(写真は 去年十二月の京都、南座前。顔見世の看板。真ん中の絵は、仁左衛門丈が演じられた、『河内山』。花道での「ばぁかめぇっ!」の声色と表情が、今も心をくすぐる。おめでたい私・・・。)
記録だけ 2008年度 10冊目
『観劇遇評』
三木 竹二著
渡部 保編
岩波文庫 緑 173-1
株 岩波出版社
2004年6月16日 第1版
544(+解説)ページ 1050円
先日から読んでいた『観劇遇評』を本日読了。
結構時間がかかった。
子どもが、
「普通、その本は読まないだろう・・・。」
と、にやり、笑う。
この『観劇遇評』、知っている芝居はかなり面白い。
著者は調子に乗って、台詞や仕草などを書き連ねているところが魅力的。
多分、この作者はいい男(今で言うイケメン)だったに違いないと、勝手に決め込む。
しかし見たことのないような芝居も多く書かれていて、案外難儀である。
知らない芝居は歌舞伎事典で調べながら読んだものだから、時間がたいそうかかってしょうがない。
事典に載ってない演目も多く、知らないまま、読み進めることにした。
まぁ、愛嬌である。
この本の特徴は中村座や寿座など今は無き芝居小屋や、現在する歌舞伎座などで見た歌舞伎の感想を、思いのままの書き連ねた、胸のすく思いのする一冊ということか。
月並みだが、重厚な割には、炭酸のような本。
少し古いが、スカッとさわやか、コカ・コーラ、てなものである。
今で言えば、ブログなどに芝居感想などを書き連ねたような内容だが、著者は思うがまま、感じるがままの自然体で、悪びれることもなく、表現。
相当の見巧者である著者は、かなり辛口である。
反面、好きな役者にはべた褒めの嫌いもあり、私としては好きな本であった。
金持ちの道楽と言った感も抜け切れないが、偏屈大いに結構!の作者。
著者は森鴎外の弟で、医者とのこと。
頭の良さも手伝って、職業柄、芝居を客観的にとらえる反面、自分本来の感じ方も的確にあらわすことのできる文才家といえる。
今この本のように好き勝手に芝居感想を述べたならば、おそらく、今この時代においては、ブログでならつぶされるであろうやも知れぬ危険性を感じる。
だが、それゆえに、すっきりする、そんな一冊なのだ。
書きたい芝居内容と感想を、好き放題に作者独自の感性で書き上げた本書は、著者のように芝居は知らない私ではあるが、思うがままを代弁してくれる一冊。
この本は私にとっては良書と言える。
見事!
「あっぱれじゃぁ~~!」