博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『百家講壇 孔慶東看武侠小説』その3

2007年10月07日 | TVドキュメンタリー
国際クロスメディアシンポジウムも終わってテンションが下がり気味ですが、『孔慶東看武侠小説』第9~11集まで鑑賞。今回は『射英雄伝』シリーズです。当然のごとく李亜鵬版ドラマ『射英雄伝』の映像が流れまくりです。

第9集「『射英雄伝』中的愛情(上)」
武侠小説に最早不可欠の要素となった恋愛。ここでは黄蓉と郭靖のほか、脇役の程瑶迦の恋愛を扱う。程瑶迦の初恋の相手は郭靖であったが、初恋は恋愛学校とでも言うべきもので、恋愛の練習のようなものである。彼女の本当の恋愛相手となったのは陸冠英であった。彼女は黄薬師、そして郭靖と黄蓉が密かに見守る中、彼への愛を確認する。

第10集「『射英雄伝』中的愛情(下)」
周伯通は若い頃の過ちに対する悔恨を武功の鍛錬に転嫁しているが、武芸者や好漢が女色を近づけないこと自体は『水滸伝』以来の伝統である。黄蓉は郭靖とコジンとの婚約が判明した際に、恋愛と結婚を区別して考えるという現代的な考え方を示した。このような考え方を1950年代に示した金庸はやはり凄い。

第11集「『射英雄伝』的文化魅力」
『射英雄伝』は1957年に最初に発表されたが、金庸をベストセラー作家に押し上げ、画期となった作品であった。この小説が完結するや、前伝・後伝・別伝・外伝の類が作られた。(映画の『楽園の瑕』もその中に含まれる。)また、この作品は武侠小説の良き入門書ともなった。『射英雄伝』は他の武侠小説とは違って徒に暴力を煽る作品ではなく、むしろ人道主義をテーマとしている。小学生でも読めるストーリーなのに、テーマが奥深いというのが大人の鑑賞に堪える理由である。また、この作品は人々の生活や文化など森羅万象を映し出すという中国通俗小説の伝統・長所を継承している。

第11集での孔慶東と『射英雄伝』との出会いの話が面白かったですね。孔氏は北京大学中文系の学生だった時に(氏は1964年生まれとのことなので、1980年代初めの頃のことと思われますが)学生幹部を務めており、同級生が読み耽っていた『射英雄伝』を、低俗な武侠小説なんぞを読んでいるとは怪しからんと取り上げて試しに読んでみたところ、逆に金庸小説の魅力に取り憑かれてしまい、こんな面白い作品がどうして中国文学の講義で取り上げられないのか疑問に思うようになったそうです(^^;)
コメント
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