はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

根上がり松

2016年12月31日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 根上がり松。

 と、言いますが、実際に根が樹体を持ち上げているわけではありません。

 根は樹体を支えますが、樹体を押し上げるようなことはしません。

 ”根上がり松”のような樹形は、切株や倒木の上で発芽した樹木が成長し、その切株や倒木の腐朽が進み消失することで、根に空間部分ができ、根が樹体を持ち上げたような樹形になります。

 →

 間伐などの手入れが遅れている人工林では、表土が流出すると、根上がり松のようなスギやヒノキ林を見ることができます。 

 

 岩の上で発芽し、成長した樹木。

 もし、この岩がなくなると、この樹木も根上がり姿に。

 

←たぶん、あり得ないですけど、もし、岩がなくなると、面白い根上がりケヤキになるでしょうね。

 

 山を歩いていると、時々、大きな枯れ木の上で発芽した樹木が、地面まで根を伸ばしているものを見かけます。

 

 上の2つの樹木は、高さ2m以上の枯れ木の上で発芽しています。

 枯れ木が消失したら、どんな根上がり松型になるのか、ものすごく気になります。

 根の下を潜れたら・・・なんて想像するんですが、それまで生きていないやろなぁ・・・・。

 

~以下、関連記事です。~

針葉樹・広葉樹の根系と作業道

不定根

気根

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2016年12月27日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 樹木の根が持つ役割は大きく分けて2つあります。

 1.樹体を支える

 2.水分や養分を吸収する

 特に「水分や養分を吸収する」が重要です。

 

 樹木の根が広がっている範囲は、樹冠の範囲とほぼ同じ・・・というのが一般的な考えになっています。

 しかし、根の切断や衰弱、岩盤などの障壁といった根の成長・発達に影響を与えない環境で成長した根は、樹冠の範囲を超えて伸びています。

 樹木の根は、水を求めて伸ばすので、樹冠の範囲よりも外へ外へと伸びていこうとします。

 

 樹木が根を伸ばすもう1つ理由。

 根が水分・窒素・ミネラルを吸収するという機能を持つのは、根の表面がコルク化していない先端部分のみで、その先端部分も組織が古くなるにしたがって表面がコルク化して水分吸収機能を失っていきます。

 そのため、水分を吸収するために、絶えず新しい先端部分を伸ばし続けなければいけません。

 これが、樹木が根を伸ばすもう1つの理由です。

 

 樹木の根は、その一部で重力屈性を示して地面の下へ根を伸ばす垂下根となり、大部分の根は水分屈性を示して水平方向に延びます。

 根が水分を吸収するためにはエネルギーが必要で、そのエネルギーは酸素呼吸によって得ているため、吸収する水分に多くの酸素が溶けている必要があります。

 酸素が十分に含まれている水分は、地面の深い層ではなく、浅い層に多いので、根は浅い層を水平に伸びていくというわけです。

(←酸素が含まれた水を求めて根が伸びるイメージ図)

 水分屈性と言っても、正確には酸素が十分に含まれた水分屈性ということになります。

 先ほど、水を求めて根を伸ばすと言いましたが、これも正確には、酸素が十分に含まれた水を求めて根は伸ばすということになります。

 

 根の伸長成長に障害となる要因がない環境であれば、主根は重力屈性で下へ下へと伸びていきます。

 しかし、ある程度の深さまで伸びると土壌水分中の酸素がなくなるので、主根の先端部の活性が低下し、側根を形成します。

 

 枝が光のある方向へ伸ばすように、根も良質な土壌条件の方へ伸ばします。

 水分や養分が豊富なところに根を伸ばし、土壌中に瓦礫が多い場所は根を避けたり、水が帯水する場所では根が枯死したりします。

 根が衰弱すると、同様に枝や葉も衰弱します。

 根は土壌の中にあるので、根の健康具合を見ることは出来ないので、1つの目安ですが、枝葉の茂り具合を見て、根の状況を推測することができます。

 

 以下、色々な根の状況。

←土壌が削られ、樹体を支えるために新しい根を下へ伸ばしたアカマツ。

←道路が出来たため、道路に沿って根を伸ばすクスノキ。

 

 ご神木などにされている巨樹・巨木の周りは、人が立ち入れないように柵を設けられている場合がありますが、根の中で一番大切な部分が先端なので、最低でも巨樹・巨木の樹冠の真下に、入らないようにする・・・というのが理想的ですね。

 

 地面から出ている根を人が踏むと傷ができます。

 何度も踏まれると、傷によるダメージが蓄積し、樹皮が剥がれます。

 樹皮が剥がれた部分に腐朽菌が入り、根が腐ります。

 結果、根が衰弱し、樹勢も衰えます。

 さらに、樹体を支える重要な根の部分に腐朽菌が蔓延すると、その重要な根が腐り、根が樹体を支える力を失います。

 そして、倒木という問題に繋がります。

 

 町の中や山の中を歩くとき、何気なく、根を踏んでいるんじゃないでしょうか。

 ちょっとしたことなんですが、可能な限り、大事な根があるかなと思うような場所を歩かないようにしたり、根を踏まないよう歩くだけで、樹木への影響は変わるんじゃないかな~と思います。

 樹木にとって、根はとても大切なんです。

 

 以下、関連記事です。

作業道と根の関係

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

気根

2016年12月15日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 谷など、土壌中の水分が多い山や霧が多い山に生えているスギは、「気根」が出来やすいそうです。

 「気根」とは、根が呼吸したり、余分な水分を排出するため、地上部に出てきた根のことを言い、通常の根と異なり「髄」がありません。

 

 「気根」で有名な木といえば、”ラクウショウ(別名:ヌマスギ)”。

 植物園などでもよく見かける落葉針葉樹で、秋になるときれいな茶色に紅葉(?)します。

 で、下の写真は、ラクウショウの根本から出ている「気根」。

 

 

 谷筋に生えているスギも、地上1m前後の幹から、小さな「気根」を出すことも多いです(スギの品種にもよりますが)

 

 

←出始めの気根。

 残念ながら、気根が発生したスギは、材の価値が下がります。

 強度には影響はありませんが、板に黒いブツブツ模様が出てしまい、見た目が悪くなるので、値段に影響を与えます。

 逆に「マーブル模様」として、売り出すのもありかな~

 

 スギに気根ができる理由としては、谷筋なので、水分が多く、地下の根が呼吸しにくいから・・・ではないかと思います。

 なので、気根の多いスギ林は、必然的に、黒心材(心材部が黒い材)も多い気がします

 

 あと、気根も一応「根」です。

 これは、倒木した木と気根が接したことで、そのまま気根が成長した事例。

 幹から根が出ているという、不思議な現象が何とも言えませんね

 ここまで、根が大きくなるまで、長い間、倒木と接していたんですね。

 グラップルみたいにガッツり掴んでます。

 でも、このスギ・・・数十年後には銘木かも

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニホンジカ対策 捕獲

2016年12月11日 | 狩猟・獣害のお話

 前回、「シカの自然増加率は20%(推定値)で、捕獲しないと4~5年で生息頭数が倍増する」とお話しました。

 現在、シカによる農林業被害を抑えるためには、シカを捕獲して、生息頭数を減少させる必要がある・・・ということで、国もシカ捕獲を進めています。

 

 「捕獲しなくても、食べるものがなくなったら、自然に数が減るんじゃないの?」と思われる方もいるかと思います。

 

 北海道や東北など積雪量の多い地域であれば、「数十年に一度の大雪」などの影響で、シカが大量死することもありますが、和歌山県のように温暖な地域では、大量死という現象は起こりにくいとされています。

 カモシカの場合、パラポックスウイルスに感染し、大量に死んでしまう場合があるので、一定の個体数が維持できているようですが、シカは、個体数に大きな影響を与える感染症がないようです。

 少し、話がズレてしまいましたが、エサが減っても、シカの生息数は大きく減少することはないそうです。

 栄養状態が悪いと出産の初産齢が高くなったり、妊娠率が低下したりするので、個体数が大きく増加することはないと思いますが、今まで食べなかった植物を食べたり、落ち葉を食べたり、なんとか生き残ろうとします。

 栄養状態が悪いので、一個体あたりの体重は小さくなりますが、シカの個体数は維持するそうです。

 エサ資源が少なくなると、栄養状態の悪い貧相なシカが居残り続ける・・・ということに。

 

 そこで、森林を伐採すると、シカのエサ場が出来上がり、シカの栄養状態が改善されると、初産齢の低下と妊娠率の向上という増加の原因につながるというわけです。

 皆伐などの生産活動やインフラ整備など開発行為は、シカのエサ場になります。

 皆伐の後に生える草木はもちろん、道路法面の緑化工事もシカにとってありがたいエサになります。

 広々とした空間に草木が生えれば、そこはシカにとって、最高のエサ場になります。

 実は、人間の生産活動や開発行為が、シカの個体数増加を助長しているというわけです。

 

 エサが減少しても個体数は大きく減少しない。

 でも、人間が森林や森林に近い場所で、生産活動や開発行為をすれば、シカのエサ場となって、増加を助長させる・・・。

 なので、シカの被害対策として、シカ捕獲が重要だと言われているのだと思います。

 

 ちなみに、被害対策として、シカ捕獲を行う場合、「メスの捕獲」が重要となります。

 

 例えば、毎年1頭、オスを捕獲した場合・・・

 極端な例ですが、オスを捕獲しても、次位のオスがハーレムを作るので、個体数減少にあまり影響を与えないと考えられます。

 また、捕獲したオスが、そのエリアでNo2以下なら、繁殖に関与することもないので、やはり個体数現象にあまり影響を与えないと考えられます。

 

 では、毎年1頭、メスを捕獲した場合・・・

 当たり前のことですが、メス1頭を捕獲すれば、子供が産まれないので、個体数現象に影響を与えられると考えられます。

 妊娠しているメスを捕獲すれば、2頭分に当たりますし、この先10年以上の繁殖源を断つことができたとも言えます。

 そのエリアのメスを全て捕獲すれば、残りはオスなので、増えることはありません。

 

 といっても、これはあくまで机上の空論です。

 実際は、捕獲しても捕獲しても、次の群れが入れ替わってくるので、長期間、辛抱強く、捕獲し続けないといけない・・・そういうところが多いのではないかと思います。

 

 明治時代の頃は、絶滅を危惧されたニホンジカ。

 個体数回復のために、いくつかある政策の1つとして、メスの捕獲を禁止しました。

 それが功を奏し、再び、被害が手に負えなくなるくらいまで、個体数が回復。

 前向き(?)に考えると、ニホンジカの保護という政策としては、大成功だったと言えるんじゃないでしょうか。

 

 でも、時代は進み、今は個体数が増加したニホンジカ。

 農林業において被害は絶えません。

 また、シカを通じてマダニがもつウイルス(SFTS)で、人が亡くなる事例も。

 人がシカを捕獲することが少なくなり、シカも人を警戒しない&恐れない個体も生まれています。

 人とシカの距離が短くなるほど、ウイルスの感染するリスクも高まると思います。

 山に行かなくても、シカがウイルスを保有するマダニを落とすかもしれません。

 シカ問題は、農林業被害に限らず、人命にも関わりかねない被害へと発展するおそれもあります。

 

 我が家の周りもシカがウヨウヨしています。

 

 今年はシカを捕獲しようと思います

 捕獲方法や解体など、いずれご紹介できれば。

 

~以下、関連記事です。~

ニホンジカの生態

ニホンジカ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニホンジカの生態

2016年12月07日 | 狩猟・獣害のお話

 最近の野生のシカは、人を恐れない個体もいて、自ら近寄ってくる個体もいます・・・・。

 

 人を恐れない、人に慣れたシカ、いわゆる「新世代シカ」が増えつつあるようです。

 

 前回に続き、ニホンジカに関するお話で、今回は、「シカの生態」について。

 

 シカはオスとメス、別々に群れを形成し、メスの群れは「メスと小鹿」、オスはオス同士の群れを作る、または単独で生活しています。

 「オスの小鹿」は1~2歳で、メスの群れから離れます。

 これは近親交配を避けるためだと言われています。



 繁殖期は秋季(10月頃)で、この時期のオスは、角を突き合わせて激しく争います。

 争いに負けたオスは、角が折れたり、1本欠損したり、角が残念な形になることも・・・。

 

 シカは一夫多妻で、勝ち残った強いオスがナワバリを作って、メスとハーレムを形成します。

 繁殖期が終わると、再び、オスとメス別々の群れに戻ります。



 妊娠期間は約7ヵ月、春(5月頃)に出産し、毎年1頭(1産1子)を産みます。

 小鹿は約10~12ヶ月で離乳し、オス・メスともに約16~18ヵ月で性成熟します。

 飼育されたシカの寿命は、約15~18歳とされ、中には25歳を超えたシカもいるそうです。

 

 栄養状態が良好であれば、生後16か月のシカの妊娠率は、70~80%と言われています。

 さらに10歳を超えても、妊娠率は90%と低下しないことから、シカは繁殖力の高い動物と言われています。

 エサが豊富な環境下に生息するシカは、70%以上のメスが10年間、毎年1頭の小鹿を産み続けるということになります。

 推定ですが、シカの自然増加率は20%と言われており、捕獲しないと4~5年で生息頭数が倍増するそうです。

 

 ※以下、関連記事です

 ニホンジカ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ニホンジカ

2016年12月04日 | 狩猟・獣害のお話

 

 以前、天然更新に関する記事を連載しました。

 (こちら☞天然下種更新 側方天然下種更新/上方天然下種更新天然下種更新 更新対象樹種の類型天然更新による針広混交林化 広葉樹林化 など

 その時には、あまり触れませんでしたが、森林の伐採後、再造林するにしろ、天然更新を行うにしろ、シカの食害という問題にぶち当たります。

 その対策として、シカ捕獲が進められているのですが、そもそもシカって、どんな動物なのか知ることも大切だと思います。

 なので、今回はシカについて、少し連載したいと思います。

 

 日本に生息しているホンシュウジカ、キュウシュウシカ、ヤクシカ、エゾシカなどのシカを、総称して「ニホンジカ」といいます。

 さらに、ニホンジカだから、日本の固有種のように思いますが、ロシアや中国、朝鮮半島、台湾、ベトナムなどにも分布しており(国外も亜種)、生息環境も落葉樹林から熱帯林、寒帯の草原や湿地帯などにも分布し、多様な環境に適応し、標高約1、800m地点の高地にも生息しているそうです。

 日本国内に生息するニホンジカは亜種ですが、生息する地域によって、体長や体重なども異なります。

 シカに限らず、恒温動物は「同じ種でも寒冷な地域に生息する個体ほど、体長・体重が大きい。」という法則があり、これをベルクマンの法則といいます。

 簡単に言うと、同じ動物でも寒い環境に生息する動物の方が体が大きいということです。

 恒温動物は体温を一定に保つため、常に体内で熱を生産しています。

 温暖な地域に生息する動物は、体温を維持するため、放熱を十分に行う必要があります(汗をかかないので。)。

 そのため、体重あたりの体表面積は大きくするため、小型の方が有利となるそうです。

 逆に、寒冷な地域に生息する動物は、放熱は容易ですが、体温を維持するため、放熱を抑える必要があります。

 そのため、体重あたりの体表面積を小さくするため、大型であることが有利となるそうです。

 ニホンジカの平均的な大きさは、体長130~160cm、体重40~90kgとされていますが、北海道に生息するエゾジカは、体長180cm、体重140kgになる個体もいます。

 逆にヤクシカは体重30kgと非常に小型です。

 
 角は雄だけが持っています。

 角は毎年3月頃に抜け落ち、4~5月にかけて、袋角が生えた後、9月頃に立派な角として完成します。

 角は年齢を重ねると枝数が増加し、3~4年ほどで3尖~4尖になりますが、4尖より多くなることはありません。

 毎年、繁殖期(10月頃)には、立派な角となって、雌を巡って、角を突き合わせた争いを行います。

 ← 袋角のオス。夏毛。


 毛色は、夏では茶色~茶褐色の地に白斑が散在する、いわゆる「鹿の子模様」で、冬は灰褐色に変わり白斑も消えてしまいます。

 ちなみに、ニホンジカにも全身が真っ白いアルビノ個体もいます。

 ニホンジカは、昼夜共に活動しますが、どちらかというと夜行性で、(生息地によりますが、)日中は森林内で休み、早朝や夕方以降から活動します。

 

 草食性で、草や木の葉、木の実、果実などを食べるほか、餌が乏しい冬では、樹皮や落ち葉菌類なども食べます。
 植栽した苗木、イネやトウモロコシなどの農産物や、シイタケやマツタケなども食べるので、今、シカによる農林業被害が大きな問題となっています。

 人に慣れた野生のシカが、目の前で草を食べている動画です。

 

 奈良公園のシカではないですよ。

 山の中で出会ったシカで、カメラを向けても逃げようとせず、逆に近づいて、横通り抜けて、エサ食べ始めるという、野生失格なヤツです!

 最近は、人を恐れず、人に慣れた動物が街中に出没したりします。

 このように人を警戒しない、人を恐れない動物を「新世代〇〇」と呼んでいるそうです。

 なので、動画のシカは「新世代シカ」ですね。

 

 ~以下、関連記事です。~

ニホンジカの生態

ニホンジカ対策 捕獲

シカ肉をやわらかくする方法

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする