柿崎一郎『物語 タイの歴史』(中公新書、2007年9月)
「タイの歴史」と銘打ってますが、特に近現代史に重点を置いています。
タイの歴史は前近代はヴェトナム、カンボジア、ラオスなどの隣国の動向とまとめて扱わざるを得ず、近代以降は英仏など帝国主義国家との関係が焦点となってくるわけで、日本史などとは違って純粋な一国史というのが書きづらいテーマなんですね。山田長政が仕えたアユッタヤー朝なんかも、首都アユッタヤーにはタイ人より外国人の方が多く居住しており、官吏にも外国人を多く登用したということですが。
19世紀半ばの開国以後は、英仏などのヨーロッパ勢力とうまく渡り合って東南アジアでは唯一植民地化を逃れ、第一次世界大戦ではそれまでドイツとも関係を有していたにも関わらず、連合国側に与して戦勝国の一員に加わり、第二次世界大戦では色々あって日本と手を結ばざるを得ないハメになりますが、一方でこの状況を利用してかつてフランスに奪われた土地を奪い返すという離れ業を達成し、更に大戦後には日本との提携は日本側に無理強いされたものだと言い張って連合国側への宣戦布告宣言が無効であると認めさせ、国内の工業化にも成功するといったように、ひたすら世渡りがうまく、要領が良いタイの姿が活写されます。
一方で、経済的な成功と前近代のタイの支配領域を復興させようとする「大タイ主義」が周辺諸国で反タイ感情を呼び起こし、日本と同様に歴史問題や経済格差などで周辺諸国への配慮を示す必要に迫られるといったように、現在では先進国ならではの課題を背負うようになったとのことです。
政治的には西洋的な民主主義がなかなか根付かず、民主主義的な経緯で成立したはずの政党政治が腐敗し、国民の民意を反映しないという状況にしばしば陥り、民意を承けた形での軍人によるクーデタと国王による調停がその是正手段になっているという現実が描かれます。しかし政治の分野でもこういうセーフティネット(?)をきっちり用意しているあたり、やっぱり要領の良さが感じられるのですが(^^;)
「タイの歴史」と銘打ってますが、特に近現代史に重点を置いています。
タイの歴史は前近代はヴェトナム、カンボジア、ラオスなどの隣国の動向とまとめて扱わざるを得ず、近代以降は英仏など帝国主義国家との関係が焦点となってくるわけで、日本史などとは違って純粋な一国史というのが書きづらいテーマなんですね。山田長政が仕えたアユッタヤー朝なんかも、首都アユッタヤーにはタイ人より外国人の方が多く居住しており、官吏にも外国人を多く登用したということですが。
19世紀半ばの開国以後は、英仏などのヨーロッパ勢力とうまく渡り合って東南アジアでは唯一植民地化を逃れ、第一次世界大戦ではそれまでドイツとも関係を有していたにも関わらず、連合国側に与して戦勝国の一員に加わり、第二次世界大戦では色々あって日本と手を結ばざるを得ないハメになりますが、一方でこの状況を利用してかつてフランスに奪われた土地を奪い返すという離れ業を達成し、更に大戦後には日本との提携は日本側に無理強いされたものだと言い張って連合国側への宣戦布告宣言が無効であると認めさせ、国内の工業化にも成功するといったように、ひたすら世渡りがうまく、要領が良いタイの姿が活写されます。
一方で、経済的な成功と前近代のタイの支配領域を復興させようとする「大タイ主義」が周辺諸国で反タイ感情を呼び起こし、日本と同様に歴史問題や経済格差などで周辺諸国への配慮を示す必要に迫られるといったように、現在では先進国ならではの課題を背負うようになったとのことです。
政治的には西洋的な民主主義がなかなか根付かず、民主主義的な経緯で成立したはずの政党政治が腐敗し、国民の民意を反映しないという状況にしばしば陥り、民意を承けた形での軍人によるクーデタと国王による調停がその是正手段になっているという現実が描かれます。しかし政治の分野でもこういうセーフティネット(?)をきっちり用意しているあたり、やっぱり要領の良さが感じられるのですが(^^;)