はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

作業道と根の関係

2017年06月28日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 針葉樹の根と広葉樹の根の特徴と違いを、作業道に絡めてお話したいと思います。

 針葉樹と広葉樹、それぞれの根の特徴を簡単に説明します

■一般的に、針葉樹の根は、樹体を支える太い根を、斜面下側(谷側)に発達させ、土壌に突き刺すように(踏ん張るように)して、樹体を支え、根の範囲は狭い。

■一般的に、広葉樹の根は、樹体を支える太い根を、斜面上部(山側)に発達させ、扇形のように広がり、ワイヤーロープで樹体を支えるような形で、根が広がっており、根の範囲は広い。

 

 この特徴を踏まえると、

 スギやヒノキの根は、斜面下側に広がります。

 土を切り取ると、今まで、樹体を支えていた場所(土)がなくなるので、切土側の針葉樹は倒れやすい。

 足下を支えていた土壌が削られるので、崩されやすいと考えてください。

 上の写真で言えば、赤い線に作業道をつけるとした場合、上側のヒノキは、樹体を支えていた根の場所が削り取られ、樹体を支える根も損傷してしまいます。

 もし、仮に、このヒノキが広葉樹だった場合、根は斜面上側に広げ、ワイヤーロープで樹体を支えるように根が発達しているので、ヒノキよりは倒れにくいと考えられます。

 ただし、広葉樹の場合、枝葉を路面側へ広がるように成長する傾向にあるので、作業道上空に伸びた枝葉が、運搬に影響を与える可能性があります。

 

 写真と逆の場合、盛土側というか路面下側(谷側)の場合。

 スギやヒノキの踏ん張るような根、土壌に突き刺すような根は、路面下側に発達しているので、針葉樹の根は杭の役目になり、作業道を支える役目になると考えられます。

 一方、広葉樹の根は、逆に作業道の路面に樹体を支える根が伸びている可能性が高いと考えられるので、トラックや林内作業車が走行することで、踏圧による根の損傷や衰弱によって、樹体が支えられなくなり、作業道の路面を壊しながら倒木する可能性があります。

 

 図にすると、こんな感じで、一応、切り土によって影響を受ける根を表現してみた・・・つもりです。

 道上の針葉樹と広葉樹。

 

 針葉樹は元々、斜面下側に体重がかかっているので、倒れやすい。

 広葉樹は、斜面上側に伸びた根が樹体を引っ張るように支えているので、倒れる可能性が非常に低い。

 

 次に、道下の針葉樹と広葉樹。

 

 針葉樹の根は、斜面下側に体重がかかっているので、杭のような役割を果たし、作業道を支える。

 広葉樹の根は、斜面上側に根を伸ばしているので、切土の際に根を大きく損傷する可能性があります。

 また、作設した路面の真下に根があり、トラックや林内作業車が走行することで、路面踏圧によって、根が損傷・衰弱し、結果、倒木する可能性もあります。

 

 あくまで、一般的な針葉樹の根と広葉樹の根の違い・特徴によるものですが、それを理解することで、作業道の破損リスクを減らす事に繋がるのではないかと思います。

 現場の方々は、学的なことを理解せずとも、経験で理解されていると思いますが、こういう点を知った上で、現場を見ると、さらに視野が広がるのではないかな~・・・なんて、思います。

 

 そして、もう1つ。

 崖縁に生えた針葉樹は、下側(谷側)に根を広げたくても、土がないと広げられません。

 その時は、広葉樹のように上側(山側)に根を広げます。

 しかし、下の写真のように、下側(谷側)に土があれば、根を広げります。

 現在の作業道は、搬出間伐や主伐の際に作設しますが、10〜15年生のような若い人工林の時に、作業道を作設すれば、根が太く発達する前なので、根のダメージも少なく、倒木等による作業道の破損リスクも下がると考えられます。

 今まで、作業道のない環境で育った50年生の人工林に道を作れば、「50年間一度もなかった作業道ができた」という急激な環境変化に、人工林は対応することができません。

 逆に10~15年生の若い人工林で、道を作ると、その後、作業道のある環境に適応する形で人工林は成長していくと考えられます。

 つまり、切土側に生えているスギやヒノキも、倒れにくいように根を成長させていきます。

  これからは、作業道のある場所で植栽されると思うので、作業道とマッチした人工林が育つのではないかと思います。

 

 と、根拠もなく、樹木の基本的な特徴と作業道を見てきた経験から、書き綴ってきましたが、実際に、作業道に適応した人工林もあります。

 このように根が成長するので、より作業道も安定すると思います。

 こういう現場を踏査して、作業道の作設時期に適した人工林の林齢を関連付けることができたら、適切な時期を示せるかも知れませんね・・・。

 

 とはいえ、作業道が損壊・破損するリスクは、水との関係が一番なので、樹木の関係がどの程度、リスクを下げられるかは不明ですが・・。

 でも、何か1つをいい加減にすれば、手痛い目にあうのも自然の力です。

 

 山は、樹木(だけに限りませんが)と言う生き物1本1本が集まった環境なので、その山を相手にするなら、樹木を理解する力って、大切ではないかな~と思っています。

 林業は、山を相手する仕事ですが、実際は、樹木1本1本をコントロールして、山を作っているわけですから。

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林業の労働安全対策 

2017年06月24日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 林業関係では、低コスト化や生産性の向上、木材需要の拡大という動きが中心になっていますが、やはり労働安全の向上も喫緊の課題・・・当然、今に始まった事ではなく、昔から挙げられている課題ですが。

 そんな中、ここ数年の間に、WLC(世界伐木チャンピオンシップ)やJLC(日本伐木チャンピオンシップ)、チェーンソー防護服の改善など林業の労働安全に新たな動きが展開されています。

 どんな仕事でも「体が資本」ですが、特に危険な作業・危険な環境に身を置く割合が高い林業では、体調管理が本当に重要です。

 ちょっと、ボ~っとしている間に重大災害に・・・、油断ならない状況がある中、体調管理はとても重要な職種が林業だと思っています。

 

 僕自身、現場でバリバリ働く側ではなく、むしろ、発注側・現場監督という立場が多いです。

 休日の際、伐採・搬出などの作業を軽く行う程度ですが、昔、たった4年というわずかな間ですが、現場に携わる機会がありました。

 その時に、今では師匠と呼べる方たちから教わった安全対策を今も教訓にしています。(この頃に、一応、植栽・下刈り・つる切り・枝打ち・間伐までの作業を経験させていただきました。)

 今回は、師匠達から教えていただいた「安全対策」をご紹介したいと思います。

 その安全対策とは、大きく分けて2つ。

 1.危険を予測できる想像力を身に付けること。

 2.重大災害の報告を読み込むこと。

  でわ、1つずつ説明を。

 

 1.「危険を予測できる想像力を身に付ける」

  言われたのが、「これから行う一連の作業の中で、どこにどんな危険が潜んでいるか、想像できるか?」。

 

 例えば、つるが絡まっている立木を伐採しようとしたとき・・・

※写真はイメージで、実際のつるはこんなに太くなかったです。

 

 「これからの作業で、どんな危険を想像できる?」と聞かれました。

 で、「掛かり木になる」と回答。

 「掛かり木の処理は危険だが、掛かり木になること自体が危険じゃない。それは次の作業の話。伐採時の危険は?」

 とりあえず、周りを見ながら、危険予測が立つものを適当に回答しましたが、師匠の言わんとすることの的は得られず・・・。

 師匠の回答は

 「伐採後、つるでぶら下がった状態になる可能性があり、その瞬間が危険。」

 「パターンとして、

  1.伐採直後、ブランコのような振り子運動になる。梢端部のつるがちぎれて、梢端部が自分の方に落ちてくる。

  2.梢端部がちぎれず、元の部分が自分の方に戻ってきて、衝突する。

  3.元の部分が自分の方に戻ってきたとき、つるがちぎれて、自分の方に元が飛んできて、衝突する。

  4.梢端部がちぎれず、元の部分が自分の方に戻ってくる。それを避けた瞬間、梢端部のつるがちぎれて、自分の方に落ちてくる。

  5.戻ってきた伐採木を間一髪で避けても、再び、伐採木が戻って来て、元と自分が衝突する。

  ウソみたいに聞こえるが、いずれも実際にあった話。

  こういうことが起こるかもしれないと想像しておけば、退避場所や退避方法など伐採前の行動や伐採後の行動がイメージしやすい。

  想像できるかできないかで、初動動作に差ができる。

  掛かり木になるわって、ボ~っと見てたら、怪我するゾ。」

 とご指導いただきました。

 

 他にも、師匠が、高度な伐倒技術を要する立木を思案し、いよいよ伐採に係ろうとした瞬間、傍観していた僕に対し、

 「こういう難しい木を伐採しようとしている人がいたら、ボ~っと見てたらアカン。自分ならどういう方法で伐採するか、どういうことに気を付けなアカンか考えて、自分の答え(伐採方法)を持て。そして、その人が伐採しようと動き出したら、まずは自分が出した答え(伐採方法)を伐採する人に伝えて、答え合わせをしろ。ただし、お前の答えは、ほとんど一致しない。だけど、その考えに何が足りないのか、なぜ一致しないのか、教えてくれる。自分の考えを相手に伝えたり、質問していかないと、見ているだけじゃ、相手は教えてくれない。間違ってていいから、自分で考えて、答え合わせをしろ。話を聞いて、考えを聞いて、相手の経験値を少しでも吸収しろ。それを繰り返すと、答えのズレも小さくなる。」

 と、ありがたいご指導もいただきました。

 これ以来、邪魔にならない状況であれば、自分が想定する伐採方法と実際に伐採する人の伐採方法を対話して、比較するように。

 これをするだけで、伐採するときに何を見ないといけないのか、そのポイントを学ぶことが出来ます。これは本当に大切です。

 ただし、中には、科学的・力学的・論理的に説明できない方もいます。

 失礼な言い方ですが、経験則だけで語る方もいますので、大半が「これまでの経験から・・・」という感覚的な説明しかされない場合は、それを安易に吸収すると逆に危険につながる可能性もあります。

 

 あと、師匠から、

 「現場監督はマニュアルに基づいて、安全作業を指導する。でも、マニュアルをそのまま現場に当てはめると、逆に、それが危険要因となる可能性もある。マニュアルはあくまでマニュアルで、絶対安全ではないことを念頭にしないといけない。例えば、下刈り作業でヘルメットをしていないからヘルメットを着用しろと指導する。ヘルメットを着用したため熱中症になることもある。熱中症を予防するなら麦わら帽子の方が良い。下刈り作業で”転倒による頭部損傷を予防するヘルメット”か”熱中症を予防する麦わら帽子”か、どちらの方が作業の安全性が確保されるか、そういうことも想像できないといけない。だからといって、マニュアルを無視しろというわけではない。監督という立場上、マニュアル通りに指導しないといけないが、それが絶対に正しいと思わず、自分が行うマニュアル指導の裏に危険要因が潜むということを理解すること。それが根本にあるか否かで、現場作業員の受け取り方が違う。」

 という指導もいただきました。

 実際、マニュアル指導で終わらせず、現場目線でそれぞれの状況を理解しようとする姿勢を見せると、現場作業員の方々も、監督員に迷惑をかけないように・・・という雰囲気で仕事をしてくれました。こちらの立場としては、本当にありがたいことです。

 

 さらに、もう1つ、師匠は、

 「現場作業員もマニュアルを無視してはいけない。基本動作としてマニュアルは正しい。しかし、現場の状況に応じて、マニュアル動作が出来ない場合は、なぜ、マニュアル動作ができないのか、マニュアル動作が逆に危険になるのか、科学的、論理的に説明できないといけない。マニュアル通りに行うとこういう危険に繋がるから、そこはマニュアルから逸れるが、この状態から見ると、おそらくこういう状況だから、こういう方法にしないといけない、と、自分の考えを伝えられないといけない。今までこの方法で問題なかったなどと、単に経験則だけで語るのはダメ。なぜダメなのか、その理由を説明できないといけない。」

 とも。

 「要は、その方法を採用した根拠があるはず。”これまで大丈夫だったから”とか、”今までこれで問題なかったから”というのは、安全作業でも何でもない。単に、運が良かっただけ。」

 「この世に全く同じ成長する木はない。だから、この木材は世界に1つしかない。というが、山作業も同じ。全く同じ条件で作業できる場はない。1つ隣の木に移れば、それは別物。重心も枝葉の広がり方も違う。土場で作業していても、運ばれる原木は全て異なる。工場の生産ルートで働いているのと全く違う。細かいけど、そういう認識を持つことが大切。踏み出した一歩のその先が絶対に安全という保障はないゾ。」

 それくらい、気を引き締めて行けよ・・・ということを、教えていただきました。

 だから、ちょっと、危険な目で”ヒヤッ”とすると、師匠に「ほらな。」と言われました。

 あれは、結構、頭にくる。師匠にではなく、自分自身に。

 ”ヒヤッ”とすると、そうっと師匠に視線を送ると、目が合ってしまい、その目が「ほらな。」と訴えている。

 今、思えば、僕がヒヤッとするのを先読みしていたのではないかと思います。何かあれば、すぐに動けるように。

 

 師匠の教えその1が、とても長くなりましたが、ひとまず、以上です。 

 

 次に、

2.重大災害報告の読み込むこと

 これは単純です。

 林業・木材製造業労働災害防止協会などで災害発生に関する報告資料がありますが、それを読むことです。

 単に読むのではなく、「災害が起こった状況を自分の頭の中でシミュレーションしながら読む」です。

 頭の中で疑似体験を作りだし、その体験を自分の経験として蓄積させます。

 師匠は、僕に、

 「重大災害の報告はとても重要。林業の労働安全の基準は、過去の犠牲者や被災者の経験をベースにされている。こうした尊い犠牲がマニュアルにも生かされている。だから、マニュアルは安易に無視していいものではない。自分が被災したら、過去の犠牲者や被災者の経験を生かせていない、失礼にあたると思えよ。だから、災害報告は頭の中でシミュレーションしながら、きちんと読め。そのためには、現場経験がないとシミュレーションできやんぞ。木を伐らなくてもいいから、伐るつもりで木を観察しろ。」と言われました。

 

 なので、今でも、時々ですが、林業・木材製造業労働災害防止協会のHPで報告を読んでいます。 

 http://www.rinsaibou.or.jp/cont03/03_frm.html

 林業・木材製造業労働災害防止協会の「林材安全」などもオススメです。

 過去の報告も読んでみると、やはり「掛かり木処理」の災害が多いです。

 あと、高性能林業機械がらみの事故も増えているのが分かります(統計処理としていないので、感覚的な話ですが。)。

 こういう傾向も見えてきますし、報告を読んでいれば、初めての作業でも、報告内容に近い場面であれば、気を引き締めるきっかけにもなります。

 

 冒頭でも書きましたが、WLCやJLC、防護服など「林業の労働安全」では新たな動きが展開されています。

 林業の労働災害の発生率は、過去からほぼ横ばいで、しかも、他の産業よりも高い数値を示しています。

 労災保険料率も林業は高い部類(60/1000)に入ります。

 林業では、低コストや生産性の向上が重要視されていますが、やはり労働安全の対策も重要です。

 安全対策は、低コストや生産性の向上に結びつかないと考えがちになるかもしれませんが、それは逆だと思っています。

 安全対策は事業計画・作業計画にも結びつくもので、全体から今日1日の計画、事業の進捗を共有することにも繋がります。

 しかし、1度でも事故が起これば、事業の進捗に影響を及ぼし、生産性が低下し、コストも嵩みます。

 さらに、林業界全体で、安全対策が高まり、林業の労働災害発生率が低下すると、労災保険料率も下がり、結果、人件費を抑えられることにも繋がってきます。

 

 全国的に林業大学校が開校され、人材育成・後継者育成に力が入れられています。

 WLCやJLC、新たな防護服という動きも展開されています。

 こうした全国的な動きと新たな動きを取り入れて、林業界全体で労働安全対策の向上に向けた動きを展開すべきではないかと思います。

 林業をより魅力のある産業にするためには、これまで以上に高い安全対策の実現は不可欠で、特にこれから林業という職業に飛び込もうとする人たちに対して、重要な課題だと思います。

 労働安全対策は雇用側の責務に限らず、業界関係全体で取り組むべきとも思っています。

 労災保険料率の低下→人件費の軽減→低コストとに繋がる可能性も十分に考えられるので、業界関係全体で取り組むメリットもあると思うのですが・・・。

 

 個人的には、まず、

「危険を予測できる想像力を身に付ける」

「重大災害の報告を読み込む」

 この2つから、取り組むことをオススメします。

 重大災害の報告は、雨の日に読み込めます。

 休憩の合間に、何か1つ、報告事例をイメージしながら、立木を観察するだけでも、想像力が身につきます。

 

 これをするだけで、技術が備わると、申し分ないんですが・・・・。

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巻き枯らし

2017年06月07日 | 森林管理・森林空間・森林整備のお話

 樹皮をグルッと剥いて、木を枯らす「巻き枯らし」。

 至極単純な方法で、伐採する技術を要しないので、森林整備として、取り入れている方もおられるかと思います。

Makigarashi

 木が枯れるので見た目が悪い・・・という欠点があります。

 また、スギやヒノキなどの材質劣化を招く、病害虫の温床になる可能性もあります。

 

 枯れるまで長い時間を要するものの、山の中で朽ちた木は、危険要因の1つとなるので、巻き枯らしをしたエリアは、赤いテープなど目立つような印を残すことが大切です。

 誰も入ってこないと思うような山奥でも、個人の山でも、誰かが山に入る可能性も0ではないので、そういう方への注意喚起はもちろんのこと、再び、自分がそのエリアに訪れたとき、不用意に近づかない安全対策にもなります。

 

 「巻き枯らし」を難しく言うと「環状剥皮(かんじょうはくひ)」と言います。

 環状剥皮は、大きな木を移植するときに、根を切る際に、新しい根を出させるためにも使われる技術の1つです。

 あと、取り木をするときにも使われます。

 簡単に説明すると、形成層ごと樹皮を剥いて、そこに発根促進剤(オーキシン剤)を塗布し、乾燥しないように水ゴケなどを入れて、ビニールで覆います。

 発根した部分から根や枝を切って、移植したり、取り木苗として植えたりします。

 

 森林整備のために応用された環状剥皮、いわゆる「巻き枯らし」。

 昔から日当たりを良くするためにやっていたようですが、枯れた木は、いつ倒れたり、幹が折れたりするかわからないので、建物の近くや道路付近などでの巻き枯らしは控えた方がいいと思います。

 器物破損などに繋がる可能性もありますので・・。

 

 さて、この「巻き枯らし」。

  ”樹皮を剥くことで、形成層が死んで、枯れる。”

  ”樹皮を剥ぐことで、形成層が損傷し、養分が行き届かなくなって枯れる”

 

 などと言われますが、実は違います。

 

 枯れる本当の原因は、「辺材が乾燥するから枯れる」です。

 辺材は水分を運ぶという役割を持っています。

 樹皮を剥くことによって、辺材が乾燥し、その役割を十分に発揮できなくなり、枯れてしまいます。

 なので、樹皮を剥いても、辺材が乾燥しなければ、剥かれた部分を修復しようとします。

Makigarashi_kaihuku←樹皮を剥かれたクヌギ。剥かれたところが修復されています。

 修復という点では、スギやヒノキなどの針葉樹は、広葉樹より不得手なの、再生が上手くできず、枯れていますが、広葉樹では剥かれた樹皮を再生し、枯れずに生き残っているものもいます。

 意外と誤解されているのですが、巻き枯らしで枯れる理由は「辺材が乾燥するから」です。

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干害(乾燥害)

2017年06月04日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 いい天気が続いています。

 時々、夕方から夜明けにかけて、やさしい雨が降る程度で、日中は本当、天候に恵まれた日が続いています。

 ただ、雨が少ない日が続くと、「干害(乾燥害)」の被害が発生しないか、気になるところです。

 下の写真は、平成25年に和歌山県で干害が発生した広葉樹林。

Kangai_2

 干害は、夏季の間、30日間無降水日が続くと発生すると言われています。(冬季は40日間。)

 

 干害が発生した林内は・・・

Kangai_rinnai_2

 下層木の葉がしなしなに萎れてしまいます。

 写真に映っているほとんどの木は、タイミンタチバナで、和歌山県では海岸林によく見かける一般的な常緑広葉樹の1つで、比較的乾燥に抵抗のある樹木です。

 

 元々「シイノキ」は干害に弱くて、枯れやすく、干害の度合によっては、ウラジロガシやタブノキなども枯れます。

Kangai_shi_2(←シイノキ)

Kangai_urazirogashi_3(←ウラジロガシ)

 低木のアクシバが枯れるという現場も・・・。

Kangasi_akushiba_2(←アクシバ)

 

 干害で枯れた木は、先端の枝葉は回復しないものの、萌芽や胴吹きによって、再生する可能性もあります。

 また1から成長することになりますが、頑張って、緑を取り戻すこともあります。

 

 干害が発生した平成25年は、ヤマザクラなどの落葉広葉樹が8月くらいに紅葉しました。

 観察すると、冬芽を形成していたので、冬眠(夏眠?)に入って、この干害を乗り切るという対策を取ったと思います。

 なお、落葉樹は、落葉する際、葉柄の基部に「離層(りそう)」という葉を切り落とすコルク層を形成します。

 離層が出来ると、養分が行き来できず、葉の中に残った養分がカロチノイド(黄色の色素)やアントシアン(赤色の色素)という成分に変化し、紅葉(黄葉)します。

 葉が黄色or赤色に変色して、落葉した木は、正常の機能で落葉したものなので、枯れる心配はないかとおもいます。

 しかし、正常な機能とはいえ、雨が降らなくて、水不足になったので、落葉せざるを得なかったので、木にとっては、大きなダメージ・ストレスを受けたことに変わりありません。

 

 干害で枯れる木は、徐々に葉の色が茶色に変色します。

 なので、毎日、同じ山を観察していると、茶色の割合が少しずつ多くなる様子が分かります。

 干害は一気に枯れる・・・というよりも、上方部から下方部に向けて、葉が少しずつ茶色く変色して枯れます。

 また、山が全体的に枯れる場合もあれば、単木だけ枯れる場合もあります。

 

 ちなみに、平成25年に発生した干害は、スギやヒノキも被害を受けました。

 この被害について、問い合わせが殺到する!・・・かと思いきや、問い合わせはほとんど0.

 むしろ、干害が発生したその半年後くらいに、「そういえば、スギやヒノキが枯れているんだけど・・・」。

 スギやヒノキが枯れるって、その程度のことなのか・・・と、なんとなく、寂しい想いを感じました。

 

 以下、関連記事です。

  干害~枯れる原因~

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