(写真は京都。2007年12月。顔見世の帰りに。)
京菓子雑感
(阿闍梨餅、柏餅味噌餡、水無月黒)
先日、子が『阿闍梨餅』(あじゃりもち)を持ち帰った。
何でも、大学図書館に教科書などを置いたまま、気分転換に散歩。
餡好きの私を気づかって、阿闍梨餅本舗 満月(饅頭店)に向かったとのこと。
親孝行である。
「ここの店(本店)限定のお菓子はどれですか?」
「満月どすなぁ。土日祝日だけですねん。すぐ売り切れますさかいに、電話しとぅくれやす。おかせてもうときます・・・。」
とか何とかの会話のやり取りがあったらしい。
その旨、帰宅後の息子が教えてくれる。
子は阿闍梨餅をたった十個、ばらで買っただけにもかかわらず、老舗の店員は非常に親切だったとのこと。
菓子以外に、豪華なパンフレットやらなにやら、色々ともらって帰ってきた。
京都は昔から、近隣の学生はんには親切である。
さてさて、久しぶりの阿闍梨餅は、ことのほか美味い。
香り高き茶と共に味わう。
阿闍梨餅は比叡山で修業する僧にちなんだ菓子。
修業僧、阿闍梨がかぶる網代笠の形をしている。
横から見るとその形は顕著。
色合いに雰囲気があり、薄くてなだらかなカーブが美しい。
ちなみに阿闍梨とは、高僧を意味する。
梵語を語源とし、日本では天台・真言の僧位を表すとのこと。
なんだか、高尚ではないか・・・。
味は極めてうまい。
餅米ベース。
菓子の包み紙には、氷砂糖や卵といったさまざまな材料が書かれている。
包み紙を開けると、卵の香りがぽわぁ~~ン!と、広がる。
幸せの香り。
中には、品良い丹波大納言小豆の粒餡。
焼き皮は半生菓子で、しっとり、もっちり美人。
皮と餡が見事に調和した逸品と言えよう。
これで 一個百五円。
昨今、京菓子の値が高騰し、味と値が釣りあわない店が多い中、老舗の子の味がなんとこの安さでは、なんだか申し訳ない感じさえする。
おそらく 皆さんがご存知のように、京都にも美味い和菓子が多い。
有名で美味いものや上品で美味いもの、名ばかりで味がともなわないもの・・・。
書き上げるときりがない。
有名店の和菓子は別として、京都の庶民が日ごろ抹茶や玉露、煎茶と共に口にする饅頭の中で、捨てがたい味がある。
別段 饅頭屋は選ばない。
五月の柏餅の味噌餡と六月の水無月の黒(黒砂糖)。
これらの二つの菓子は別格である。
まず季節限定と言うところが、心憎い。
五月の柏餅味噌餡においては、店によって顕著に味が違う。
できれば味噌の濃い、おおよそ上品さからかけ離れた味が美味い。
山椒も多く入ったものの方が、私の好みである。
柏餅味噌餡にいたっては下品万歳。
庶民の味であり、昨今の歌舞伎や文楽のような芸術きどりであってはならないのである。
水無月にいたっては、白でも緑(茶味)でもいけないと、主張したい。
こくと えぐみが美味い。
不思議なことに、こういった好みは、私の親兄弟の中で、私たった一人であった。
かっての私は、自称あんこ好きにもかかわらず、少し自分の甘党に対する舌に自身を失っていた。
ところがである。
子どもが、ここ何年か、出町あたりの饅頭屋を徘徊することが多い。
そうして彼が気がついたらしいことだが・・・。
大学の近くの饅頭屋のガラスケースには、柏餅味噌餡 二に対し、黒餡は 一。
それも味噌餡から売れると言う。
「お母さん、近くの人が味噌餡二十個とか、買って帰るんだね。お母さんが、言う通りだ。」
水無月の黒についても、同様の経験をしたとのこと。
何となく、好みが認められたようで、息子のおかげで、胸をなでおろす今日この頃である。
東山 手にとり想う 阿闍梨餅
(阿闍梨がかぶる網代笠をかたどった 阿闍梨餅。
なんだか、横から見ると、京都のなだらかな山にも感じます。)
阿闍梨餅本舗 満月 (但し、私は満月とは無関係です。)
有限会社 満月
創 業◇安政三年(1856年)
在 地◇京都市左京区鞠小路通今出川上ル
営業時間◇午前9時~午後6時定