はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

林内雨滴と間伐

2020年07月30日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 前回の雨滴衝撃と土壌侵食に関連して、間伐による土壌侵食の抑制効果について、考えたいと思います。

 間伐しない/間伐したの違いが、土壌侵食にどのような影響が考えられるのか、イラストなどを使いながらお話したいと思います。

 

 前回ラストに、「こういう森林だと土壌侵食が起こりにくいよね。」というお話をしました。

 

 さて、森林に降った雨は、樹幹を通じて地面に到達する雨「樹幹流」樹冠(枝葉)から落下して地面に到達する雨「林内雨」の2種類があり、林内に降る雨は「林内雨」が圧倒的に多くなります。

 林内雨は、降った雨を枝葉で受けてから落下するため、林内雨の雨滴は、普通に降る雨の雨滴よりも、雨滴の直径(雨滴径)が大きく、雨滴衝撃を受ける力は林内雨滴の方が強いと言われています。

 

 少し、強引な例えになりますが、屋根が受けた雨水も、一度、集積してから落下するので、屋根の真下にある土壌が削られているという現象に似ている・・・と思います。きっと・・・、たぶん(^_^;)。

←我が家のヤギ小屋

 

 枝葉が受け止めた雨が集積し、林内に落下するため、林内の雨滴衝撃は林外よりも強いということです。

 ただし、樹冠(枝葉)を通過してからの落下になるので、その強さは一定ではなく、降雨量、時間、空間によってバラツキが大きくなります。

 

 また、樹高が10m以上に達する林齢20~30年生の森林では、雨滴による侵食を加速させる方向になってしまうと言われています。

 単純に高い位置から落下した雨滴の方が、衝撃は強いよね。ってことですね。

 だから、雨滴径が大きい林内雨が生み出す雨滴衝撃と雨滴侵食を抑えるものとして、林床を覆ってくれる落葉落枝、草本類やシダ、コケ類、低木類の存在が非常に重要となります。

 落葉層の存在だけで、土壌侵食量は半分から1/10になったという報告もあり、落葉層の存在も軽視してはいけません。

 

 ここまでのまとめとして、

・通常の雨よりも林内雨の雨滴径の方が大きいため、雨滴衝撃は林内の方が強い。

 ただし、強さは一定ではなく、降雨量・時間・空間によってバラツキがある。

・樹高10m以上に達する20~30年生の森林では、雨滴侵食を加速させる傾向にある。

・雨滴衝撃と雨滴侵食を抑えるものとして、林床に存在する落葉・草本類・シダ・低木類が重要。

 

 このことをふまえ、間伐の有無による雨滴衝撃と雨滴侵食の影響を考えたいと思います。

 まず、間伐しないと森林はどうなるか。

 

 光が届きにくい下枝は、光合成が十分に行えず、枯れてしまいます。

 

 上へ上へと伸びる上長成長(伸長成長)は、間伐の影響を受けないので、そのまま伸びていきます。

 再び、下枝に光が届かなくなり、十分な光合成を行えず、さらに下枝が枯れます。

 

 このような状況になっても、変わらず、上長成長(伸長成長)は進みます。

 そして、下枝の枯れ上がりも進むので、樹木全体の葉量が減少します。

 葉量の減少は、光合成生産量の減少に繋がるので、幹は太らず、細長い感じの樹形になってしまいます。

 

 

 次は間伐をした場合。

 下枝に光が行き届くことで、光合成を十分に行うことができ、下枝は枯れません。

 樹木の葉量の減少も抑えられ、光合成生産量も減少せず、幹を太らせることが出来ます。

 

 上長成長(伸長成長)は、間伐する/しないの影響を受けません。

 間伐をすると、幹は太く、下枝の枯れ上がりが起こりません。

 間伐をしないと、幹は細く、下枝の枯れ上がりが起こります。

 

 間伐した森林(左)と間伐しない森林(右)の違いをイメージすると、こんな感じです。

 地上から生きた枝までの高さ(枝下高)が違ってきます。

 間伐した森林の方が枝下高が低く、間伐しなかった森林の枝下高は高くなります。

 ということは、樹冠を通過した林内雨が林床に落下する高さは、間伐しない森林の方が高いと言うことになります。

 間伐しない森林は、樹冠が小さいため、雨を受ける枝葉の層が薄い。

 間伐した森林は、樹冠が大きいため、雨を受ける枝葉の層も厚い。

 枝葉が受け止められる雨の量は前者の方が少ないので、強い雨が降ると、受け止められず、次から次へと高い位置から雨滴が落下します。

 同じ強さ、同じ量の雨が降ったとき、雨を受け止める量、雨の勢いを抑制できる力、雨滴が落下する高さなどを考えると、間伐しない森林の方が断然、不利だと思います。

 

 しかも、間伐しない森林は、枝葉の量が少なく、光合成生産量も少ないので、根まで十分な栄養が行き届かず、貧弱な根になっています。

 一方、間伐した森林は、枝葉の量は多く、光合成生産量も多いので、根まで栄養が行き届き、発達した根をもちます。

 

 間伐しない森林、根が貧弱な樹木で構成された森林で発生する雨滴衝撃と雨滴侵食。

 しかも、枝下高は高くなるから、より高い位置から雨滴が落下する。

 

 間伐した森林、根が立派な樹木で構成された森林で発生する雨滴衝撃と雨滴侵食。

 枝下高が低くなるため、低い位置から雨滴が落下する。

 間伐する/しないの違いだけで、雨滴衝撃と雨滴侵食による影響の差を想像していただけるのではないのかなと思います。

 

 間伐しないと、林床に草が生えない上、雨滴が落下する位置も高くなるので、雨滴衝撃と雨滴侵食の影響はさらに大きくなりますよね。

 間伐すると、林床に光が届き、草が生え、下枝も枯れにくくなるので、雨滴が落下する位置も低くなります。

 

 さらに、低木類も生えてくると、林内雨を多段階で受け止められるので、さらに雨滴衝撃を緩和し、雨滴侵食を抑制します。

 

 雨滴衝撃と雨滴侵食。

 その影響を抑えるためには、落葉、草、低木類の存在が重要です。

 間伐をしないと重要な存在である草や低木類が生えてこない上、下枝が枯れ上がることによって、高い位置から林内雨が落下します。

 特にヒノキは、葉が細かいため、雨滴衝撃によって細片化し、雨滴侵食によって落葉が流されるため、ヒノキ林の林床では裸地化や侵食が起こりやすくなります。

 林床に生える草本類や低木類は、単に土壌侵食や土壌の移動を抑えるだけでなく、雨滴径が大きい林内雨による雨滴衝撃を緩和するという重要な役割を持っているので、林床に光を与えてくれる間伐という施業はとても重要です。

 さらに、間伐によって下枝の枯れ上がりを抑えることが、林内雨が落下する高さを少しでも下げ、雨滴衝撃を緩和する効果にも繋がっていきます。

 

 先に断っておきますが、イメージ写真です!

 高木・低木・草本類の3段階の森林のイメージ。

 写真の森林は3段階になっているけど、残念ながら、良い森林ではないです(-_-)

 んー、この写真は、逆に出さない方が良かったかな・・・(-_-)

 

 

 とは言え、間伐をして林床に光が届けば、林床に草や低木類が生えるというわけではありません。

 間伐をして林床に光を届けることで、林床に草や低木類が生える環境が整う。ですね。

 なので、間伐したけど、林床に何も生えなかったら、伐り足りなかった、種子を供給する母樹などがなかったという可能性が考えられるかも(^_^;)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

雨滴衝撃と土壌侵食

2020年07月26日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 強い雨が何日も降り続けると、山が崩れないか、土砂災害が起こらないか、色々な不安を感じます。

 雨が降ると、なぜ、山崩れが起こるのか?

 どういう状態の山だったら、起こりにくいのか?

 イラストと写真を使いながら、簡単にお話したいと思います・・・が、専門家ではないので、雑な内容であること、ご容赦下さいm(_ _)m(先に謝っておきます(^_^;)。)

 

 本題に入る前に、1つ理解していただきたいことがあります。

 ここに、土を耕した地面があります。フカフカの地面です。

 

 この地面に、雨が降ると・・・

 

 耕して、フカフカだった地面が固くなります。

 畑で野菜を作った経験のある方なら、こういう現象を何度も見ているかなーと思います。

 このように、降った雨が地面にぶつかる(叩きつける)力を「雨滴衝撃」と言います。

 

 雨滴衝撃によって、硬くなった土の上に、雨が降ると・・・

 

 土の表面が硬くなったことで、土の中に水が吸収されず、水たまりが出来ます。

 

 柔らかい土が雨滴衝撃によって、硬い土になるということは、「土の表面に隙間が無くなり、土の表面が目詰まりを起こした。」ということです。

 ことわざの「雨降って 地固まる」とは、まさにこのこと。

 ことわざの意味とは大きく異なりますが、雨が降ったことで、地面が揺るぎない結束になったことで、水を通しにくい地面になったというわけです。

 

 さて、この状況を、斜面である山に置き換えて考えてみます。

 

 フカフカの土です。

 

 雨が降ります。

 

 雨滴衝撃により、地表面が固くなります。

 

 固くなった地表面を降った雨水が流れます。

 雨滴衝撃によって地表面が固くなったことで、土壌構造が破壊され、地表面の隙間が目詰まりを起こします。

 

 流れた雨水が地表面を削り、水の通り道を作ったり、水が溜まりやすい場所を作ってしまいます。

 

 そして、雨が降ります。

 

 降った雨と流れた雨水が1箇所に溜まります。

 この水が溜まった場所が、崩壊に繋がる原因となります。

 

 水が溜まることで、水気をたっぷり吸い込んだグチャグチャの土壌になります。

 もしくは、溜まった水が少しずつ、地面の下に染みこみ、そこが徐々に水の道になって、やがて亀裂を招き、崩壊へと繋がるかもしれません。

 あくまで、理解しやすいようにと、イラストでイメージしていただくための説明なので、乱暴なまとめ方にご容赦下さいm(_ _)m。

 

 降った雨による雨滴衝撃によって、土壌が飛散します。

 バケツを地面に置いたままにしていると、ある日、雨が降って、バケツの外側にたくさん土が付着しますよね。

 地面と接している建物の基礎部分なども、雨が降った後、細かい土が付きます。

 このように雨によって土壌が飛散する、雨によって土が動かされることを「雨滴侵食」といいます。

 この雨滴侵食

 畑の様な平地だと、雨によって飛散する土壌は四方に飛び散ります。

 一方、山の様な斜面だと、雨によって飛散する土壌は斜面下方へ飛び散ります。

 斜面下方に土壌が飛び散るということは、土壌が斜面下方に移動していると言うことになります。

 だから、下層植生や樹木が存在することによって、斜面下方への土壌の移動が抑制される。というわけです。

 

 雨滴衝撃雨滴侵食によって、土壌が飛散し、土壌構造が破壊されると、土壌表面にある隙間が埋まって、目詰まりを起こし、土壌への雨水浸透が妨害されてしまい、地表面を雨水が流れ、やがて侵食へと発展していきます。

 

 ザックリ言えば、降った雨が、地面を直接、叩きつけられることによって、いくつもの小さな変化が、やがて大きな変化へと変わり、表面侵食に繋がるということです(^_^;)。

 

 雨滴衝撃の力、地表面を流れる水の量と速度は、山の土壌の表面(地表面)が、どんなものに被われているか、その地表面の状態によって異なります。

 

 一番ダメな状態は、「土壌が何も覆われていない状態」です。

 伐採跡地は、枝条が残されていたり、切り捨てられた伐倒木などが散乱しているので、何も覆われていない状態よりはマシですね。

 昔は、たき付けなどのため、山から枝条を集めていたので、伐採跡地に枝条が無く、地表面が剥き出し状態になることが多々あったようです。

 そういうことがない現代においては、皆伐跡地が最も危険な状態ではないかと思います。

 

 やがて、草が生えると、何もない状態よりも雨滴衝撃は緩和され、地表面を流れる水の速度も抑えられます。

 また、雨滴侵食による斜面下方への土壌の移動も抑制されます。

 

 しかし、草は、地面の中深くかつ広範囲に根を張らないので、やはり草だけでは土壌を緊縛する力は弱い。

 そこに木が生えることで、草だけの状態よりは、土壌侵食が起こりにくくなります。

 

 さらに、木が増え、根が浅い樹種と根が深い樹種が入り交じって生えることで、土壌を繋ぐ緊縛力が高まり、さっきの状態よりも、土壌侵食リスクは下がります。

 降った雨を木が遮ってくれるので、木が地面を覆うことで、林冠が雨水を遮断し、雨が地面に直接叩きつけられない状態になります。

 加えて、落葉と落枝の存在も雨滴衝撃を抑制してくれます。

 

 しかし、雨が降り続けたり、強い雨が降ると、林冠を通り抜けて、林内にも雨が降り注ぎます。

 木が生い茂って、下層植生が乏しい状態よりも、根が浅い樹種/根が深い樹種、高い樹木/低い樹木、草と木など、森林の成り立ちがより複雑な状態の方が、雨滴衝撃や雨滴侵食をさらに緩和してくれます。

 倒木があると、さらに土壌の動きを止めてくれるかもしれません。

 降ってくる雨だけでなく、地表面を流れる水の分散や流れる速度を緩和しないといけないので、落葉や落枝だけでは、その効果は期待できません。

 だから、木の下に生える草や灌木、低木性の樹木の存在が重要になってきます。

 

 「森林の土壌はスポンジの様に柔らかく、水を吸収し、蓄える。」と言われています。

 柔らかい状態を維持するためには、雨滴衝撃によって地面が固くなることを防ぐ必要があります。

 そのためには、土壌が木・草・落葉などに覆われていないといけません

 森林の土壌に隙間(孔隙)があることで、林内に降った雨水を吸収することが出来ます。

 しかし、吸収するスピードはゆっくりなので、一斉に林内に雨水が降り注ぐと、キャパオーバーで上手く吸収することが出来ません。

 森林に生える樹木は、雨滴衝撃から地面を守るだけでなく、林内に降り注ぐ雨水のスピードを緩和させるという働きもあります。

 さらに、樹木の根が広がり、樹木同士の根が結合することで、土壌の緊縛力が高まり、地表面を流れる水による侵食を防いでくれます。

 根が浅い樹木、根が深い樹木、高い木の根、低い木の根、草の根、落葉落枝などが多いほど、地表面を流れる水の侵食を防ぎ、流れる水のスピードを緩和してくれます。

 

 長々と書きましたが、つまり、こんな森林だ!ってことです(^_^;)。。。

 細かい説明とかしなくても、なんか、土砂災害とか防いでくれそうですよね!

 もちろん、こういう状態の森林でも崩れてしまうことはありますが、崩壊するリスクを下げる(減災)ということが重要だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エビガライチゴ

2020年07月25日 | 山菜・キノコなど食を楽しむお話

 伐採跡地など陽当たりの良い場所に生えるキイチゴの仲間「エビガライチゴ」。

 実は7~8月頃、赤く熟します。

 食べられる木イチゴですが、個人的には、味は可もなく、不可もなくといったところです。

 もちろん、ニガイチゴよりは断然、美味ですよ(^_^;)。

 

 エビガライチゴは、北海道から九州まで、山地で日当たりの良い場所に生えます。

 茎や枝はつる状に伸び、高さは約2m以上になるので、下刈り作業の天敵とも言える植物の1つですね(*_*;

 一番の特徴は、茎や枝に「赤紫色」の毛が密生し、細い刺があるところです。

 葉は奇数羽状複葉の互生で、長さ10〜20cm。

 葉の裏面に白い綿毛があるので、別名「ウラジロイチゴ」とも言われています。

 

 1~2mの高さになる上、トゲも多いエビガライチゴ。

 下刈り作業にとっては、まさに天敵(>_<)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プラロック

2020年07月22日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 時々、山へ木を伐りに行きます。

 チェーンソーアートやチェーンソー製材に使う丸太や薪に使う丸太を得るために。

 あと、地元のおっちゃんに「あの木、好きに使こてな~」という体の伐採依頼とか(*_*;

 基本的に1人で伐採することが多いので、安全に伐採するために不可欠な道具がこの「プラロック」。

 プラロックは、間伐など木を伐倒するとき使用するけん引道具です。

 価格は20,000円~30,000円程度、これより小さい機種(引張200kgf)だと15,000円程度かな。

 大は小を兼ねるというので、僕は引張350kgfの大きい機種を購入しました。

 そこそこな重量物なので、チェーンソーと一緒に持って林内を歩くと、結構な荷物です。

 ほかにも燃料、チェーンオイル、ロープ、滑車、水筒などもありますからね・・・・(^_^;)

 これがあれば、直径60cmのスギやヒノキの大木も、倒したい方向へ伐倒する事が出来ます。

 もちろん、安全に木を倒すための受口と追口を正しく作る技術も不可欠です。

 

 倒したい木の先端にロープをかけて、プラロックでカチカチとロープを引く。こんな感じで。

 プラロックを使う場所は、倒そうとする木の後方です。

 真正面の方が楽ですが、自分に向かって木が倒れてくるので、危険です。

 それでも、真正面から引きたい場合は、樹高の2倍の距離を保って下さい。(例えば、樹高15mなら30m離れるって事です。)

 プラロックは、初心者の方に伐採指導するときに大活躍です!

 木が倒れそう・・・という直前に、前もって確保した安全な場所でプラロックを引けばいいので、とっさの避難でも慌てず行動することが可能です。

 

 ホント、プラロック様々(^o^)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヨタカ

2020年07月19日 | 動物・野鳥のお話

 夏の渡り鳥「ヨタカ」。

 あまり野鳥に関しては詳しくないのですが、ヨタカは夏になると日本全国の低山帯に渡来する夏鳥です。

 夜になると「キョキョキョキョ」と独特な声で鳴きますが、僕は聞いたことがありません(^_^;)


 ヨタカは、伐採跡地や林道終点の広場など明るい森林や林縁部を好み、昆虫類を補食します。

 昔は、造林が盛んで、林道工事も盛んだったという背景もあり、ヨタカの生息に適した環境が多く、生息数も少なくなかったようです。

 しかし、造林したスギやヒノキが成長し、林道工事も減少し、開けた空間が徐々に減るとともにヨタカの数も減少したのか、現在は、レッドデータブックでは「絶滅危惧Ⅱ類」に指定されています(地域によっては「準絶滅危惧」の指定も)。

 近年は、皆伐も増えてきたので、それに伴い、ヨタカが生息できる環境が増えるといいなと思います。

 なお、皆伐が増えれば良いというわけではありません。

 皆伐後に造林し、下刈りを行うことで、ヨタカの環境が整います。

 下刈りもせず、放置すると、キイチゴ類やタケニグサなど背丈の高い植物が繁茂してしまうと、ヨタカも住み着きにくくなると思うので・・・。

 

 ちなみに、ヨタカの卵は小さく(3cmくらい?)、巣らしきものもなく、地面に無造作に産卵されています。

 めっちゃ、分かりにくいので、草刈機で蹴散らしたり、うっかり踏んだりしないであげて下さいね (^_^;)。

 

 僕がヨタカと初めて出会ったのは、2007年の夏。

 ケガをしたのか、足を引きずりながら地面をピョンピョン歩くヨタカとばったり出会い、それを追いかけると、突然、飛び立ち、目の前の防護柵の支柱に止まりました。

 この動きを見て、「なるほど!弱った動きを見せつけて、こっちへ誘導したな。と言うことは、反対側に何かあるなー。」と、感づき、反対方向へ向かうと、羽根を広げて怒り出すヨタカ。

 その先に、卵が2個、無造作に置かれていました (^_^;)。

 

 そして、半月後。

 卵が雛に!

 残念なことに、卵2個に対して雛は1匹・・・。

 もちろん、この雛に近づいたときも・・・・

 

 めっちゃ、怒られました。。(-_-)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アゲハチョウ 種類

2020年07月15日 | 昆虫類+αのお話

 身近に出会えるアゲハチョウの種類を簡単にご紹介します。

 

 アゲハ(ナミアゲハ)。

 アゲハチョウと言えばナミアゲハ。というくらい頻繁に見かけると思います。

 春型(3~5月)と夏型(6~10月)があり、少し模様が異なります。

 ちなみに、先の写真は夏型のナミアゲハです。

 幼虫はミカン科植物の葉を食べるので、ミカン、サンショウ、カラスザンショウ、イヌザンショウ、フユザンショウ、カラタチなどをじっくり観察すると幼虫に出会えたり、産卵している成虫に出会えます。

 幼虫にイタズラすると、オレンジ色の角みたいな突起を出して、脅かします。

 このオレンジの角に触れると、クサイ匂いがつくので、要注意です!

 

 キアゲハ。

 ナミアゲハより一回り大きい。

 ナミアゲハ同様、春型(3~5月)と夏型(6~10月)があり、写真は夏型。

 幼虫は、セリやニンジンなどセリ科の植物を食べます。

 セリ科の植物を探して、ウロウロしていると、キアゲハに出会えます。

 

 アオスジアゲハ。

 黒いボディにグリーンのラインが美しい!

 4~10月と長い期間にわたって出会えます。

 幼虫はクスノキ科の植物を食べるので、クスノキ、タブノキ、ニッケイ、ヤブニッケイ、シロダモ、イヌガシなどの樹木を観察していると幼虫に出会えたり、産卵中の成虫に出会えます。

 

 モンキアゲハ。

 黒いボディに白い斑点模様がオシャレ♪

 幼虫はミカン科の植物を食べるので、カラスザンショウ、サンショウ、カラタチ、キハダなどの樹木を観察していると出会えるかも。

 成虫は、林道などに溜まった雨水や川岸で、吸水している姿をよく見かけます。

 成虫は4~10月と、長い期間で会えます。

 

 クロアゲハ。

 黒いボディに包まれ、後翅のオレンジ模様がカッコイイ~

 クロアゲハの幼虫もミカン科の植物を食べます。

 サンショウ、カラスザンショウ、キハダ、カラタチ、ダイダイなど。

 クロアゲハの成虫も4~10月までの期間に出会えます。

 

 カラスアゲハ。

 光沢に輝くブルーが最高!

 黒色系アゲハチョウの中で、カラスアゲハが一番好きだな~

 

 カラスアゲハの幼虫もミカン科の植物を食べます。

 カラスザンショウ、サンショウ、カラタチ、コクサギ、タチバナ、キハダなど。

 

 成虫は春型(4~5月)と夏型(6~9月)があり、先ほどの写真(成虫)は夏型。

 

 以上、簡単にですが、身近に出会える6種類のアゲハチョウでした。

 

 蝶の幼虫は、エサとなる植物の種類が、ある程度決まっていることが多いです。

 お目当ての蝶に出会いたい場合は、エサとなる植物をターゲットに周囲を観察すれば、出会える確率は上がります。

 なので、蝶好きは植物に詳しいとも言われています。

 お目当ての蝶と出会うため、エサとなる植物がどこに生えるのか、知っておくことが基本になりますからね。

 

 と言うわけで、色んなアゲハチョウに出会いたい、黒色系のアゲハチョウに出会いたい場合は、ミカン科の植物を見つけて、その周辺を、時期を変えながら、繰り返し訪ねてみて下さい。

 

 僕のオススメは「カラスアゲハ」!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

手鋸・下刈鎌 手道具を使うことの重要性

2020年07月12日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 林業だけでなく、森林ボランティアでも、チェーンソーや草刈機を使用することが一般的な現代。

 僕が林業の業界に入った20年前(2000年)は、森林ボランティアでチェーンソーを使う方は、どちらかと言えば少数派って感じで、手鋸で間伐をしている方も多く、下草も下刈鎌を使っている方もいました。

 森林ボランティアに対する補助金が充実したり、国や都道府県と連携することも増え、機械類が購入しやすくなったという背景もあると思いますが、今では、森林ボランティアの方もチェーンソーで木を伐る、草刈機で草や灌木を刈ることが当たり前になっていると思います。

 ある日、僕の師匠が、師匠が新人だった頃の話をしてくれました。

 「駆け出しの頃は、周りがチェーンソーや草刈り機を使っている横で、1人、手鋸と下刈鎌を使って仕事をしていたから大変やった。」と。

 だけど、「でも、手道具で仕事してたら、山で働く体の動きが身についたから、結果的によかったわ。」と。

 「今は、仕事にならんから、新人にも機械を渡すけど、機械の扱いを教えながら、動きも見なあかんから、指導するのも大変。手鋸や鎌やったら、渡して、作業しやすい場所を割り当てておいたら、まぁ、放っておいても、大きなケガになることは少ないからな。ゆっくりと育てられる。」

 つまり、

 新人が林業で最初に学ぶことは、山の中での体の動かし方。
 それには、手鋸や下刈鎌で作業するのが一番。

 僕が初めてチェーンソーを買おうと思って、師匠に相談した時、

 「手鋸で伐ることも続けな、あかんで。」と言われました。
 
それはなぜか。
 チェーンソーは正しい姿勢でなくても、木を伐ることが出来る。
 目立てが上手ければ、無理な姿勢でも、木を伐ることが出来る。

 草刈機も正しい姿勢でなくても、草を刈ることが出来る。
 目立てが上手ければ、太さ10cm以上の灌木だって、スパっと切れる。

 だけど、手鋸や下刈鎌は、正しい姿勢でないと伐る・刈ることが出来ない。
 頑張れば、伐る・刈ることは出来るけども、長時間、続けることは出来ない。

 体を安定させ、しっかりと踏ん張ることが出来る姿勢で作業しないと、手鋸での間伐は、ただただ疲れるだけ。

 手鋸で作業していると、疲れてきたら、自分の姿勢を直したり、ポジションを変えたりしますが、チェーンソーは「あと少し・・」みたいな気持ちが出て、姿勢を直したりすることは少なかったり・・・。

 手鋸で木を伐り続けるには、非効率な作業をなくし、効率かつ長続きできる方法を身につけないといけないので、伐る前に、自分の立ち位置、木を伐る高さと伐りやすい姿勢、足下が踏ん張れる場所などを考えるようになり、伐るためのポジションを確認するようになります。

 

※間伐用手鋸のイメージ

 しかし、新人が初めからチェーンソーを使って、木を伐っていると、そこに行き着くことは少ない。

 自ずとそこに行き着く新人がいたら、その新人はかなり優秀です。

 人は「楽をしたい」と思うので、非効率な手鋸を使うことによって、効率的な作業姿勢や方法を自ら考え、繰り返すことで、上達していきます。

 チェーンソーを使うと、人が備えている考える力を奪ってしまいます。

 インターネットが普及し、検索すれば、色んな情報が手に入り、特に考える必要がなくなったというのと同じ現象ですね。

 

 下刈りも同様です。

 下刈鎌を使って作業する場合、作業時の足の立ち位置が「右足が前・左足が後」になります。

 作業時の足の運び方も、前進するとき右足→左足の順に足を運びます。

 この姿勢と足運びは、草刈機を使用するときも同様です。

 しかし、草刈機も正しい姿勢でなくても、草や灌木を刈ることが出来るので、「左足が前・右足が後」でも違和感なく作業することが出来ます。

 下刈鎌を使う場合、足が逆になると動きがぎこちないと実感することが出来ます。

 例えば、次の一歩を踏み出した後、手前の草が刈り足りないと気づいた時、下刈鎌を使っていると、一歩下がってから、刈り直します。
 下がらずに刈ろうとすると、無理な体勢になり、上手く刈ることが出来ません。

 刃の目立てが上手ければ、刈れなくはないけど、それでも無理な作業姿勢に違和感を持ちます。

 一方、機械を使っていると、機械を少し手前に下げて、一歩下がらずその場で刈ることも出来ます。

 これも無理な作業姿勢になりますが、機械だとサッと刈ってしまうので、無理な作業姿勢の違和感を我慢でき、やがて、その行動が自然な作業姿勢として身についてしまいます。

 そして、そんな作業をしている時に、岩や切り株にあたって、キックバックが起こる・・・

 立ち位置そのままで、機械を手前に下げた分、機械と足の距離が縮まっているので、キックバックした刃が足にあたることも・・・・。

 手鋸や下刈鎌などの手道具は、目立ても重要ですが、そもそも正しい姿勢で扱わないと疲れます。

 

 山の中で作業した経験が無い新人は、何が正しいか分かりません。

 そして、疲れる原因は、体力なのか、作業姿勢なのか、その原因も分かりません。

 体が慣れた頃、体力がついたからなのか、正しい作業姿勢が身についたからなのか、変な作業姿勢に体が慣れてしまったからなのか、体が慣れた理由も分かりません。

 どういう動きが正しいのか、分からないのが新人です。

 だから、手道具を扱わせて、作業姿勢の違和感を感じてもらうことも大切だと思います。

 

 個人的に気になるのは、今、林業業界に参入しようとする新人の方達は、手道具による作業を経験しているのか、という点。

 新人には、機械を扱う技術を学ぶことも大切ですが、まずは、山での動き方、正しい作業姿勢を身につけることも重要ではないのかなと思います。

 そのためには、手道具を使って作業する経験は、とても重要なことだと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アシダカグモ

2020年07月10日 | 昆虫類+αのお話

家の中に潜む大きなクモ。アシダカグモ。

 突然の出会いに「ギョッ!」とする方も多いのでは?

 

 アシダカグモは外来種で、日本では1878年に長崎県で初めて確認されたそうです。

 輸入果物(バナナらしい)とともに日本に入ったらしいです。

 また、真偽は定かじゃないんですが、ゴキブリを駆除するために輸入したという説もあるようです。

 

 毒は無いので、咬まれても「痛ッ!」という程度で終わることがほとんどだと思います。

 

 大きなクモだし、見た目はギョッとするし、イヤァ~~!!!と思うかもしれませんが、素早い動きでゴキブリを駆除してくれる「ゴキブリハンター」なので、殺さずに、大切に扱ってあげて下さいね。

 

 我が家の子ども達は、「アシダカさん❤」と呼び、とても大切に扱っています。

 というか、手なずけている?(^_^;)

 

 家の害虫であるゴキブリを駆除してくれるアシダカグモ。

 見た目ほど恐い存在ではないので、同じ屋根の下に住む仲間として受け入れてあげて下さいね(^_^;)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウシガエル

2020年07月05日 | 爬虫類・両生類のお話

 食用蛙で有名なウシガエル。

 ウシガエルは1918年にアメリカから移入され、食肉用として養殖されました。

 ちなみに、ウシガエルを養殖するためのエサとして移入されたのが、アメリカザリガニです。

 そもそも、日本ではカエルを食べる習慣も無く、カエルの養殖事業が廃れるとともに、ウシガエルが野に放たれ、野生化し、外来生物として、各地で問題を起こしています。

 IUCNの「世界の侵略的外来種ワースト100」、日本生態学会の「日本の侵略的外来種ワースト100」にも選定されるほどの嫌われ具合(^_^;)。

 

 ウシガエルは、沖縄県から北海道まで幅広く定着しています。

 体長は110mm~185mmと大型で、口に入る大きさであれば、ほとんどの動物をエサとして捕食します。

 ウシガエルは、日本に生息する全てのカエルの中で最大のカエルで、しかも、アメリカでも最大のカエルだそうです。

 動きは素早く、後肢の水かきも発達し、泳ぎも達者です。

 オタマジャクシも大型で、全長で150mm。

 ウシガエルの繁殖期は5~9月で、6,000~40,000個の卵を産卵します。

 大型で、口に入るなら何でも食べるウシガエル。

 オタマジャクシも大型で、産卵数も桁違い。

 警戒心が強く、動きも素早いため、捕まえにくい。

 ウシガエルは、本当に貪欲な捕食者で、昆虫、ザリガニなどの甲殻類、小型の哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類まで食べてしまいます。

 口に入れば、カメも、そしてヘビさえも、食べてしまうウシガエル・・・。

 モリアオガエルがいなくなった地域もあり、ウシガエルが与える日本の生態系へのダメージは計り知れません。

 

 ウシガエルは、低く響く声で「ブォーン、ブォーン」と牛の様に鳴きます。

 牛に似た鳴き声から「ウシガエル」という名前がついたようです。

 ウシガエルに気づかれること無く、そーっと、近づいて、驚かせると、高い声で「キャウ~ン」と鳴いて、水の中に飛び込みます。

 雨が降る夜中、たまーに、ウシガエルが道ばたに出てくることがあります。

 

 肝心な情報を1つ、忘れていました!

 ウシガエルの唐揚げは美味しいです!

※カエルの後肢

 機会があれば、是非、ご賞味下さい(^o^)

 

 あと、昔、小学校の理科の授業で、解剖に使われたカエルもウシガエルでしたね。。って、僕の小学校時代に蛙の解剖はなくて、解剖されたカエルの写真を見たくらいけどね。

 

 僕の地域にも、農業用のため池にウシガエルが生息しています。

 ウシガエルの捕獲がてら、アメリカザリガニをエサに、子どもと、カエル釣りを始めようかなー

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

下刈り・隔年下刈り・無下刈り

2020年07月04日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 人工林における保育作業の中で、下刈りが最も労力とコストがかかる作業と言われています。

 そして、木材価格が低迷する中で林業経営の採算性を確保するため、再造林や保育のコストを下げることが重要で、下刈りの省略化という方法が提案され、すでに、導入されている方もいらっしゃるかと思います。

※植物生理の視点に基づく下刈り適期などのお話はコチラ → 下刈り

 こうした動きの中で、毎年行う通常の「下刈り」、2年に1回行う「隔年下刈り」、下刈りを行わない「無下刈り」に関する研究も進められています。

 なお、隔年下刈りは1年目と3年目に行うパターン、2年目と4年目に行うパターンなど、1回目の下刈りを1年目 or 2年目に行うかによる違いもあります。

 

 伐採後直ちに植栽する一貫作業でなく、これまで通りの方法で行う通常の下刈りに対し、隔年下刈りや無下刈りの違いを簡単に(^_^;)。・・・その前に、言い訳します。全ての論文を読んでいるわけでもないし(恥)、西日本の人間なので西日本の成果に偏っていますので、この点、ご容赦下さいm(_ _)m

 ・下刈り回数が減少すると、植栽木の生存率が低下、植栽木の曲がりが多くなる、植栽木の樹高と根元直径の成長が悪くなる、雑草木が高くなることで植栽木が視認しがたくなる。

 ・隔年下刈りは、雑草木の量が増加し、作業効率が悪くなる

 ・無下刈りにより下刈りコストを縮減しても、その後の除伐コストが上がる。

 

 こんな中で作業するわけですから・・・・

 現場で働く方にとっては、想像とおりというか、当たり前だろうと思う結果では無いかと思います。

 だけど、現場では当たり前の事を科学的に立証されることは、とても大事です。

 というのは、現場を知らない方が大半だから(^_^;)。

 異業種の方や林業を始められた方は、当然、現場を知らないわけですから、現場の経験だけでなく、それを裏付ける根拠があると言うことは、とても大切です。

 

 

 さて、個人的に下刈りは遷移をコントロールする作業という風に解釈しています。

 植栽後も遷移は進行するので、この遷移を抑制し、植栽木を育てるという風に考えています。

 そして、そこに生えている植物が、草本が中心、木本が中心、草本&木本が中心、草本と藤本が中心なのかによって、遷移の進行や植栽木への影響も異なります。

 

 例えば、ススキなど草本が中心の場合。

 

 一度、刈り払うことで、草本類の成長がリセットされます。

 

 リセットされたことで、草本類の成長に遅れが生じ、その間、植栽木はすくすくと成長できます。

 

 一方、草本類を刈らなければ、リセットされず、そのまま成長します。

 この時、植栽木の成長に影響がなければ、下刈りを省略してもいいかも。

 

 草本にアカメガシワやカラスザンショウなどのパイオニア(先駆性樹種)など木本が加わった植栽地の場合・・・

 

 下刈りによって、成長がリセットされ、植栽木はすくすくと成長します。

 

 刈られた草やパイオニアが復活するけど、植栽木との成長に差が生まれます。

 

 もし、下刈りをしなかったら・・・・

 特にパイオニアは、伐採跡地などに真っ先に生え、成長が早いという特徴があるので、1年放置すると、あっという間に大きく成長するし、再生能力も高いです。

 

 ただし、パイオニアは、光がガンガンあたる環境を好むので、植栽木が早く成長し、日陰が出来るとパイオニアの勢いも低下するので、その時を迎えたら、下刈り回数を減らしたり、下刈りをやめるという選択肢も出てくるかもしれません。

 だけど、植栽木の成長に影響がないからと言って、パイオニアやそれ以外の樹種を残してしまうと、除伐のコストがかかる、という事になるかも(^_^;)。

 シイノキとか残すと、後々、やっかいになると思うな・・・。

 

 遷移の進行が遅い場所では、下刈り回数が減少しても影響は小さいだろうし、遷移の進行が早い場所では下刈り回数が減少すると影響は大きいと思います。

 あくまで、下刈りに限った話であって、その後の除伐や保育間伐への影響が出ることがあるかもしれない・・・。

 

 ちょっと雑な説明で申し訳ございませんが、研究成果の中にも、

・植栽後、1年目と2年目の下刈りは重要である。

 →ただし、皆伐直後か否かなど条件や地域性によって、1年目を省略出来るという成果もある。

・植栽後3年間、下刈りを省略することは、成長を阻害し、形質にも影響を与えた。

 → 植栽直後の植栽木は小さいので、雑草木の被圧を受けやすいから。

 とあるように、下刈りによって、雑草木の成長を一度リセットすることで、植栽木を遷移の中で有利な立場にさせられることだと思います。

 ただし、皆伐から年数が経過すればするほど、遷移が進行していることになるので、その時点で下刈りの省略が可能か否かの境目になると思います。

 

 という風に考えると、毎年下刈り or 隔年下刈り or 無下刈りという選択ではなく、植栽地における雑草木の繁茂状況を観察しながら、今年は下刈りをする or しないという選択であるべきではないかと思います。

 そのように指摘する研究報告もありますし、江戸時代に書かれた書物の中にも、植栽地の状況を見ながら下刈りを行うという旨が書かれているので、現場を見て判断することは、当たり前のことだと思います。

 現場を見た結果「今年は下刈り、いらないな」という選択が5年続いた、その結果が無下刈りであって、最初から無下刈りという選択肢はあり得ないと、個人的には思うんですが・・・

 そうした観察もなく、単に保育コストを縮減するために「隔年下刈り」を机上で採用・推進するのもどうなのかな?と疑問を感じます。

 

 そして、保育コストを縮減することを目的とした隔年下刈りは、労働安全上にも影響を与えます。

 先述した中で「隔年下刈りは、雑草木の量が増加し、作業効率が悪くなる。」とあります。

 作業効率が悪いと言うことは、通常の下刈りと比較する「作業環境の悪化」と「危険因子の増加」という可能性が潜んでいます。

 「作業環境が良くなり、危険因子も少なくなったけど、作業効率が悪くなった。」なんてことは、一般的には考えられません。

 作業効率の悪化という結果の裏には、実際に作業した者にしか分からない、作業環境の悪化と危険因子が潜んでいるかもしれません。

 植栽木が見えにくい環境で、植栽木を探しながら下刈りしないといけない。

 それだけではなく、昔の切株が見えにくい浮石や残置木が見えにくいキックバックの要因になるかもしれない岩石が見えにくい・・・ということは、危険因子の発見が遅れるということなります。

 というか、2年間下刈りしていない雑草木が繁茂した場所で下刈りなんて、一般的には、したいと思わないでしょう・・・良好な作業環境ではないのですから・・・

 

 保育コスト縮減のため、下刈り回数を減少する場合は、植栽地に繁茂する雑草木の状況や種類から遷移の進行を予測し、下刈りしないことによる影響の有無を検討することが重要だと思います。

 そして、当年は下刈りしないことで、翌年の下刈りで作業員の負担や安全上のリスクが増えないかの検討も重要だと思います。

 「コスト縮減のため、下刈り回数を減らそう」と安易に進めるべきでは無いと思います。

 

 ちなみに、刈払機で灌木を切る場合、切断部分の直径が8cm(チップソーの場合は6cm)程度までです。

 もし、根元直径8cmの以上の灌木を刈払機で切って、ケガしたら、労基署に指摘されるでしょう。

 万が一、隔年下刈りをしようとする場所に、8cm以上の灌木が生えていたら、安全指導上、その灌木はチェーンソーや手鋸で切らないといけないことになります。

 意地悪なことを言えば、国有林や行政が発注する事業で、隔年下刈りが発注されたら、事前に調査しているのか、明記されているのか、設計にチェーンソー使用が含まれているのか、確認したいところです(^_^;)。

 

 森林整備は、森林の中で働く人たちの環境整備であると考えています。

 コスト縮減も大切ですが、山の中で働く人の方が大切です。

 

 3年間、下刈りしなかったら、こうなった・・・

 やっぱり、今年から下刈りしよう!

 なんて、安易な発想は、ここで働く人たちにリスクを背負わすことになる・・・。

 

 そういう意味で、一貫作業は重要なポイントになります。

 ということは、皆伐を行う業者との連携が重要になるし、植栽を前提とした伐採と搬出を行う技術の確立も必要・・・だと思います。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする