森林インストラクター(兼樹木医)として、樹木のことや森林のこと、林業や木材のこと、獣害対策や生き物に関することなど、色々な講義の依頼を引き受けています。
講師として、僕自身のセールスポイントは、「都合さえ合えば、突然言われてもすぐに対応できる。」というところです。
例えば、「今から1時間ほど、何か山の話をして。」とか全然大丈夫です。
あと、場所と時間が決まっているなら、「明日、観察会の講師をして。」も大丈夫です。
依頼者や主催者側が観察コースを熟知し、危険予測が出来ているなら、事前の下見や打ち合わせは不要ですし、当日の流れを説明していただき、「ここからここまでの時間をお願いします。」って感じで、放置してもらって大丈夫です。
僕が森林インストラクターになったのは、平成14年(2002年)で、当時21歳。
あの頃は、知識が豊富な先輩森林インストラクターの中に、自分が食い込んでいくためには、先輩方が出来ないこと、先輩方と違う話をすることを常に意識していました。
そして、森林観察や講義の依頼があるとき、「森林インストラクターなら誰でもいい。」ではなく、僕を指名してくれるようにならなければ、という考えに行き着き、今に至っています。
リピーターを確保するためにも、ネタや知識の引き出しが多い方が有利ですし、話し方も楽しい・明るい・面白いは必須の技術。
商売でも同じだと思いますが、「あなたのところで買いたい。」、「あなたの商品が欲しい。」と買い手に思わせたいですよね。
という感じで、軌道に乗って、自信がついて、天狗になり始めた頃、師匠から「現場で働く人間が、お前の話を聞きたいと思ってもらえるようにならないと意味がない。」と言う激励をいただき、先生と呼ばれ、天狗になっている自分のことを恥ずかしいと思うようになりました・・・・。
という訳で、普段、僕が山や森、公園林を歩くとき、無意識で話のネタを集めたり、学術的なことと結びつくネタを集めています。
ネタ集めとして、どんな視点で、森や樹木を見て、どんなネタを思いついているのか、を少し紹介したいと思います。
以下の写真は、見た瞬間に、「ネタやぁ!」と思ったものを撮影したものです。
公園に植えられたセンダン。主幹が切られていました。
これは植物ホルモン、「オーキシンとサイトカイニンの関係」でお話しできるネタですね。
植栽地に設置された獣害防止ネットのロープを食い込んだタラノキ。
これも植物ホルモン、「サイトカイニンとエチレンの関係」でお話しできます。
アカマツに絡まるサルトリイバラ。
育林施業である「下刈り」や「つる切り」に関するお話、つるの違いに関するお話ができますね。
ヒノキ人工林内に残された切り株。その株の上に芽生えるスギやヒノキなどの稚樹。
天然更新の1つ”倒木更新”のお話、林業では直接播種ではなく植栽する理由のお話に使えますね。
ヒノキ人工林の中にある枯れたアカマツ。
これは攪乱、遷移、天然更新、針広混交林などのお話に使えます。
タムシバの若木。
新葉が赤いので、アントシアンのお話が出来ます。
崩壊し、スギが倒れた現場。
これは根系や人工林と崩壊や水害関係のお話に。
スギの幹に絡みついたツタ。
これも育林施業「つる切り」に関するお話、つるの違いについてお話できますね。
最後にモミの稚樹。
葉の付き方から、陽葉と陰葉のお話が出来ます。
という感じで、「おっ!」とネタになると思ったものは、カメラで撮影し、このブログや講義用スライドに使ったりしています。
書籍や論文に書かれていることと結び付くものもあれば写真に収めます。
難しい文章だけでは伝えきれない。
「それはね、こういうのだよ。」とビジュアル的な要素を加えて、伝えれば一層、分かり易くなるし、現場経験と学問の知識が上手くフィットするので。
知って理解するだけじゃなく、「腑に落ちる」事が大切で、それが次のステップ「行動」に繋がる。
自然観察や講義用資料に使うネタ集めで観察すると、森林づくりにおける観察にも応用できます。
森林は樹木や様々な生き物の集合体ですが、実際に施業するときは、1本の木と向き合うので、樹木を観察する事は普段からとても大事なことだと、ぼくは思っています。