ちょうど終戦の日に、丸善を冷やかしていたらこの本が平積みされているのが目にとまった。偶々半藤氏の別の本を読んでいたこともあり、興味を持って買ってみた。
半藤一利と宮崎駿の 腰ぬけ愛国談義 (文春ジブリ文庫) 価格:¥ 599(税込) 発売日:2013-08-06 |
この対談は、先日紹介したNHK Eテレ SWITCH INTERVIEW 達人達の対談と同じもののようだ。テレビでは夏目漱石に関わる部分は全て省略されている。他方、本の方では会話を文章に直す際に語順を入れ替えたりして整理されており、会話のおもしろさがそがれている部分もある。両方見ているとその辺の様子がよくわかっておもしろかった。
いくつか興味深いと思ったところがある。
半藤:つくづく思うのですが、この国は守れない国なんです。明治以来日本人はこの国を守るためにはどうすればいいと言うことを考えた。誰もがすぐに気づいたのは、「守れない」ということだったと思います。
しかし、実際の日本は攻撃こそ最大の防御、と外への拡大を続けた。資源がないこともそれに輪をかけた。その結果は知っての通りである。
半藤氏は更に続ける。
半藤:いずれにしても日本が、この先、世界史の主役に立つことはないんですよ。
宮崎:ないですね。ないと思ます。
半藤:また、そんな気を起こしちゃならんのです。日本は脇役でいいんです。小国主義でいいんです。そういうと、世には強い人がたくさんいましてね。そういう情けないことを言うなと、私、怒られちゃうんですがね。
うん、怒る人はいるでしょうねえ。
ただ、昨年のオリンピックの時の、日本人の反応(選手、観客)とかを見ていると、昔のように金を目指して悲壮な死闘を繰り広げる、みたいな感じが薄れてきて、昔とは変わったなあ、という印象を強く持った。
数年前に流行?した、二位じゃダメなんですか?と言う言葉は多方面の反発を買ったが、あれは人々の意識のどこかに、そういう考えが知らず知らずのうちに入り込んでいるからこそ出たのでは、と今になって思う。
半藤:ドイツ人は親日的ではないんです(後略)・・
宮崎:むしろ日本嫌いかも知れません。(中略)じつは、今のドイツ人もさほど親日的ではないのではないかと僕は思っているんです。
ここは意外に感じた。ずいぶん昔、ニュルンベルクのレストランで、見知らぬおじいさんが、僕をじっと見てにこにこと笑っていて、どう応対したものかと、どぎまぎしたことがある。それからずっと経って、一時期ドイツの会社(在日)で、ドイツ人の上司の下で働いたことがある。中にはあからさまに人を小馬鹿にするドイツ人もいたりして、その後しばらくはドイツ嫌いになった。しかし、いろんな記憶も薄れてきた今は、ドイツ人上司が一生懸命ひらがなを書こうとしていたり、一緒に音楽の話をしたりしたことを思い出したりもする。何が言いたいかというと、身の回りの経験だけでは、全体のことはわからないんじゃないか、という気がするのだが・・。
もっとも、二人の会話はその後、海軍のドイツびいきの話題になり、半藤氏はあれはハニー・トラップだよ、と軽く結んでいる。
とにかく、お二人とも大変な博識で、初めて対話をしたとは思えないほど話が弾んでいる。文学の話から、歴史、さいきんの国際情勢、環境問題まで、話題は多岐にわたる。自分はこの年になっても、色々なことを知らなさすぎるなあ、と反省し、同時にもっと色々と好奇心を持って世の中を見ていこうか、と思わされた。