はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

シロマダラ

2020年04月29日 | 爬虫類・両生類のお話

 シロマダラは夜行性のヘビで、昼間に見かける機会が少なく、個体数も多く無いかも・・・といわれています。

 そのため、「幻の蛇」などと呼ばれています。

 シロマダラは、全長30~70cmくらいの小型のヘビで、トカゲや自分より小さいヘビなどをエサにしており、ネズミなどの哺乳類(温血動物)は食べません。

 

 性格的には、気性が荒い子が多いので、捕まえようとすると咬みつきにくることも多々・・・(*_*;

 怒る時は、シッポを地面にたたきつけ、音を鳴らし、首をS字にして持ち上げて、相手を威嚇!

 威嚇するときの、首を持ち上げる、このS字ポーズ!

 これが、たまらなくカッコイイ!!(^o^)

 さ・ら・に、正面から顔を見ると、つぶらな瞳がめっちゃカワイイ~(^_^)

 

 シロマダラの一番の特徴は、黒と灰白色の斑模様です。

 幼蛇や若い個体は、比較的白っぽい色ですが、成蛇になると、茶色というか桃色っぽい茶色になります。

 

 シロマダラの幼蛇は、頭にある白い模様がはっきりと現れます。

 そして、成蛇になると、次第にこの模様は薄れていきます。

 

 

 「シロマダラ」という名前ですが、すべての個体の斑模様が白色という訳ではなく、茶色っぽい斑模様の個体、桃色っぽい薄茶色の斑模様の個体と、個体差があります。

 もちろん、白味が強いキレイな斑模様のシロマダラもいるので、そんな子と出会えたら、サイコーにラッキーですね!

 この子は、おそらく、産まれて間もないシロマダラ。

 鱗がツヤツヤで、美しい斑模様でした~(^o^)

 

 夜行性なので、昼間に見かける機会は本当に少ないです。

 そのため、発見すると、「珍種」とか「幻の蛇」という風に表現されることもあります。

 ちなみに、昼間は、倒木や岩の下に潜んでいるので、倒木や岩をひっくり返すと、たまーに、包まっているシロマダラに出会えます。

 

 あと、擁壁のパイプの中に潜んでいることも多いですね。

 

 活動範囲がそれほど広くないのか、同じ地域や同じ場所で何度も出会うことがあるので、一度見つけた場所をウロウロすると、再会できる可能性は高いんじゃないかなー

 

 
 マダラヘビ属のヘビは、歯の大きさが生えている場所によって違うそうです。

 と言うのも、歯の大きさを生えている場所によって変えることで、「効率的に獲物を呑み込むことができる」そうです。

 シロマダラの歯も同じ構造なので、自分の体と同じ大きさのトカゲや小型のヘビを食べることができるとのこと。

 
 やっぱり、ヘビの中では、シロマダラが1番です。

 気性の荒さと体の大きさのミスマッチ具合、怒ったときのS字ポーズ、つぶらな瞳。

 なかなか出会えないので、シロマダラを発見した時の喜びは、他のヘビの比ではない!
  

 

 シロマダラを日本のレッドデータ検索システム(http://www.jpnrdb.com/)で調べてみると、

 絶滅危惧Ⅰ類や絶滅危惧Ⅱ類に指定されている地域もあります。

 準絶滅危惧に指定されてる地域も多いですが、情報不足という地域も多いです。

 やっぱり、なかなか出会えないからかもしれないですね。

 そんな中、道路で轢かれたシロマダラのロードキルを見かけることも・・・

 夜行性の小さなヘビなので、車で轢いたことも気づかないと思いますが、貴重な個体なので、森や山の中、山間地域の道路を夜中に走行する場合は、気をつけていただきたいと願います・・・・。

 

 最後に、あくまで、個人的な考えですが、

 ヘビの種類が多い地域・森林は、「生物の多様性・生物の生活環境が比較的高いんじゃない?」と考えています

 ヘビは、地を這う生き物なので、色々と行動が制限されやすい。

 その上で、エサとなる小型哺乳類やカエル・トカゲなども豊富でないと、捕食もままならない。

 さらに、ヘビは、その種類によって、食べられるもの・食べられないものがあります。

 例えば、シロマダラはネズミなどの小型哺乳類を食べません。

 なので、飼育しようとして、上手くネズミを餌付けすれば食べるようになるものの、うまく消化できず、結果、衰弱死します。

 あと、タカチホヘビというヘビは、ミミズ食です。

 

 なので、ヘビの種類をたくさん見かけることができる地域・森林は、さまざまなヘビが生活できるほど、エサが豊富で、環境が整っていることから、「生物の多様性・生物の生活環境が比較的高い」。

 と、個人的には思っています(^_^;)。

 ヘビが苦手な方も、そういう目線で、ヘビを観察し、少しは苦手意識が改善されると嬉しく思います。


キジ(♀)

2020年04月23日 | 動物・野鳥のお話

 道路でウロウロしているキジ(メス)。

 

 「?」って、思ったら、近づきたくなる(^_^;)。

 

 で、近づくと、なんかソワソワしているなーと思ったら・・・

 雛。めっちゃカワイイ❤(^o^)。

 

 って、思ったけど、雛が側溝から脱出できず、困っている模様。

 

 当然、近づけば逃げるし、ママさんはめっちゃ怒る・・・(-_-)。

 だけど、気づいた以上、このまま放置できない・・・

 

 側溝に向かって伸びるサルトリイバラを利用して、脱出できない?

 と、思ったけど、案の定、脱出できず、無駄に怯えさせ、ママさん激怒!・・・m(_ _)m

 

 

 

 とりあえず、その辺にある落ち葉や枝などを集めて、側溝を埋めて、雛たちを誘導。

 

 いやー、なんとか脱出できた!

 よかった~(^o^)。

 

 側溝に埋めた落ち葉や枝を取り除きながら、逃げ遅れた雛がいないか確認。

 無事、すべての雛たちが脱出できたようです。

 

 私たち、人間にとって便利なものが、動物たちにとって、命に関わるような危険なものに変わることがあります。

 側溝もその1つです。

 側溝に落ちて、脱出できない動物はキジの雛だけでなく、トカゲやミミズなど小さな生き物にとっては脅威です。

 実際、干からびて死んでいますし。

 こうした事情から、土木工事も生き物に配慮した施工が行われています。

 しかし、過去に施工されたものは、変わらぬままのものが多いと思います。

 

 コンクリート舗装1つで、生息できる環境を失ってしまう生き物は本当に多いと思います。

 田舎に住むと言うことは、こうした生き物たちへの影響も考えて、暮らさないといけない。


クズ 新芽 

2020年04月14日 | 山菜・キノコなど食を楽しむお話

 国際自然保護連合(IUCN)が定める「世界の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている日本の植物クズ。

 アメリカでは最悪の害草と呼ばれ、グリーンモンスターというあだ名も(-_-)。

 日本でも、放置された果樹園や畑で繁茂しているクズを見かけます。

 ただ、クズはシカの大好物なので、シカの生息頭数が多い地域ではクズの繁茂はある程度抑制されます。

 クズが減ってきたり、繁茂の勢いが弱くなったなー、と感じたら、シカが頻繁に出没し、定着している可能性があるかも・・・。

 

 

 最悪の害草なんて、呼ばれているクズですが、その用途は、非常に多いし、生活にも生かせるので、実は超優秀な植物。

 

 一番有名なのはクズの「根」。

 薬の「葛根湯」や料理やお菓子に使われる「葛粉」(吉野本葛、葛まんじゅう、葛きり)もクズの「根」。

 デンプン質に富むクズの根は、イノシシも大好きなのか、よく地面を掘り返しています。

 

 クズの根はイノシシが食べ、クズの新芽や葉はシカが食べ、野生動物には人気のクズ。

 シカも好むクズの新芽は、僕たち人間も食べられますよ。

 春(4月)に伸びたクズの新芽は、揚げて良し、炒めて良し、茹でて良しの三拍子揃った魅力的な山菜です。

 個人的には、これくらいの新芽が好みです。

 

 こんな感じに採取して、

 

 天ぷらでいただきました。

 タラの芽(タラノキ)同様、とても美味です(^o^)。

 

 なお、採取する際は、土地の所有者や管理者に許可を得た上で、採取してください。

 放置された場所に繁茂していても、許可を得てから採取することがマナーです。

 クズの美味しさに気づくと、周辺に繁茂するクズの見え方が変わってきます!

 

 クズを根絶する際は、4月に行い、新芽と根っこを採れば、ウハウハですね!


地拵え 種類

2020年04月10日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 前回、地拵えの目的についてお話しさせていただきました。

 今回は、地拵えの種類について。

 

 地拵えは、伐採跡地に残された伐倒木や枝条などの林地残材を整理し、安全かつ効率よく、再び、木(苗)を植えられるように整理する作業です。

 そして、地拵えのやり方次第では、「土壌流亡を防ぎ、林地保全を促進する。」というメリットや「地力低下を招く。」というデメリットを持ちます。

 

 地拵えは、大きく「潔癖地拵え」と「粗放地拵え」の2タイプに分かれます。

潔癖地拵えは・・・

 地表面をレーキでかいたり、残された根や落葉層まで除去し、特に天然更新を促進する場合は、鉱物質土壌まで露出させます。

 また、散在する枝条を集め、焼き払ったり、ブルドーザーやトラクタ等で耕耘したり、ササの地下茎を剥ぎ取ったり、徹底的に地表面を除去することも。

 メリットとして、地表面を除去することで、灌木などの侵入や再生が遅れるため、下刈りを省略することができます。

 デメリットとして、地表面を除去するため、特に鉱物質土壌を露出してしまうと、地力の低下や表土流亡の発生を招いてしまいます。

 枝条や刈り払った有機物を利用し、地表面を覆うことで、デメリットの対策・緩和に繋がりますが、地表面を除去した後、再び、枝条を集積して地表面を覆うとなると、労力・コストは大幅に上がります・・・。

 

粗放地拵えは・・・

 必要最小限の作業しか行いません。(一般的な地拵えが、これにあたると思います。)

 しかし、植栽作業や移動に支障をきたすような仕上げ方では、粗放過ぎます・・・。

 また、雑草木の除去程度が低いと、萌芽能力が高い植物や再生能力が早い植物に植栽木が覆われてしまいます。

 デメリットとして、仕上がり加減が、能力や経験値に左右されやすいと考えられるので、雑草木やつるが繁茂し、視界が悪くなる残された材や枝条が植栽や下刈り作業の障害になりうるということです。

 一方、メリットとしては、地表面の露出が比較的小さいため、地力の低下、雨滴や地表流下水による表土流亡が少ないという点です。

 

 もちろん、どちらの地拵えがイイというわけではありません

 現場や植生状況に応じて、どちらが最適か、部分的に潔癖/粗放を使い分けるべきか、等を判断することになります。

 ただ、コストという現実問題がある以上、基本的に粗放地拵えになると思いますが、下刈りの省略化具合によっては、潔癖地拵えの方がトータルコストは抑えられるかもしれません。

 初期に集中して投資するか、分割して投資するか、地形・地質・植生など現場の条件によって、トータルコストが抑制できるのか、そういう研究報告があると、経営判断の1つの指標になると思うんですが・・・。(僕が検索したところ、めぼしいものは無かったんですが・・・)

 それと、地域によって、高性能林業機械を使った地拵えを行うところもあると思うので、それは潔癖地拵えになるのかも・・・。

 

 ちなみに、講義や講習会で講師をさせていただくと、「下層がシダに覆われた山はどうすればいいですか?」と質問をされることがあり、そのような質問には、以下の様にお答えしています。

 ①シダを弱らせるため、徹底的に下刈りを行い続ける。時期は6~8月。シダの再生状況を見ながら年2~3回繰り返し、シダが枯渇するまで数年続ける。

 ②シダの地下茎ごと焼き払う。(立木あると無理だけど。)

 ③重機類を使い、地下茎を除去する。(立木あると無理だけど。)

 つまり、時間やコストが掛かりますよ。というお話をさせていただいています。

 その上で、

 ④繁茂しているシダがウラジロだったら、良好なウラジロが採取できる様、管理する。成功すれば、木材生産よりも利益がイイかも(^_^;)。(基本、立木がないと難しいかも。)

 邪魔者がお金に替わるかも・・・というお話もさせていただいています。

 

 

 ここから、地拵えの種類について(全8種類)。

 ①全刈り地拵え

 ②筋刈り地拵え

 ③坪刈り地拵え

 ④枝条散布地拵え

 ⑤先行地拵え(伐採前地拵え)

 ⑥棚積み地拵え

 ⑦火入れ地拵え

 ⑧開墾地拵え

 箇条書きになりますが、それぞれの特徴をご紹介します。

 実際、現場でご自身が行っている地拵えが、どの種類に該当するのか、どの種類とミックスしているのか、振り返ってみて下さい。

 表土流亡の影響やノウサギ被害の影響など地拵えの種類によって異なる。ということに気づいていただければ、今後、作業の見方が変わるかもしれません。

 

①全刈り地拵え

最も一般的で単純な作業で、雑草木などの再生抑制効果が高い

・植栽予定地に散乱する枝条や雑草木など、植栽の障害になる物を全面的に取り除く。

 取り除いた枝条や雑草木は、植栽の邪魔にならない場所へ集積する。

 等高線沿いに置いたり、谷や川へ落とす。

 ただし、谷や川に集積しすぎると大雨や豪雨の時に流され、下流域へ悪影響を与える可能性も出てくる。

 また、植栽に適した肥沃な場所に集積したり、落としたりしないこと。

・渓畔林などの保護すべき地点に対して留意すること。

作業量が多く、多数の人手を要する

地表面が露出しやすい

 

②筋刈り地拵え

・植栽する列のみを刈り払い、残りは放置する方法。
 刈り払った雑草木などは、列の上または列に沿って置いたり、斜面下方へ落とす。

植栽密度が低い(面積あたりの植栽本数が少ない)場合に適した方法

刈り残した列が、植栽木に対する防風効果が期待できるため、寒風などによる被害防止や軽減の効果が期待できる。

表土流亡の防止効果が期待できる。

全刈り地拵えよりも労力や経費の節減が期待できる。

・種子の供給源や地下茎が残されるため、刈り払った雑草木の再生力が強い

刈り残した列の植物が繁茂し、植栽木が被圧されるおそれがある。

ノウサギやネズミを誘引する可能性が高い。


③坪刈り地拵え

・植栽箇所の周囲のみ、円形または方形に刈り払う。→ 直径2~3mが一般的。

筋刈り地拵えよりも労力と経費が節減が期待できる。

・周囲に残された雑草木が、植栽木への保護効果が期待できる。

 ただし、周囲に残された雑草木などによる植栽木への被圧の影響が大きくなる

ノネズミやノウサギの被害を受けやすい

・再生した雑草木に植栽木が紛れてしまう可能性が高いため、後年の下刈りが面倒になる。

 

④枝条散布地拵え

・刈り払った雑草木類や林地残材を林地全面にまき散らす方法。長さ1~2mくらいに細断し、散布する。

・植栽予定地に雑草木類や枝条などの林地残材が少ない場合に採用。それなりに多い場合は、適当量散布するなど臨機応変に。

・メリットは、林地土壌の水分の発散を抑制雨水や雨滴による表面浸食の緩和腐植質の補給(地力低下の防止)雪崩防止(雪の移動を防止)落ち葉などの飛散を防止

・デメリットは、作業量が多い、雑草木類をまき散らすため、歩きにくく植栽や下刈りが不便になる、ネズミやノウサギが営巣する(獣害を誘発)。

・林地保全の観点では有効な方法だけど、小~中型獣類による被害を誘発する可能性を高めてしまう。

 

⑤先行地拵え(伐採前地拵え)

・主伐前に灌木やササ類を薬剤処理により除去する。

・メリットとして、伐採前の調査や作業、伐採後の地拵えが容易になる。刈り払い等の作業が日陰で行えるため、労務安全管理の面から有利な点がある。

・デメリットとして、主伐の予定がなくなった場合、作業が無駄になる。路網整備が不十分だと通勤が大変。搬出作業後、地拵えした場所が乱される場合がある。薬剤処理により下流域へ影響を与える恐れがある。

 

⑥棚積み地拵え

・刈り払った雑草木類を集めて、4~8m間隔で等高線沿いに棚の様に積み上げる方法。

 棚は、伐根に積み上げて固定したり、杭を打って固定する。

 また、伐採で残された樹木や生えている樹木を残し、そこへ枝条などを寄せ集める。

・林地残材の移動や積雪の移動による植栽木への損傷が予想されるような場所に適している。

・棚積みにした場所から生える樹木は、刈り取らず、そのまま利用すれば、林地崩壊や雪崩の防止効果が期待できる。

・ただし、利用する樹木が大きい場合は、植栽木の成長が抑えられる可能性がある。

 しかし、残した樹木を植栽木とともに保護すれば、混交林や複層林への誘導が可能となる。

環境林高い環境機能を備えた経済林にしたい場合は、棚積み地拵えが適している

 

⑦火入れ地拵え

・林地残材や刈り払った雑草木などを集め、林床をきれいに燃やす方法。

・焼き肥えによりリン酸など無機元素が増加する反面、林野火災の危険が伴う。

病害などによる改植ノネズミの異常発生コシダやウラジロの密生地などは、この地拵えが適している。

マツ類やカンバ類など(特に風散布タイプ)の天然更新の促進効果が高い

 

⑧開墾地拵え

・伐採跡地を焼き払った後、ソバやマメ類などを作り、同時期~3年後の間に植栽を行う。

 または、数年間、サツマイモやサトイモなどを栽培、コウゾやミツマタなどの特用樹や観賞用樹木などを栽培。

・開墾により、土壌耕耘効果や作物栽培への施肥効果によって、造林木の成長が良好になる。

・間作作物による地表被覆効果、地拵え及び下刈り作業の省力化が期待できる。

 ただし、急斜面では表土流亡や崩壊の原因になるおそれがある。

・間作の場合、施肥を怠ると地力低下を招く

間作作物を大切にしすぎて、植栽木を損傷してしまうことがある。

  ※間作林=スギなど高木性樹木の苗木が育つまで、苗木間の隙間で農作物を栽培する山林

  ※木場作=苗木が大きくなるまで、苗木と苗木の間に麦や落花生などの作物を栽培しながら、木を育てる方法。

 

 以上、8種類の地拵えでした。

 最後の開墾地拵えは特殊で、昔の農林家が行う様なイメージかな?

 近年は、田舎暮らし、半農半X、自伐林業などに取り組む方が増えているので、今の時代スタイルに合った新しい開墾地拵えがあるかも。

 もしくは、植栽木がある程度生長するまで、林地を貸すというビジネスも出来るかも?

 「土地代は無料で、間作を自由に認めるから植栽木を管理してね。」みたいな(^_^;)。


地拵え

2020年04月07日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 皆伐が行われた後の山では、再び、木(苗)を植栽します。

 植栽する樹木の種類は、目的によって異なります。

 木材生産が目的なら、スギやヒノキなどの針葉樹。

 薪や炭の生産を目的とするなら、カシ・ナラ類。

 水源涵養や土砂崩れの抑制など公益的機能の発揮が目的なら、根を深く張る深根性の樹木。

 景観やレクリエーションが目的なら花や紅葉が楽しめるサクラやモミジなど。

  ・・・がオーソドックスではないかな~と思います。

 

 皆伐された場所には、伐り捨てられた材や不要だった材、枝条が残されており、これらを総称して、林地残材と言われています。

 林地残材は、はっきり言って、植栽作業や移動の邪魔になります。

 この林地残材を整理し、片付ける作業のことを「地拵え(じごしらえ)」と言います。

←地拵え前

←地拵え後

 
 皆伐から2年、3年、4年と時間が経過してしまうと、林地残材のほかに、灌木やつる類などが繁茂するため、それらも取り除かないといけません。
 そこで、皆伐後(伐採後)、直ちに植栽作業に着手することができれば、灌木やつる類が繁茂する前に植栽作業を終えることが出来るだけでなく、地拵えの手間も増えません。

 これは個人的な見解ですが、皆伐後直ちに植栽すると地拵えが省略できる・・・というわけではなく、皆伐から植栽作業の着手までに時間の経過が長くなれば長くなるほど、地拵えの手間が増える、という認識の方が正しいと僕は思います。
 それと、バイオマスなど燃料材に使われるから、木は全木集材で、皆伐跡地には林地残材がない・・・みたいな認識(解釈?)をもっている方(主に行政の方に多いですね。)もいますが、全ての現場がそんな都合のいい現場になっていません。

 

 地拵えは、伐採地に残された伐倒木や枝条を整理し、再び、木(苗)を植えられるよう、林地を整理する作業です。

 地拵えの目的は大きく分けて2つ。(各書物に書かれている表現を少しアレンジしてます。)

 

 ①植栽作業の安全を確保し、作業効率を向上させること。

 ②植栽木の競争相手になる植生を除去すること。→ 植栽木の活着と成長の促進に繋がる。

 

  この2つの目的を達成するために、地拵えを行います。(ちなみに、僕は特に①の”安全”を重視しています。)

 そのため、「無地拵え」や「一貫作業による地拵えの省略」という方法を採用するときは、この2つの目的が達成できるか否かを考えることが重要ではないでしょうか。

 他の植生が生える前に植栽するから無地拵え・・・。

 植栽に支障がないから無地拵え・・・。というのは、少し「?」な判断だと、個人的には思います。

 植栽作業が安全に行えるか否か。の検討が第一ではないでしょうか。

 安全に作業できるから、植栽作業の効率化も図れるのではないでしょうか。

 

 地拵えを省略できれば、確かにその分の費用は抑えられます。

 その代わり、植栽コストは上がるかもしれません。

 しかし、トータル的にはコストが下がるから地拵えはしないという、コスト縮減に偏った判断はナンセンスです。

 その判断は、植栽作業に従事する作業員が安全に働けるための環境整備を怠り、ケガや事故が起こるリスクを現場に押しつけた、ということに繋がるように思います。

 上述した地拵えの2つの目的が果たせているか否かの判断が乏しいまま、無地拵えという条件で植栽の公共事業を発注したり、補助事業の要件になっているものは、改めて検討した方がいいんじゃない?、と個人的に思いながら、要綱を見たり、書類を作っています(^_^;)。

 林業は労働災害が多い産業です。

 しかも、昔から今に至るまで、労働災害の発生率が改善していない産業です。

 山で作業する人達の安全を第一に考えるべきであり、コスト縮減を第一に考えた無地拵えによる公共事業の発注や補助事業の要件って、どうなの?って、思わずにはいられません。 

 

 地拵えを行うと、こんなメリットがあります。

 ①植栽作業の安全性が向上する。

 ②植栽作業の効率が上がる(作業が捗る)。

 ③その後に行う下刈りやつる切りなど保育作業の安全性が上がる。

 ④下刈りやつる切りなど保育作業の効率が上がる(作業が捗る)。

 

 植栽だけではなく、その後に続く、下刈りやつる切りなど保育作業の安全や効率にも影響を与えます。

 ということは、安全性の評価をせず、コスト縮減第一主義による無地拵えは、植栽だけでなく、下刈りやつる切りなどの安全面にも影を指すことになります。

 コスト縮減は大事です。

 でも、一番大事なことは、山で働く人たちの安全です。

 その考えを隅に置き、怠るような判断の下、無地拵えの採用はナンセンスだと思います。

 

 地拵えの目的は、

 ①植栽作業の安全を確保し、作業効率を向上させること。

 ②植栽木の競争相手になる植生を除去すること。→ 植栽木の活着と成長の促進に繋がる

 

 これらの目的が、達成されるか否かが、無地拵え採用の判断基準ではないかと、僕は思います。

 ちなみに、上記の目的は、林業技術ハンドブックなどの書物に、普通に書かれていることで、最新のことでも、珍しいことでも何でもなく、昔から、書籍に書かれています。(安全に関する部分は、書物によって、書いてあったり無かったりですが・・・。)