日々うららかでありますようにと願ったけれど、平穏な日々は続かない。
穏やかな老後は訪れるか。

ことり

2017-01-16 | 趣味の時間

これまで年に100冊ほどの本を読んでいたが、昨年は90冊を切った。その中で特に印象に残ったのは小川洋子さんの「ことり」

次の文章で物語は始まる。

小鳥の小父さんが死んだ時、遺体と遺品はそういう決まりに則って手際よく処理された。つまり死後幾日か経って発見された身寄りのない人の場合、ということだ。

彼が小鳥の小父さんと呼ばれていたのは、長い間幼稚園の小鳥の世話をしていたからだ。
両親は早くに亡くなって、彼は独自の言葉を話すお兄さんと暮らしていた。お兄さんの言葉を理解できるのは彼だけだった。彼はゲストハウスの管理人として働き、度々お兄さんと幼稚園の鳥小屋を見に行った。
ある日ひとりで小鳥たちを見に行ったお兄さんは、鳥たちを見ながら亡くなった。

一人で暮らすようになった彼は、これまでよりも小鳥たちに近くなった。これまでよりも少しだけ他の人との関わりが出来た。心を寄せる女性にも出会ったけれど、その女性と会えなくなっても黙って受け入れた。

そして物語の終わりも、静かに訪れた。
彼がメジロを保護したのは偶々で、メジロが元気になったら放してやろうと思っていた。鳥は空を飛ぶものなのだから籠に閉じ込めておいてはいけない。
「明日の朝、籠を出よう。空へ戻るんだ」とメジロに話しかけ、ひと眠りする積りで目を閉じた彼は、二度と目覚めない眠りに落ちた。

 

こんなにも静かで、でも心を打つ物語があっただろうか。

 

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6 コメント

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切ない (すずめ)
2017-01-18 09:46:05
数日たって発見される・・・切ないですね。
誰も身内がいないってこと・・・
家族がいても、お互いの連絡もせずくひっそり暮らしてる人もいるのでしょうね。

わたし、子供達をこの世に出したこと、申し訳ないと(世の中に出して苦労させると)思った事がありました。
でも、もし、死んだら、泣いてくれる人はいるんだと・・・(^^)

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すずめさん (うらら)
2017-01-19 13:17:59
>でも、もし、死んだら、泣いてくれる人はいるんだと・・・(^^)
私、数年前に友人を亡くしました。
お見舞いに行っても、彼女の前では泣かないようにと思っていたのですが。
ある日、「会いたい」との連絡を貰って病院に行きました。「何かあったらうららさんにも連絡するように息子に言ってあるから」との言葉に思わず涙が出て、「涙は見せないでおこうと思っていたのに、ごめんね」と言ったら、自分のために泣いてくれる人がいるのは嬉しい と。

死からは誰も逃れることは出来ませんが、泣いてくれる人の存在を感じることは気持ちが穏やかになるのかもしれません。

この作品を読んで、少し涙した私です。
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独居 (♥ junjun)
2017-01-19 18:57:06
♪90冊とは よく読んだねぇ 凄ッ!
junjun ほぼ毎晩寝る前読書してるけど 90冊には到底及ばない(-_-;)

ボランティアの一つに 独居老人さん達の お世話をさせてもらってますが
お話してて とっても 切ない事あります。

人は 生まれて死んでいくまでの人生で 多くの人と関わるけども
何時しか気づいたら 周りに誰もいなかったと....

junjunは 泣いてくれる人が居なくても
自分自身が、あぁ、良い人生だったと思って 終えたいな。
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junjunさん (うらら)
2017-01-20 13:42:15
きっと、私は何もしないで読書しているのね。
それと図書館から貸し出しを受けているので、返却期日までに読まなきゃならないってこともあるのかも。

>泣いてくれる人が居なくても
自分自身が、あぁ、良い人生だったと思って 終えたいな

「良い人生だった」と思って旅立てるのが一番なんでしょうね。
そうかー。だからjunjunさんは生き生きと時間を使っているのね。
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Unknown (さつき)
2017-01-23 18:43:30
こんばんは~
かなりの数 読書して羨ましいです
小説の活字を集中して読めなくなってきています
どうしてなのかと思います 齢のせい?

主人も娘も読書好きで 読むのがすごく早いので
内容をしっかり覚えているのかと思いましたが
覚えていて 読み方があるのかと不思議でした

死についてのお話のようですね
精一杯生きたのだからどんな形でも その時が来たと
思っているからと 
単身なので何かあっての話をしました 


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さつきさん (うらら)
2017-01-25 11:18:51
確かに年々集中力が落ちてきているのは感じます。
理解力も・・・

この物語、私は死についての話と言うより一人の男性の生き方と思いながら読みました。
お兄さんを亡くして、これまでよりも社会との関わりが増えて。
そうすると心弾むこともあるけれど人との関係で悩みも生まれる。それらを受け入れて坦々と生きていく、その生き方の話だと思いました。

このように生きていきたいと思いました。
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