そうでなければならぬか?(Muss es sein?)
と、楽譜にかかれていたそうだ。実際に見たわけではないけど。
ベートーヴェンが死の直前に作曲した、弦楽四重奏曲(op.135)の、最終楽章の動機(motiv)が、作者によってそのように名付けられているらしい。
続いて、
’そうでなければならぬ!’(Es muss sein!)
とも。
標題は「やっとついた決心」
(手元のブックレットでは独'Der schwergefasste Entschluss', 英語だと'The difficult decision'とわかりやすい)とあるのだという。
もっとこなれた日本語でいうなら、
”決めたよ”
’やっぱだめ?’
’だめ!’
意味については、いろんな憶測があり、家政婦との給金を巡る問答だとか、音楽愛好家との楽譜貸出を巡るやりとりから来ているとかいわれている。
いずれにしても、崇高で神聖とあがめられている芸術作品に、(憶測が事実なら)自らそういう生活の刻印を残しておくとは、なんというセンス・オブ・ユーモアだろうか?
’ダウントン・アビー’でヴァイオレット様が言っていたように、
「人生はえてして滑稽なもの」ですからねえ。
近頃じぶんでもそうおもいます。
・・ふと思い出したけど、例のさむらごうちさんを巡る騒ぎとかを見ていると、日本人のユーモア精神って、どれほどのものなのかな、と考えたりもします。まあ、余りくわしいことしらないからよけいなこといっちゃいけないな。
というわけで。
ちょっと行き詰まりを感じつつある今日この頃、なんにもできずにずるずると負け続ける自分を嗤うために、CDをかってきたのでした。
実はオフィスでウェブをちらちら見ていたのだが、誰かがこのブダペストSQの演奏を激賞していた。
全然門外漢で恐縮だが、長く廃盤になっていて、プレミアムがつくほどだったらしい。これは5年ほど前に発売された限定盤だが、廉価版シリーズでの発売なので、新品でも安かったと思う。
今回の中古でも2千円ちょっとだった。
ちらちらと聞いてみているが、先入観なしで聞くと・・・とりあえず音、でかいですね。オンマイクでちょっときつい録音。所々にノイズも入っている模様。
うちの古い3ウェイスピーカー(D77RX)で聞いても、各楽器がちゃんと分離してそこにあるかのように聞こえる。ステレオ初期のアメリカ録音だし、ジャズと同じような手法で録音したのでしょうか。 ただ、しばらく聞いているうちに慣れてくるし、演奏に引き込まれればそれほど気にすることもないかも知れない。
このズスケSQも、とてもほめている人がいた。今作品127を聞いているが、こちらの録音はずっと自然な広がりがあって、好ましい。僕等素人は、どうしても演奏の巧拙より聞こえてくる音が気になってしまうようだ。
これも廉価版らしく、中古価格は1700円くらいだった。
中古店の棚ではほかに、東京SQのCDが、セットでも単売でも目立った。あとはタカーチとか、おなじみアルバン・ベルクとか。ABQは(後で書くが)分売を持っているので、この際もう少し買い足してみようか。
演奏の巧拙を語る耳と筆力は持っていないが、まあいろいろ聞いているうちに、どれを良く聞くかはおいおい決まってくることでしょう。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全集で買ったのは,30台のはじめくらいだったかな。いろいろな本でも取り上げられているし、CDもそれなりに聞いていたつもりだが、ひじょうに好きだということもなかったように思う。
最初に買ったのはこのアマデウスSQの輸入盤セットだ。たぶんファーストチョイスとしてはちょっと変わった選択かも知れない・・。
なぜこれを選んだのか、他に何を検討したのかとかも、全然覚えていない。買った場所も忘れたなあ。
このセット、盤面に傷があるのか、安い機械では再生できないCDがあって(ラズモフスキー3番Op.59-3と「ハープ」Op74の組み合わせ)、その分を同じアマデウスSQの別の録音('87年のラストレコーディング)によるCDを買って補っている。音が飛んでしまうのだ。手持ちのCDの中では唯一のことだ。もっとも、ミニコンポだとダメだが、単品のプレーヤーは再生する。
今聞き返してもそれほど悪くない演奏だと思うが、他に比較しないで聞いていたのだから、滅多なことは言えないか。ネットで取り上げる人は少ないようですね。
全集を買った頃は店頭や雑誌などでも、ABQが勧められることが多かったように思う。ただ、当時はまだ全集で買うとかなり高くて、2万円くらいしたのではないか。
これは後年、廉価版で出たので飛びついてかったもの。ほかにOp.127,131のセットもある。愛聴とまではいかないが、たしかに気に入って聞いているのはこちらかも知れない。
ややオフマイク気味の録音は、好みが分かれるようだが僕は好きだ。
まあ、そんなわけで、雨の日の夜とかに、己のふがいなさをかみしめながら、小さな音でCDをかけて読書に浸るわけです。
こまったものですね。
やはりヴァイオレット様の語録から。
人は悲劇に見舞われると、誰かを責めたくなるものよ。
責める相手がいなければ、その時は自分を責めるの。
でした。