はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

人材確保・人材不足という問題

2024年09月20日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 弊社の業務は、主に林業関係者に特化していますが、どの業界でも「人材不足」という問題を抱えています。

 林業関係者を対象に人材育成に関する研修をさせていただく際、事業体から「人材確保」とか「人材不足」が課題だという言葉を耳にします。

 人材を確保するために、求人を出したり、林業大学校へ顔を出したり、都市部へのガイダンスに出展したり(-_-)

 

 さて、ここで、次の点について、考えていただきたい。。。

 「人材」と「人手」の違いは何か?

 「人材不足」と「人手不足」の違いは何か?

 ということです。

 

 人材とは、「組織や業界にとって必要な存在」、「能力があり、役に立つ人物」です。

 人手とは、「働く人、働き手、労働力」、「他の人の力、他人の手」です。

 つまり、「人材不足」とは、組織に必要な人物、能力がある人物、役に立つ人物が不足しているということになります。

 加えて、高い専門性や優れたスキルを持ち、仕事の中核を担う「中核人材」と、その中核人材の指示を受けて、事業に不可欠な労働力を提供する「労働人材」の2種類に分かれます。

 ということは、「人材不足」という問題を解決するため、ガイダンスに出たり、林大生を雇用したり、という方法は、どちらの人材不足という問題を解決しようとしているのか、しっかりと把握する必要があります。

 「中核人材」が不足しているなら、未経験者の雇用は、解決に至りません。

 なぜなら、未経験者が組織に必要な人物になり得ないからです。

 もちろん、時間をかけて、組織に必要な人物に育てることは可能です。

 つまり、中核人材の不足という問題を解決するために、中核人材の育成に取り組むということですね。

 

 ここで重要になるのが、中核人材を育成する人物は誰でもいいというわけではないということです。

 厳しい事を言えば、組織に必要な人物や能力のある人物になり得ない方は、育成にかけるコストと時間が無駄になる可能性が高くなります。

 全員が育てばいいのですが、それが叶わないこともあるので、ある程度の見極めは、必要になります。

 この点に関しては、育成対象となる従業員の意識も重要です。

 そして、従業員が育ちたい!と思えるメリットを目に見える形で示すことも重要です。

 

 足りないのは、中核人材か労働人材か。

 育てたいのは、中核人材か労働人材か。

 

 一方、「人手不足」とは、単に労働力が足りないということになります。

 この場合、臨時で雇用したり、外注に出したり、AIを導入したりなどの方法が考えられます。

 

 人材不足という問題を解決する方法としては、

  ・今の従業員(新人を含む)を育成する

  ・自社に必要な人材を他者から引き抜く

 後者は、お金も時間もかからない方法ですね。

 いわゆるヘッドハンティングというやつです。

 優秀な人材の引き抜きは、会社を発展させていくための手段として、一般的にあることです。

 

 人口減少が進み、色々な業界が人手不足、人材不足と言われる中、今の組織以上に評価をしてくれる組織に移ることは悪いことではありません。

 組織や業界に必要な存在が人材であり、優秀な人材は、それだけ高く評価され、誰からも求められます。

 自社から引き抜かれたくない、やめてほしくないのであれば、優れた人材が評価され、優遇される条件を整える必要があります。

 しかも、ヘッドハンティングは、自社が強化され、ライバル社を弱体化させ、しかも、どこで働き、どこへ転職するかは、個人の自由なので、法的に罰せられません(情報など会社の資産を盗み出して転職することは違法ですが・・・)。

 他社が手掛けた優秀な人材を投資ゼロで得られる方法がヘッドハンティングです。

 ヘッドハンティングは、人材確保と人材不足を解決する手法として、最小限の投資で最大限の効果を発揮できる手法ですね。

 そして、ヘッドハンティングを防ぐ手段は、自社を磨き、ここで働きたい!という職場環境づくりが不可欠です。

 

 林業は、危険、汚い、きつい、給料が安いの4Kと言われています(ほかの”K”があるとも (;゚Д゚) )。

 自然の中で働く魅力を訴えても、この4Kが緩和されない限り、定着しません。

 「自然の中で働く事が出来れば、年収300万円で満足」という方が全てではありません。

 ちなみに、僕自身は、自然の中で働くという言葉に何の魅力も感じません。

 「あなたの会社で働きたい!」

 そう思ってもらえるようになることが、人材確保の第一歩です。

 

 人材不足と人手不足。

 単なる言葉ですが、言葉の違いや本質をしっかりと理解することで、問題を解決するための具体的な手段も浮かび上がってきます。

 「人材不足」をただの言葉として使っている間は、会社が抱えている問題の本質を見落としかねません。

 

 求めているのは、組織に必要な人物である「中核人材」ですか?

 それとも、事業をこなすために必要な労働力である「労働人材」ですか?

 それとも両方ですか?

 

 今、組織に足りていない人材は何か、それとも「人材」か「人手」なのか。

 一度、その点について、向かい合うことが大切です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

合意形成

2023年07月20日 | 人材育成・コミュニケーションのお話
 今回の講義は「合意形成」。

 そもそも、合意形成とは「チームメンバーや関係者の意見を一致させること」であり、相手を説得したり、相手を説き伏せたりする行為ではありません。

 お互いの意見を納得いく形に導き、その上で、合意を取り、その合意の下で決定された意見や提案に対しては、各々が当事者意識(自分事として意識する)をもつことも重要です。

 不満や不安を残したまま、力業で合意させたものは、合意形成をとは言いません。

 

 合意形成は、お互いに意見を出し合い、納得いく形で合意することが重要です。

 なので、合意形成には「論理」と「心理」の両方が重要です。

 

 今回、和歌山県農林大学校林業研修部(以下、和歌山林大)において、合意形成についての講義を行いました。

 和歌山林大の学生さんたちには、合意形成には論理と心理が重要であることを体感し、理解いただくため、ゲームを通じて、合意形成を学んでいただきました。

 

 さて、合意形成を進めるうえで、一番大切なことは、「目的の共有・共感」です。

 目的が明確にないと、合意形成は進みません。

 目的はゴールです。

 このゴールに向けて進むからこそ、方向性を見失わず、合意形成が図れます。

 そして、そのゴールに対して、双方が共有・共感していないと、一緒にゴールへ向かうことは出来ません。

 

 次に大切なことは「目的を達成するための具体的なアクション」です。

 目的(ゴール)に向かって、どのようなアクションを起こすべきか。

 目的達成に向かう起こすべき行動を具体的に提案しないと、またまた合意形成は進みません。

 イイ感じの行動やアクションを提案できても、目的達成に向かわなければ、意味がありません。

 明確な目的があって、具体的なアクションが立てられ、合意形成を進めることが出来ます。

 

 余談ですが、僕自身、目的が不明確なまま進む会議やミーティングを何度も見てきたので、正直、そういうのは気が滅入ります(^_^;)。

 会議やミーティングを開くことが目的になっているので、そこで行われている内容の大半は意味がないんですよね・・・(´▽`)。

 

 そして、合意形成のポイント! 

 実は、チームビルディングにおいても重要な「心理的安全性」が、合意形成でも重要になってきます。

 心理的安全性が保障されるからこそ、合意形成に必要な「心理」が満たされます。

 何より、「自分の意見が真逆であっても、発言していいんだ」という安心があるか否かで、チームの雰囲気が大きく異なります。

 

 合意形成を進める中で、もしも、意見が食い違ったら、

 さて、今回の講義の中でも発生しましたが、多数派は「まぁまぁ、少数派の意見も聞こうよ」と上から目線で言いがちです。

 実はこの行為、少数派の意見は聞くけど、意見は聴かないんです。

 多数派は、意見を変えるつもりはなく、通過儀礼として少数派の意見を聞きがちです。

 しかし、大抵の物事は、事前に正解や結果はわかりません。

 なので、必ずしも多数派の意見が正しいとは限らないし、少数派の意見が正しいとも限りません。

 

 だからこその合意形成です。

 

 仮に、チームとして、多数派の意見で方向性がまとまり、結果、少数派の意見が正しかったとしても、少数派の人間は、「ほら、やっぱり私たちの方が正しかったじゃない!」と言ってはいけません。

 なぜなら、多数派の意見で進めるという合意形成を図ったわけですから。

 それを言ってしまったら、「少数派の意見で合意形成を図れなかった」という点を責められても仕方ありません。

 合意形成を図り、チームとして結論付けたなら、それはチームの責任です。

 

 人それぞれ、視点や価値観、考え方が異なります。

 それが人の多様性です。

 人の多様性を受け入れ、互い違う意見があるからこそ、様々な視点で議論できます。

 ただし、目的が明確でないと、正しいか正しくないか的な本質的ではない議論になってしまいます。

 だからこそ、目的の明確化が必要なのです。

 

 合意形成には、明確な目的・人の多様性を受け入れる・心理的安全性の要素が不可欠です。

 こうした要素が整うことで、「論理」と「心理」が満たされ、合意形成を図る・進めることが可能になります。

 

 「心理」が満たされないと、「言ってることは正しいし、分かるけどさー」の「・・・けどさー」が出てきます。 ( ゚Д゚)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

目的と目標 問題と課題

2023年06月26日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 「目的」と「目標」/「問題」と「課題」。

 事業を進めたり、計画を立てるとき、何気なく使う言葉です。

 

 「目的は何かな?はっきりしないなー」

 「もう少し具体的な目標を立ててよ。数値も取り入れて。」

 「こういう問題もあるんじゃないの?」

 

 みたいな感じで・・・・。

 こうした会話の中で使われる「目的」、「目標」、「問題」、「課題」という言葉の意味や理解を他者に対して、正しく説明することが出来ますか?

 ” それでは、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」について、部下の方に説明してください。” と言われたら、自信をもって、説明することが出来ますか?

 

 これが、今回お話するテーマです

 

 先日、奈良県フォレスターアカデミーにおいて「リーダーシップの理論と実践」をテーマにした講義を5日間行い、初日の授業、一発目に「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」を説明するというグループワークを行っていただきました。

 その時、生徒さんたちが説明したものが、こちらです。

「目的と目標」

「問題と課題」

 

 ここで重要になってくるのが、それぞれが「目的」、「目標」、「問題」、「課題」の 認識にズレ があるということです。

 言葉としては、なんとなく理解しているけど、全員が同じ答えになっていない、つまり、認識に違いがあるということです。

 

 リーダーとは、「 チームの目標達成や課題解決に向けてのかじ取りを行う人物 」のことです。

 リーダーを筆頭にチームメンバーそれぞれが、目的・目標・問題・課題という言葉に対し、同じ認識を持っていないと、チームとして統率された行動をとることが出来ません。

 そこで共通認識を持っていただくため、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」をしっかりと理解したもらうため、初日にグループワークを行いました。

 

 では、「目的と目標の違い」と「問題と課題の違い」とは何か。

 

 「目的」=最終的に到達したい、成し遂げたいゴール地点

 「目標」=目的(ゴール)に到達するまでの指標、目的を達成するために設定された具体的な手段

 

 目的は何を実現したいのか、目標は実現するために具体的にどうするのか、ということです。

 目的が明確になっていないと、本質とは違うことに固執してしまい、数値目標だけを追いかけたり、手段が目的になったりしてしまい、ゴールを見失ってしまいます

 ゴールを見失った状態で、数値目標を達成しても、達成感は得られません。

 なぜなら、目的を果たせていない・ゴールに辿り着いていないからです。

 

 「問題」=現状と目標(理想)との間にあるギャップのこと、目標達成のために、解決しなければならない事柄

 「課題」=目標と現状とのギャップを埋めるためにやるべきこと、 問題を解決するために起こす具体的なアクション

 

 ここで大事なことは、問題は、現状と目標(理想)との間にギャップがあるから問題である ということ。

 現状に対し、特に理想がなければ、ギャップがないので、問題は生まれません。

 人それぞれ、現状に対する理想は違います。

 現状に満足している人は、理想がないので、問題があると感じません

 現状に不満を抱いている人は、理想があるので、そのギャップから問題があると感じます

 よく、「問題意識が足りない」という風に言う方もおられますが、そもそも現状と理想にギャップがないのだから、問題として感じていないことは至極当然なので、問題意識が足りないとか問題意識が低いという風に相手を責めることはナンセンスです。

 自分と相手の理想が違うので、問題という着眼点も異なります。

 

 まずは、目的を明確にし、具体的な目標を設定し、これを共通認識にしないと問題も共通認識になりません。

 

 そして、その問題を解決するための具体的なアクションが課題です。

 1つの問題に対し課題が複数存在することもあるため、すべての課題を解決しないと、問題は解決されません。

 課題というアクションを起こしたけど、問題が解決できなかった。という経験があったとしたら、それは、解決できていない課題があったのかもしれません。

 

 目的があるから、目標を立てることが出来ます。

 目標があるから、問題が生まれます。

 その問題を解決するためのアクションが課題です。

 

 目的と目標と問題と課題は繋がっているということです。

 

 この点をしっかりと理解し、他者も同じように理解できるように説明する力を身につけることが、リーダーとしてチームをまとめる第一歩ではないでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

事業費単価が上がれば、人は、危険行動を回避するのか。

2023年05月08日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 前回に続き、危険行動に対する人の心理について、今回は、保育間伐における伐倒を事例に。

 

 保育間伐の現場は、写真のように本数密度が高い現場が大半だと思います。

 写真の現場は、林齢が約35年生で、一度も保育間伐が行われていません。

 

 そして、このような現場では、ほぼ掛かり木が発生します。

 そのため、受口と追口による通常の伐倒方法ではなく、受口と追口を作らずに伐倒する「斜め伐り」や「元玉落とし」などと呼ばれている手法を、危険(違反)と分かっていても、行ってしまうことがあると思います。

 掛かり木の発生を回避するため、受口を作らず、元玉を斜めに伐って、そのまま真っすぐに伐り落とし、倒すという方法は、法律で禁止されていますが、実際に行っているか否かは、現場の痕跡を見れば、明らかに分かります。

 掛かり木の発生を回避する以外にも、事業費単価ベースで求められる1日当たりの事業量(ノルマ)があるので、それを達成するためにも、この手法が最も効率が良いと考えてしまい、この手法で保育間伐を行ってしまいます。

 

 さて、前回、「効率性や快適性など求められている利益が得られるなら、人は危険行動を選択してしまう」というお話をしました。

 

 では、禁止とされている伐採方法という危険行動を選択してしまう利益は何か?

 

 ①掛かり木が起こりにくく、伐倒しやすい

 ②1日あたりの事業量(ノルマ)がクリアできる

 

 主にこの2点になるのではないかと思います。

 ①は、「掛かり木にならない」という作業の効率性と、「フェリングレバーなど掛かり木処理の道具を持たなくていい」という快適性

 ②は、「サッサとノルマがクリアできる」という効率性と、金銭的な利益(労働者は給与、会社は利益)という利益が得られる。

 以上のような利益を得るために、危険行動を選択してしまいます。

 

 では、単純に事業費単価を上げると、人は、斜め伐り・元玉落としといった危険行動を回避するのか?

 

 例えば、保育間伐の事業費単価が、現場の実行経費ベースで30万円/haになったら、1日当たりの事業量(ノルマ)に余裕が出来ます。

 仮に、事業費単価UPによって、ノルマが今までの1/5になったら、人は危険行動を回避するのでしょうか。

 

 ここで、ポイントになるのが、「危険行動によって得られる利益」です。

 そして、この利益は、人によって、異なります

 

 例えば、先述した「②」という利益を得るために、禁止作業をしていた方は、事業費単価がUPすることで、危険行動を回避する可能性もありますが、同様に、危険行動を選択し続ける可能性も残ります。

 というのも、事業費単価が上がったから、引き続き、危険行動を選択すれば、利益はうなぎ登りになるから。

 

 次に、「①」と「②」という利益を得たい人は、事業費単価が上がっても、「①」の利益は得られないので、引き続き、危険行動を選択する可能性が非常に高いです。

 事業費単価が上がっても、掛かり木になるのがイヤ、フェリングレバーなど掛かり木処理道具を持つのがイヤなどの不利益を回避できないからです。

 その上、事業費単価が上がったのだから、利益もうなぎ登りなので、嬉々として、危険行動を選択するでしょう。

 

 事業費単価が上がったことで、危険行動を回避する可能性がある人としては、まず、「①」を利益として考えていません。

 そして、本音としては、安全行動を取りたいけど、そうすると「②」の利益を得られないから、やむを得ず、危険行動を選択している人。

 

 危険行動によって得られる利益を減らし、安全行動によってられる利益を増やすことが、危険行動を回避する最善の方法です。

 そして、ここで言う利益は、人それぞれによって異なるため、結果的に、各事業体によって異なることになります。

 

 そのためには、まずは、しっかりと話し合うことです。

 

 安全行動は、従業員や現場作業員に押し付けるものではありません

 従業員や現場作業員が、率先して、安全行動を取りたいと思うように仕向けないといけません

 そのためには、危険行動よりも安全行動の方が利益がないといけません。

 その利益が何なのか、従業員や現場作業員と話し合い、その利益を見極める必要があります。

 

 少なくとも、「積極的に安全行動とる者を評価する」という仕組みがないと、確実に安全行動は消えていきます

 

 積極的に安全行動を取っている職員を褒めていますか?

 

 「褒める」、「表彰する」、「昇給する」、「より機能性が高い安全道具を支給する」など、安全行動を取り続けることによって得られる利益を、従業員や現場作業員が感じ続けられる環境を維持することが必要です。

 これも「働き方改革」の1つではないかと思います。

 

 ちなみに、このようなお話を事業体や森林組合にした後、大半が「難しくて、出来ない。」と言われます。

 難しいことを実現するには、大変な労力と時間がかかります。

 なので、やらない方が楽だし、変わらない方が楽だから、「難しくて、出来ない」と、つい口にしてしまいます。

 従業員や現場作業員と話し合ってもいないのに、一人頭の中だけで考えて、挑戦する前から「難しい」と結論付けて、出来ない理由・やらない理由を作り、その本音は、「やりたくない」というのが大半です。

 これも、人間の心理の1つですね。

 

 かく言う僕自身も、「難しい」とか、「そのうちに・・・」とか言って、先送りしている(逃げている)案件が、いくつかあります。。。

 なので、水面下で少しずつ、少しずつ、表面的には見えず、徐々に、という感じで、ただいま暗躍中です(^_^;)。。。 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人は、なぜ、危険行動を取ってしまうのか。

2023年04月25日 | 人材育成・コミュニケーションのお話

 労働災害が非常に多い林業。

 特に伐採・伐倒に関する作業中の事故が多く、安全指導や安全教育を重ねても、その傾向は下がる気配がありません。

 

 今回は、「人は、なぜ、危険行動を取ってしまうのか。」をテーマに、人間心理に基づいてお話をします。

 危険行動を選択してしまう人間の心理を理解しないと、どんなに優れた安全指導や安全教育を行っても、その効果は現れません。

 

 人は、ある行動を行う際、危ないと分かっていても危険行動を選択してしまうことがあります。

 なぜ、危ないと分かっているのに、危険行動をしてしまうのでしょうか。

 

 「いつも大丈夫やから」

 「大したことない」

 「気を付けていたら大丈夫」

 など、都合の良い解釈をして、自分自身に言い聞かせています。

 

 この心理は、「自分自身にとっての利益」が関係しています。

 その人にとって、効率性や快適性など求めている利益が得られるなら、その人は、危険行動を選択してしまいます

 ポイントは、「その人にとっての利益」です。

 あなた自身が利益と感じていなくても、その人自身が利益と感じていれば、その人は、危険行動を選んでしまいます

 あなたとその人で、得たい利益が違うということは、「価値観が違う」ということなので、その人が危険行動を選択した理由を、あなた自身は全く理解できないのは、利益という価値観、この点が違うからです。

 だから、同じ教育、同じ指導をしても、ここの心理が違えば、教育効果・指導効果の結果が異なってしまいます。

 

 例えば、「チェーンソーを使用する際、防護ズボンを履かない人」の場合。

 

 防護ズボンを履きたくない理由を聞くと、大半は「動きづらい」、「暑いから」という答えが返ってきます。

 これは、防護ズボンを履くことによって、膝が上がりにくい、重いから動きが鈍るなど、今までの動きが取れない、つまり「今までの効率性」や「今までの快適性」という利益を失うからです。

 また、「いつもは、チェーンソーを使う際、防護ズボンを履いている」が、「今、防護ズボンを履いていなくて、ほんの少しだけチェーンソーを使う」とき、ついつい防護ズボンを履かずにチェーンソーを使ってしまう時って、ありませんか。

 この場合、十数秒のために防護ズボンを履く、車まで防護ズボンを取りに行く、などの行為が面倒と感じてしまいます。

 この 面倒を省略 することで、「効率性」という利益が得られるので、ほんの少しだけ、チェーンソーを使うとき、ついつい、防護ズボンを履かないという危険行動を選択してしまいます。

 

 これまで防護ズボンを履かずに作業してきた人たちにとって、防護ズボンを履くという行為は「これまでの動き」が失われる、つまり損失になるので、「これまでの動き」という利益を得るために、防護ズボンを履かないという選択を選んでしまいます。

 

 ちなみに、防護ズボンを履くという選択をした人たちは、「これまでの動きを失う」が、それ以上の利益が得られるという心理が働いています。

 それ以上の利益とは、例えば、防護ズボンを履かずにチェーンソーで怪我をしたら、「労災保険がおりない」、「法律違反になる」、「会社に迷惑がかかる」など安全、保障、コンプライアンス、安心という利益です。

 ルールを守る、法律を守ることで、何かあった時に助けてもらえるという安心が利益になります。

 防護ズボンを履かずにチェーンソーで作業していると、「万が一、何かあったらどうしよう。」という不安が纏わりつきます。

 防護ズボンを履くことで、その不安が払拭されるので、安心して作業に集中できるという「快適性」という利益が得られます。

 ほかにも、「安全意識が高いな。と褒められる」など組織内や業界内で評価されるなど承認欲求が満たされるという利益もあります。

 

 このように、危険回避を選択する方が、得られる利益は大きいという心理が働けば、人は、危険回避の行動を選択するようになります。

 

 僕自身、この心理を理解した上で、作業員が自ら進んで防護ズボンを履く方法を考えました。

 その方法は、「あらゆるメーカーの防護ズボンを集めて、試着会をする」という方法です。

 「動きづらい」という感覚は、人それぞれ異なります。

 あらゆるメーカーの防護ズボンを集めて、試着することで、自分の体や動きに合った防護ズボンを選び、これなら履きたいという考えにシフトするよう誘導できないかという思惑です。

 元々、作業員の頭の中には、「履かなきゃいけない、分っているんだけどな・・・」という認識があったので、試着会という最期の一押しで、「防護ズボンを履く」という危険回避という行動を採用するように天秤を傾けさせるという試みです。

 これによって、防護ズボンの着用率は大きく上がりました。

 それでも履かないという選択肢をする者もいますが、周りで着用する者が増えたので、その姿を見て、以前より着用するようになったと思います。

 まずは、少しでも着用させるところがスタートです。

 

 繰り返しますが、危険行動を選択することで、その人にとって、効率性や快適性という利益が得られるなら、その人は危険行動を選択してしまいます

 そして、ここで言う効率性や快適性は、明確に数値で表された利益ではありません。

 その人が感じる利益で、数値化された実際の利益とは別物です。

 

 「労働災害の発生が減少すると作業効率も上がり、生産性や収益性が上がる。だから労働安全は大切だ。労働安全に努めよう。」という風に言われますが、その人が、利益だと実感していなければ、その言葉は響きません。

 その人が、危険回避行動を選択することで、その人にとっての利益にならないといけません。

 

 もし、労働安全と利益の関係性を示したいのであれば、例えば、それをグラフや数値化によって、視覚的に分かるように明確にし、その結果が、危険回避行動を選択し続けた行為によるものだと、作業員全員が実感し、危険行動回避ってええなぁという共通認識にする必要があります。

 

 正直、とても難しく、実現困難なことを言ってます。

 そう、難しいから、人は、簡単な行動を選択してしまいます。

 危険行動を選択する者には、罰を与えるといった、簡単な方法を・・・。

 

 例えば、「防護ズボンを履かない者は減給」などの罰則規定を設けても、その効果は長続きはしません。

 これも人の心理で、罰で縛ろうとすると、罰から逃れるため、見えないところで防護ズボンを履かないなど狡猾な行動を選択することになり、益々、危険行動を助長させてしまいます。

 結構、罰を与えようとする方が多いのですが、それは長続きしない上、監視の目が届いていない状況下では、危険行動を選択し、逆効果になります。

 

 だからこそ、正しい対話やコミュニケーションが必要となります。

 正しい対話・コミュニケーションを図り、作業員や従業員の考えや心理を知ることで、どうすれば危険回避行動を選択するようになるのかが、見えてきます。

 

 次回は「伐倒」を事例に、この続きをお話ししたいと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする