日本クマネットワーク主催による「照葉樹林に生きるツキノワグマ」のシンポジウムに行ってきました。
内容的には、紀伊半島に生きるツキノワグマは、絶滅が危惧され、その生態を知り、どのように保護すべきなのか、それぞれ活躍されている方達からのお話というもの。
以下、内容を簡潔にまとめますと・・・
四国や紀伊半島のツキノワグマは、他の地域と交流できない「孤立個体群」で、絶滅が危惧されています。
生息頭数の減少はもちろん、遺伝子の多様性も消失するおそれがあるとのこと。(紀伊半島の生息頭数は200頭に満たないだろうということ。)
なぜ、ツキノワグマが減少したのか・・・。
その原因は・・・
①天然林(落葉広葉樹林)の減少。
そもそも、 ツキノワグマの食性は主に植物食。動物食は少ない。
春は樹木の新芽、スズタケなどササ類のタケノコ、木の皮など。
夏はハチの巣やアリなど。
秋はカゴノキ、タカノツメなどの果実、そして、越冬前にミズナラ、ツブラジイなどのドングリ(堅果類)を食べている。(要するに、照葉樹林と落葉樹林を行き来して、生活している。)
冬は、木の樹洞などを利用して、冬眠・出産する。
特に樹洞は、樹齢数百年以上の樹木(主に広葉樹)によって構成される天然林しに多く存在する。
このようにエサと越冬(出産)する場所として、大きく天然林(落葉広葉樹林)に依存していることから、天然林(落葉広葉樹林)の減少が大きく影響している。
②スギやヒノキの剥皮被害(林業被害)による駆除。
天然林(落葉広葉樹林)を伐採した跡に植えられたスギ・ヒノキをツキノワグマが剥皮し、木材の価値を大きく低下させた。
その被害を防ぐため、ツキノワグマの駆除が行われたことによる減少。(今は行われていませんが。)
近年のツキノワグマ捕獲は、民家に出没した個体を捕まえたり、誤ってイノシシの捕獲檻にかかった個体など。
原則、ツキノワグマは殺さず、野に返すという「学習放獣」という方法が採られています。
でも、放しても放しても、毎回戻ってくる個体もいます。
そういう個体は・・・殺処分されます・・・。
絶滅が危惧されている紀伊半島のツキノワグマ。
それを防ぐためには・・・・
①生息頭数を減少させないこと。
特に、大量出没の時期に捕獲したツキノワグマであっても殺処分しない。
ドングリの凶作年になると、ツキノワグマがエサを求めて、低地に移動することは当たり前。
②誤捕獲の回避。
イノシシ檻の天井に穴を空けるなど、間違って檻に入っても、ツキノワグマが脱出できる工夫を採ること。
③趣味で行う養蜂箱への対策
趣味で行っている養蜂箱は、特にクマ対策を行うことなく、山の中に置かれたり、民家の近くに置かれている。
これは、安易にクマをおびき寄せる要因となる。
趣味で行っている方に対しての指導が必要。
④学習放獣した個体の再捕獲防止。
学習放獣した個体が何度も捕獲されると殺処分される。
それを防ぐためには、放獣したクマが戻ってこないような工夫を人間がすべき。
人間が学習すべき。
⑤森林植生の回復。
林業経営が放棄された人工林を、天然林(落葉広葉樹林)に戻すこと。
そして、カシノナガキクイムシによる対策も忘れてはいけない。
といったものでした。
これに奈良県の保護管理計画のお話や、和歌山県で捕獲されたクマの事例を中心としたお話、分布拡大予測モデルのお話など。
個人的には、非常に・とても・嫌らしい表現で、誠に申し訳ありませんが、以前から知っていたこと・把握していたことがほとんどだったので、クマの保護に精通している方なら、さらに辛口評価だったのではないでしょうか?
あと、勝手に予測というか、こうだろうな~と想像していたことの裏付けがとれたことと、ツキノワグマはヒノキに登って、上方の皮も剥皮すること、スギやヒノキの小径木の皮を剥くこともあることが知れて、面白かったです。