はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

スギノアカネトラカミキリ 幼虫の孔道

2018年04月26日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の生態について最後のお話にかる今回は第5章「幼虫の坑道」。

  枯れ枝の中で、孵化した幼虫は、枯れ枝の樹皮下を食べ、成長とともに枯れ枝の中心部に進みながら、樹幹木部へと向かっていきます。

 そして、樹幹にたどり着くと、通ってきた枯れ枝を中心に上下方向に坑道を作ります。

 幼虫の坑道には、白くて細かな屑が詰まっています。

 

 幼虫は、樹幹にたどり着くまで、かなりの長期間、枯れ枝の中で食害を続けるがの一般的で、中には枯れ枝だけで一生を終えるものもいます。

 このような場合は、枯れ枝が太くて、それだけで十分なエサになった時や産卵された場所が樹幹から遠く離れている時に起こると言われています。

 なので、アカネが一生を終えるには、必ずしも樹幹部を加害しないといけないというわけではありません。

 あと、生枝の二次枝が枯れていた場合、そこにも産卵し、枯れた二次枝を通って、生枝の木部を食害して、一生を終えます。

 中には、生枝を食い進み、樹幹木部にたどり着くものもいます。

 

 幼虫の坑道をまとめると、

  1.枯れ枝から樹幹木部へ食い進む。

  2.枯れ枝の条件次第では、枯れ枝を食害し、そこで一生を終える。

  3.生枝の枯れた二次枝から生枝の木部へ食い進む。

  4.生枝の枯れた二次枝から生枝の木部へ食い進み、樹幹木部まで食い進む。

 この4パターンが考えられ、基本は1の被害例が多数ですね。

 

 被害傾向をスギとヒノキで比較すると、自然落枝しにくく、枯れ枝の着生期間が長いヒノキの方が単木あたりの被害が多い傾向にあります。

 枯れ枝になってから幼虫が食害するまでの年数は、スギで2年後、ヒノキで3年後が一般的とされています。

 ヒノキにいたっては14年前の枯れ枝が食害されたという報告もあります。

 スギよりも長い期間、多くの枯れ枝を残すヒノキの方が被害が多くなります。

 樹幹内部における幼虫の分布は、枯れ枝の分布が影響しているので、地上高2~3mと樹冠上方にほとんど見られません。

 しかし、木の生長とともに、今の生枝が枯れ枝になれば、そこにアカネが産卵するので、被害が蓄積されていきます。

 

 以上、アカネの生態「幼虫の孔道」に関するお話でした。

 次回から防除について、複数回に分けて、お話していきたいと思います。

 

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スギノアカネトラカミキリ 訪花

2018年04月21日 | 昆虫類+αのお話

 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の生態について、今回は第4章で「訪花」について。

 アカネは、昼間に花に集まり、集まる花は「白色系の花」で、蜜や花粉を食べます。

 花に集まる時間帯は6~18時で、気温が21~28℃の範囲内とされています。

 集まる花は、ガマズミ、コバノガマズミ、ミヤマガマズミ、タンナサワフタギ、ノリウツギ、コゴメウツギ、コデマリ、ミツバウツギ、ミズキ、ヤマボウシ、クリ、カラスザンショウなど。

 ←ガマズミ ←ノリウツギ ←クリ

 しかし、和歌山県では、アカネが発生する3月下旬~4月下旬には、これらの花が咲いていないか、僅かしか咲いていません。

 過去の調査でも捕獲された記録がなく、和歌山県における訪花植物は明確になっていませんでした。

 アカネは、訪花なしでも交尾・産卵は可能ですが、それなら被害は軽微になるハズ・・・。

 で、和歌山県林業試験場が2015年~2016年に訪花植物を調べたところ・・・ツブラジイ(コジイ)の花でアカネが捕獲されました。

 ←ツブラジイ(コジイ)

 あと、ほんのわずかですが、クロバイでも捕獲されました。

 ←クロバイ

 

 このことから、和歌山県の主な訪花植物はツブラジイ(コジイ)とされています。

 しかも、ツブラジイ(コジイ)は、スギ・ヒノキ林の林内に生えたり、隣接していることが多く、産卵と訪花を繰り返す環境が整っています。

 

 ↓ ↓ 和歌山県でシイの花で捕獲されたアカネの調査結果はこちら ↓ ↓

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/128/0/128_604/_article/-char/ja/

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スギノアカネトラカミキリ 交尾と産卵

2018年04月20日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の生態について、今回は第3章「交尾と産卵」について。

 枯れ枝から脱出した成虫は、5~6時間の間に交尾を行うとされています。

 交尾は日中の明るい時間に行われ、10時から14時の間が最も盛んだと言われています。

 ところで、マツ枯れで有名な「マツノマダラカミキリ」は、脱出後、マツの新葉を食べないと体が成熟せず、交尾・産卵ができません。

 しかし、アカネは枯れ枝から脱出して、すぐに交尾することが可能です。

 周りにエサがなくても、繁殖・交尾が出来ることが、人工林という単純な林層の中でも被害が拡大していく1つの要因だと思います。

 

 交尾が終わったメスは、約1週間後くらいから産卵を始め、約1ヶ月~1ヶ月半の生存期間の間に、2~3日の間隔で産卵を行います。

 メス1匹の平均産卵数25個程度。

 餌となる花粉を食べにきたアカネの抱卵数は、この平均産卵数よりも低いと言われているので、訪花と産卵を繰り返していると思われます。

 産卵場所は枯れてから2~3年以降の枯れ枝が対象なので、枯れて間もない枯れ枝には産卵しません。

 枯れ枝ならどこでもいいというわけではなく、枯れ枝の粗皮がめくれている裏側、粗皮の裂け目、二次枝の付け根などが産卵場所になります。

←中途半端に残した枝にも産卵することがあるため、枝は樹幹に沿って除去すること。

 

 あと、あまり太い枯れ枝や直径5ミリ以下の細い枝に産卵することは非常に少なく、直径15ミリ前後の枯れ枝に産卵が集中します。

 1箇所の産卵数は、普通1~2個くらいですが、稀に5~6個も産む場合があるとのこと。

 

 今回のポイントは、2~3年以降の枯れ枝に産卵するというところです。

 つまり、枯れて間もない枯れ枝には産卵しないので、下枝が枯れ始めた時期を目安に枝打ちを行えば、アカネの被害を未然に防止できると考えられます。 

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スギノアカネトラカミキリ 成虫の脱出

2018年04月16日 | 樹木の病気・森林被害のお話
 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の生態について、今回は第2章「成虫の脱出」。
 
 脱出時期は、地域や年によって異なりますが、和歌山県では3月下旬~4月下旬とされています。
 ちなみに岩手県など東北方面では、4月下旬~6月上旬と去れています。
 脱出の時期は、脱出する1カ月前の気温に影響すると言われており、低温が続く間、脱出が全くなく、気温が上がると一気に脱出したという事例もあります。
 
 成虫は枯れ枝の樹皮に直径3~4mmの脱出孔をあけて脱出します。
 
 
 脱出孔のある枯れ枝の太さは、2cm前後のものが多く、脱出孔のある枯れ枝の位置は、樹幹から近く、距離にすると平均で4cmだそうです。
 
 なお、アカネは枯れ枝だけでなく、生きた枝(生枝)の枯れた二次枝にも産卵します。
←枯れた二次枝からの脱出孔。
 この場合、幼虫の食害が枝だけで完了した場合、脱出孔は樹幹から離れた位置に作られます。
 
 成虫は日中の気温が15℃を超えると脱出の準備を始めます。
 日中の気温が20℃前後になると脱出すると言われています。
 
 こんな感じで、アカネは脱出にも行動にも、気温に左右されやすい生き物だと考えられています。
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スギノアカネトラカミキリ 生活史

2018年04月15日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 今回は第2部として、スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の生態について。

 一言で生態と言っても、複雑というか、奥が深いというか、色々あって、ネタがつきません。

 そこで、生態については生活史・成虫の脱出・交尾と産卵・訪花・幼虫の坑道、5つの構成で情報を提供したいと思います。

 今回は、第2部第1章生活史・・・ライフスタイルについて。

 

 アカネが加害する樹種は、スギ、ヒノキだけではありません。

 サワラ、クロベ、アスナロ、ヒノキアスナロなどにも加害します。

 一般的には2年で一世代。一世代に3年以上もかかるという報告もあります。

 脱出した成虫の生存期間は約1ヶ月と言われています。

 

 でわ、2年一世代のアカネの一生について。

 

 成虫は4月頃、枯れ枝に脱出孔をあけて脱出します。

 アカネは昼行性なので、昼間に行動し、夜間は行動しません。

 脱出した成虫は、間もなく交尾を行い、枯れ枝に産卵します。

 孵化した幼虫は、枯れ枝の樹皮下、木部の順に喰い進み、樹幹に到達すると樹幹の木部に潜り込みます。

 樹幹内部で1年目の冬を過ごし、翌年の春~夏にかけて老熟幼虫になります。

 この頃には、元の枯れ枝か近くの枯れ枝に戻ります。

 樹幹と枯れ枝を行き来しながら食害し、枯れ枝に蛹室を作り、8月末から蛹になって、10月に成虫になります。

 と、言葉で書いても分かりにくいので、図にしました。

 ちなみに、一般的に蛹は枯枝内とされていますが、調査をしてみると、幹内でも蛹や成虫が見つかっています。

 なので、必ずしも枯枝内に蛹や成虫がいるとは限りません。

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スギノアカネトラカミキリ 形態

2018年04月10日 | 昆虫類+αのお話

 林業害虫の中で一番問題となっている「スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)」。

 和歌山県では、3月下旬ころから発生すると言われており、たぶん、今の時期は発生しているかもしれませんね。

 というわけで、これから発生するアカネについて、形態、生態、防除、被害材の4部構成に分けて、しばらくお話を続けていきたいと思います。

 第1部の今回は「形態」について、箇条書きでシンプルに紹介させていただきます。

 

 下の写真が成虫。体長は9~13ミリと小さいカミキリ。

 オスとメスの区別は触角の長さ。メスの方がオスよりも触角が長い。

 下の写真はオス。メスはこれよりも長い。

 

 続いて、幼虫。終齢幼虫の体長は20~25ミリ。

 

 ご覧の通り、体は乳白色で平たい筒形。

 

 カミキリムシの幼虫と言えば・・・昆虫食!

 以前、アカネの幼虫を食べたことがあるんですが、その記になる味については・・・

 こちら 昆虫食「スギノアカネトラカミキリ幼虫」 からご覧ください♪

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