クイズダービーなどのテレビ番組はよく見ていたが(11PMはほぼ知らない。引退する頃、偶々見たことはある)、僕は競馬はやらないしジャズのこともあまり詳しくない。また氏の政治的な見解はそれなりに筋の通ったものだとは思うが、自分の立場とは異なることが多い。ので、あまりあれこれ語れるような立場にはないのだが。。
以前、この週刊誌に連載した記事をよく読んでいた時期があった。特に、闘病生活をされた様子が書かれているところは興味深かった。良くもかく戦えり、という感じがする。
ただ、一番印象に残った記事は、これだ。若いころ映画のシーンを見てあこがれた豪華客船によるクルーズ旅行を、50代のころに経験したがすぐ退屈してしまい、「もっと年を取ったら再挑戦しよう」と思う。70代半ばになって2度、経験するがいずれも楽しめなかった。昔とは事情が違い、今はクルーズも非日常な世界ではなく、単に安価なレジャーのひとつへと性格が変わってしまった。ドレスコードなども守られなくなった。巨泉氏はこう結論付ける。
「もっと年を取ったら」という考えは間違っていた。年を取れば取るほど、現代とのギャップにさいなまれるような気がする。残念ながら、人間は世代的にしか生きられないのかも知れない。
ある世代が影響を受けた価値観は、必ずしも永続的なものではない。若いころあこがれた大人の世界が、自分がその世代になってみると雲散霧消しているように感じられる。単に昔は事実を理想化してみていただけなのかもしれないし、ほんとうに社会やしきたりがただ崩れていっているのかもしれない(どちらの意見もうなづけるものがある。。)。
自分に振り返って、もし将来、諸事情が好転して、昔やりたくてもできなかったことができるようになったとして、その時そのことを自分は心から楽しむことができるだろうか、それとも「こんなものか」などと、内心がっかりするのだろうか?
大橋氏のコラムは、この世代の人たちが何を感じ何を考えているのかを、わかりやすく伝えてくれる。自分だって、そう遠くない未来に(元気なら)大橋氏の年代になっていくのだ。
先日は永六輔さんも亡くなられた。どちらも子供のころ、テレビやラジオをつければ聞こえてきた声や姿だ。年代的には、今の僕などの世代と同じくらいだったのかもしれない。
ご冥福をお祈りします。