【睦月・きさらぎ(岡野弘彦詠)】
「神在月 すがしき國に 召されゆけ。九十経過し妻のたましひ()」
「やがて来む 睦月・きさらぎ。八雲たつ国原きよき 新た世の声()」
「はろばろと 海わたりくる百千鳥 海波の歌を われに聞かせよ()」
【こども(小池光詠)】
「あたたかき冬の日にして手つなぎあひ保育園児のおさんぽ行ける()」
「一瞬に金魚すくひの紙やぶれかなしみふかきこどもなりしか()」
「山羊の乳飲んで育ちしわれなれば山羊を母よとおもふ日もあり()」
【膝の上の仔犬(栗木京子詠)】
「祖母の家に柴犬をりて全身で幼きわれを守りくれたり()」
「雪原をゆく救助犬おもひをり新たな年を迎ふる夜に()」
「膝の上にねむる仔犬のぬくもりに励まされつつ今年を生きむ()」
【俵万智詠】
「戦争をしない心を持ち続け平和に成ると書いて平成()」
「羅臼昆布の湯豆腐ゆらゆら揺れながら慈味豊かなる歌を詠みたし()」
「ボール遊びの動画の中で永遠にボール遊びを続ける仔犬()」
【根で(矢島渚男)】
「冬晴やこよなくといふ言葉湧き()」
「ともあれどとしの朝酒祝ふべし()」
「枯草は根で考へる春ハクル()」
【瑞光(宇多喜代子)】
「一人去り一人生まれるる睦み月()」
「瑞光の仕種つぎつぎ初湯の子()」
「あらたまの瑞光およぶ掌()」
【百一賀(正木ゆう子)】
「黒豆を煮るや黒曜石の艶()」
「母にまた春めぐりきて百一賀()」
「年新た散らばつてゆく昴にも()」
【鉢羅耶伽国プラヤーガ(小澤實)】
「初日をば両てのひらに受けにけり()」
「初鴉嘴太同士なきかはす()」
「大唐西域記鉢羅耶伽国読みはじむ()」