博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

入院中に読んだ新書

2010年09月14日 | 中国学書籍
入院中に読んだ本シリーズ第二弾です。

金文京『漢文と東アジア 訓読の文化圏』(岩波新書、2010年8月)

返り点のルーツなどについても論じてますが、本書の一番のキモは、漢文の訓読は日本独自の現象ではなく東アジア全域の現象であるということ。本書によると、それは現代の中国すらも例外ではなく、漢文(あるいは古文と言った方がいいのかもしれませんが。)と口語(現代漢語)とでは実は主語・動詞などの品詞の並ぶ順序が同じというわけではなく、現代中国人も漢文を読むのに頭の中で訓読と同様の作業をしているという指摘が面白い。

こういうのを読むと、日本の大学で一部行われている、漢文を訓読ではなく現代漢語と同様に読んでいくというやり方は意味ないんじゃないかと思えてくるのですが……

広瀬和雄『前方後円墳の世界』(岩波新書、2010年8月)

前方後円墳の歴史的な意味を、なるたけ文献資料に頼らずに考証したらこうなったという好著。各地の古墳を見学するためのガイドブックも兼ねています。

森浩一『倭人伝を読みなおす』(ちくま新書2010年8月)

そして逆に文献にこだわったのが本書。考古学には『日本書紀』だろうが『魏志倭人伝』だろうが文献は文献という割り切りが必要だと思うんだ……

興膳宏『漢語日暦』(岩波新書、2010年7月)

『京都新聞』での連載をまとめたもの。1年366日、1日ずつ漢語を選んで解説するという趣向だが、終盤で『三国志』ネタが頻出するのは俗に言うネタ切れというやつでしょうか(^^;)

内田樹『街場のメディア論』(光文社新書、2010年8月)

現在のメディアや出版に厳しくツッコミを入れるのがメインテーマですが、個人的には作中に出て来る読書歴詐称の話が強く印象に残っています。研究者の部屋の本棚には実際に読んだ本だけではなく、まだ読んでない本やこれから読みたい本もかなり度合いで並べられている。そして来客は部屋の主人がそれらの本を全部読んでるものと勝手に勘違いしてくれるという話なんですが、色々と思い当たるフシがありすぎて困る(^^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする